icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科22巻12号

1968年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・134

螢光造影法により発生機序の明らかとなつた網膜色素線条症の黄斑部変化

著者: 福田雅俊 ,   林恵美

ページ範囲:P.1459 - P.1460

 黄斑部の出血,変性を伴う疾患は,けつして数少ないものではないが,近年螢光眼底撮影法がわが国でも臨床上実用化されてからは,これが黄斑部病変の診断に有用な検査法となつてきた。本症例も黄斑部の多彩な病変が,同時に認められた網膜色素線条症と同一の病変に由来するものであることを螢光眼底造影検査によりはじめて推定し得たものである。
 検眼鏡的所見(第1図):左眼は黄斑部を中心に2.5〜3乳頭径の直径を持つほぼ円形の網脈絡膜部が円盤状に腫張し,腫張部位は全体に混濁し,辺縁部には出血斑および硬性白斑が散在している。乳頭の耳側縁はこれに接するため境界はやや不鮮明で,輪状コーヌス類似の脈絡膜萎縮巣が乳頭を取り巻き,その周囲に比較的軽度ながら放射状に延びる色素線条も認められる。他の網膜および網膜血管系にはK.W.分類Ⅱ群,Scheie分類高血圧性変化1〜2度,動脈硬化性変化2度程度の高血圧およひ動脈硬化性の変化を認める以外異常なし(右眼にも黄斑部に瘢痕性萎縮巣あり)。

綜説

大動脈炎症候群をめぐる眼科的諸問題

著者: 浦山晃

ページ範囲:P.1461 - P.1468

 大動脈炎症候群とは,大動脈および基幹動脈の特殊な動脈炎により発現する多彩な症候を総括する病名で,いわゆる高安病,脈なし病,異型大動脈縮窄症などを包含し,それぞれの症候単独に,あるいは種々の組み合わせからなつている。
 本現の沿革を顧みると,歴史的には,最初眼科領域に発している。すなわち,明治41年高安右人氏の症例報告「奇異なる網膜中心血管変化の一例」ならびに同席の大西,鹿児島氏の症状追加にはじまり,爾来,中島,岡村,百々,柳田,その他多くの本邦諸家の追究を経て,広く海外にも高安病Takayasu's disease, Takayasu Krankheitとして認められるに至つたことは,誇らしくも周知の事実である。

境界領域対談

老人と眼

著者: 樋渡正五 ,   村地悌二

ページ範囲:P.1471 - P.1481

 樋渡村地先生,今度日本医大に,老人病研究所臨床部の教授としてこられましたね。私と同級生でもあり,老人科の権威の先生がこられたので非常に楽しみにしているんです。
 眼科と老人科は,非常に関連があると言われています。きようは,老人に多い病気--高血圧とか糖尿病,あるいは動脈硬化などありますが--と目とが,いかに関係が深いかを,眼科の先生方にわかりやすいようにお話しいただければ,幸いに存じます。

臨床実験

螢光造影法により発生機序の明らかとなつた網膜色素線条症の黄斑部変化

著者: 福田雅俊 ,   林恵美

ページ範囲:P.1483 - P.1486

I.はじめに
 網膜色素線条症(Grünblad-Strandberg症候群)が眼底後極部の出血を伴う場合のあることは,多くの症例報告を通じて古くからよく知られている事実であるが,時にその黄斑部の変化が,本来ある網膜色素線条症に由来するものか,あるいは他の原因によるものかを判定するのに困難な場合もある。われわれは最近このような症例に遭遇し,螢光眼底撮影の結果,はじめて診断を明確にすることができた1症例を経験したのでここに報告したい。

内分泌性眼球突出を伴う外眼筋麻痺

著者: 高瀬正弥 ,   金子明博

ページ範囲:P.1487 - P.1495

I.緒言
 内分泌性眼球突出に伴う外眼筋麻癖に関しては,本邦眼科領域においても多くの報告が認められるが,その本態に関してはまだ明らかにされていない点が多い。
 最近,著者らは興味ある本症症例を経験したのでここに報告する。

弱視治療に関する二,三の問題点—その4 Pleopticsの効果判定に関して

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.1497 - P.1504

I.緒言
 Bangerter,Cüppersらにより提唱せられた新らしい弱視治療法は,従来遮閉法を行なうしかなかつた弱視の治療に,種々な訓練器械,訓練方法を取り入れ,pleopticsとして独立した領域を作るに至つた。しかるに近年,これら訓練の効果に関し,疑問とするもの,有効例はあるにしても期待されたほどのことはないとする報告がみられ,早期の遮閉法による予防,早期治療が強調される傾向になつてきた。元来,Bangerterらも,弱視は早期発見,早期治療(遮閉法)がすべてに優先することを強調しており,英国のように,これが早くより行なわれているところでは,Banger—terらの訓練法の普及は欧州ほどにはなかつた。現実問題として,この乳幼児の遮閉法ですべて解決できるものならば,pleopticsは極言すれば不用ということになる。しかし本邦の現状をみても,乳幼児の遮閉法の施行がそれほど徹底しているとは思われず,斜視弱視,不同視性弱視が,学童期に入つてはじめて眼科医を訪れる症例も少なくない。
 本邦における弱視や斜視に対する診療の普及,熱意は十分とはいえない。その理由は,いくつかのものがあげられるが,Bangerter法,Cüppers法の器械や設備,orthopticsの器械に要する経費,訓練士の不足など,経済的問題や,技術的面などがひとつの理由としてあげられる。

全身に転移をきたしたRetinoblastomaの1剖検例について

著者: 三国郁夫

ページ範囲:P.1507 - P.1514

I.緒言
 retinoblastomaにて死亡する症例はまれでないが,これを剖検する機会を持つことは比較的少なく,わが国においては30数例の報告をみるにすぎない。なかんずく両眼性retinoblastomaの剖検例の報告は著者の調べ得た範囲では,いまだ4例にすぎない7)12)18)20)
 著者はたまたま両眼性retinoblastomaの1例を剖検する機会を得たので,ここに報告する。

下斜筋の付着部異常を認めたV型外斜視の1例

著者: 早川正明 ,   魏昭博 ,   石川哲

ページ範囲:P.1515 - P.1518

I.緒言
 下斜筋の先天的な付着部異常は,他の直筋のそれに比べて比較的多く認められるものであるが,このたびわれわれは典型的なV型外斜視の1例を経験し,その手術にさいし,いまだ文献に記載されていない両側の下斜筋の付着部異常と外直筋の部分欠損を認めたので,ここに報告したいと思う。

合併散瞳暗室緑内障負荷試験—その2緑内障眼における成績

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.1519 - P.1522

I.緒言
 前篇に合併点眼散瞳暗室試験を考案し,十分多数の正常眼に試みて,生理的眼圧上昇限界値を推計学的に算出した。作用時間が短く,効果も比較的軽度の副交感まひ剤Mydriaticum-Rocheであるが,その点眼と暗室試験の併用で,正常眼に平均約3mmHgの有意の眼圧上昇を認め,圧上昇7mmHgまたはそれ以上を疑い,圧上昇9mmHgまたはそれ以上を確実に病的と見なし得ることが知られた。
 本篇では初期緑内障眼(広隅角単性緑内障および狭隅角緑内障)における成績を報告し,特に広隅角単性慢性緑内障について検討する。

網膜静脈閉塞症に対するウロキナーゼ球後注射の効果

著者: 玉井嗣彦

ページ範囲:P.1528 - P.1533

I.緒言
 網膜静脈閉塞症は,日常しばしば経験する疾患であるが,決定的な治療法はまだない。
 今回,線溶酵素賦活剤であるウロキナーゼを使用して,本疾患の治療を試みたので,ここにその結果を報告する。

フィブリノリジン(プラスミン)による眼内出血の治療成績

著者: 太根節直 ,   大林一雄 ,   神前正敬 ,   向後富次男 ,   松崎浩

ページ範囲:P.1535 - P.1539

I.緒言
 フィブリノリジン(プラスミン)は線維素溶解酵素と呼ばれ,血漿に存在する蛋白分解酵素で,生体内においては創傷治癒過程における不用な血塊の自然消失,血管フィブリンによる閉塞の防止と流通性の確保などの作用を有すると考えられている。
 われわれが今回使用したフィブリノリジン−ミドリ(プラスミン)はミドリ十字KKが新しく開発した国産品で,人血漿中のプロフィブリノリジン(プラスミノーゲン)を分画精製し,ウロキナーゼ−ミドリ(Urokinase)をもつて活性化してフィブリノリジンに転化し,凍結乾燥したもので,乾燥前に60℃10時間の加熱処理を加えてあるので,血清肝炎感染に対する安全が保証され,乾燥状態では低温(たとえば5℃)に貯えれば安定であるといわれている。

毛様筋麻痺剤Cyclogylの使用について

著者: 岩田脩 ,   坂井淳 ,   森哲也 ,   津坂洋子

ページ範囲:P.1542 - P.1551

I.はじめに
 理想的な毛様筋麻痺剤の出現は,われわれ日常の屈折検査や近視の治療に当つて大いに待たれるものである。従来atropineやhomatropineが用いられ,最近Tropicamideその他この面での努力が常になされているが,実際の使用に当つての問題点がなお多く残されている。新しい毛様筋麻痺剤Cyclogylは米国においてすでに高く評価されているが,わが国ではまだあまり使用されていない。
 今回このCyclogylの日本人における残留調節と,使用のさい問題となる眼圧,房水流出への影響の2点につき,ミドリンPと比較検討したので報告する。

--------------------

臨床眼科 第22巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?