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特集 第21回日本臨床眼科学会講演集 (その2)
ゼラチン材を併用する諸種涙腺排出管離断術の検討
著者: 長嶋孝次1
所属機関: 1京都府立医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.309 - P.316
文献購入ページに移動I.緒言
導涙障害に対していろいろの改善療法がすべて無効に終つたとき,あるいは始めから如何とも復旧しがたい場合はやむをえず涙腺の分泌を抑制する以外に仕方がない。これには従来,涙腺の摘出,ジアテルミー凝固,あるいはレ線照射,涙腺内アルコールないしはプリビナ注射,翼口蓋神経節の破壊,涙腺分泌神経の切除(Whitwell法,1958年),涙腺排出管の離断(Jameson1)法,1937年)などの方法がある。このうち翼口蓋神経節に対するアルコール注射が比較的確実な永続的効果をあげ得るが,同時に上顎神経および交感神経も麻痺に陥ることが欠点であるとせられている2)。その他の方法で常に的確に奏効するものはなに一つとしてない。のみならず涙腺特に眼窩部涙腺の摘出はときに術後大出血や瞼下垂などの忌むべき合併症の危険にさらされる。したがつて現在眼瞼部涙腺の摘出ないしはそのジアテルミー凝固が危険性の少ないことと,簡便さのゆえに一般に行なわれているが,その効果は不定で症例によつていちじるしく異なる。
近年米国Upjohn社で創製せられたゼラチンフィルム(ゼルフィルム),ゼラチンスポンジ(ゼルフオーム)などのゼラチン材が眼科領域にも登場するに及んで,Pilger氏3)(1961年)はJameson1)氏の涙腺排出管離断術後の排出管の再生ないしは再疎通を防止する目的でゼルフィルムを使用して有効であつたと報告した。
導涙障害に対していろいろの改善療法がすべて無効に終つたとき,あるいは始めから如何とも復旧しがたい場合はやむをえず涙腺の分泌を抑制する以外に仕方がない。これには従来,涙腺の摘出,ジアテルミー凝固,あるいはレ線照射,涙腺内アルコールないしはプリビナ注射,翼口蓋神経節の破壊,涙腺分泌神経の切除(Whitwell法,1958年),涙腺排出管の離断(Jameson1)法,1937年)などの方法がある。このうち翼口蓋神経節に対するアルコール注射が比較的確実な永続的効果をあげ得るが,同時に上顎神経および交感神経も麻痺に陥ることが欠点であるとせられている2)。その他の方法で常に的確に奏効するものはなに一つとしてない。のみならず涙腺特に眼窩部涙腺の摘出はときに術後大出血や瞼下垂などの忌むべき合併症の危険にさらされる。したがつて現在眼瞼部涙腺の摘出ないしはそのジアテルミー凝固が危険性の少ないことと,簡便さのゆえに一般に行なわれているが,その効果は不定で症例によつていちじるしく異なる。
近年米国Upjohn社で創製せられたゼラチンフィルム(ゼルフィルム),ゼラチンスポンジ(ゼルフオーム)などのゼラチン材が眼科領域にも登場するに及んで,Pilger氏3)(1961年)はJameson1)氏の涙腺排出管離断術後の排出管の再生ないしは再疎通を防止する目的でゼルフィルムを使用して有効であつたと報告した。
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