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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科21巻5号

1967年05月発行

雑誌目次

特集 第20回日本臨床眼科学会講演集 (その4)

家兎眼底における光凝固—その1:光凝固斑の螢光造影所見

著者: 佐藤清祐

ページ範囲:P.603 - P.612

I.緒言
 Meyer-Schwickerathが考案しCarl Zeiss(Ober-Kochen)の協力の下に開発した光凝固装置は当初意図された黄斑部孔の治療から始つて一般の網膜剥離,眼内腫瘍,眼底血管病変,更には前眼部疾患の治療等にも適用され,多くの成果をあげている。近年になつてCarl Zeiss Jenaでも異つた光源と新しいメカニズムの光凝固装置を開発した。著者は約1年前よりこの新しい装置を網膜剥離症の治療並びに予防に使用しており,また最近家兎を用い網膜凝固斑の瘢痕形成について若干の実験を行つた。本装置は凝固用光源として閃光電球を用いており,Zeiss Oberkochenの装置に比較して光凝固が極めて短時間に完了する。従つて眼底の光凝固について本装置固有の条件があり,本装置独自の検討が必要であると考えられる。著者は網膜脈絡膜の癒着を起すにはどの程度の凝固斑が適当かを知るため,家兎眼底における凝固斑の瘢痕形成過程を螢光眼底造影法によつて追求したので報告する。

2,3の眼疾患の螢光写真像

著者: 小島克 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   矢藤仁久

ページ範囲:P.615 - P.623

I.緒言
 1961年Novotony and Alvisがフルオレンスチン液による螢光眼底撮影法を発表して以来すでに多くの報告があり,新しい知見も得られている。私共は2,3の疾患で螢光撮影を行つたので述べたい。

眼窩壁骨折のX線診断法

著者: 深道義尚 ,   篠塚清志 ,   林正泰 ,   永井充子 ,   岡本途也 ,   鍵田政雄

ページ範囲:P.625 - P.626

 先に私達は従来外傷性眼球陥没症として報告されている症例の殆んどすべてに眼窩壁骨折が認められ,眼球陥凹は眼窩壁骨折の一症状として現れるものであることを報告した。眼窩壁骨折の診断は本邦では極めて少いが欧米に於ては文献にみるのみでも既に20年以上前から報告されており,外傷性眼球陥没症なる診断は殆んどみることがないようである。
 又近年は眼窩に正面から鈍的な圧力が加わつた場合,眼球には殆んど障害をきたさずに,眼窩内側壁や下壁の骨質の薄く弱い部分が,吹抜けたように眼窩外に向つて骨折する所謂Blow-out fra—ctureの症例が数多く報告されている。本邦においてもこの種の骨折が次第に多くなつてきているようである。

白内障術前の網膜感電力検査

著者: 藤井良治

ページ範囲:P.627 - P.630

 白内障手術が奏効した122眼(99人)について,術前の網膜感電力指数と術後の視力とを比較検討してみた。
 一般に,感電力と術後の視力との間には平行的関係を有し,感電力検査が白内障術後の予後を推定する上に大いに価値があることを認めた。
 例外として,網膜色素変性を伴なつているものは感電力がわるいにもかかわらず,中心視力が大幅に回復する場合が多かつた。このように,若干の例外は認められるが,例外の中にも術前からある程度その結果を予想できた場合が多かつた。
(御指道および御校閲を賜わつた生井浩教授に深謝致します。)

弱視治療に関する2,3の問題—その3:傍中心窩固視について

著者: 植村恭夫 ,   最上斉子

ページ範囲:P.631 - P.634

I.緒言
 偏心固視の成立には,暗点説,対応説,運動因子説などがあり,一つの説をもつては様々の状態を示す偏心固視を説明し得ないようである。偏心固視の中には,遮蔽法,手術,Pleopticsによつて,その状態が最初のそれとは異つた局在性,動揺性の変化を示すものもあれば,殆んど不変にとどまるものがある。初診でみる状態も,既に,様々の変化の過程を辿つたもので,最初の状態とは著しく異つているものも稀でないと考えられる。さて,異常固視の中で,傍中心窩固視という存在は,周辺固視,傍黄斑固視に比べ,恰も予後良好な存在と考えがちであるが,決してそうではない。その治療にしても,euthyscope pleopto—phoreによる残像法,中心窩刺激法共に,偏心度の少いものには適用出来ない。赤フイルター法,遮蔽法も奏効しない。何故このような中心窩より僅かな偏心部位に固定するのかも興味ある問題である。
 傍中心窩固視は,斜視弱視にも,不同視性弱視にも夫々報告がある。前者では,一次的にみられるものと,遮蔽法,手術,pleopticsにより,周辺固視,傍黄斑固視より二次的になつたものとある。不同視性弱視の報告をみると,大多数は中心固視であるが,一部が傍中心窩固視であり,それ以上の偏心度の大きいものは稀である。

向精神剤の大量投与によつて生ずる調節不全麻痺と緑内障症状

著者: 諌山義正 ,   安井多津子

ページ範囲:P.635 - P.638

I.緒言
 抗ヒスタミン作用を示すPhenothiazine誘導体の研究中,ChlorpromazineがLaboritにより人為冬眠に利用された。これは,体温低下と共に代謝機能および循環機能が抑制され,生体の反応が低下する事を応用したものである。
 現在は,Chlorpromazine系薬剤は,majortranquilizerとしての性質が,その利用の主位を占め,精神科領域において分裂病その他に比較的大量使用され,その治療に新分野を開いている。然しながら,その大量投与により副作用も無視出来なくなり,種々の副作用が成書に記載されている。

Groenblad-Strandberg症候群2例の眼科的考察

著者: 牧治 ,   市川宏 ,   谷宏 ,   上林茂 ,   矢地通子 ,   永島敬士

ページ範囲:P.639 - P.642

I.緒言
 全身病と関係のある眼の疾患の一つとして,Groenblad-Strandberg症候群があり,これは系統的な結合組織の遺伝疾患である。Doyneは1889年に網膜に於ける黒褐色の線条形成について始めて記載し,1929年にGroenbladが眼球の組織所見を発表すると共に,皮膚科医であるStra—ndbergとの協力で色素線条が弾力線維性仮性黄色腫と合併する事を発表した。これ以後本症が全身弾力線維の退行変性に起因するもので,皮膚,眼のみならず,循環系障害をも合併する事が判つて来ている。著者らは本症の2例を経験したので報告する。

Interoculo-irido-dermato-auditive Syndrome (waardenburg)の1症例

著者: 松山秀一 ,   宮城勇 ,   田村博子 ,   大沼侊子 ,   菅原ひで

ページ範囲:P.643 - P.647

I.緒言
 1951年,オランダのP.J. Waardenburg氏は第1表に示す如き先天異常から成る症候群を報告した。即ち,本症候群は,1)内眼角および涙点の側方偏位,2)鼻側部眉毛の増生,3)広大な鼻根部,4)虹彩異色症,5)限局性白皮症,殊に前頭部の限局性白毛および6)先天性難聴(聾唖)の6つから成り,従つてInteroculo-irido-dermato—auditive Syndromeと呼ばれている。著者らも最近その1例に遭遇したが,本邦における報告例は極めて少ないようなので,ここに報告したい。

掃引起点固定装置の臨床ERGへの応用

著者: 倉知与志 ,   米村大蔵 ,   河崎一夫 ,   蓮井勲

ページ範囲:P.649 - P.651

 陰極線oscilloscopeによる臨床ERG検査は掃引開始時に於ける輝点の位置の動揺により,しばしば,障害される。この障害は,我々が考案した装置により,多くの場合著しく軽減される。

新抗生物質Gentamicinの眼科的応用に関する研究

著者: 萱場忠一郎

ページ範囲:P.653 - P.662

I.序
 眼科領域に於いて抗生物質の果す役割は各種眼感染症の治療と共に,最近は,特に手術々式,器械の進歩発展に伴つて,手術に関わる感染予防の面でも増々重要性を加えている。従来,穿孔性眼外傷や,内眼手術,眼局所療法時の不感性菌感染例は,必ずしも数多くみるものではないが,感染眼の治療は困難で,多くは機を逸して視器本来の機能を喪失する結果となり易いので,これの感染予防と治療に対しては多大の関心が払われてきた。
 1963年,米国Schering社研究所に於いて開発された新抗生物質Gentamicin (以下GMと略す)は,グラム陽性菌,グラム陰性菌,リケッチア,など広範囲の病原体に有効であり,Pseudo—monas aeruginosa,Proteusなどのグラム陰性桿菌感染症に特に有効であることが注目され,最近,我国にも紹介されて,各科領域に於いて,基礎的,臨床的に検討が試みられている。このたび,眼科領域に於ける応用に関する研究の一端を荷い,2,3の実検を試みたので,その成績を報告する。

脳下垂体腺腫内出血の1例

著者: 小原博亨 ,   中村一夫 ,   赤塚俊一 ,   樋口正男 ,   渡辺カヅ

ページ範囲:P.663 - P.667

I.緒言
 脳下垂体腫瘍の臨床診断を下すのは主として眼科医であるが,時には,この脳下垂体腫瘍内に出血を来す場合がある事が報告されている。われわれ,脳下垂体腫瘍の診断を下す者は,常にこの事を念頭に置いて診断をしなければならない。下垂体腫瘍内出血(Pituitary Apoplexy)を念頭に置けば,下垂体腫瘍内出血が脳底に及んだ場合にも,単なる頭蓋内出血と誤診して,そのため,手術の機会を失なう恐れも無かろうし,複雑な症状からも脳下垂体腫瘍の存在も推定出来るし,下垂体腫瘍手術の場合にも,そこからの出血を防ぐ事も出来よう。
 最近,下垂体腫瘍内出血の臨床診断例が報告されるようにさえなつているが,本邦眼科では小島克教授およびその門下生による手術によつて確め得た唯一例の報告があるのみである。私共も単なる下垂体腫瘍と早呑み込みしていたが,手術の結果,下垂体腫瘍内出血と判明した例に遭遇して,教えられる事が多かつたので報告する。

腎炎性網膜症についての一考察—内科的所見ならびに腎生検像との比較検討において

著者: 小林フミ子 ,   茂木劼 ,   三村信英

ページ範囲:P.671 - P.672

 1.比較的軽症な糸球体腎炎殊に潜在性慢性腎炎28例について,眼底所見の経過を観察し,内科的所見および腎生検像と比較検討した。観察は概ね3年間に亘り継続して行つた。
 2.従来,内科的に尿蛋白と軽度の血尿以外に所見のない潜在型慢性腎炎については,眼底にも殆ど所見を伴なわないとされていたが,経過を追つて観察してゆくと,軽度ながらも変化を認め,更に病状の悪化してゆくものではこれと平行して眼底所見も推移している事が認められた。

フリッカー中心視野について

著者: 松田弘子 ,   中林正雄

ページ範囲:P.673 - P.677

I.緒言
 私らはさきにゴールドマン視野計を改造してフリッカー球面視野計を作り,イソプトメトリーをおこなつて視野内の時間的分離能の分布(すなわちフリッカー視野)を測定した。またこれを各種疾患眼につき測定して量的視野の成績と比較したところ,明度識別能の低下(すなわち量的視野のDepression)が全くないのに,時間的分離能が著明に低下する数種の疾患を見出すにいたつた。それは,1)視神経炎,2)脳下垂体近辺の腫瘍(脳下垂体腫瘍,頭蓋咽頭腫瘍など)と3)緑内障の三者であつた。これらの共通点を求めればいずれも第Ⅲノイロン侵襲と考えられる点であり,第Ⅰ第Ⅱノイロン侵襲の疾患や,第Ⅳノイロン侵襲疾患ではこのようなことはなかつたので,このように時間的分離能が特異的に低下するのが第Ⅲノイロン侵襲の特徴であろうと考えるにいたつた。そしてこの現象を,この三者の疾患の早期診断の目的に日常臨床的に用いた結果,多数の患眼の早期診断に成功し,その有能であることを証明した。
 しかしこれはあくまでも球面視野計のデータであつて光標の位置的精度はよくなかつた。そのため,2)による半盲性機能低下では問題はないが,1)の視神経炎による機能低下部の存在は,発見は出来るがその形は明確にとらえにくかつた。

小児全身麻酔手術の精神的管理

著者: 湖崎克 ,   小山賢二 ,   岩井寿子 ,   大畑垂穂

ページ範囲:P.679 - P.682

I.緒言
 最近,小児に対する手術の必要性が各診療科において増えてきているが,眼科領域においてもその例外でなく,斜視や白内障手術が,小児の視覚発達過程から考えて,早期に必要となつたため,従来より以上に,小児眼科が独立して手術を行なう機会が多くなつている。
 第1図は,大阪市立小児保健センター眼科において,昭和41年1月より7月までの6カ月間に手術を行なつた177名の年齢分布であるが,3歳4歳,5歳,6歳に,特に高い分布を示している。

光凝固治療経験について

著者: 浅山亮二 ,   坂上英 ,   宇山昌延 ,   菅謙治 ,   稲富みさと

ページ範囲:P.683 - P.690

I.緒言
 最近我国でも光凝固手術法が急速に普及し,またその応用領域も網膜剥離のみならず,Coats氏病,Hippel氏病,Eales氏病等の眼底血管病変網膜芽細胞腫等の眼内腫瘍,糖尿病性網膜症等の治療,更には眼瞼,結膜,虹彩における腫瘍の治療,白内障術後の瞳孔形成等の前眼部疾患の治療にまで拡大されるに至つている。
 我々も昭和40年12月以降,西独ツァイス社の光凝固器械を使用して諸種眼疾患に対して光凝固手術を試みてきたので,その臨床使用経験について報告する。

銀海余滴

"臨眼ジュニア"の発刊を望む

著者: 内藤慶兼

ページ範囲:P.651 - P.651

 最近の"臨眼"誌を拝読しますとなかなかご有益な記事ばかりで非常に勉強になります。しかしながら,どうもその傾向は学術誌に近くなってきた感じが致します。勿論学術論文も必要なのですが,最近の学会の様相では,細分化されているようなので,非常に専門的すぎ,眼科部門の内でも,少し専門を離れますと,よく理解出来ない点も出てまいります--これは私だけの問題かもしれませんが。本来学術論文というものは,"日眼"誌や,"日眼紀"誌のような学術専門誌に掲載さるべき性質のものと思われますが,昨今のように日本眼科学会の他に,臨床眼科学会,各地部会,集談会等々,学会や医会が多くなりますと,また学会には発表されない論文もありますので,とても論文をさばききれず,"臨眼"誌の方に回ってくるかと考えられます。集談会も元来は,開業医が集まって,こんな面白い例があったと,茶話会程度のものだったのでしようが,もう学会と申してもよい位に高級化しており,発表時間も制限されているようです。
 われわれ開業医としましては,例えば"治療薬報"の「前車の轍」のような誤診,失敗,成功談や"実験治療"の「半頁ずいひつ」といったような軽い読物も増やして頂きたいと思います。

負けるが勝ち

著者: 初田博司

ページ範囲:P.667 - P.667

 世の中にはまつたく色んな人種が住んでいるものである。外来を訪れる患者に応対していると,多くの中には妙な度態をはじめからとる者などがいて,頭にくるようなことがあるものだ。
 診察をはじめようとするときの態度で気にくわないのは,足を組んで腰掛けてるのはまだしも,片肘をついてこばかにしたような顔つきでこつちをみているような奴である。大抵は健保本人の男性と相場がきまつている。自費患者の方が一般に礼儀正しい。

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眼科治療基準点数と疑義解釈(乙)

ページ範囲:P.692 - P.693

投薬料
投薬料の算定方法
 請求点数=薬剤料+処方料+調剤料
 例:3.5点=0.7点+2.0点+0.8点

第20回臨眼グループディスカッション

高血圧眼底・眼底血圧

著者: 三国

ページ範囲:P.695 - P.700

 入野田:本日は主として高血圧症にみられる眼底病変の診断基準と申しますか,判定基準と申しますか,そういうことを決めていただき度いと存じます。本日だけで決定するというわけにはいかないかとも思いますが,原則だけでもなんとか決めておきたいと思いますので,何卒御協力下さるよう御願い致します。

緑内障(第8回)

著者: 須田経宇

ページ範囲:P.701 - P.707

I.原発緑内障の術式は何を基準として選ぶか
A.宿題報告:隅角所見よりみた緑内障手術適応と術式の選択
 前房隅角所見が緑内障手術の適応の決定,術式の選択について参考となるのは次の場合であると考えられる。
1.隅角の開放

眼感染症(第3回)

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.709 - P.713

 今回は第2回会合で提案されたトキソプラスマ症が主題の一つにとり上げられた。本症には文部省から機関研究として科学研究費が交付されており,従つて業績発表,討論は班長生井教授を司会として主として研究班員によつて行なわれた。次いで眼真菌症,その他の感染症一般をも夫々主題として扱い,発表討論が行なわれた。またSan Franciscoにおける国際トラコーマ学会に出席した三井教授からその報告があつた。

弱視および斜視

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.715 - P.718

 今回のグループディスカッションは,最初に,丸尾氏(東大分院)により,本年8月に開催された国際斜視シンポジウムの印象が報告された後,植村(国立小児病院)の司会により,井上(浩),筒井,石川,湖崎の4氏により,「斜視の非凝血的療法」についてのパネルディスカッションが行われた。これに関しては,1960年にAm.orth.Con.においてHavener,Simmons,Hallumらによりシンポジウムが行われているが,今回,4氏により述べられた講演に共通したことは,何れも輻湊,調節に関連することであり,これを,orthoptics,全身的薬物療法,縮瞳剤の投与により如何にして治療するかに共通の討議の場が存在したように思われた。
 以下,各演者の講演要旨を記する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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