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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科22巻11号

1968年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・133

クロロキン網膜症

著者: 管原憲 ,   志賀信夫

ページ範囲:P.1363 - P.1364

〔解説〕
 クロロキン製剤による網膜症が報告されてから久しいが,その定型的眼底写真は比較的少ない。われわれは,最近約10症例について長期間経過観察する機会に恵まれ,その病型も必ずしも同一でないことを知つた。そのうち,比較的早く症状を現わし,中心暗点を示す型や,慢性に経過して視野の狭窄を示す型などがあることがわかつた。この図に示す症例は,そのうち前者に属するもので,その眼底写真,螢光眼底写真および視野を供覧する。

臨床実験

糖尿病性眼合併症の実態—1.総論ならびに白内障について

著者: 福田雅俊 ,   武尾喜久代 ,   工村裕子

ページ範囲:P.1365 - P.1372

I.緒言
 近年,糖尿病の眼合併症に対する関心が医師および患者の間で高まつてきた結果,われわれ眼科医の外来を訪れる糖尿病患者の数が急速に増加しつつある。
 しかし,これらについての正しい理解を持つている医師は必ずしも多くなく,その多くは患者から視力に関する訴えのない場合は合併症のないものと放置したり,医師(大半は内科医)自身の簡単な直像鏡による眼底検査のみで満足しているのが現状である。著者の1人福田は,最近,糖尿病の眼合併症に関する啓蒙的な講演を,東大本院における実態調査の結果を中心に都および区の医師会において行なつたが,後にそのように多数の眼合併症が存在するとは考えられぬという開業医よりの反論があつた。もちろん,われわれの外来を訪れる糖尿病患者の中には,眼科的な主訴を持つているものが少なくないのであるから,それがただちに糖尿病者の実態とはいえないと思うが,まだまだわれわれの啓蒙的な努力の必要性の痛感された次第である。そこでわれわれは眼科外来を訪れた糖尿病患者に合併した眼合併症について,最近3年間の東大本院の実態調査結果と,これよりも地域病院的色彩の強い目白台の東大分院における最近3年半の同様の調査成績とを合わせて報告したいと思う。

春季カタルについて

著者: 河瀬澄男 ,   佐伯譲 ,   桜井正則 ,   市辺恒雄

ページ範囲:P.1375 - P.1379

I.はじめに
 昭和28年小口,内木氏らにより「近年多発せる急性春季カタル」と題して発表され,引き続き昭和29年上岡,伊藤氏らの追加報告があつた。本症の原因についてはまだ不明の点も少なくないが,花粉説が唱えられ小口氏らの詳細な報告がある。一方急性春季カタルの存在に関しては,すでに一,二の教科書にも記載されているが,われわれ第一線の実地医には,学生時代に習得した春季カタルすなわち結膜に石垣状の乳嘴の増殖,牛乳をかけたような混濁というイメージが浸透しているためか,一般にはまだ本症に対する認識が薄いように思われる。
 そこでわれわれは今夏比較的多数の春季カタルを経験したので,そのいくつかを症例報告的に述べる。

全身症状を伴つた進行性強角膜周囲炎と思われる1症例について

著者: 倉田浩二 ,   外間英男

ページ範囲:P.1381 - P.1384

I.緒言
 進行性強角膜周囲炎の症例は,現在までにかなり多数報告されているが,最近われわれは,いくつかの全身症状を伴い,きわめて悪性の経過をたどつた進行性強角膜周囲炎類似の症例に遭遇したのでここに報告する。

合併散瞳暗室緑内障負荷試験—その1正常眼における成績

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.1385 - P.1388

I,緒言
 点眼散瞳試験ならびに暗室試験は,特に狭隅角緑内障診断に適する負荷試験であるが,広隅角緑内障にも陽性のことがある。両試験の作用機序は多少異なり,暗室試験においては,局所性の他に中枢性の因子も関与していると考えられ(Fei—genbaum, Magitot, Weinstein, Higgit, Thiel&Hollwich, Ungerら),事実両試験の成績間に著しい相関がない(Bloomfield&Kellerman,真壁)ことから,散瞳,暗室試験を合併して同時に施行することにより,より高い診断的価値が期待される。
 以上の考えに基づき,合併散瞳・暗室試験を試みた。まず正常眼につき実験して,陽性判定基準を算定した。

外眼筋の組織化学的電子顕微鏡学的研究—II.筋線維型の微細構造

著者: 箕田健生

ページ範囲:P.1389 - P.1395

I.はじめに
 著者は前報において外眼筋の筋線維型に関する組織化学的研究を報告したが,本報では筋線維型に関する電子顕微鏡学的研究について述べることにする。
 1961年,Hess1)はモルモットの外眼筋を電顕下で観察し,内部構造が異なる2種類の筋線維が存在することを始めて報告した。すなわち第1型筋線維は横断切片で観察すると,筋細胞内の個々の筋原線維束(Myofibril)が明瞭で,周辺を筋小胞体が規則正しく取り囲んでいて,隣接する筋原線維束とは判然と区分されている。このような内部構造はKrügerが骨格筋線維で,光学顕微鏡下で認めたFibrillenstruktur型筋線維に一致するものであつた(前報参照)。また縦断切片で第1型筋線維は,やはり明瞭に区分された筋原線維束を示し,かつZ板は規則正しく筋長軸に垂直方向にまつすぐ走つている。一方,第2型筋線維では筋小胞体の発達が悪く,個々の筋原線維束の境界が不明瞭で,隣接する筋原線維束と互いに連続して見える。また,Z板は不規則でジグザクの走行をとる。そしてこのような内部構造は,KrügerのFelderstruktur型筋線維のそれに一致する。さらにHessは,以上述べた2型の筋線維の微細構造はカエル,ニワトリの骨格筋で見出された2型の筋線維すなわちtwitch fiberとslow fiberの微細構造の特徴にほとんど正確に一致すると述べた。

C値と眼圧および屈折

著者: 小島克 ,   中村泰江

ページ範囲:P.1397 - P.1402

 屈折と眼圧,特にC値の面を調べた。
I.C (0.19以下)率(第1〜4表)
 1)一般に眼圧28〜20mmHg群には異常C (0.2以下とする)は60%,眼圧19mmHg以下でも34%(第1表)みられる。
 2)これを年齢別にみると,異常Cは眼圧19〜15mmHgのさい,1〜5歳で23%,15〜39歳で46%,40歳以上で36%位にある(第2〜4表)。

Flicker ERDGの臨床応用

著者: 宇佐美恵美子 ,   E. HENKES

ページ範囲:P.1403 - P.1410

I.はじめに
 Electroretinodynamographyは1963年Wul—fingにより紹介された。すなわちBailliartOphthalmodynamometerを用いて眼球を加圧しながら同時にERGを記録する方法で,彼は頸動脈疾患においては,眼底血圧測定より臨床的に意義があるとした。われわれは彼のテクニックを用いてERDGを試みたが,Bailliart眼底血圧計を強膜に置き,関電極を角膜上に置くと,電極をできるだけ小さくしても,強膜面を加圧すると,角膜上の電極が浮き上り,角膜と電極との接触が不完全となると,またBailliart眼底血圧計で一定圧を一定時間正確に加えることは不可能で,いささかの加圧計の動きも,ERGの記録に大きなArtifactsを生ぜしめ,臨床的に信頼しうるデータを得られなかつた。
 考うるに,これら操作上の困難が,Wulfingに続く報告を生まなかつたのではないかと思われる。そこでわれわれはsuction-cup typeの電極を発案した。Perilimbalにこの電極を設置し,Fig.1のごとき装置に接続する。まず注射筒を吸引することによりコンタクトレンズと角膜面との間に生食水を満たした。これは銀線を角膜面へよく電気的に接触させるためと,眼底血圧を直接このレンズをのぞきながら測定可能にするためである。

Ganglion Semilunareへの転移癌の眼症状

著者: 小原博亨 ,   中村一夫 ,   宮島忠 ,   阿久津澄義 ,   新城長昭

ページ範囲:P.1412 - P.1416

I.緒言
 半月状神経節ganglion semilunare, gasseriに発生する腫瘍ははなはだ稀である。この腫瘍にはganglion semilunareの原発のもの,脳の他の部からの浸潤または転移によるものとがある。脳以外の臓器の腫瘍からの転移はさらに稀であり,眼科領域ではF.B. Walshの乳癌の転移の1例の経験だけであり,その他の領域でも3例を数えるのみで,わが国での報告は寡聞にして知らない。
 われわれがここに報告する症例は,乳癌があり,手術および放射線療法により原発巣には再発していないことは,剖検により確かめられているが,肺に転移癌を形成し,さらにその転移癌から発生したか,あるいは肺と同時に転移して発育がとどまつていて,その後増大したものか,ganglionsemilunareに転移巣を作り,その部の種々の脳症状とともに特有な眼症状を呈し,その症状群はまことにgradenigo's syndromeと紛らわしく,その両者の鑑別にも必要なので,その小経験を報告する。

網膜中心静脈閉塞症に関する研究—第1報統計的観察

著者: 杉田隆

ページ範囲:P.1417 - P.1422

I.はじめに
 網膜中心静脈閉塞症は,1878年Micher7)が記載して以来,多数の研究報告1)6)14)16)があり,その統計的観察も本邦においては,三輪8),余18),柳田17),海老原他4),田野12),大野10)らにより行なわれている。著者は昭和37年から昭和42年までの6年間に久留米大学眼科学教室を受診した網膜中心静脈閉塞症78例について,その統計的観察を行なつたのでここに発表する。

第21回臨床眼科学会 グループディスカッション

網膜と視路の電気生理

著者: 永田誠

ページ範囲:P.1425 - P.1429

 網膜と視路の電気生理研究班は,もとの臨床ERG研究班を母体として昭和41年再発足したものであるが,この研究班の伝統として,今回も講演討論には原則として時間制限を設けず,討論の記録も取らぬこととした。
 最近臨床眼科学会をはじめ,各地域学会でもグループディスカッションが盛んに行なわれるようになつたことは誠に結構であるが,一面このような小グループによる討論本来の利点が失われつつあるのではないかと考えさせられる点がある.グループによつてはまつたく小学会の観を呈し,講演時間も討論時間も制限せざるをえなくなり,しかも原著論文を提出することとなると,これは学会の会期を延長して演題消化数を増したことにほかならない。それはそれでよいのかも知れないが,われわれが臨床ERGグループディスカッションにおいて経験してきたような学会とは異なる自由な討論から得られた深い充足感とか,情報交換による参加者のすみやかなレベルアップとか,研究班システムが本来の目的とした成果をすべてのグループに期待することは無理な願いであろうか。本研究班では講演は討論を誘発する引き金と考えているので,討論時間のほうがはるかに長くなることもしばしばである。また討論のテンポも早く,記録を取つていては討論本来の目的が失われる恐れがあるので,今回も従来通りの運営とした。

神経眼科

著者: 井街譲

ページ範囲:P.1431 - P.1439

 11月10日,今冬初めて襲来した季節はずれの寒波のために,朝から肌寒いうす曇りの国立教育会館の第4研修室で85人の参会者を得て,午前9時定刻より,活発な演題の発表,質疑,応答が行なわれた。
 本会本来のあり方として,一般学会形式のように時間制限を行なわず十分な討論をつくすことを主旨とすると,1日15題で限度と考えられたが,回ごとに演題がふえてきたことは当然の成り行きとはいえ,やや悲鳴をあげねばならぬ状態になつた。

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「医心方」について

著者: 中泉行正

ページ範囲:P.1444 - P.1445

 日本に現存する最古の医書で,平安時代を代表する医書である。また隋や唐の医学を伝える貴重な資料で,文献上からも世界的価値のある大部の医学全書である。
 この本は漢の霊帝の子孫と伝えられる丹波宿禰康頼が円融天皇(第64代)の天元5年(982)に着手して,永観2年(984)に完成し,時の天皇に献上した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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