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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科21巻8号

1967年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・122

急性円錐角膜の1例

著者: 今井克彦

ページ範囲:P.935 - P.936

解説
 近視治療器の使用後に,いわゆる円錐角膜が生じた例は,現在まで数多く報告されており,そのほとんどは,治療の際併用した「眼球圧迫」を誘因とみなしているものが多い.私は最近,近視治療器を使用した後で,比較的短時日の間に片眼(右眼)に円錐角膜を生じた1例を経験し,その経過を撮影したのでここに供覧する.

綜説

臨床ERGの進歩

著者: 倉知与志 ,   米村大蔵

ページ範囲:P.937 - P.944

I.人眼ERG概説
 あまり強くない光で誘起されるERG成分として,a,b,c (Einthoven,Jolly1)1908)およびa波(Day2)1915)が古くから知られている。人眼ではa波およびb波の記録は容易であるが,c波およびd波の観察は可能ではあるが,瞬目や眼球運動などのために,毎常成功するとはかぎらない。Granit3,4)によると,ERGは,PI (緩徐な陽性成分),PII (陽性成分)およびPIII (陰性成分)に分解され,これらはそれぞれa,b,cおよびd波の構成にあずかるという(第1図)。ただし,Brown36)の考えではGranitのPIIはb波と直流的成分(d.c成分)とから成立つているという。
 本川と三田5)(1942)は,棘状陽性成分(x波)を新たに見出した(第2図)。同様な棘波は,Adrian6)7)(1945,46)によつても,ヒトおよび2,3の動物に再確認され,明所視過程であろうと推定された。

臨床実験

Meningiomaと眼症状

著者: 小島克 ,   渡辺郁緒 ,   新美勝彦 ,   野崎尚志

ページ範囲:P.945 - P.949

I.緒言
 脳腫瘍の診断に眼科的検査を欠くことの出来ないことは万人の知るところである。古来幾多の報告がなされているがわれわれは最近24例のme—ningiomaを経験したので,その部位と眼症状との関係を分析してみた。
 症例は次に示すごとく24例である。

瞳孔緊張症の自験6症例から見た本症の問題点

著者: 鬼木信乃夫 ,   向野和雄

ページ範囲:P.951 - P.955

I.緒言
 瞳孔緊張症の存在は1812年Ware1)の報告に始まるが,19世紀までは反射性瞳孔強直症(ArgyllRobertson)瞳孔の一異型であると信じられていた。1921年Behr2)が瞳孔緊張症はArgyllRobertson瞳孔とは区別すべきことを強調した。1931年Adieが本症に腱反射消失を伴うことが多いことを強調し,後年本症はAdie氏症候群として,世に広く知られてきた。したがつて瞳孔緊張症とAdie氏症候群(瞳孔緊張症+腱反射消失)とはまつたく同じものであつて,Adie氏症候群とは瞳孔緊張症の一型にすぎないわけである。にもかかわらず,両者が全く異なつたclini—cal entityと考えられている。私達はこの論文において自験の6症例を介して瞳孔緊張症の問題点を論じていきたい。

眼科領域におけるATP腸溶錠による治療成績

著者: 丸山光一

ページ範囲:P.957 - P.962

I.緒言
 周知のごとくATP (Adenosine triphosphate)は生体組織内でenergy-rich phosphate bondとして存在し,加水分解を受ける際多量のfreeenergyを遊離し生体諸機能発動のエネルギー源として供給されている。また血管拡張作用,組織の諸代謝機能賦活作用を有するため各科領域で諸種疾患の治療に応用され臨床上の効果を挙げている。眼科領域においても眼精疲労,眼筋麻痺,網膜,視神経疾患等広範囲に亘つて使用され使用成績を挙げつつある。従来は主として注射の形で使用され,しばしば注射による副作用発現がみられたが,このたび腸溶錠の形で投与が可能になり,副作用の恐れなく長期連用が期待出来るようになつた。著者は最近諸種眼疾患に対し本剤内服治療を試み以下の成績を得たので報告する。尚本剤は第1図に示す化学構造を有し,1錠中ATP−2Na 20mgを含有している。

輻湊不足,輻湊衰弱および調節衰弱に対するビタミンB1,B2,B6,B12の複合剤内服の効果について

著者: 井上浩彦 ,   松田繁美 ,   田中比紗乃

ページ範囲:P.963 - P.967

I.緒言
 従来ビタミンB1が眼精疲労,神経炎,神経痛等に広く用いられてきたが,B1のみならず,B6,B12も神経親和性,神経栄養作用,鎮痛作用および全身代謝賦活作用等を有するので,これらを同時に投与することによつて,効果が一層顕著になることが期待される。一方B1代謝時にはB2が同時に排泄され,欠乏すると神経組織等に障害を起こす恐れがあるので,B1大量投与時にはB2も同時に投与することは合理的と考えられる。
 今回ビタミンB1,B2,B6,B12の複合剤であるノイロビタン錠が製造されたので,これを種々の原因による眼精疲労に使用して興味ある成績を得たが,本報では輻湊不足,輻湊衰弱および調節衰弱に対する効果について報告する。

手術

網膜剥離手術におけるGelfilmの使用

著者: 塚原勇 ,   稲富みさと

ページ範囲:P.969 - P.971

I.緒言
 Gelfilmは,米国Upjohn社で創成された吸収性ゼラチンフィルム(absorbable gelatinefilm)である。Gelfilmの厚さは約0.075mm,眼科用ゼルフィルム(Ophthalmic Gelfilm)は25×50mmの大きさのものが滅菌され,滅菌紙の中に密封され,さらに封筒のような小さな紙袋の中に密封されてある。乾燥状態では同じ厚さのセロファンと同様な外観であるが,水に湿らせるとやわらかくなり粘着性をおびてくる。Gelfilmは非抗原性で,生体に用いた場合に起こる反応性炎症はきわめて軽微である。組織間に挿入すると,挿入された組織とfilmの大きさによつて異なるが,1〜6カ月で吸収され,その間その部位の相隣りする組織間の癒着を遅延させる。
 米国その他の国ではかなり以前から眼の手術に応用された報告があるが,わが国でも最近植村1),生井2)両氏によるGelfilmの紹介がある。話は旧聞に属するが,1958年,私がサンフランシスコでPischel氏の網膜剥離の手術を見せてもらつた時に,Pischel氏は手術部の鞏膜と周囲組織との癒着を防いで再手術を容易にする目的でさかんにPischelを用いていた。

境界領域対談

小児の眼疾患

著者: 浅野秀二 ,   植村恭夫

ページ範囲:P.973 - P.982

 植村きようは子供の眼疾患というものを中心といたしまして,小児科の浅野先生においでいただき,いわゆる境界領域と申しますか,小児科医と眼科医のそれぞれに関連する問題についてお話を伺いたいと思います。
 小児眼科自体が,一昨年国立小児病院および大阪小児保健センターというものが生まれましてから,日本でなかば系統化されようという態勢になつてきたのでございますけれども,実際のおとなの病気に比べて,いままで眼科自体でも小児の眼疾患というのは,あまり重点が置かれなかつたと思います。もつとも子供の検査自体が非常にめんどうくさいという点もあるんでしようけれども,あまりかえりみられていなかつたというのが現状であると思います。

眼・光学学会

顕微鏡による眼調節(器械近視)—I:種々の条件下における眼調節

著者: 霜島正

ページ範囲:P.985 - P.990

I.研究の目的
 望遠鏡その他を覗いたときにいわゆる器械近視なる現象がおこることは古くよりいわれている1)が,顕微鏡の場合にも,それ固有の器械近視すなわち眼調節が発生することが考えられる。著者は次のごとき理由によりこの量を知る必要が生じたので,主として実験的にこれを求めることとした。
 a)対物レンズが変倍式(レボルバ式変倍,ズーム式連続変倍など)の顕微鏡にあつては接眼レンズはそれ自体が焦点調節可能の必要があり,検鏡者は自分の眼の屈折および調節の度数に合わせて接眼レンズの視度調節を行なわねばならない。これを行なわないと倍率を変換した場合,同焦点がくずれ像がぼけてしまう(Fig.1)。連続変倍の場合特に著しい像ぼけを感じる。この場合,視度調節の範囲,すなわち接眼レンズ移動量およびその範囲は使用者の屈折および調節の度数を推計したデータを基に決定すべきである。

顕微鏡による眼調節(器械近視)—II:連続検鏡時の眼調節

著者: 霜島正 ,   西師毅 ,   山下伸夫

ページ範囲:P.991 - P.996

I.研究の目的
 I1)において著者の1人は顕微鏡検鏡時の種々の条件下における眼調節ディオプタを測定し,いくつかの結論を得た。しかし,この測定値は,顕微鏡を覗き始めた初期における安定値を求めたもので,長時間検鏡した場合に調節値がいかになつていくかを求めたものではなかつた。
 一方顕微鏡を長時間連続使用する医学者・臨床検査技師,工場作業者等の中には,検鏡中,強い近視状態に移行することが,しばしばあり,これが疲労や近視の原因になるという説がある2)

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眼科治療基準点数と疑義解釈(乙)

ページ範囲:P.998 - P.999

処置
創傷処置,皮膚科処置
△麦粒腫切開又は霰粒腫を実膚面から切開摘出した翌日から数日に亘つて創傷処置3.0点が請求できる。霰粒腫では皮膚面から切開摘出した旨を備考欄に記載すること。
△眼瞼皮膚炎については皮膚炎については皮膚科処置3.0点のほか,ハイドロコーチゾン軟膏を使用した場合は0.2グラム6.0点を,プレドニソロン軟膏では0.2グラム4.8点を加算して請求のこと。

第20回臨眼グループディスカッション

網膜および視路の電気生理

著者: 浅山亮二 ,   永田誠

ページ範囲:P.1001 - P.1003

 網膜と視路の電気生理研究班は従来臨床ERG研究班として昭和34年以来,京大浅山教授を班長として活動を続け,我国における臨床ERG研究者相互の情報交換と研究レベルの向上に着実な歩みを続けてきたものであるが,1965年9月第4回ISCERGシンポジウムが箱根で開催され,本研究班が当初の目的とした我国における臨床ERGの基礎づくりの段階はほぼ達成せられたと考えられるにいたつた。そこで今回のグループディスカッションからは新たに視覚誘発電位(VER)をはじめ視路一般の電気生理の研究者を加えて,より広い立場から眼科学における視覚に関する電気生理の研究グループとして再出発することとなつた。
 第1席,今泉,田沢(岩手医大眼科),猪股(岩手医大生理)等は,眼圧と網膜常存電位の関係を家兎,猫,犬およびモルモットについて検討した。

白内障

著者: 樋渡正五

ページ範囲:P.1005 - P.1008

 昭和41年11月12日午前9時よりの白内障のGroupDiscussionは,私の教室で御世話することになつたが,当日は土曜日で午前9時よりというのが約30分遅れて9時半より開始になつた。まず冒頭の岩手医大の「白内障術式と合併症頻度」の講演が終るや,一斉に各大学の教授および助教授級の方々からの討論,追加が活溌に行なわれ,殊に術式の選択方法と,合併症の問題,球後注射の問題や,局所麻酔の問題,器械の問題等が一斉に討論の場をにぎわして,この一席で大部分主要な問題点は出つくしの感があつたが,その後第1席の討論だけで実に45分間という時間を要した。その後も皆様の熱心な討論が各演題ごとに行なわれて,極めて有意義な数時間を持ち得たことを参加の方々と一緒に深謝する次第であると共にマイクや録音設備に不行届の点があつて,皆様のことごとくの論旨を手際よく纒めることが出来なかつたことは一に私の責任であり,この点誌上をかりて深く御詫び申し上げるしだいであります。また活溌な討論とこれに対する質疑が各討論者間でも頻繁に行なわれたため記録に先生方の名前や内容の要旨を細大洩らさず記載出来なかつた点も多々あることと思われ,その点も誌上で深く御詫び申し上げます。

眼の形成外科(第2回)

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.1009 - P.1011

 大橋教授より今回は眼の形成外科の総括的のものについて,自由に思う存分討論して研究の実を挙げて頂きたいとの拶挨があり,京府医大の百々隆夫博士が座長に指命された。

印象記

第71回日本眼科学会総会(2)

著者: 石川哲 ,   松井瑞夫 ,   奥田観士 ,   桑島治三郎 ,   百々隆夫

ページ範囲:P.1013 - P.1021

 第1日の疲れのためか,または,電気生理学関係の演題がずらりと並んでいるせいか,会場の聴衆は誠に少なく,私が顔見知りの先生だけがちらほら来ておられるといつた状態で講演が始まつた。私が受け持つた9題の中には全体的な印象として非常に聞きごたえのあるもの,あるいはなぜこういう研究をしているのだろうと疑問を持つたものなどがあつたが,私自身も過去の発表の中で聞いていてわかりにくいなどとお叱りを印象記の中で賜つた経験もあるので,今回は御発表の諸先生方から当然批判されることを覚悟の上でこの印象記を引き受けることにした。
 第80席内田氏(京大)は最近cryotherapyが,白内障,網膜剥離などに盛んに行なわれているが,それがどのような影響を網膜および視路に与えるであろうかということが,氏によつてなされた。結論的にはERGではc,a,b波の順に振幅に変動が現われるが,一方視覚誘発電位(VER)の方は変化が出なかつたとのことである。臨床的にもcryotherapyがどのような影響を視覚系に与えるかは非常に重要な問題である。私の意見として,なぜ変化がC波から始まるのか,またどうしてVERには変化が出ないのだろうかという面が最も知りたいし,同時にいろいろ条件を変えてcryoretinopexyを行なつた時の電気的反応と組織学との対比が知りたい。今後ぜひとも追求していただきたいと思う。(なお本演題は討論なし)

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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