文献詳細
特集 第21回臨床眼科学会講演集(その1)
北海道地方における眼トキソプラスマ症の検索
著者: 青木功喜1 佐竹幸雄1 工藤英夫1 有賀和雄1 小野悌二2 飯田広夫2
所属機関: 1北海道大学医学部眼科学教室 2北海道立衛生研究所
ページ範囲:P.151 - P.156
文献概要
本邦におけるトキソプラスマの自然感染は,1939年,北大平戸教授により,札幌市の狸から発見した報告が最初である。戦後,同教室の浜田は,犬のトキソプラスマ症を詳細に報告した。人間においては,これより数年後に,宮川により,脳水腫の3例の髄液をマウス脳内接種して,トキソプラスマ原虫を分離した報告がある。
眼科領域においては,佐藤,弓削は全身症状を伴う両黄斑部変性,萎縮を示した先天性感染例から,また,生井,杉浦は全身症状を伴わない滲出性網膜炎,右黄斑部萎縮の後天性感染例より,それぞれ,トキソプラスマ原虫をマウス脳内接種,螢光抗体法などにより証明し,トキソプラスマが眼疾患の原因となつていることが確認されている。トキソプラスマ症,とくに後天性感染の診断においては,トキソプラスマ原虫の証明が最も重要なことであるが,眼科領域においては,眼球という特殊な器管であるため,原虫の証明は非常に困難であり,かつ,まれである。しかしながら,近年赤血球凝集反応が,トキソプラスマにも応用され,その普及に伴い,先天性眼トキソプラスマ症の診断は,その特徴的な病像とより,比較的容易になりつつある。一方,後天性トキソプラスマ症は,その多くは,不顕性感染であり,その人獣における臨床像はいまだ十分には確立されてない。トキソプラスマの感染,発症およびその臨床像の解明のために,疫学調査は重要な手段である。
掲載誌情報