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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科21巻1号

1967年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・119

Waldenstrom's macroglobulinemiaにみられた網膜症の1例

著者: 土屋忠久 ,   米地和夫 ,   今井克彦

ページ範囲:P.3 - P.4

〔解説〕
 血清蛋白中の微量成分であるマクログロブリンの特発性増加を示すMacroglobulinemiaは1944年スイスの内科医Waldenströmによりはじめて報告され,眼科的には特有の眼底変化を示す点で注目される疾患であるが,わが国ではその眼底図もほとんどみられない.
 症例64歳,男子.

綜説

眼底出血

著者: 桐沢長徳 ,   田川貞嗣 ,   桑原安治 ,   松山秀一 ,   桑島治三郎 ,   木村重男 ,   新津重章 ,   高久功 ,   小島道夫 ,   入野田公穂 ,   今泉亀撤 ,   浦山晃 ,   梶浦睦雄

ページ範囲:P.5 - P.25

 本篇は昭和40年6月13日に新潟で行なわれた北日本眼科学会のシンポジウムであるが,臨床家に重要な問題なので綜説の形に編集した(桐沢)。

臨床実験

Behçet's syndromeに合併せる大腸多発性穿孔の1例

著者: 丸山光一 ,   福地悟 ,   菅謙治

ページ範囲:P.27 - P.32

I.緒言
 Behçet症候群は眼科領域においてしばしば認められる疾患であり,ブドウ膜,口腔粘膜,外陰部に特有の病変を来たし,これ等の病変は増悪・軽快を繰り返し長い経過を辿る。就中ブドウ膜の炎症性変化は重篤で視機能に重大な障害を与え予後は極めて不良である。また本症の経過中に上記主症状の他,稀に消化器系に粘膜の糜爛・潰瘍形成等の合併症を来たすことが知られているが剖検例・手術例の報告は極めて少ない。著者等は最近重篤なる本症患者の治療中,急性腹部症を発し開腹手術の際回腸末端部より結腸全長に亘る間に7カ所の穿孔を認め回腸末端部・結腸全切除を行なつた。
 切除せる部分の各所について病理組織像検索を行なつた結果Behçet症候群の合併症としての消化器潰瘍と結論された。本症経過中の消化器潰瘍の手術例報告はわが国では数例に過ぎず,いずれも回盲部に限局しているが,本例の如く広範囲に多発せる潰瘍・穿孔を手術により治癒せしめ得た例は皆無と思われる。

Waldenström's macroglobulinemiaにみられた網膜症の1例

著者: 土屋忠久 ,   米地和夫 ,   今井克彦 ,   小野寺清寿 ,   柴田昭 ,   加藤守

ページ範囲:P.33 - P.38

I.緒言
 Waldenström1)がこの疾患を最初に報告して以来,世界各国よりの報告例は多数にのぼり,三好2)によれば1962年までに約250例がみられ,眼科分献にもいくつかの報告がみられる。我国に於ては三好3)の第1例以来,10余例が報告されているが,眼科的所見については,ほとんど記載がない。本邦の眼科文献には,著者の調べた範囲ではWaldenström's macroglobulinemia (以下本症と省略)の報告例はみられず,眼底図もみられない。土屋一4)の症例は,臨床症状,眼底所見および検査所見などから本症が最も疑われるが,血清の超遠心分析が行なわれておらず,本症と断定でのきない。その他,血清蛋白病に関する2,3の抄録5)6)7)はあるが,本症とは異なるものである。以下,我々の経験した症例を報告する。

農薬ブラストサイジン(ブラエス)の後眼部組織に対する障害

著者: 小島宮子

ページ範囲:P.39 - P.48

I.緒言
 著者が前に臨眼第18巻第7号で述べた如く,ブラストサイジンは,近年,農薬として広く使用されている抗イモチ病の新しい抗生物質である。
 ブラストサイジンと従来用いられている水銀剤とを混和したブラエスM粉剤が,水田へ撒布の際,眼に飛入すると眼障害を訴えることがあり,かかる患者が各地に続々発生したのに鑑み,まずブラストサイジンの1%,0.1%,0.05%,0.01%,水溶液及びブラエスM粉剤を家兎眼に点眼,点入し,その臨床経過及び病理組織学的所見について報告した。今回は,ブラストサイジン水溶液を前房及び硝子体内に注入した際に起る眼障害について検討したので,その成績を述べる。

DemethylchlortetracyclineとTetracyclineとの血中および房水移行に関する研究

著者: 生井浩 ,   鬼木信乃夫 ,   野中吉郎

ページ範囲:P.49 - P.53

I.緒言
 広域スペクトルを有するTetracycline系の抗生物質には主としてTetracycline, Chlortetra—cycline, OxytetracyclineおよびDemethyl—chlortetracyclineの4つがある。このうちDemethylchlortetracycline (以下DMCT)は1957年アメリカのレダリー研究所においてMcCormick等1)がStreptomyces aureofaciensの新変異株より発見したChlortetracyclineのdemethyl化合物であり,酸およびアルカリに対して安定度の高い抗生物質である。本剤はアメリカではすでに5,6年前からLedermycinの商品名で使用されており,内服の場合,血中濃度が高く,かつ長時間血中に維持され,DMCT 150mgの投与がTetracycline (以下TC,商品名Achromycin V)の250mgに匹敵するといわれ,かつまた副作用も少ないとされている2)
 DMCTは経口的に投与されるもので,その用量は成人において1回150mgずつ6時間間隔で1日4回,計600mg投与される場合と,1回300mgずつ12時間間隔で1日2回,計600mg投与される2つの投与方法があり,これらがともにTC1,000mg投与に匹敵するとされている。

眼手術後におけるBetamethasone disodium phosphate+Fradiomycin sulfateの使用経験

著者: 錦織劭 ,   小山信一 ,   近藤武久

ページ範囲:P.55 - P.59

I.緒言
 先に我々1)は0.1%Rinderon眼軟膏(Beta—methasone disodium phosphate)を試用して,その抗炎症,抗アレルギー作用の強力なる事を確認した。
 ちなみにRinderon (Betamethasone)は16β—Methyl−9α—fluoroprednisoloneであり,当Rinderon A眼軟膏は1g中このBetametha—soneの燐酸塩1mgと,Fradiomycin sulfate3.5mg力価を含有する。

肺炎双球菌性急性結膜炎の流行例—附シノミン点眼液の治療効果

著者: 内田幸男 ,   竹林貢 ,   下田格

ページ範囲:P.63 - P.66

I.緒言
 昭和41年1月から4月にかけて徳島県牟岐町に急性カタル性結膜炎が流行した。患者の大部分を占めたのは小学校の学童であり,原因は肺炎双球菌(以下Pn菌と略す)によるものであることがわかつた。従来わが国ではPn菌による結膜炎が大きい規模で流行した報告がないようである。また今回の結膜炎の臨床所見は過去の成書に記されたPn菌性急性結膜炎とは異つた点を有している。抗生物質の出現以来細菌性結膜炎は治療が容易になり,臨床的重要性もウイルス性結膜炎にとつて代られた観がある。しかし結膜炎の病原論においては細菌性のものもなお決して軽視出来ないものである6以下に今回のPn菌性結膜炎について述べる。また私共はかねてからサルファ剤の点眼液というものが治療上実際にどの程度の役割を果すかということに興味を持つていた。この結膜炎の流行はまたとない薬剤効果検討の場であつた。丁度塩野義製薬からシノミン点眼液の提供をうけていたので,これを治療に用いた成績もあわせて報告する。

手術

網膜剥離に対する鞏膜短縮法

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.67 - P.69

I.緒言
 私は昭和35年の本誌1)に,「網膜剥離に対する鞏膜短縮術(仮称Chamlin-Rubner法)の経験,予報」として私が仮称したいわゆるChamlinRu—bner法の変法について術式を紹介した。この呼び名は適切であつたかどうか私には分らないが,この術式の原法を記した論文2)はM.ChamlinとK,Rubnerの共著になつているのでこの様に呼んでみた。ともあれ,この方法は私が最近まで在職していた京大の眼科では広く行なわれ,他学の一部の人々にも関心をもたれたり3),実際に行なつて頂いたようである4)。しかし,この方法を行なつて不成功であつた患者を紹介されて再手術を行なう機会があつて感じたこともあり,私の方法はその後変つて来ているので,現在の方法を紹介しようと思い立つた。昭和35年,私は予報として本法を紹介したままその後に続くものを書いておらず,いささか気にもなつていた折でもあり,私の鞏膜短縮法もこれ以上たいして変らないと思うので,現在の方法を紹介して予報に次ぐ報告として責を果したいと思う。

私の角膜移植片採取台について

著者: 大木陽太郎

ページ範囲:P.71 - P.74

I.緒言
 角膜移植術に関する諸研究の進歩は,近時著るしく進歩した分野の一つであり,もつとも論議の激しい分野の一つであろう。しかして,その手術結果も,年々,成績も良くなつて行きつつあるが,同時に,特に表層移植術の適応の拡大と,成功率の上昇は,著るしいものと思われる。最早表層移植術は,日常気軽に,よりしばしば行なわれるようになることは,必至である。ところが,この表層移植術の表層移植片を採取する技術は,相変らず,新鮮な角膜の場合は眼球をガーゼでつつんで鷲掴みにする方法であり,保存角膜の場合は,わが国では,一般にガーゼと綿球のボールに保存角膜を縫いつけて,助手の手を煩わせながら採取するのが,実状のようである。しかし,綿球の大きさや,硬さの不適当や,助手と術者の意が思うように一致しなかつたりで,仲々やつかいなものであり,時として穿孔してしまう場合も少なくない。
 そこで,著者は固定の確実な,また術者以外の手を要せず,安心して牽引糸を引ける採取台を,工夫創作し,かつ円鋸創の深さが,非常に見やすいように設計したので,ここに紹介し各意のご使用を推奨する。

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眼科社会保険診療請求点数一覧表(甲表,乙表)

ページ範囲:P.76 - P.77

談話室

眼鏡商の検眼問題をめぐつて

著者: 内藤慶兼

ページ範囲:P.79 - P.82

 昨年暮,「眼鏡店(非医師)の行なう検眼行為および検眼広告,厳重取締りについての要求書」が,日本眼科医会より厚生省を通じて,眼鏡商側に提出されたが,これが本年3月21日,朝日新聞にも取上げられ,「メガネ屋の検眼に警告」として"眼科医以外のものにメガネの検眼をやらせないように,と厚生省に申し入れ""医師法違反"の記事が掲載された。
 そこで井上正澄博士,水谷豊博士の両理事に,眼鏡問題に関係の深い,東京百貨店コンタクトレンズ研究医会(百医会)会長,辻勇先生(京王,イワキ)と,同会顧問内藤(上野松坂屋)が銀座某所において非公式に会見し,その間の詳しい事情と,今後の対策についてお伺いした。以下はその会談内容である。

印象記

ミユンヘン国際眼科学会

著者: 鹿野信一 ,   中泉行正 ,   桐沢長徳

ページ範囲:P.83 - P.90

 どうも出発前より確実に学会印象記を頼まれていたのでないので,今,筆をとつてみると,何だか,本当に材料不足,怠けものの日記になつてしまう。読者の方に申訳ないことだが。
 まず,端的に一言で申上げると国際眼科学会という本会議は全く一つのお祭り,ceremonyであるということになる。このように全世界の人が集り,広い会場で,限られた時間に,一応多くの人に話させようとするとき,そこに掘りさげた議論を期待するのは土台無理ということであろう。5日に亘る本会議よりも,その前後におこなわれた多くは限られた人数で,いわば非公開の,日本でいうグループディスカッションがある。それは,数日同じホテルにとまり,同じ食事をしながら,缶詰生活をしつつ,意見をたたかわす幾つかのシンポジウムで,ミュンヘン付近のあちらこちらの市,町で開かれたが,この方が遙かに学問としてみのり多いものであつたようである。そのシンポジウムの1つ,生化学の部門には1日阪大の水川教授も司会をされている。いわばフリートーキングに近い形式のこの会は,興いたれば時間のことは念頭になく討論がつづく。欧米の人々には日頃この様な会議をもつ機会も多く互に顔みしりであり各々の持論を知つた上の討論であるが,我々日本人にはあああれが誰かというような初対面のことが多く,にのような会を立派に司会をされたことは大変のことである。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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