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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科22巻10号

1968年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・132

Bowen病およびその浸潤化したと思われる各1例

著者: 三井幸彦 ,   井上慎三 ,   布村元

ページ範囲:P.1267 - P.1268

〔解説〕
 上皮内上皮腫(Bowen病)は眼科領域では1943年McGavicによつて始めて報告された。欧米では相当数の報告があるが,本邦では報告が少ない。Bowen病は主として眼球結膜と角膜に発生し,眼瞼結膜に原発することは非常に稀てある。Bowen病は一種の前癌状態である。その悪性化の頻度は約10%位と言われている。
 症例1〔第1図):86歳男。左眼外側輪部2時の部を中心として,角膜と眼球結膜を被う乳白色膠様の腫瘍を認める。腫瘍の表面は凹凸不平で一部は花野菜状を呈する。組織的には腫瘍の増殖は上皮内に限局し,上皮中層には異常な早期角化が見られる。その所見は症例2の第3図と同一であつた。臨床的,組織的に定型的なBowen病と考えられる。腫瘍を摘出したが,その後再発はしない。

綜説

網膜剥離ならびに網膜剥離準備状態に対する光凝固の経験

著者: 岸本正雄

ページ範囲:P.1269 - P.1276

 まず西独Carl Zeiss社の光凝固器の欠点ともいうべき点につき批判を加えた。
 網膜剥離準備状態ともいうべき眼底病巣に対する剥離予防処置としては,その部が光にて凝固が可能な限り,本法が他法に比してあらゆる点で勝れている。
 現に剥離の発生しているものに対する応用に関しては,本器の本命ともいうべき黄斑円孔閉鎖という目的に対しては意外に奏効が悪いことを指摘した。ただし黄斑部以外の裂孔で光凝固が可能な程度の軽微な剥離のあるものには奏効は必ずしも悪くない。
 剥離していない部分にも裂孔,変性巣のある揚合には,剥離部に対して手術を行なう前または術後に光凝固を行なうことはきわめて合理的である。
 ジアテルミー凝固と併用して裂孔縁凝固の完全を期すること,種々のbuckling operationsと併用して裂孔の光凝固を容易にして,閉鎖を企てるという方法も,上手に利用すれば成功率の高い仕方である。
 また手術後,凝固不十分な部の補修に利用することも,簡便賢明な方法である。
 しかし光凝固法は,画期的なものには違いないが,剥離診療において,従在から慣用されている方法(ジアテルミー法)を駆逐してしまうほど重要なものではなかろうという私見を示唆した。

臨床実験

緑内障,疑緑内障非手術眼の遠隔成績

著者: 山之内卯一 ,   三島恵一郎 ,   酒井忠 ,   白井彰 ,   中村晏子 ,   山下荘之助

ページ範囲:P.1277 - P.1284

I.はじめに
 われわれが緑内障の診断を下した場合に,患者から,「私の視力はいつまで保つでしようか」というような質問をしばしば受ける。しかし,われわれの教科書より得た知識では,急性うつ血性緑内障はともかくとして,単性緑内障,特に早期に発見できたものでは,その長期予後はもちろんのこと手術時期に関しては確信をもつて十分な説明はできない。また,緑内障手術を宣告された患者が転々と主治医を変えているのもよく見かけられることである。かれらははたして,どのような結果になつているのであろうか。これらの緑内障予後が明らかにされることにより,薬物治療の限界を考察するのに役立つと思われる。かかる観点から今度われわれは,緑内障,疑緑内障にして手術を行なわなかつたものの遠隔成績の調査を行なつたので,その結果を報告し,参考に供したい。

57歳の女性に見られた眼窩横紋筋肉腫

著者: 升田義次 ,   熊谷愛子 ,   森田嘉樹

ページ範囲:P.1285 - P.1288

I.緒言
 眼窩に発生する横紋筋肉腫については,最近,海外ではかなり多数の報告1)〜5)が見られ,小児における眼窩腫瘍の中では最も頻度の高い原発性悪性腫瘍として注目されている。一方,わが国においては,なお,ごく稀な疾患とされ,その報告もわれわれの調べたかぎりでは7例6)〜12)にすぎない。
 今度われわれは,57歳という比較的高齢の婦人に見られた眼窩横紋筋肉腫の1例を経験したので報告する。

眼症状を呈した非特異性脳脊髄炎症(いわゆるSMON)の4例

著者: 小沢博子

ページ範囲:P.1289 - P.1296

I.緒言
 近年わが国の各地で腹部症状を伴う脳脊髄炎症の症例が相ついで報告され1)〜14)25)〜28)30)32)34),昭和39年の日本内科学会のシンポジウムにおいては,この問題が取りあげられ15)〜24),ひとつの疾患単位ないしは「特異な所見を有する一群の疾患」と考えられるにいたつた。本症のさいには,視力障害を伴い,球後視神経炎と診断される例がかなり多いのであるが,これについて眼科方面での報告は茂木ら37),桑島ら36)38)40),丸尾ら39)および杉浦ら41)の報告があるのみである。著者は最近本院内科で本症と診断され,眼科的に所見を有した4例を経験し,眼症状の経過につき詳しく観察する機会を得たので報告する。

コンタクトレンズを着用している患者に見られた興味ある黄斑部損傷の1例

著者: 進藤晋一

ページ範囲:P.1297 - P.1299

I.まえがき
 最近,私はコンタクトレンズを着用している患者に見られた興味ある黄斑部損傷の1例を経験し,種々文献を検討したが,同じような症例が見当らぬので報告する。

結膜下に増大,悪性化した炎性眼窩淋巴腫

著者: 平田史子

ページ範囲:P.1301 - P.1306

I.緒言
 球結膜下に出現し,一見良性腫瘍と思われた腫瘤が,病理組織学的に悪性淋巴腫と判明し,その後再手術と検索によつて,眼窩内の炎性淋巴腫瘍の一部が,悪性に転化したものであることを知つたのでここに報告する。

手術

白内障手術後の前房消失例に対する20%マニトールの応用

著者: 高橋禎二 ,   河村淑子

ページ範囲:P.1307 - P.1310

I.はじめに
 白内障手術後の前房再生遅延および前房再消失に対して,Diamoxなど投与の報告1)〜6)は多数あるが,無効の場合もみられる。
 今回われわれは,同様の症例に対して,20%マニトール点滴投与を行ない,著しい効果を見ることができたので,50%グリセリン経口投与の効果と併せて報告する。

第21回臨眼グループディスカッション

小児眼科

著者: 湖崎克・他

ページ範囲:P.1311 - P.1315

午前の部
パネルディスカッション
テーマ「未熟児の眼科的管理
1.未熟児管理の最近の動向
 国立小児病院における未熟児の死因は,肺硝子膜症,頭蓋内出血および先天奇型が最も多く,感染症,肺出血がこれにつぎ,入院が遅れたために交換輸血を行なつたにもかかわらず,核黄疽で死亡したものが少数あつた。未熟児の死亡を減少させ,かつ後遺症を予防するために,これらの疾患に対する適切な管理が重要である。
 チアノーゼを示す未熟児には,チアノーゼを消失させる最低濃度の酸素を投与する。呼吸障害を有する未熟児には高濃度の酸素を投与しなければならないことがあるが,この場合は動脈血PO2を測定することが望ましい。われわれは側頭動脈より採血し,エレメーターでPO2を測定している。酸素投与中の未熟児のPO2は50〜150mmHgの間にあつたが,少数例は50mmHg以下,あるいは160mmHg程度の値を示した。

眼の形成外科(第3回)

著者: 大橋孝平・他

ページ範囲:P.1317 - P.1320

A.講演
 1.光凝固による結膜血管腫の治療
 前眼部疾患に対する光凝固法の応用のうちで,形成領域と関連のある結膜血管腫に対する光凝固治療について症例を挙げて説明した。
 結膜血管腫は光凝固後,結膜出血を見ることもあるが,2週後位ではほとんど一時的な炎症は消退して血管腫もきれいに消失し,結膜の血管腫に対する限りは,十分治療しうるので,ジアテルミー法よりもはるかに有利簡単である。

遺伝性眼疾患特に網膜色素変性(第3回)

著者: 青木平八

ページ範囲:P.1321 - P.1325

1.視神経萎縮の統計,おもに遺伝学的考察
 1959年,1964年の2度にわたり盲学校児童生徒の失明原因を調査した結果,失明者は減少しているが,視神経萎縮は相対的な増加の傾向を示した。性比では中毒外傷によるものが4以上,先天性のものは1.8から1.6,原因不明のものは2.5となり,盲児童全体の1.5から1.4より高率である。未熟児頻度は先天性散発例が18%となり,日本の平均より高い。近親婚頻度では同胞例,その他の親戚例で特に女子に高率で,遺伝形式の推定では,親罹患例の子らの分離比から優性遺伝を仮定してみたが有意性は得られず,同胞例105例中,男子のみ罹患している43例につき伴性劣性遺伝を仮定し,これを満足した。男女罹患例では,同様の分離から常染色体劣性の仮定を満足せず,女子のみの羅患例では同様の仮定を満足した。
 親戚例については家系図より,伴性劣性推定40%,劣性推定59%,不明2%となつた。以上から視神経萎縮においては,伴性劣性遺伝のみならず,常染色体劣性遺伝もかなり多いこと,未熟児頻度の高い散発例では,遺伝以外の因子の介入が推察される。

眼・光学学会

スリットランプ装置による水晶体曲率などの測定の一方法(III)

著者: 木村健 ,   中島章 ,   中川治平

ページ範囲:P.1327 - P.1331

I.はじめに
 生体における眼屈折要素の測定は,角膜を除き非常に面倒で,臨床的に簡単に測定することが困難である。近年,超音波による測定方法1)が発達し,眼軸の計測は簡単に行なえるようになつたが,水晶体計測はまだまだ複雑な手続を必要とする現状である。
 われわれはphacometryの手法および計算を簡略化するため,「スリットランプ装置による水晶体曲率などの測定の一方法」2)3)を発表してきたが,今回,1960年Niesel4)が試みた手法とポラロイドカメラを取り入れてこの方法を発展させ,臨床的な測定がきわめて容易に行なえるように試みた。

細隙灯顕微鏡写真撮影について(その2)—諸種白内障の細隙灯顕微鏡写真

著者: 松浦啓之

ページ範囲:P.1333 - P.1335

I.緒言
 細隙灯顕微鏡による写真撮影は,ことにこの数年来,わが国においても種々の工夫,改良が試みられ,一応眼部の諸疾患における細隙灯写真像が見られている。しかし日常の診療にさいして,細隙灯顕微鏡にて最もしばしば観察される部は,角膜および水晶体であろう。角膜の細隙灯写真については,すでに武田9)の報告が見られるが,著者は今回,諸種の白内障の細隙灯写真を撮影したので報告する。

Argon Gas Laserによる網膜光凝固の実験

著者: 野寄達司 ,   馬場賢一 ,   小松伸弥 ,   沖坂重邦 ,   小林春洋

ページ範囲:P.1338 - P.1342

I.はじめに
 近年種々のlaser装置が開発されて(Tab.1),すでに固体laser (ruby,neodymium,glassなど)は,その強いエネルギーを利用して,医学的応用が試みられている。特にruby laserは,網膜光凝固機として実用化され,すでに数年を経ている1)。またHe-Ne,Ar,Co2,N2,Kr,Xeなど多くのガスについて,laser発光の研究がすすめられている。これらは固体laserがパルス発光を原則とし,連続発光に技術的困難を伴うのと反対に,そのほとんどは連続発光であり,固体laserよりコヒレンシーが高いなどの特徴があつて2),工業方面に応用が開拓されている。
 これらのgas laserのうちで安定性の高いHe-Ne gas laserはすでに光学機械への応用が行なわれている。しかしその波長が長い点では,ruby laser光に近似であるが,大出力を得難いために医療機械としては実用化されていない。

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第22回臨床眼科学会演題一覧

ページ範囲:P.1348 - P.1349

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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