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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科21巻4号

1967年04月発行

雑誌目次

特集 第20回臨床眼科学会講演集(その3)

眼科・耳鼻咽喉科相互紹介患者の統計的観察

著者: 池田一三 ,   田辺幸行 ,   宇野能史 ,   砂田勲 ,   吉田愿

ページ範囲:P.453 - P.460

I.緒言
 俗に「目と鼻の間」といわれるように,目と鼻は解剖学的にも密接な関係にあるため,両科の疾患には関連性が大きく,眼科と耳鼻咽喉科の共同観察を必要とする機会にしばしば遭遇する。そこで,われわれは昭和36〜40年の5年間における大阪市大眼科受診患者について,眼科から耳鼻咽喉科へ,逆に耳鼻咽喉科から眼科に,両科において疾患に関係ありとして,紹介され受診した患者につき,主として眼科,耳鼻咽喉科診断および相互紹介時の主訴等を中心として統計的に観察したので,その成績を簡単に報告する。

愛媛県下における視力障害者に対する巡回診療成績

著者: 山上公夫

ページ範囲:P.461 - P.465

I.序文
 愛媛県においては昭和24年に盲人検診を行い,受診患者約1400名,その中白内障患者30名に対して手術を行つた報告がある。
 その後中断していたが昭和37年以来再開され,当科では愛媛県の依頼に応じて視力障害者を対象に県下各地に出張検診を行ない,視力改善可能者に対して手術を行つて来た。

可動性義眼台の予後

著者: 山本孝子 ,   柴田濤子

ページ範囲:P.467 - P.470

I.はじめに
 眼科医にとつて,眼球摘出および内容除去術といつたことはできるだけ避けたいことである。止むを得ずしてその様な手段を採つた患者が,肉体的な負い目だけでなく,容貌面でまで劣等感を持つてはいないかと気がかりなことである。
 この度,厚沢義眼店(東京・本郷)の協力を得て,アンケート形式による可動性義眼装用成績を求めた。その成績は第1,2表のごとくである。

逆内角贅皮,小瞼裂および眼瞼下垂を伴なう症候群とその形成手術

著者: 飯沼巌 ,   嶋本寿

ページ範囲:P.471 - P.475

I.緒言
 先天性に,逆内角贅皮,小瞼裂および眼瞼下垂を伴なう症候群は,この外に,多くの先天性異常を伴なうものの多いことが知られている。ところが,この患者の顔貌を著しく奇妙なものにしているのは,表題にかかげたこの3主症候である。従つて,その形成手術もこれ等の3主症候を対象に行なわれている。
 私共は,最近,父子に見た本症候群患者のうち子の症例に対して眼部の形成手術を行なう機会があつた。勿論,その対象として,この3主症候を修正するごとくした。

Tay-Sachs氏病の1例

著者: 栗本晋二 ,   福永喜代治

ページ範囲:P.479 - P.485

I.緒言
 Tay-Sachs氏病はWaren Tayが1881年に発見し,さらにBernard Sachsが1887年にこれを詳細に記載,1897年に家族性黒内障性白痴(Idiotia familiaris amaurotica)として発表したものである。著者らは最近本症の例を臨床的に観察したところ,脳圧亢進を認めたので脳室心房吻合術を施行した。術後経過良好であつたが,生後22ヵ月で死亡した例を経験したので報告する。

Sjögren-Larsson症候群の1例

著者: 西郷逸郎

ページ範囲:P.487 - P.491

I.緒言
 本症候群は,Sjogren, T.とLarsson, T.1)が1957年に初めて記載したもので,精神薄弱,先天性魚鱗癬様紅皮症および先天性痙性麻痺を3主徴候とし,時に,黄斑部の変性を伴なうことがあるとされる。その後,同様な症例が,世界各国から報告され2)〜19),文献上記載の明らかなものが,既に63例に達しているが,今回の症例は,本邦においては,初めての報告である。

頭髪異常(先天性毛髪疎少症)の兄妹に見られた眼底異常の1例

著者: 保倉賢造 ,   水田茂 ,   前田一美

ページ範囲:P.495 - P.500

I.緒言
 眼底殊に黄斑部の変性に関しては,原発性黄斑部疾患としてHutchinson & Tay1)が1875年に滴状脈絡膜炎(chorioiditis gutata)を初めて報告し,Haab2)は1885年に老人性黄斑部変性症(Erkrankung der Macula lutea)の1例を記載しており,Batten3)は1897年兄弟2人に14歳時に始つた対象性黄斑部疾患(Symmetricaldisease of macula)を報告し,Doyneは18984)年蜂巣状脈絡膜炎(Honigwaben ähnliche Cho—rioiditis)の1例を報告している。即ち,黄斑部は網膜のうちでも,解剖学的,生理学的に特殊な部分であるので,独立した疾患も多く,又網膜一般の疾患の場合,並びに他の全身的な疾患の場合にしばしば影響を受けるのである。
 ついで1905年Best5)が一家系59人中8人に認められた停止性の黄斑部疾患を報告し,先天発育異常(augeborene Entwicklungohemmung)による遺伝性黄斑疾患(hereditäre Maculaaf—fection)を記載した。その後,1909年Stargardt6)は12〜14歳頃に発病し,両眼の中心窩に黄灰色乃至燈黄色の小斑が現われ,その数が次第に増加融合して,1/2〜2乳頭径大の変性巣をつくるものを報告した。

甲状腺癌の脈絡膜転移の1例

著者: 武村肇 ,   浅野弘子 ,   石坂弥三郎

ページ範囲:P.501 - P.505

I.緒言
 転移性脈絡膜癌については,従来しばしば報告されているが,その原発巣は,大部分が乳癌で,最近これに肺,気管支の癌が増加の傾向を示しているが,甲状腺癌からのものは,極めて稀で,我が国では,小口の1例のみの様である。我々は,甲状腺癌から転移したと思われる脈絡膜癌の1例を経験したので,ここに報告する次第である。

先天性眼筋異常(Stilling-Turk-Duane's Syndrome)の1家系

著者: 上林茂 ,   市川宏 ,   谷宏 ,   牧治 ,   矢地通子 ,   海野忠子

ページ範囲:P.507 - P.512

I.緒言
 先天性眼球運動障碍の一つである,眼球後退運動症は1879年Heuckによつて初めて報告され,以来,1887年Stilling,1899年Turk,1905年DuaneによつてStilling-Turk-Duane症候群として総括されたものである。
 我国に於ても1900年,井上の報告以来多数の報告があり,最近原田氏は筋電図による研究の分野を開いたが,遺伝疾患であることを除いて本態は明らかにされていない。

末梢血液中に著明な好酸球増多症を伴なつた眼球突出の2症例

著者: 野中富夫 ,   田川貞嗣 ,   相沢芙束 ,   香春嶺二 ,   浅野裕 ,   深江幸治 ,   小野和子 ,   森田克彦

ページ範囲:P.513 - P.518

I.緒言
 我々は,眼球突出および顎下部腫脹と血液中に著明な好酸球増多を認め,顎下部および眼窩内組織について病理組織学的検索を行つた結果,軟部好酸球性肉芽腫と診断された興味ある2症例を経験したので,ここに報告する。

副鼻腔から眼窩に侵入した形質細胞腫

著者: 田村璋夫 ,   佐藤豊明 ,   南谷輝明 ,   矢部昂

ページ範囲:P.519 - P.522

I.まえがき
 周知のごとく眼窩に発生する形質細胞腫には,多発性骨随腫の部分症として見られる骨髄性形質細胞腫(又は骨髄腫)と,骨髄外性(孤立性)形質細胞腫の2型がある。前者はあえて珍しいものではなく,わが国においても約10例の報告があるが,後者についてはわが国耳鼻科領域では約20例の報告があるにも拘らず,眼科領域では未だ記載が見当らない。
 私共は上顎洞から眼窩に侵入した骨髄外性形質細胞腫と思われる1例を経験したので,簡単に報告する。

篩骨および蝶形骨洞拡大による失明例

著者: 小原実

ページ範囲:P.523 - P.527

I.緒言
 眼と副鼻腔とは解剖学的に密接な関係があり,既に19世紀末期より幾多の報告がある。就中副鼻腔疾患によつて起こされる視神経障害の報告は多いが,我々は右側篩骨洞および蝶形骨洞の異常な拡大を有し且つ同側の視神経萎縮を見た症例に遭遇し,鼻科的手術により視神経管を開放して,これら骨洞の形態,粘膜および骨壁の病理学的検索を行い,今日未だ解明されない鼻性視神経炎の原因探求の一助となればと考え,ここに報告する。

全層角膜移植術における移植角膜片の組織呼吸に関する実験的研究

著者: 広瀬欣一

ページ範囲:P.529 - P.537

I.緒言
 角膜移植は1789年Pelliere de Quengsy20)が人工角膜移植を行つたのが始まりで,1928年Fil—atov20)により屍体より採取した角膜による移植が成功して以来飛躍的に発展した。
 我国に於ては1905年水尾氏1)の報告以来,三宅2)市川3),畑6)氏等の報告があり,1950年中村康氏12)の報告以来急速の進歩をとげ,最近では桑原教授19)20)等により角膜保存法に関するすぐれた研究が行なわれ,尚一層発展の途上にある。

乳頭,黄斑領疾患における螢光写真像

著者: 小島克 ,   渡辺郁緒 ,   新美勝彦 ,   野崎尚志

ページ範囲:P.539 - P.554

I.緒言
 螢光眼底撮影法は1961年にNovotny&Alvisにより報告されてより,広く一般的に臨床検査法の一つとして利用され,眼底病変の病理学的な意味づけに重要な地位をしめる様になつた。
 我々の教室に於ても,数百例のCaseに本方法を適用し,その結果の一部は,既に報告して来た。

光凝固法による糖尿病性網膜症の治療

著者: 谷道之

ページ範囲:P.555 - P.559

I.緒言
 糖尿病性網膜症,殊に急速に進展増悪し,網膜前出血,硝子体出血をくりかえす症例にたいして従来いろいろな治療法が報告されているが,的確なものはなく,結局は失明状態になつてしまうものが決して稀ではない。
 今回,このような症例にたいして,光凝固(東独ツァイス製光凝固装置を使用)を試み,その効果を検討すると共に,凝固前後における病巣の変化を螢光眼底撮影法で追跡してみた。

Betamethasone点眼の家兎眼の房水動態およびOcular Rigidityに及ぼす影響について

著者: 川西恭子 ,   北沢克明

ページ範囲:P.565 - P.569

I.緒言
 コルチコステロイドの点眼および全身投与により眼圧の上昇をみたというMcLean1),François2),Goldmann3)等の多くの臨床報告が注目され,最近コルチコステロイドの点眼によつて生ずる眼圧の上昇反応およびその房水動態に及ぼす影響について多くの優れた実験報告が出されている4)〜13)26)〜30)。また実験動物を用いてのステロイド投与による眼圧の反応性についての報告は少なく14)〜16),その成績もまちまちである。今回,われわれは家兎眼に0.1%Betamethasoneを点眼し,眼圧および房水動態に関して些かの知見を得たのでここに報告する。

近視の進行と水晶体乱視

著者: 所敬

ページ範囲:P.571 - P.579

I.緒言
 近視の成立機転につき従来より種々の説がある。即ち,眼軸延長を起すものとして,眼圧亢進ブリッケ氏筋機能不全,アチドーチス,視束破壊前屈に依る眼球加圧,内分泌異常,角膜乱視,角膜片雲,眼窩構造異常および鞏膜薄弱などの説である1)。これらの説の1つである乱視と近視との関係,特に,角膜乱視との関連は現在まで多数の報告がなされているが,これと密接な関係をもつと思われる水晶体乱視は,実際の測定が困難であるため,充分な検討がなされていない現状である。今回,私はPhacometryにより垂直および水平方向の測定を行い,実際に水晶体乱視を算出し,これら水晶体乱視が近視の進行にいかなる影響を与えるかを静的な一断面での観察と共に,経過を追つた2時点および3時点での動的観察を含めて検討する事が出来たので,ここに報告する。

翼状片の研究—第5報術後抗腫瘍剤治療を行なつた翼状片患者の長期観察

著者: 村上道男 ,   森茂 ,   国友昇

ページ範囲:P.580 - P.580

 われわれはすでに第3報,第4報において翼状片の新しい治療法として抗腫瘍剤を局所的に使用して再発を防止する方法を発表した。
 今回はこの治療法(マイトマイシンC点眼による方法)の長期観察成績を報告する。

ショーグレン症候群に関する研究

著者: 河瀬澄男 ,   桜井正則

ページ範囲:P.581 - P.583

I.緒言
 ショーグレン症候群は我が国に於いてもここ十数年の間に多くの報告例があり板垣氏須田氏等の詳細な研究がなされているが未だにその病因は不明であり診断及び治療法も確立されていない。我々は最近7例の本症候群患者の検索を行い次の様な結果を得た。

先天性色覚異常の診断基準について(1)

著者: 馬嶋昭生

ページ範囲:P.585 - P.591

I.序
 色覚異常に関する研究の中で,ここ数年来異常者の社会的適性の問題に強い関心が持たれて来た。色覚異常の信頼するに足る治療法のない現在異常者の職業ないしは作業適性を研究すると共に不当な社会的制限を無くし,更に進んで社会環境を改善し異常者の不利を少くするのが我々臨床医の義務であろう。幸いに進学,就職等においても徐々に不当な制限が除かれてゆく傾向があるが,同時に精密検査,適性判定を希望し診断書を求める異常者が多くなつている。
 学校保健法については,昭和41年7月,日本眼科医会学校保健委員会から「眼科学校健康診断とその事後措置についての指導基準」1)が発表されたことはまことに喜ばしいが,色覚検査の項目にはまだ不備な点があり再検討されねばならない問題が残つている。

瞳孔反応とグルタチオンの関係

著者: 小口昌美 ,   清水由規 ,   鈴木敦 ,   兼子博人 ,   朝広信彦

ページ範囲:P.593 - P.595

I.緒言
 私共は最近グルタチオン(GSH)を角膜疾患および白内障患者に適用し,ある程度の効果を得た事を報告した。この際白内障患者の経過観察中に散瞳検査を行つた場合,GSH点眼や注射を行つていた患者の中で瞳孔の散大の速度が促進されている者があるのに気付いた。そこでGSHが瞳孔散大の何等かの促進作用に関係があるのではないかと考え,次の実験を行い二三の見るべき結果を得たので報告する。

銀海余滴

犬棒かるた

著者: 初田博司

ページ範囲:P.506 - P.506

 戦前派,戦中派の諸士にはおなじみの犬棒かるたというのがある。犬も歩けば棒にあたるという「い」から始まつて,一字一字について格言めいたものが取りあげられていて,スルメの様に噛みしめると仲々味がでてくるのが妙だ。
 更にその一つ一つについて眼科医の眼を通じて新しく意味づけしてみると,果してどんなことになつてくるか,本来の意味にとらわれずに勝手にうんと考えを拡げてみるのも一興,忙中閑ありということで,諸君もひとつ考えてみませんか。タイトルは犬棒かるたの中のもの一つ,「へ」でも「に」でもなんでもいいから一筆ふるつてご投稿下さい。

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眼科検査基準点数と疑義解釈(甲)

ページ範囲:P.562 - P.563

058精密眼底検査41
1)精密眼底検査は片側も両側も同一点数で41点である。
2)倒像検査以外の眼底検査,すなわち直像鏡,大検眼鏡,細隙灯等による眼底検査(両側)をいうのであるが,倒像検査による網膜裂孔計測も精密眼底検査の41点により算定する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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