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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科21巻7号

1967年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・121

水晶体前嚢落屑を伴う緑内障

著者: 北沢克明 ,   川西恭子 ,   中村泰久

ページ範囲:P.831 - P.832

〔解説〕
 水晶体前嚢落屑は水晶体前面,殊に周辺部の白色微細顆粒の集合よりなる白色の膜状の混濁と瞳孔縁の白色の糸くずあるいはフケ様の細片(dandruff)の沈着を主徴とするが,その膜状あるいは糸くず様の附着物の本体はVogtが考えた如く水晶体嚢にその起源を有するものではなく,房水に由来する沈着物であるとする説が現在一般に受けいれられ,pseudoexfoliation (Dvorak-The—obald,1954)の語が本症の記載に際し多く用いられている.
 本症を伴う広隅角緑内障(glaucoma capsulare, glau—coma with pseudoexfoliation of the lens capsule)については,前嚢落屑の緑内障発生に際しての病因論的な役割をめぐつて古くから議論の存するところである.

臨床実験

Raynaud病および動脈硬化に併発した血液循環障害による視神経症(Ischemic Optic Neuropathy)

著者: 塚原勇 ,   藤井一郎 ,   清水明

ページ範囲:P.833 - P.838

I.緒言
 視神経の血液循環障害による,急性横断性視神経炎に似た症状を呈する視神経疾患は,欧米殊に欧州では早くから注目され,Pseudo-papillitesvasculaires (Francois), akute Ischämie derPapille (Siegert), Optikomalazie (Kreibig),Ischemic neuritis, Ischernic optic neuropathyischemia of the optic nerve又はischemicInfarction of the optic nerve (Wagener)などと呼ばれて報告され,近年殊に側頭動脈炎Ar—teriitis temporalisの合併症として重視されている。しかし,我が国ではこの疾患に関する報告は多いとはいえない1)2)3)4)5)。我々はRaynaud病に併発した本症の剖見例および動脈硬化を基盤とした本症の各1例を得たので報告する。

脈なし病網膜動脈血逆流現象—(第2報)体位の影響

著者: 船橋知也 ,   広瀬清一郎 ,   磯部敬

ページ範囲:P.839 - P.842

I.緒言
 第30回日本中部眼科学会の席上,私達は脈なし病患者で網膜中心動脈血圧(以下CAPと略記)を測定する際に,被検眼の眼球壁にCAPの最高値を超える圧を加えた時,網膜中心動脈内の血液が乳頭方向に逆流する事がある事を報告した。ところがその際,金沢大学米村大蔵助教授は,本現象が患者の体位によつて影響される旨の追加をされた1)。そこで,私達は,すでに第1報で報告した患者のうちで,その後も引き続き来院中の4名について,6カ月間,来院の都度,患者の坐位と仰臥位とでそれぞれCAPを測定して,体位の如何によつて逆流現象の出現に差異があるか否かを調べた。
 その結果,1例で,しかもただ1回ではあつたが坐位では逆流現象が認められ,仰臥位では,これが認められなかつたので,改めてここに報告し,諸参の御叱声を乞う次第である。

尿崩症と緑内障を伴つたサルコイドージスの1例

著者: 松尾治亘 ,   中西堯朗 ,   遠藤成美

ページ範囲:P.843 - P.845

I.緒言
 尿崩症は,間脳下垂体系疾患であり,間脳下垂体と眼圧との関連は認められている1)。しかし,尿崩症と緑内障の合併例は,みられない。
 我々は,サルコイドージス(サと略す)が原因と診断されたこの合併例を経験したが,本症例の如くサの一症状として尿崩症を呈することは,極めて稀であり,本邦で3例目である2)3)4)5)。緑内障を合併した例は初めてである。

弱視治療に関する2,3の問題—(その2)分離困難性について

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.847 - P.852

I.緒言
 弱視の視力に関する特徴の一つに,従来より"Separation difficulty"あるいは"Crowdingphenomenon"(本邦では,分離困難性とか,よみわけ困難とか称されている現象)が注目されている。この現象の本態に関しては,Cüppers,Pasino, von Noorden,足立,弓削,Stuart,Burianらにより,それぞれの見解が発表され,その治療の困難性についても注目されている。著者らも,この現象について,検討を行なつてみたので,その結果を報告し,著者らの見解を述べ,諸賢の御批判を仰ぎたい。

水晶体前嚢落屑を伴う緑内障—特にその散瞳トノグラフィーについて

著者: 北沢克明 ,   川西恭子 ,   中村泰久

ページ範囲:P.853 - P.858

I.緒言
 いわゆる水晶体前嚢落屑(pseudoexfoliationof the lens capsule)は,その存在が古くから知られているにもかかわらず,その本体については不明の点が多い。更に,本症と広隅角緑内障がしばしば共存することが知られているが,両者の因果関係の有無については尚議論のあるところである1)〜7)
 水晶体前嚢落屑の頻度には著明な地域性が存するとされているが5),本症に関する報告は我が邦では極めて少数である8)〜14)

毛様体悪性黒色腫

著者: 西田祥蔵 ,   永田耕一 ,   伊藤寿夏 ,   小栗正己

ページ範囲:P.859 - P.864

I.緒言
 眼の悪性黒色腫は白色人種ではさほど稀有な疾患ではないが,本邦では比較的少なく,その悪性度の高いことから早期発見が強調されている眼腫瘍の一つである。我々が最近経験した例は,かなり進行したものであるが,さいわいにも完全に摘出することが出来,その病理組織学的,電子顕微鏡学的,組織化学的検索を行つたので報告する。

眼科領域における抗炎症酵素剤ブロメラインの使用経験

著者: 本橋昭男 ,   小西恒夫

ページ範囲:P.865 - P.869

I.緒言
 最近酵素化学の進歩により,蛋白分解酵素に抗炎症作用があることが解明され,臨床面に広く応用されるようになつた。
 ブロメラインはパイナップルの茎汁から抽出した蛋白分解酵素で,従来の動物性蛋白分解酵素と異なつて植物性であることが特徴である。ブロメラインの効果については既に多くの報告があるが,著者は今回ブロメライン製剤アナナーゼを2,3の眼疾患に使用する機会を得たのでその成績をここに報告し,かつその抗炎症機序について考察をしてみた。アナナーゼは1錠中にブロメライン20mg (50,000ローラー単位)を含む腸溶剤である。

Betamethasone眼軟膏の使用経験

著者: 錦織劭 ,   小山信一 ,   近藤武久

ページ範囲:P.871 - P.876

I.緒言
 Cortisoneに始まる各種副腎皮質ホルモンの強力な抗炎症作用・抗アレルギー作用は,既に汎く知られる所であり,眼科領域においても,多くの疾患の治療に愛用せられるようになつて久しい。初期に用いられたCortisone, Hydrocortisone等は,水および電解質体謝に及ぼす影響,血圧上昇,血糖値上昇作用,消化性潰瘍の悪化,肺結核の再燃,悪化等の副作用がかなり著しく,より副作用の少ない副腎皮質ホルモン剤として,Pre—dnisolone, Prednisone, Methyl-prednisoloneおよびTriamcinolone等が,相次いで出現した。近年,最も新しい型の副腎皮質ホルモン剤として,DexamethasoneおよびBetamethasoneが登場し,全身的に,或いは局所的に,広く臨床に用いられようとしている。
 今回,我々は,BetamethasoneであるところのRinderon眼軟膏を,塩野義製薬より提供を受け,これを種々の眼疾患の治療に用いたので,その成績について,ここに報告する。

眼・光学学会

感覚尺度構成による視覚系の正弦波レスポンス

著者: 藤村郁夫 ,   山本勝昭

ページ範囲:P.877 - P.880

I.まえがき
 私達は昨年本学会でボケた輪郭線の強度分布に見られるMach現象と視覚系の正弦波レスポンスを論じた際,①視覚系の特性,②広がり関数で表わされるNeural unit等についても言及した。これらは従来独立の現象として記述されて来た視力とコントラスト弁別能を単一の概念で一義的に説明しようとしたものである。
 この視覚系のMTFは近来各所で発表されているけれども測定法についてまとめてみると,①閾②閾上,に大別される。閾はコントラストの識別限界感度を求めるものであり,閾上ではMach現象からのものと,主観的等価値による測定が行われてきた。

自動アコモドメータの予備実験

著者: 岸本匡 ,   田中実 ,   大島祐之

ページ範囲:P.881 - P.883

I.緒言
 調節に伴う眼の屈折力dptrの変化を光電気的に追跡して連続測定する装置は1959年Campbell—Robson1)によつて開発され,Roth2)Warsha—wsky3),原田ら4)による試作がその後発表された。そのうち自動測定に適する機構は0点平衡方式(Campbell-Robson, Warshawsky)と,位相差利用方式(Roth)とがある。私共は作製した0点平衡方式のオプトメータにおいて,自然瞳孔での測定の可能性につき検討したのでここに報告する。

色覚精密検査新法

著者: 堤修一 ,   中村善寿 ,   三田澄夫

ページ範囲:P.885 - P.888

I.はじめに
 改良された色覚精密検査新法により約200名の色覚障害者を検査し,その結果を整理検討し,色覚障害の実態に迫り,その本質について考えた。
 しかし,この検査法の主目的はあくまでも,ごく実用的な色相,彩度識別能と色相認識能の検査にあるが,今のところ色相識別能については大体目的に近づいた感がふかい。

角膜前面曲率とコンタクトレンズベースカーブとの関係

著者: 保坂明郎 ,   関根高子 ,   大繩早苗

ページ範囲:P.891 - P.894

I.緒言
 スフェリコンレンズの出現以来,角膜コンタクトレンズ(以下C.L.と略記)の概念が変り,現在では直径9mm前後のベベルつきPoly-curvelensが常用とされているが,そのベースカーブの決定については意外に諸家の見解は一致していない。我々は何らかの標準化が出来ないものかと考え,少しく検討した。
 言うまでもなくC.L.の適合(haptics)には物理的な面のみでなく生理的な面の問題も関連し複雑であるが,今回は角膜の前面曲率とC.L.のベースカーブとの関係のみについて考察する。

銀海余滴

へをひつて尻つぼめ/日米眼科の比較

著者: 初田博司

ページ範囲:P.883 - P.883

 幼時一家団らんのかるた遊びで,必ず最も早くこの一枚に手を出したのが想い出されるが,その理由はよくわからない。着物のすそをたくし上げて後向きになつた男の絵が描いてあり,右肩の所が丸く白くぬけたところへ,「へ」と印刷してあつたものと記憶するが,その札をにらみながら,読み手が「へ」と言い出すのを今か今かと待ちあぐんでいたのだからおかしなものである。
 さて,外来の一日,若い母親が小さな女の子を伴つて来訪,いざ診察というのでカルテと子供の顔を見くらべて,昨日より良くなつたなと思う。再来患者で軽い結膜炎の初期だ。例によつて子供の頭を仰向きにひざの上にのせ,母親に子供の両手を押えさせて洗眼点眼処置をすませ,「さあ終りですよ,昨日よりも充血もはれもひいている。あしたまたいらつしやい」といつて,ふと母親の顔をみると変だ。妙に恥かしそうな顔をしているばかりか,耳のつけ根まで真赤になつてうつむいたまま,小さな消え入りそうな声で「ハァ」といい,返事のあとで白い歯をみせてにこりと笑うのである。それから逃げる様にして子供の手をひいて急いで帰つていつてしまつた。全く理解に苦しむほかはない。

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眼科治療基準点数と疑義解釈(乙)

ページ範囲:P.896 - P.896

給付の範囲と取扱い斜視,近視,色覚異常等
1)身体機能に障害のない異常・疾患は原則として給付外とするが,他人に不快感を与える程度のものであり,かつ治療により治癒又は軽快するものであれば給付内とする。
(昭27.6.20.保険発157)

眼科ニュース

ページ範囲:P.897 - P.897

第21回臨床眼科学会
○日時:昭和42年11月12日(日)午前9時より
○場所:東京都千代田区霞ケ関3の4(文部省隣り)国立教育会館特別講演の他,一般講演は約50題,会場は2会場に分ける予定です。

印象記

第17回日本医学会総会—萩野,水川両氏の講演を聞いて

著者: 水野勝義

ページ範囲:P.899 - P.901

 名古屋で初めて開かれた第17回日本医学会総会は4月1,2,3の3日間に亘つて開催されたが,医学会総会を飾る総会講演57題中眼科関係の演題は2題で,萩野鉚太郎名市大学長による「全身と眼(とくに眼精疲労を中心として)」と水川孝阪大教授の「角膜移植—角膜移植と免疫反応—」の講演は4月3日午後1時より名古屋駅前豊田ホールで開かれた。分科会である日眼総会がすでに3月30,31両目に終了しているため聴講者数が少いのではないかと憂慮していたが,当日は約300の席はほぼ満席で,眼科医以外の顔ぶれが多く,両先生の講演が医学会総会講演としても,時代の流れからしても極めて適切であつたことを物語つていた。
 定刻に座長の菅一男三重医大教授によつて萩野学長が紹介された。全身の生理的,病的状態がいかによく調節機能の上に反映されるかについての萩野学長の過去40年来の研究をまとめたもので,いわば先生のライフワークの集大成が述べられるというので眼科医のみならず,内科,婦人科,精神科医等あるいは心身医学に興味を持つ医師が日常診療の場で患者を扱う上に何等かの参考になることを期待していたようであつた。

第71回日本眼科学会総会(1)

著者: 桐沢長徳 ,   丸尾敏夫 ,   山地良一 ,   坂上道夫 ,   徳田久弥

ページ範囲:P.903 - P.911

 今回の第17回日本医学総会は故勝沼博士の「お顔」で決定されただけに,同博士残後の残された幹部諸氏の御苦労は察するに余りあるが(眼科では副会頭の萩野博士),とにかく,予定通り見事に終了されたことは御同慶の至りである。
 同総会の分科会としての第71回日本眼科学会総会は名大小島克教授を会長として,市の東端の南山高校の講堂で開かれた。その詳細は各分担執筆者の名文にゆずるが,筆者は役員会その他について記すことにする。

第20回臨眼グループディスカッション

角膜移植

著者: 桑原安治

ページ範囲:P.913 - P.918

1.角膜痩に対する治療的角膜移植の2例
 第1例は爆傷とアルカリ腐蝕により生じた角膜瘻に対して,受傷後442日目に5mm全層角膜移植を行なつたが,栄養障害などのため,移植片は壊死状態となり適合不全が起つた。そのため,65日目に7mm全層角膜移植を行い,瘻孔閉鎖に成功し,視力の改善をみた。第2例は同種全層角膜移植の約1年2月後に,移植片の一部にirido-corneal-circulationのため移植片が吸収され瘻孔形成,虹彩脱出を来した。これに対し,5mm自家表層角膜移植を行い,瘻孔は閉鎖し,視力の改善をみた。角膜瘻に対する治療的角膜移植においては,受容眼角膜の瘻孔の位置,大きさ,病変の状態,性質により,移植片の大きさ,形を決定することが必要である。また第2例の如く症例によつては表層角膜移植で十分である。

コンタクトレンズ

著者: 水谷豊

ページ範囲:P.919 - P.922

 水谷(名古屋):今回のグループディスカッションは,従来のように各自が得意の演題をもちよるのではなくて,『近視の進行とコンタクトレンズ』という一つのテーマについて,自由な討議をすることになつております。現在近視の成因についても論争が行われていますが,本日のテーマから,別の方面からの成因の解決もまんざら夢ではないと推察されますので,これから数時間の間,自由活発な討論をお願いしたいと思います。
 曲谷(順大):以前に水谷先生と相談し賛同を得ましたが,従来のグループディスカッションと異なるバネルなしの自由なディスカッションにより,気軽に討論したいと思います。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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