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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科21巻10号

1967年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・24

反対側の片麻痺を伴つた網膜動脈攣縮症

著者: 升田義次 ,   米村大蔵 ,   石坂直人

ページ範囲:P.1133 - P.1134

〔解説〕
 41歳の男。昭和39年10月頃より右眼の発血および視力低下と左側の上下肢の運動障害よりなる一過性の発作(約5分持続)に見舞われるようになつた。たまたま発作中に眼底検査をする機会にめぐまれたが(昭和41年7月1日),その折の右眼の眼底は次のごとくである。乳頭,黄斑部には著変はない(第1図)。下耳側動脈の第2分枝付近で中心窩真上で約5〜6乳頭径離れたところに白線化し検眼鏡的に血柱をまつたく認めない部分を見る。その長さは1乳頭径よりやや短い程度である。それより末梢の部分はやや細く血柱の色調は暗赤色である(第2図)。静脈に変化は認められない。周辺部網膜に混濁を認めない。その他の部分はほとんど正常のごとくに見えた。この発作は約5分で終つたが,発作後の眼底所見はほとんど正常であつた。もちろん,白線化した動脈の攣縮像は見られなかつた(第3図)。
 その後相変らず発作をおこしていたが,その頻度が増し発作の持続時間が徐々に延長する傾向があつた。昭和41年8月8目に発作を起こしたが,その際左上下肢の運動障害はそのまま回復せず,それより1週間後の8月16日には視力障害も回復しなくなつた。その際右眼の眼底には著変がなかつた。視力は右が指数弁,左が1.2でともに矯正不能である。9月5日には右眼の視力は完全に零となり眼底には視神経萎縮の像が見えてきた。

綜説

眼科の新薬について—大橋教授開講二十周年記念論文

著者: 船橋知也

ページ範囲:P.1135 - P.1152

 上記の演題で話をするようにと,昨年暮れ,中泉先生より御依頼を受けたのですが,元来斬つたり,貼つたりが好きな私は,効くこともあり,効かぬこともありと云う薬品をひねくりまわすことは性に合わないという理由で辞退これ努めたのでありますが,「慈恵は眼科講習会では毎度新薬の話をすることになつているから」と重ねての御要望,もだしがたく,御引受けした次第ではあります。ところが,テレビタレントのごとくに現われては消え,消えては現われる新薬のすべてを追いかけるには,あまりに非才の私,数種の薬物にとどめましたことを御許しいただきたく存じます。また,ただ,単に,この薬をこの病気に投与したら良くなつた悪くなつたという報告では物足りません。そこで,まず,動物実験から始めましたところ,これが案外と時間をとり,結局は従来のこの方面の報告と大同小異,龍頭蛇尾ならぬトカゲの頭にオタマジャクシの尻尾となつたことを御詫び申し上げます。

臨床実験

Fellow eye syndrome (その1)

著者: 小島克 ,   新美勝彦 ,   平光忠久 ,   大野忠良

ページ範囲:P.1153 - P.1160

I.緒言
 1眼に網膜剥離があり,第2眼に剰離を来たすものをいうのであるが,これらは剥離の両眼性の問題にも関連してくる。
 私どもは症例は少ないが,少しくこの点についてふれてみたい。

反対側の片麻痺を伴つた網膜動脈攣縮症—倉知教授就任25周年祝賀記念論文

著者: 升田義次 ,   米村大蔵 ,   石坂直人

ページ範囲:P.1161 - P.1164

I.緒言
 一過性の網膜動脈攣縮症例については,現在までかなりの報告1)〜5)がある。しかし,その網膜の変化(動脈の白線化,および,それより周辺部の網膜の混濁など)は,いわゆる一過性であるが,ためになかなか直接確認し難いようである。特にその変化を眼底写真にとらえ得た報告例は,われわれの調べたかぎり,日本では2例3)5)にすぎない。
 ここでは,網膜中心動脈のみならず,眼動脈を含む内頸動脈が,その支配領域の一部で攣縮をおこしたと思われる例に遭遇し,網膜中心動脈攣縮の発作時の眼底写真をとり得たので報告する。

種々の眼症状を伴つたRecklinghausen病の2症例

著者: 荒井優子

ページ範囲:P.1165 - P.1171

I.緒言
 Recklinghausen病(以後R病と略す)は,その臨床症状が多様多彩であるため各科領域で数多く報告されている。本症の眼症状に関しては,1863年Billroth1)が眼瞼のRankeneuromeとして記載したのが最初であり,本邦では1906年水尾2)が初めて眼瞼叢状神経腫として発表して以来これまでに70余例報告されている6)
 著者は最近眼症状を伴つたR病2例を経験し,うち1例は拍動性眼球突出,水晶体混濁,および眼底に特異な所見を呈しており,これらが特徴的であつたので報告する。

交通災害と視神経管骨折

著者: 林正泰

ページ範囲:P.1173 - P.1181

I.はじめに
 近年交通災害の増加に伴い,肉体にそのツメアトを遺され,悩む人も多い。
 特に,生命に直接関係する頭部外傷に関しては,救急処置法の進歩普及につれて,なんらかの後遺症を残すものが,将来さらに増加する心配が生じてくる。

カスガマイシン(農薬)の眼部組織に対する障害

著者: 小島宮子

ページ範囲:P.1183 - P.1192

I.緒言
 私は,さきに農薬ブラストサイジンによる眼障害を訴える患者が各地に発生したので,その眼障害性について,溶液,粉末の点眼,点入,ならびに溶液の前房,硝子体内注入実験を行ない,その成績について述べた。ブラストサイジンは1960年頃より水和剤および従来の水銀剤と混合したブラストサイジンM粉剤として,稲のいもち病に使用されてきたものであるが,眼障害を始め呼吸器や消化器の粘膜への障害が問題となつたからである。
 その後,農薬として使用し得る新しい抗生物質で,いもち病の特効剤として注目を浴びてきたのがカスガマイシンである。これは梅沢らにより開発されたもので,1964年,奈良の春日神社の土壌から分離された菌株M−338の培養濾液が,いもち病に有効であることが認められ,カスガマイシンと命名,またM−338株をStreptomycesKasugaensisと命名した。カスガマイシンも農薬として使用する時は,やはりブラストサイジンと同様に,カスガマイシン単体または水銀剤と混合して撒布される(第1表)。

視覚の生理的抑制に関する研究—1.正常視力のAmobarbitalによる脱抑制

著者: 筒井純 ,   高谷昌子

ページ範囲:P.1195 - P.1197

I.緒言
 PleopticsにAmobarbitalを使用するphar—macological pleopticsに関しては私どものクリニックからたびたび報告1)2)3)しているがこの薬の視覚に対する作用をいろいろの角度から検討するために今回は正常視力眼に対する効果を実験した。一般に神経機能は,生理学的に促進と抑制の2つの相反する作用によつてコントロールされ,大脳には抑制支配の根源となる皮質が存在することが知られている。私どもはAmobarbitalにより視覚が脱抑制を受けると正常視力がさらに高くなる現象を発見した。今回はAmobarbitalにより正常視力がいかに変化するかということを主体に述べるが,この現象の解明のためにさらに電気生理学的研究も必要で一連の研究を行なう計画である。

スリットランプ装置による水晶体曲率等の測定の一方法その2

著者: 中川治平 ,   木村健

ページ範囲:P.1199 - P.1202

I.はじめに
 昭和40年11月に行なわれた第1回光学眼屈折学会および昭和41年6,月の臨眼誌上で,中島らが「スリットランプ装置による水晶体曲率等の測定の一方法1)」を発表した。この方法が充分実用的であることは同論文によつて示されているが,数多くの測定例による検討が不足していた。今回昭和39年の日眼会誌に木村他によつて発表された,「同一学童に於ける眼屈折要素の推移2)」に用いられた眼球のCross Section写真で,前記方法による測定計算を行ないPhacometryの方法による結果との比較を行なつて,スリットランプによる方法が条件を考慮すれば有効な方法であることをたしかめた。

コンドロイチン硫酸加FAD点眼液の使用経験

著者: 樋渡正五 ,   大野佑司 ,   宇田重員 ,   鈴木武徳 ,   山之内守 ,   原正義

ページ範囲:P.1207 - P.1210

I.緒論
 ビタミンB2が眼科領域で結膜角膜疾患その他に有効なことはすでに良く知られた事実である。またFADは生体内にとり入れられたビタミンB2が終局的にその生理作用を発揮する補酵素としての活性ビタミンB2として周知のところである。一方,またコンドロイチン硫酸は生体結合織基質の重要成分で,コンドロイチンそのものは初めて角膜から単離されたものであつて,本剤が角膜諸疾患治療の際に必要であろうことはつとに知られ,実際によく利用されてきたところである。VB2の中で最も活性のFADおよびコンドロイチン硫酸の両者を別々に使用(併用という形で)して,眼瞼結膜角膜疾患に著効のあることは,私どもの経験してきたところであるが,今回この両者の合剤であるムコファジン点眼薬の提供を受け,試用したのでその結果を述べてみたい。

プラスチック繃帯剤の眼科的応用

著者: 広瀬泉

ページ範囲:P.1213 - P.1217

I.緒言
 プラスチック繃帯剤ノベクタン(Nobecutane吉富)は外科,整形外科,皮膚科などで,かなり利用されているが,眼科領域における応用は,まだ報告をみないようである。
 著者は過去約3年間本剤を,主として眼瞼の手術に利用し,無眼帯両眼同時手術,片眼失明者の他眼無眼帯外来手術による入院の省略,通院期間の短縮,時間的経済的負担の軽減を計るなど利点を確認したので報告する。

銀海余滴

念には念を入れ

著者: 初田博司

ページ範囲:P.1160 - P.1160

 「先生,うちの子が,物が小さくみえるなんて変なことを言いだすんですが,ほんとにそんなことつてあるもんでしようか。」
 眼底出血で通院中の母親が突然こんな質問をぶつけてきた。

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眼科治療基準点数と疑義解釈(乙)

ページ範囲:P.1204 - P.1205

手術
 手術後の洗眼,軟膏剤点眼,眼帯使用については,手術時のものは手術料点数に含むものとし,その後のものは眼科処置の項によるものとする。
(昭25.6.10,保険発105)

眼・光学学会

Prevost (イタリア製クセノン光凝固機)の経験

著者: 野寄達司 ,   馬場賢一 ,   紺山和一

ページ範囲:P.1219 - P.1220

 現在わが国で使用されている光凝固機は主として西独ツアイス製クセノン光凝固機である。クセノン高圧アークランプは光源として,きわめて安定度が高いので,この凝固機は臨床的にも広く応用されている。しかし一方に価格が高く,型が大きく,移動性が少ないなどの欠点や,観察照準系に不満足な点がある。Prevostはイタリア製クセノン光凝固機で,ツアイス型の欠点を補おうといろいろと工夫をしてある。著者らは約1年前から,本機を使用する機会を得た。光学系の性能は西独製に劣るが,価格も安く,型もやや小さく,移動性もあり,適応症を選べば実用に供し得ることがわかつたので報告する。
 Prevostは1958年頃に,ミラノ大学の指導により製作されたものであるが,詳細なデータは不明であり,また現在ではあまり使用されていないようである(第1図)。その理由の主なものは観察系の不備によると思われる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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