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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科22巻2号

1968年02月発行

雑誌目次

特集 第21回臨床眼科学会講演集(その1)

Behçet氏病について—最近16年間の当教室における統計的観察

著者: 間宮淳子

ページ範囲:P.105 - P.110

Ⅰ.緒言
 1937年,Hulsi Behçet1)は,口腔粘膜の有痛性再発性潰瘍,陰部潰瘍および前房蓄膿を伴う再発性虹彩炎を3主徴とする症候群を発表したが,それ以前にも,以後にも,皮膚・粘膜・眼を侵す類似の疾患が種々の名称で報告され,多くの議論が重ねられている。1950年Robinson2)は皮膚・粘膜・眼に滲出性変化をきたす一群の類似疾患を総括して,これをmuco-cutaneo-ocular syndromeと呼ぶことを提唱した。Behçet氏病は,この中の一型で,本邦においても,近年多くの研究発表がなされている。
 当眼科で,過去16年間に経験したBehçet氏病の患者につき,統計的観察を行なつたところ,2,3の知見を得たのでここに報告する。

ベーチェット氏病およびその他の疾患に対するγグロブリンの使用経験

著者: 氏原弘 ,   小暮美津子 ,   大島道 ,   平井福子 ,   亀山和子 ,   河野芙美子 ,   橋本広子 ,   水谷敏子

ページ範囲:P.111 - P.120

Ⅰ.緒言
 ベーチェット氏病は1937年Behçet1)が,皮膚粘膜および眼に特異の症状を有する一連の疾患を報告して以来,その名がつけられている。
 病理組織学的に膠原病の一種であるといわれているが2),その病因論はいまだ十分に解明されずしたがつて治療法も種々試みられているが,適確なものはなく,視力に対する予後は非常に悪く,鹿野氏ら3)によれば治癒率5%といわれ,いまやそのリハビリテーションの点で,社会問題としてとりあげられるようになつてきている。

眼トキソプラスマ症の研究—第1報HA (UCLA—伝研法)による不顕性感染の追究

著者: 佐藤豊明

ページ範囲:P.121 - P.127

Ⅰ.緒言
 生体眼におけるトキソプラスマ原虫の証明法が確立されていない現在,眼トキソプラスマ症の診断は主として臨床的症状と血清学的検査の結果から,推定的に行なわれているにすぎない。しかもその臨床症状は,過去において原虫の証明された少数例の特徴を,最大公約数的に綜合したものであつて,いまだ論議の余地が数多く残されている。したがつて,眼トキソプラスマ症の診断にあたり,血清学的検査の結果を重要視することはやむをえないことと思われる。しかるに周知のごとく,トキソプラスマ症にはかなりの不顕性感染が見られるので,その血清学的検査の結果を過大評価することはきわめて危険と思われる。それがために鬼木2)のごときは,血清学的検査はあくまで疫学的に利用されるべきものであつて,個々の症例における診断の決め手とはなりえない,と述べている。
 従来,後部葡萄膜炎,限局性滲出性網脈絡膜炎,中心性網膜炎等が,トキソプラスマ症と関係のある眼疾患とされてきたが,その根拠となるべき疫学的研究は少ない。かかる一連の疾患が,果して従来いわれているほどトキソプラスマ症と関係があるかどうか,また,もしあるとすれば,それはどの程度のものであろうか。

トキソプラスマ症の実験的研究—Ⅰ.疫学調査

著者: 大川親正

ページ範囲:P.129 - P.134

Ⅰ.緒言
 1900年にtoxoplasma gondiiが発見されて以来多くの人たちの研究により,こんにちではそれがひろく人・獣・鳥に寄生し,種々の疾患を惹起しうることが明らかにされ,わが国においても,1954年に宮川1)が脳水腫患者の髄液から,トキソプラスマ(以下Tpと略記)原虫を発見したのを嚆矢とし,その後研究が進められ,先天性疾患として,1)全身感染型,2)脳脊髄炎型,3)後遺症型,また後天性疾患として,1)全身感染型,2)内臓型,3)リンパ腺炎型,4)網脈絡膜炎型など種々の疾患の病原体となり,この中でも中枢神経系の一部である網脈絡膜疾患において高い発生頻度がみられている。
 わが教室でもこのたび眼科領域におけるTp症の研究を手がけるにあたり,その基礎段階として色素試験(以下DTと略記)と血球凝集反応(以下HAと略記)とにより疫学的調査を行なつた。一部はすでに三木ら2)が報告したが,さらに2対象群の調査を行なつたので,ここに一括して報告する。

トキソプラスマ性網脈絡膜炎86症例についての臨床的考察

著者: 鬼木信乃夫

ページ範囲:P.137 - P.148

Ⅰ.緒言
 著者は昭和37年1月以来,わが国における眼トキソプラスマ症を系統的に研究してきたが,その間に遭遇したトキソプラスマ性網脈絡膜炎は86症例(血清反応陽性で典型的な臨床像を有するもの)に達し,疑わしい症例を加えると170例を越えた。この間,各種眼疾患のトキソプラスマ血清反応成績1),活動性病巣を有する症例報告2),スピラマイシン治療法紹介3),後天性眼トキソプラスマ症と関係が深いRieger型網脈絡膜炎の紹介4),螢光眼底写真撮影法の本症への応用5)などを逐次眼科誌上に発表してきた。今回は,トキソプラスマ性網脈絡膜炎86症例の臨床像を介して本症の問題点を論じていきたい。

北海道地方における眼トキソプラスマ症の検索

著者: 青木功喜 ,   佐竹幸雄 ,   工藤英夫 ,   有賀和雄 ,   小野悌二 ,   飯田広夫

ページ範囲:P.151 - P.156

Ⅰ.緒言
 本邦におけるトキソプラスマの自然感染は,1939年,北大平戸教授により,札幌市の狸から発見した報告が最初である。戦後,同教室の浜田は,犬のトキソプラスマ症を詳細に報告した。人間においては,これより数年後に,宮川により,脳水腫の3例の髄液をマウス脳内接種して,トキソプラスマ原虫を分離した報告がある。
 眼科領域においては,佐藤,弓削は全身症状を伴う両黄斑部変性,萎縮を示した先天性感染例から,また,生井,杉浦は全身症状を伴わない滲出性網膜炎,右黄斑部萎縮の後天性感染例より,それぞれ,トキソプラスマ原虫をマウス脳内接種,螢光抗体法などにより証明し,トキソプラスマが眼疾患の原因となつていることが確認されている。トキソプラスマ症,とくに後天性感染の診断においては,トキソプラスマ原虫の証明が最も重要なことであるが,眼科領域においては,眼球という特殊な器管であるため,原虫の証明は非常に困難であり,かつ,まれである。しかしながら,近年赤血球凝集反応が,トキソプラスマにも応用され,その普及に伴い,先天性眼トキソプラスマ症の診断は,その特徴的な病像とより,比較的容易になりつつある。一方,後天性トキソプラスマ症は,その多くは,不顕性感染であり,その人獣における臨床像はいまだ十分には確立されてない。トキソプラスマの感染,発症およびその臨床像の解明のために,疫学調査は重要な手段である。

Sarcoidosisにおけるbetamethason使用時のリンパ節組織の変化観察の一例

著者: 持田祐宏 ,   浅野裕

ページ範囲:P.157 - P.163

Ⅰ.緒言
 わが国におけるsarcoidosisの実態については,1960年にsarcoidosis臨時疫学調査班が第1回全国調査を実施してから,sarcoidosis研究協議会による第3回にわたる全国調査により,総数700例以上の多数のsarcoidosisが発見され,その後も増加する傾向にある1)〜3)。これらの内,約半数になんらかの眼所見が報告され,欧米と比較して頻度が高い4)5)。ゆえに本邦における,眼sarcoidosisの症例はもはや,まれではないと考えられる。多数の研究者がsarcoidosisの診断,病理,および治療について多くの報告をしているが,治療については,その多くがsteroid hormonを主体とし,効果判定は胸部X線所見あるいはリンパ節腫瘤の触診などによるものが多く,sarcoi—dosisの主体の病変であるリンパ組織の変化過程を,steroid hormonの投与と平行して観察したものはほとんど報告されていないようである。そこで私は,sarcoidosisの一症例をみる機会を得たのでsteroid hormon投与により,リンパ節の病変部にどのような推移がみられるかを観察したので報告する。

サルコイドーシスの螢光眼底所見

著者: 須田誠 ,   佐藤好彦

ページ範囲:P.167 - P.170

Ⅰ.緒言
 サルコイドーシスの眼症状は,肉芽腫性または非肉芽腫性葡萄膜炎,網膜静脈周囲炎,網膜の臘様滲出斑,硝子体溷濁から,結膜濾胞や,眼瞼皮疹など,きわめて多彩である1)〜3)。われわれは,最近発見した二症例に螢光眼底撮影を行なつたところ,2例ともに類似した眼底所見を得たので,サルコイドーシスに特徴的な眼底所見の一つに加えられるのではないかと思い報告する。

螢光眼底撮影法—その5脈絡膜循環

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.173 - P.181

Ⅰ.緒言
 螢光眼底所見には,網膜血管系だけでなく,脈絡膜からの螢光が背景螢光として関与している。これの病的に著しい場合については,すでに第3報1)で,脈絡膜からの螢光透見現象および螢光漏出現象として報告したが,今回,正常眼をも含めたより一般的な場合についても,背景螢光の検討を通じてより的確な脈絡膜循環のすがたの把握が可能となつた。背景螢光に関する新知見とその解釈につき,以下に論述する。

螢光眼底撮影法による網膜出血の病態に関する検討

著者: 木戸愛子

ページ範囲:P.183 - P.193

Ⅰ.緒言
 螢光眼底撮影法は1961年,Novotny-Alvis1)によつて発表されて以来,こんにちでは諸種網膜疾患の検索に応用されている。
 著者はこのたび,本法を試み網膜出血,とくに網膜静脈閉塞症における出血の病態を観察し,2,3の知見を得たのでここに報告する。

最近の若年性再発性網膜硝子体出血の経過の特異性とその螢光写真(眼底・虹彩)所見

著者: 三井幸彦 ,   松原稔

ページ範囲:P.195 - P.199

 若年性再発性網膜硝子体出血には二つの型があるように思われる。その一つは,比較的「良性」のもので,出血を再三繰返しても比較的よく吸収され,経過が悪く失明するような場合でも,増殖性網膜炎,続発性網膜剥離,滲出性網膜炎などの眼底所見を呈するに止まるものである。他の一つは,「悪性」で出血を繰返すとともに前部ブドウ膜炎,前房隅角および虹彩の血管新生などを発生し,さらに出血性緑内障を起こしてあらゆる抗緑内障療法に抵抗し,比較的短期間のあいだに失明するものである。日本においては,戦前には本疾患は相当多数起こつており,かつ「良性」のものの比率が高かつた。
 貴志(1911)1)および鈴木2)(1925)の統計によると,本疾患の頻度は眼科外来患者の約0.27%,または入院患者の約1.39%であつたという。戦後本疾患はいちじるしく減少した。私どもの過去7年間の外来患者の統計では12/27338=0.044%にすぎず,1年間に2例以下の割合でしか見られなくなつた。しかし,これらの患者をみると,いわゆる「良性」のものが激減したのであつて,「悪性」のものは減つていないように思われる。1943年の落合3)の39例の統計によると,虹彩炎を伴つたものは8例,約20%であるが,出血性緑内障を起こした記載は0/39で1例もない。

螢光眼底撮影法による初期欝血乳頭の鑑別について

著者: 茂木劼 ,   小林啓子 ,   山上磐 ,   竹内一夫

ページ範囲:P.201 - P.209

Ⅰ.緒言
 眼科において,欝血乳頭と診断されたために,脳腫瘍が発見されることは,しばしば経験するところであるが,最近,脳神経外科の発達に伴い,偽視神経炎を欝血乳頭と診断して,脳外科に紹介されてくる症例や,原田氏病初期眼底の乳頭像を,欝血乳頭と診断したために,脳腫瘍を疑われて,その治療を行なわんとした症例があることをときおり見聞する。これはその眼底像の鑑別が,初期においてやや困難なためであるかもしれない。
 螢光眼底撮影法による初期欝血乳頭の鑑別については,すでに1965年Miller1)らによつて試みられているが,今回,われわれは,以前,虎の門病院において,初発病変として欝血乳頭様の眼底像を呈したために,脳腫瘍を疑われた原田氏病の症例(第1,2例)を紹介し,さらに螢光眼底撮影法がこれらの鑑別にある程度役立つのではないかと考え,2〜3の疾患に応用してみたので,欝血乳頭の鑑別のさいにおける螢光眼底撮影法の価値について述べたいと思う。

糖尿病性網膜症に対する定位的経鼻脳下垂体手術

著者: 杉田虔一郎 ,   土井昭成 ,   高岡淑郎 ,   杉田雄一郎

ページ範囲:P.211 - P.215

Ⅰ.緒言
 1942年Houssayらが実験的糖尿病動物に下垂体切除術を行なうことにより,糖尿病症状の著明な改善が認められることを報告して以来,下垂体前葉ホルモン,とくにhuman growth hormonの糖尿病源性作用が,注目されるようになつた。臨床的にも,下垂体破壊手術が行なわれるようになり,諸外国において数々の報告がなされている。
 下垂体への到達方法も種々あるが,われわれは定位脳手術法により,鼻孔より下垂体に到達し,高周波凝固による下垂体手術を16例行ない,そのうち13例は糖尿病性網膜症の患者に行なつたので,ここに報告する。

Retinoblastomaの染色体異常

著者: 小林守 ,   嶋田孝吉 ,   小田逸夫

ページ範囲:P.216 - P.216

 最近数年来,臨床医学領域においても,染色体分析が活溌であり,私どもも先天性眼疾患の染色体,性染色質などの検索を施行してきた。
 今回,retinoblastoma 7例の腫瘍組織から染色体標本を作成し,染色体異常を発見したので報告する。実験方法はretinoblastomaの眼球剔出後,培養せずにただちに腫瘍部分を細分し,水処理押しつぶし法で染色体標本を作成した。7例中5例にpolypolid cell (高倍数体)が高頻度に認められた。(詳細な報告は,日本眼科学会誌に投稿中)。

無痛分娩時の新生児網膜出血

著者: 武田和夫

ページ範囲:P.217 - P.230

Ⅰ.緒言
 新生児網膜出血は,分娩時におけるもつとも発生頻度が高い眼外傷の一つであるにもかかわらず,予後が良好であるためあまり注意が払われていない。しかしその要因は,産道圧迫によるとはいえ,発生機序についてはなお不明の点が多い。そこで,産道弛緩,児のアノキシアなどが考えられる麻酔分娩というものを通して,その発生動態について研究した。
 新生児の頭蓋内出血は新生児死亡の原因として主要な地位を占めている。しかし新生児においては,生理的状態と病的なものとの境界が明瞭でなく,検査も困難なことが多い。頭蓋内出血の検査方法には,穿刺による髄液検査も行なわれる。新生児脳波を記録することは,脳実質の機能低下を異常脳波として表現するが,新生児の脳波は成人のそれに比し,異常脳波の判定はむずかしく,まだ定説がみられない。

白内障術後早期離床例の合併症について

著者: 藤永豊

ページ範囲:P.233 - P.236

Ⅰ.緒言
 白内障嚢内摘出術後,長期間強度な安静を保たせないで,早い時期に離床させることが術後の経過に悪い影響を与えることなく可能であるためにはいかにしたらよいかを考按し,実施したので報告する。
 この目的を達するためには,(1)手術方法に対する考按,(2)術前後における患者に対する指導,処置,薬物療法についての考按,(3)看護法の改善などを基礎として行なつた。

特別講演

新しい眼科用光学器械

著者:

ページ範囲:P.101 - P.103

 近年における眼科器械の発達には3つの傾向,つまり記録,供覧,自動化の3者がみられ,具体的には次のような例があげられる。
 1)写真や映画によつて処置や所見を記録する。

印象記

第一会場

著者: 内田幸男

ページ範囲:P.241 - P.244

 あいにくと小雨模様でうすら寒い。定刻9時にわずか遅れて駈けつける。スピーカーから流れる中泉博士の臨床眼科学会のこんにちに至る発展の懐古を耳にしながら,扉を押す。昨年来,国立教育会館のこの立派な会場にもなじみがある。
 午前の一般講演には,まずBehçet病が2題並ぶ。間宮氏(信大)は,過去16年間のBehçet病患者の統計をとり,前期8年と後期8年に分けて考察した。前期ではステロイドの点眼例が,後期では全身投与例が多かつたという。後期に視力低下例の頻度が高いことから,ステロイド全身投与が本症の予後を悪くすることになにか関係があるらしいと考えた。

第二会場

著者: 早野三郎

ページ範囲:P.244 - P.247

 昨年と同じ国立教育会館で開催された第21回臨床眼科学会は,午前小雨,午後曇りで晩秋の東京としてはやや肌寒く感ぜられる日であつた。
 さて,あらかじめ編集部から第2会場の印象記執筆を命ぜられていたからには,終日,第2会場に座し,すべての演題を聴くべきであつたが,凡人ついにこれを果しえず,席をはずしていたこともあるので,誤り伝える点もあろうかとあらかじめお詫びとお断りをはじめにしておこう。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.239 - P.239

国際コンタクトレンズ学会
第12回日本コンタクトレンズ学会
第4回アメリカコンタクトレンズ学会
第4回日本眼光学学会
 如上学会幹事会の決定により,下記のごとく開催することになりました。種々ご不便の点もあるかと存じますが,各位多数のご出席,ご講演をお願いいたします。
会長梶浦睦雄

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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