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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科21巻3号

1967年03月発行

雑誌目次

特集 第20回日本臨床眼科学会講演集 (その2)

内斜視と縮瞳剤—第1報その臨床応用と実験的考察について

著者: 石川哲

ページ範囲:P.283 - P.300

I.序論
 縮瞳剤(miotics)がある種の内斜視に効果があるという報告は既に正896年Javal35)によつてピロカルピン,エゼリン等を使用した報告がなされているが,1949年Abraham1)が系統的な使用結果を発表する迄は余り注目されていなかつた。最近強力な抗コリンエステラーゼ剤が出現するにおよび内斜視治療法の最も重要な方法の一つとして此等薬剤の使用が,主として米国において盛んに行われている1)−6)8)−12) etc。主な縮瞳剤は,D.F.P.(di-isopropylphlurophosphate)1)−5)8)13)17)26)40)45)60)66)67)69),Demecarium bromide (Tosmilen又はHumorsol)47),Mintacol47)53),Arminum,Echothiohate phosphate30)(Phospholine io—dide)6)30)50)47)52)54)57)59)63)等である。
 今回筆者は,この中からTosmilenおよび,Phospholine iodide (以下P.I.と略)の2種を遠視を有する(第1,2表参照)内斜視患者に使用し,その結果を中心として,本薬剤の内斜視に対する使用法,診断法,使用後の治療法,副作用,作用機序,等につき考察してみたいと思う。

糖尿病性および高血圧性網膜症における眼球結膜の微小循環

著者: 谷口慶晃 ,   松井弘治

ページ範囲:P.301 - P.308

I.緒言
 糖尿病や高血圧の際に,細小血管系に種々の障害がおこり,糖尿病性網膜症や高血圧性網膜症は勿論,腎症なども合併してくることはよく知られている。
 眼球結膜の血管を観察し,その微小循環の状態を知ることは,極めて容易であり,自然のままの状態で検討し得る点など他の組織と比較して利点が多い。それでKniscly1)(1947)が始めて球結膜細小血管内の赤血球集合現象を観察して以来,現在まで各種疾患の微小循環動態の特異性を確立しようとして,いろいろの研究が行なわれてきた。

いわゆるBrittle Diabetesにおける眼症状の検討

著者: 高久功 ,   勝瀬敏臣 ,   千葉美和子 ,   後藤由夫 ,   菊池仁

ページ範囲:P.309 - P.318

I.はじめに
 糖尿病性網膜症の発症および進展に関し,糖尿病のコントロールの良否が如何なる意義を有するかについては,以前から種々の見解がある所であるが,近年,我々1)2)はじめ多くの研究者3)4)によつてコントロールの良否と網膜症の発症進展とは有意の関係があることが漸次明らかにされ,ほぼ一般に認められるに至つた。しかしこれらの事実は,多くは多効の症例についての統計的処理により得られたものであるため,個々の症例においては,これらの見解と一致しない経過をたどるものも少くなく,なお,種々の問題が残されている。
 なかでも,いわゆるBrittle Diabetes (以下brt.D.と略す)においては,その血糖のコントロールが極めて不良であるにも拘わらず,その網膜合併症はじめ血管合併症は,少なくかつ軽度であるとの見解3)があり,本年日眼総会において,勝瀬2)がなした血糖の変動の極めて大なるものにおいて,網膜症の発生進展が大であるとする報告に対し,福田により見解をとわれた所である。我々はいわゆるbrt.D.においても罹患期間の関与が網膜症の発現と関係するとの見解をもつているが,事実,brt.D.における眼症状の分析を行つた報告例は,Alivisates等5)のそれを除いてほとんどない。

新生児における視覚誘発反応

著者: 横山実 ,   谷口守男 ,   米倉欣彦 ,   富沢康二 ,   森本英雄

ページ範囲:P.319 - P.324

I.緒言
 最近,視覚誘発反応(VER)の基礎的,臨床的な研究が盛に行われるようになつたが,現在なお不明な点が多い。種々の疑問を解くために生後間もない新生児のVERを観察,検討することも一つの方法であり,それは又,臨床的な応用面に寄与することにもなる。新生児VERについては既にEllingson6)7)8),Hrbek及びMares9)らの可成り広汎な研究もあるが,著者らも最近の約1年間に,主として正常新生児のVERについて観察を行つて来たのでその結果を報告する。

眼精疲労に関する心身医学的研究

著者: 加藤謙 ,   松井瑞夫 ,   高慶二 ,   田代忠正

ページ範囲:P.325 - P.337

I.まえがき
 われわれは1),第69回日眼総会において,ほぼ無作為にえらんだ,眼精疲労を主訴とする症例に向精神薬剤Diazepamを投与し,その薬効から原因を検索するという診断的治療を試みた成績について報告した。その成績の概要は,著効および有効を含めて75%,無効25%であり,このとき,屈折異常の有無および屈折異常に対する矯正の適・不適により,薬効に特に差がみられなかつたというものであつた。以上の知見にもとづき,眼精疲労を主訴とする症例に対しては,身体因に対する検索および処置と平行して,心的機制に対する検討と処置がきわめて必要であることを強調したのである。
 今回は,眼精疲労を主訴として,駿河台日大病院眼科外来をおとずれた症例のうち,われわれ眼科医の面接によつても心的機制の関与をうかがい知ることのできるような症例に対して,神経科医の診断を依頼し,その診断結果から,眼精疲労の発現に,どのような心的機制が関与しているかを検討した。さらに,眼疲労を訴える者が多い職場において,各種の調査を行ない,その結果から眼疲労発現に関与する諸因子について検討を行なつた。

大学生の視力

著者: 大江謙一

ページ範囲:P.339 - P.340

I.緒言
 都内の大学生約18,500名について視力測定を行ない興味ある結果をえたので,その成績を述べる。

プルキンエ・サンソン像の変化より見た調節動態の記録

著者: 加部精一

ページ範囲:P.341 - P.352

I.緒言
 近視発生機転には種々の要因が考えられているが,過度の近業が後天近視の重要な成因であることは周知の通りである。従つて近視の成因に関して調節作用の方面より追求することは最も重要かつ基本的な課題である。近視の調節機能についての研究は,Hönig1)により調節力が屈折異常によつて異なることが述べられて以来,江原2),田上2),矢野3),大塚4)氏らもこれを認めている。更に近年,調節時間の分析を試みて萩野5),鈴村5),佐野6),堀7)氏らは調節緊張と弛緩との間に屈折状態により特別な関係があることを報告し,水川8)氏らは調節時間曲線に特別な変化を見出している。しかし,それらの業績による調節力とは専ら水晶体の変形度を表わしたものであり,調節時間は水晶体の変形の開始より終結までの時間を表わしたものであつて,調節の一断面の追求に過ぎない。調節の原動力となる毛様体筋の収縮力,水晶体の張力,脈絡膜の牽引力等については生体眼で測定することは出来ないが,しかしその総合力学的変動によつて生ずる水晶体の動態から個々の力量を推測分析検討することにより調節機能の本態をある程度追求することが可能である。
 なお,直接水晶体前面曲率半径の時間的変化の実測は殆んど行なわれていないが,私は,ここにPurkinje-Sanson像を映画撮影し,比較的正確にその動態をとらえることが出来たので,時間—水晶体前面曲率半径曲線の有する意味について一考察を加える。

摘出水晶体および核の曲率半径について

著者: 小沼衛

ページ範囲:P.353 - P.357

I.緒言
 眼屈折要素についての計測は,従来いろいろ行なわれているが,水晶体に関して計測した報告は調節に伴う変形等のためか余りなく,最近は主にPhacometry1)2)により計算されたものが散見される位である。特に水晶体核について計測を行つた報告3)6)は,屈折率や前後径についてはみられるが,曲率半径に関してはみられず模型眼としての数値が引用される程度である。私は眼の老化に伴う屈折変化について関心をもち,前回は老人の角膜曲率半径について調べ報告した4)が,今回,老人水晶体,特に核の形態について調べたいと思い,老人性白内障の手術により摘出した水晶体と核を用いて,赤道径,前後径,前面曲率半径,後面曲率半径について計測した結果,若干の知見を得たのでここに報告する。

試作自動記録暗順応計による暗順応の検討

著者: 冨井宏

ページ範囲:P.359 - P.361

I.緒論
 すでに著者はE.L.板を発光面に用いた暗順応計について発表したが(日眼,69:162,1965)これによると,従来暗順応計には必ず用いられていた光学的,又は機械的な調光装置は不要となり,全く電気的に発光面の明るさが制御できる。今回,更にすすめて,自動記録式暗順応計を試作し,ある程度満足出来る結果を得たので,これを用いて正常者の暗順応を測定し,その測定法等について二,三考按したのでここに発表する。

天然白色螢光灯下における色盲表検査について

著者: 福田忠俊

ページ範囲:P.363 - P.364

 色盲表による色覚検査では,その照明によつて色盲表に色ずれが起り,検査成績が著しく変る。天然昼光以外の人工光源で,演色性の良い光源として,私は,先にキセノン灯を使つて色盲表による色覚検査を行い,使用に耐える事を報告した。しかし,キセノン灯は非常に高価で一般に使用出来ない。そこで,現在広く使用されている螢光灯の中から,今回,演色性が良いと考えられる天然白色螢光灯(東芝製,FL−20 S・W-DL型・色温度,4600°K,演色評価効87)を使つて,アノマロスコープの判定を基準にして選んだ,被検者18名(第1色覚異常者7名,第2色覚異常者11名)を対象に,色盲表検査を行い,天然昼光下に於ける検出成績と比較検討した。使用した色盲表は,石原氏色盲表国際10版,大熊氏色盲色弱度検査表,東京医大式色覚検査表初版,の三種である。
 石原氏表の検出成績は,天然昼光下に於ける成績とほぼ一致した。この事は,石原氏表の色斑の色ずれが,Pittの混同線上に近づくから,天然昼光下に於ける検出及び分類表の読みと同一になると考えられる。

臨床面から見た最近の眼鏡レンズの検討

著者: 戸塚清 ,   西川信子

ページ範囲:P.365 - P.368

I.緒言
 普通の眼鏡は,コンタクトレンズと違つて,掛けたり,外したりが誠に容易,簡便で,多くの人に愛用されている。しかしあからさまに顔に掛けるという条件は避けることが出来ない。眼鏡を掛けているという事は一目瞭然分つてしまうし,その人の顔の感じもある程度変えてしまう。これは宿命的な特徴である。そこで眼鏡として十分な機能を備えている他に,見た感じも出来るだけ好ましく保ちたい願望が生じて来る訳である。
 私共は,昭和40年末の逓信医学誌上に,眼鏡と顔との関連について論文を書いた。そこでは主として眼鏡枠を中心にして,これと顔との関係を美学的見地から論じた。今回は眼鏡の働きをつかさどる本命である眼鏡レンズを主題にして,これと顔や眼との関係,更に眼鏡レンズの最近の進歩,変革等について色々申し述べて見たいと思う。

脳性麻痺児の眼障害について

著者: 丸尾敏夫 ,   久保田伸枝

ページ範囲:P.369 - P.372

I.緒言
 脳性麻痺は肢体不自由の主要原因であり,神経学的に極めて重要な疾患である。また,とくに最近肢体不自由に精神薄弱の合併した重症心身障害児が社会問題として取り上げられ,大きな関心を呼んでいるが,脳性麻痺はそのなかでも重要な部分を占めている。脳性麻痺は種々の原因による脳障害に起因するため,種々の眼障害を起こすことが予想され,これを眼科の立場から検討する必要があることはいうまでもない。従来,この方面の研究は全く行なわれていなかつたが,6年前私どもは整肢療護園に入園中の脳性麻痺児の眼症状について調査を行ない,その結果を報告した。今回は東京都内最大の脳性麻痺施設である東京都立北療育園に入園および通園中の脳性麻痺児について,詳細な眼科的検査を行なつてみた。さらに,施設により差異のあることを考え,脳性麻痺児の眼障害の実態を正確に把握するため,東京都内の主要な肢体不自由児施設および重症心身障害児施設についても調査を行なつた。その結果,脳性麻痺児の眼障害の実態,およびその問題点が明らかになつたので,それを報告してみようと思う。

新しい眼窩圧計について

著者: 川畑隼夫

ページ範囲:P.373 - P.375

I.緒言
 眼窩圧測定は眼窩内病変を知る上の重要な検査法の一つであるが,本邦においては,青池,植村氏等の2,3の業績があるに過ぎない。
 著者も植村氏と同様にCopper氏等にならつてOrbitonometerを試作し,眼窩圧測定を試みて来た。その結果従来の器械は使用法は簡便ではあるが,2,3の器械上の欠点を見出した。そこで従来の器械よりもより正確な測定値を得られるように,眼底血圧測定用のCAPメーターに,眼球沈降量を測定する為のトランスヂューサーを附加し,眼球への加圧量と眼球の沈降量との変化を電気的に取り出して,同時に連続的に記録させる方法を考案した。

幼児に見られる眼球突出について

著者: 三根亨

ページ範囲:P.377 - P.385

I.緒言
 眼球突出は高度近視,全眼球炎,眼球腫瘍等の眼球自体の病変あるいは眼窩の病変等の際に見られる以外にもBasedow氏病をはじめとする全身疾患の際にも見られる症状である。而してこれが成人にあらわれた場合には一般に全身状態には重篤な変化を及ぼさないものであるが,小児殊に幼児に眼球突出が見られる場合は生命の予後が極めて不良である。
 以下最近経験した症例を中心に幼児に見られる眼球突出についてのべる。

Scheie手術の成績

著者: 三国政吉 ,   岩田和雄 ,   福地裕子 ,   黒川美智子 ,   藤井青 ,   高橋和也

ページ範囲:P.387 - P.404

I.緒言
 1958年Scheieが新しい濾過手術として強膜焼灼を併用する虹彩周辺切除術Peripheral Iride—ctomy with Scleral Cauteryを発表して以来,Scheie's Procedureとして米国においては広く用いられている。
 私共は1962年その追試成績を報告した。最近わが国においても新しい手術として広く試みられるようになり,手術成績に関する報告がみられるようになつた。

北海道内に発生したSMON患者の眼症状

著者: 杉浦清治 ,   越智通成 ,   酒井忠一 ,   二神種忠 ,   青木功喜 ,   松田英彦 ,   佐竹幸雄 ,   工藤英夫 ,   山賀力 ,   有賀和夫 ,   有賀文伯 ,   小山内永三 ,   奈良尚久

ページ範囲:P.409 - P.416

I.緒言
 近年日本各地から,下痢,腹痛等の腹部症状を前駆とする脳脊髄炎(いわゆるSMON)の報告が相次いでなされ,本症の独立性に関して内科学,神経科学,病理学,微生物学等の立場より色々検討されている。本症には又眼症状を伴う事があるために,眼科学的立場からも検討が加えられつつある。北海道においては,昭和33年以来釧路市を中心として又昭和37年以降は室蘭市周辺にも本症が多発し,更にその他の地域にも散発的に発生を見ている。今回我々は,この内の105例について眼科的検査を行い,本症に伴う眼障害の病型について検討したので,ここに報告する。

網膜色素変性308例についての統計的観察

著者: 今泉亀撤 ,   亀井正明 ,   吉田玄雄 ,   猪股孝四郎

ページ範囲:P.417 - P.424

I.緒言
 網膜色素変性の成因,従つてその本態については,未だ不明の域を脱し得ない。然し,近時,本症に関する優れた研究業績が多くの人々によつて報告されつつある。
 当教室においても,既に昭和25年以来,社会的,地理的あるいは遺伝的関係から本症発生の頻度が特に高いと思われる岩手県の全域にわたつて綿密な調査を行い,本症の早期発見に努め,あらゆる角度からの諸検査を重ねつつ,その治療法の確立に努力し続け,機会あるごとにその成果を発表して来た。

眼筋無力症の一治療法

著者: 牧内正一 ,   吉原正道 ,   垣内治郎

ページ範囲:P.425 - P.436

I.緒言
 眼筋無力症の起因については,Dale1)氏の神経筋化学伝導説を始めとして,内分泌説などがあるが,未だ明らかにされていない。しかし最近,田野辺氏1)2)3)4)は30数年にわたる本症の研究から,眼筋無力症は,随意的眼球運動に際して生理的アセチルコリンが遊離する時,それに随伴して生産されるクラレ様物質により,眼筋終板が閉塞され神経よりアセチルコリンを通じての眼筋へのインプルス伝達が阻害されるために起るものと推察すると種々の観点をあげて述べた。また,石川氏5)は,筋無力症について電気生理学的研究を行い,その筋電図特性を明らかにし,眼筋無力症と進行性外眼筋麻痺は全く別個の疾患であると述べている。
 一方,本症に対する治療法としては,Walker氏が1934年に重症筋無力症に対して,エゼリンが有効なる事を述べて以来,我国でも布村氏6)7)がプロスチグミンによる治療実験を行なつたのを始めとして,大槻氏8),神谷氏9)は,ワゴスチグミンの有効である事を述べ,また,谷氏10)は,D.F.Pを用いて,ワゴスチグミンよりも筋力回復の程度は弱いが,効果の持続時間が長かつたと報告し,この様に抗コリンエステラーゼが本症治療の主体となるに至つた。その他,清水氏11)等は,アセチールコリン,ビタミンB1の脊髄内注入で有効であつた例を報告し,日隈氏12)は,副腎皮質製剤およびビタミンB2を用い,持続効果を示した例を報告している。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.364 - P.364

第74回巴里国際眼科学会のお知らせ
1.会期昭和42年5月7日より11日まで5日間
 2.会場Centre National d'ophthalmologie desQuinze-Vingts 28, Rue de Charentonaris-XII°.

眼科検査基準点数と疑義解釈(乙/甲)

ページ範囲:P.406 - P.407

屈折調節検査12
眼鏡処方せんを交付したとき加算8.6
1)患者が処方せんを求めなくとも,検査料は認められる。(27.5.26,保険発137)

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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