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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科21巻6号

1967年06月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・120

広島原爆白内障例の写真記録

著者: 百々次夫

ページ範囲:P.727 - P.728

臨床実験

広島原爆白内障例の写真記録

著者: 百々次夫

ページ範囲:P.729 - P.731

I.まえおき
 著者及び教室員は,広島大学医学部付属病院が昭和32年10月に広島市に移転して以来,眼科診療部において,原爆白内障について観察して来た結果,被爆距離が1600mを超えると,その頻度が明確に減少することを認めた。また観察される原爆白内障の程度を,第1表に示すように4段階に分類した。
 すなわち「微度」は,ただ細隙燈顕微鏡検査によつてのみ認められるところの,水晶体後極部被膜内面に位する限局性混濁を呈するもので,この混濁斑は観察の方向によつて色閃光を呈する。「軽度」は,微度の所見に加えて,水晶体後極部被膜の前方に位置する細点状混濁を呈するが,徹照法観察においては,混濁の陰影をほとんど見出しえない。「中等度」は,後極部被膜の前方に小塊状混濁があつて,徹照法観察で混濁の陰影が明らかにみられるものである。「高度」は,後極部被膜の前方に,いわゆる凝灰岩様混濁を呈するもので,この程度分類の症例だけが,視障の自覚をもつていた。

眼球保存液に関する生化学的研究—第9報正常および保存角膜中多糖類の分離,同定,組織化学について

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.733 - P.740

I.緒言
 前報において角膜の膨潤阻止,保存液に対する膠質緩衡能の付加,膠質滲透圧の保持を目的として高分子電解質を選択した根拠につき論述した。
 角膜多糖類は,創傷治癒に関してコラーゲン再生と密接な関係にあるので,保存中,保存角膜に含まれる多糖類の消長は,保存液中の酸性ムコ多糖類にも関係して興味ある問題である。

先天性角膜後面硝子様膜の1例

著者: 赤羽信雄

ページ範囲:P.741 - P.744

I.緒言
 角膜後面の硝子(様膜)〔hyaline (like) mem—brane〕は,1933年Mann1)が自験の2例と既報の類似した3例を総括して報告した,一種の先天異常である。本症は極めて稀なものの如く,その後はMannの1例の追加の他,Magistretti(1956)2),Collier (1962)3)等の報告を見るにすぎず,わが国にはまだその記載がないようである。
 私は最近角膜後面の硝子様膜に,色素顆粒並びに角膜深層混濁を合併した症例を経験したので,ここに簡単に報告する。

網膜静脈血栓症の臨床調査

著者: 本橋昭男

ページ範囲:P.745 - P.749

I.緒言
 網膜静脈血栓症はわれわれ眼科医が日常しばしば遭遇する疾患であり,決して稀な疾患ではないが,本症についての統計的報告は比較的少なく,本邦においては三輪,余,柳田,田野,海老原,大野氏らの報告があるのみである。著者は過去5年間の自験例について統計的考察を行なつたのでここに追加報告する。

諸種条件の下における角膜の乳酸代謝に関する実験的研究—第1報新鮮家兎角膜について

著者: 田村秀子

ページ範囲:P.751 - P.755

I.緒言
 全層角膜移植のための長時間眼球保存に関する研究は,近年眼球銀行の発達と相俟つて,益々盛んとなり,保存液組成の問題,保存角膜の活性の問題,移植角膜片の抗原抗体反応の問題等,既に多くの基礎的研究がなされ多くの報告が見られる。
 しかし移植手術が成功するために如何なる保存条件がよいのか,また如何なる状態にある保存角膜が実際に使用した場合に良い移植片といえるのか,その判定基準に関しては未解決の問題が多く,実際には明確に提示されていない。

一島集団,平戸における眼科系の罹病性について

著者: 木村健 ,   川村緑

ページ範囲:P.757 - P.762

I.緒言
 眼は精密な感覚器官であり,かつ,精密な検査も眼が体表に存することから容易であるために,異常形質が比較的簡単に発見され得る。
 このような特性は,人類遺伝学的研究においても極めて有利なことであつて,人類集団に含まれる先天異常または遺伝性疾患を見出し易いゆえ,それらの頻度,あるいは現われ方等から様々な知見を得ることが出来る。

小児のTicsについて

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.763 - P.765

I.緒言
 Ticsは強制的神経症の1つの症状として,ある刺激の下で一定の筋肉群に不規則に繰返される不随意運動発作であり,とくに小児に最も多くみられる眼瞼の習慣性spasmはそのモデルとしてこれほど著明なものはないといわれる。それゆえに小児のTicsの患者はもつともしばしば最初に眼科を受診することが多い。
 私は青森県立中央病院眼科外来を受診したTicsの症例について考察してみたい。

グルタチオン注による白内障の治療経験

著者: 関洲一

ページ範囲:P.767 - P.771

I.緒言
 水晶体はレンズとして,視器の中枢をなすもので,この役割の重要性については,今更論を得ぬ所であるが,成長した水晶体が血液栄養に依らず,房水と硝子体の間に在つて,透明を維持するため,特異な物質代謝を営んでいることは既定の事実である。
 近年,白内障の手術が進歩し,安全確実に行われ,良好な視力が期待出来るようになり,白内障手術の進歩は目醒しいものがあるが,しかし,老人性初発白内障から,手術適応となるまでの期間は長く,かつ,手術後に度の強い凸レンズの眼鏡をかけたり,または,コンタクトレンズの着装など,老人にとつては甚々都合の悪いことが多く,手術に対する恐怖は勿論,術後安静の苦痛など,老人にかかる負担は多大と言わなければならぬ。このため水晶体変性を初期において防止するため過去において,幾多の先人学者が沃度加里,ビタミンC,ビタミンB2などと色々の水晶体溷濁に対する薬物療法の研究が行われて来た。近時,萩原教授による,パロチンの使用により,水晶体老化防止に対する,薬物療法が発表され,これが刺激となり,白内障防止の為の薬物療法の研究が再び旺んとなり,次々と研究の成果が発表される様になつた。即ち米国よりのシネラリアの使用を藤山教授により,我が国にも紹介された。

Clinical EKCに対するα—Mercaptopropionyl glycineの使用経験

著者: 市川達 ,   山之内照雄

ページ範囲:P.773 - P.777

I.緒言
 流行性角結膜炎(以下EKC)は,その起炎病原体に対する有効な薬剤を欠くために,多数の患者があり,中には重症な点状表層角膜炎を起して永く視力障害を残す者があり,このことは眼科専門医の少ない地方に著しいと思う。
 文献によると,強力ネオミノファーゲンC (以下SNMC)が有効であるとする報告と,強力パニールチン(以下SP)が有効であるとする報告とがある。この2剤は共にシスチン(前者は還元態のシスティン)を含有している。

銀海余滴

貧乏ひまなし

著者: 初田博司

ページ範囲:P.750 - P.750

 医局の若い人達も10人のうち9人までが将来開業するということになると,その人達には今から是非心掛けておいてもらいたいことがある。何しろ自分の診療所の蓋をあけたときから直ちに全てを自分ひとりで出来るように今から修業をつんでおく必要があるのだ。将来の世の中は,ますます人手不足になるものと思つて間違いないし,何人もの人を雇うということは経済的にも問題があつて仲々実現し難いことのようだ。
 そこで最低線を考えると,だれかさんの様に,女房をプレがわりにして2人で仲よく(時々けんかも結構)やつてゆくのが普通のことになつてきそうに思う。たまたまオールセルフサービスのところを,縁あつて手伝つて下さる女性でもいるとすればよろしく高給をもつて迎えて仕事の上でのベターハーフとして勤めていただく方がいいわけだが,できれば女房にはあくまで仕事を手伝わせないのが原則だろう。名の示す通り彼女は奥様であり,奥に引つ込んでいるべきものであり,表門でなく裏門の方を守備してもらえばいいわけである。

〔眼・光学学会〕

立体眼底撮影法

著者: 三国政吉 ,   八百枝浩

ページ範囲:P.779 - P.784

I.緒言
 網膜病変,乳頭変化などで立体観察を必要とするものは少なくない。これらに対し普通検眼鏡による視差移動法,双眼検眼鏡,細隙燈顕微鏡などによる観察が行われ,それぞれ特徴をもつているが,立体眼底写真の価値も場合により非常に高い。殊にその記録性が長時間の観察を可能にし,より客観性を増大する。又拡大することにより,かなり微細な立体観察を行うこともできる。
 近年光学器械技術が発達し容易に眼底写真がとれるようになつた。立体眼底写真の撮影法にはいろいうな試みがある。なかには特殊なAttach—mentを必要とするものもあるが,普通の眼底カメラでも撮ることができる。

細隙灯顕微鏡による写真撮影について

著者: 伊藤康行 ,   工村裕子 ,   林恵美 ,   長谷川弘

ページ範囲:P.787 - P.793

I.はじめに
 前眼部病変の普通写真撮影は,日常一般に行なわれているが,細隙燈顕微鏡(以下スパルトと略す)を使用しての写真記録は,未だ一般に普及されているとはいえない。その理由を考えて見ると,1.優秀な撮影装置を備えたスパルトの入手はさほど容易ではない。2.撮影に特殊技術を要し,その上手間がかかる。3.充分な病変の記録が困難である。4.この種の写真に対しての関心がうすい,等があげられる。
 しかし,簡単かつ正確にスパルト写真によつて,病変が記録されるならば,これ迄以上に病因及び治療法の検討が容易になり,疾患の変化の状態をより詳細に記録でき,保存され得る。また,これまでの記録装置では不充分であつた部位の撮影も可能となり,診療面にも,学問的にも利用されるところが大きいと思われる。

試作眼球開壁術用手術顕微鏡

著者: 奥田観士 ,   那須欽爾

ページ範囲:P.795 - P.797

 眼球開壁術は我々の教室で赤木教授が考案された一つの手術々式であつて,高度の硝子体混濁あるいは眼球内非磁性異物の除去のために用いられる方法である1)
 それは鞏膜に切開を加えるのであるが切開は出来るだけ小さいのが安全であることは申すまでもないのであつて,この小さな創口から眼内を観察し,ピンセット,剪刀などを挿入するのであるがこの小さな創口よりの眼内の観察法については従来特別な考慮は払われていなかつた。

水晶体の球面収差について

著者: 中尾主一 ,   永田良 ,   藤本蕃 ,   岩田耕一 ,   鈴木達朗

ページ範囲:P.799 - P.802

I.緒言
 著者等は先にシュリーレン定量法を用い,イエウサギ水晶体の屈折率分布の定量測定を試み,それが連続的に変化し,その分布状態が,楕円的放物面で近似されることを発表した2)3)4)5)
 また特定個体に関する測定値を用いた光学モデルについての収差の計算値は,屈折率を均質と仮定した場合に比べいちぢるしく小さいこと,媒質を空気とせず眼内液と仮定した計算値も極めて小さくなること,などからこのモデルが合理的であることを発表した4)

第20回臨眼グループディスカッション

近視

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.807 - P.810

 41年11月12日9時より15時まで行われた。登録者は45名であつたが,その他の参加者が多く定員50名の座席では立つておられた方が沢山あつてお気の毒であつた。
 1席は秋山晃一郎氏(横浜市)で「近視発生機転における角膜曲率半径の意義について」話された。氏のC.L.患者の日米人の角膜曲率を測定した結果,米国人の方が日本人より大きい。屈折と角膜屈折力との相関も米国人の方が大きい。角膜の曲率は体格と関係がある。それ故体格を良くすれば,角膜曲率も大となり,近視を減弱させるのではないか?このことは全乱視と角膜乱視との相関からも考えられる。即ち水晶体が近視の発生に関係ありと考えられるが,日本人では水晶体の静的(非適応的)打ち消しの他に,角膜乱視を打ち消している動的の力が強いが,米国人では弱く,角膜の影響が大きい。目本人型の水晶体式を米国人型に変えればよい。これには食餌,スポーツその他で体格を良くする。これに対し保坂明郎氏(福島医大)は近視発生年令以前では角膜が関係するかも知れない。しかしDataはなく推測に過ぎない。スポーツはすべぎだ,と。山地良一氏(大阪医大)は近視の予防に生活環境,文字の改善は賛成であるが,同じレベルでスポーツで体格を良くすることは疑問である。体格を良くし角膜曲率を大としても,他の屈折要素が不変とは限らないからである。

神経眼科

著者: 井街譲

ページ範囲:P.811 - P.814

 この会も第4回を迎え,多数の参加者を得て,なごやかなうちにも熱のこもつた会であつた。終始,活発な討論が行われ,座長の先生方は時間内にまとめるのに大いに苦労された。なお紙面の都合上,追加および討論の詳細は割愛いたします。

涙の会(第3回)

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.815 - P.819

 今回の主題は,涙の分泌機構,涙腺の機能,および分泌と導涙との関係,ならびに涙嚢鼻腔吻合術に関する討議であつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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