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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科22巻4号

1968年04月発行

雑誌目次

特集 第21回臨床眼科学会講演集(その3)

眼トキソプラズマ症の治験例

著者: 浅山亮二 ,   宇山昌延 ,   内田璞 ,   藤堂廸彦 ,   浅山孝彦 ,   武田幸信 ,   大熊正人

ページ範囲:P.403 - P.412

I.緒言
 1929年Junku1)が,肉芽性葡萄膜炎を有し,hydrocephalusで死亡せる少年の網膜内にトキソプラズマ原虫を証明したのが眼科領域におけるトキソプラズマ症の最初の報告とされているが,1939年Wolf, CowenおよびPaige2)によつて,トキソプラズマの人体に対する病源性が確認され,1947年Robinson3)が眼病変を有する先天性トキソプラズマ症を報告してより,先天性トキソプラズマ症と眼病変との関連が注目されはじめた。その後Wilder (1952)4)5)が葡萄膜炎を経過した眼の標本を再検討して53眼にトキソプラズマ原虫を証明したことによつて,トキソプラズマ感染が葡萄膜炎の一つの有力な原因として,大きくクローズ・アップされることとなつた。

螢光眼底撮影法による網膜および葡萄膜血管循環系の分離実験

著者: 徳岡富喜 ,   船橋知也 ,   溝部昉

ページ範囲:P.413 - P.418

I.緒言
 従来,葡萄膜循環,とくに脈絡膜循環に関しての研究はそれを検索する適当な方法が知られていなかつたためか,現在,なお定説が得られていない。近年,微小循環の諸相を知る手段として,Novotony & Alvis5)が螢光眼底撮影法を報告して以来,本法がきわめて有効な手技であることが知られているが,本手技が進歩するにつれて写し出される様相は,単に網膜の血管撮影という解釈では十分でなく,また,既定の概念では解釈の困難な問題を提示している。その一つが脈絡膜血管床よりの螢光の可視性の問題である。ある種の疾患,および正常眼においても本法を行なうと静脈相に入つてからしだいに増強されてくる眼底のムラムラとした所見は,おそらく脈絡膜循環に由来するものであろうと考えられている。そこでわれわれは螢光眼底撮影法を用い,黒および白家兎による動物実験を施行し眼底の循環の諸相について検討したので報告する。

未熟児網膜症の光凝固による治療

著者: 永田誠 ,   小林裕 ,   福田潤 ,   末包慶太

ページ範囲:P.419 - P.427

I.緒言
 未熟児網膜症はTerryが1942年未熟児の水晶体後方に血管を伴う組織増殖を起こす疾患の存在を最初に報告して以来,欧米において急速に増加し,1952年頃より,これが未熟児に対する酸素使用に関係あることが次第に確認され,さらにKin—seyらの広範な統計的研究の結果,酸素供給の制限によつて明らかにその発症率が激減することが認められてからいちじるしくその発生数を減じて今日に至つている。しかしその後もなお少数ながら未熟児に本症の発生が見られていることはZachariasが早くから警告しているところであり,わが国においては植村らが本症の発生がけつして稀なものでないことを1964年以来繰返し強調している。わが国においては,病院未熟児室の設備近代化が比較的近年のことに属し,本症に関する小児科医,眼科医の知識が従来ともすれば概念的なものに過ぎぬうらみがあつた。植村らの具体的経験に基づく警告によつて,ようやく本症に関する関心が高まりつつある現状とはいえ本症発生の素地はむしろ昔にくらべて高くなつているのではないかと考えられる。

卵黄様黄斑変性と網膜色素上皮剥離

著者: 塚原勇 ,   三木弘彦 ,   横谷健一

ページ範囲:P.429 - P.436

I.緒言
 Best1)により記載された遺伝性黄斑変性(Best型)の初期に,黄斑部に卵円形で境界鮮明な嚢腫様の検眼鏡所見が認められ,これが卵黄に似ているという理由からZahnen2)らがKyste vitelli—fome congénital de la maculaと呼んで以来,最近では卵黄様黄斑変性Vitelliform degerationof the maculaという呼び名が広く用いられ,François3)らによれば欧米においては約60名の報告があるといわれる。わが国では私どもの調べた範囲では,湯口謹治4)の1例がこれに相当すると推定されるが,他には報告が見当らない。外国の報告でも,初期の卵黄様病巣の所見の解釈については釈然とした説明はない。私どもはこの疾患と思われる3例を経験し,螢光眼底写真撮影を行ない,卵黄様の病巣所見の解釈に知見を得たと思うので,報告する。

涙小管閉塞に対する涙小管涙嚢吻合術について

著者: 丸尾敏夫 ,   久保田伸枝 ,   谷合方子 ,   林恵美

ページ範囲:P.437 - P.439

I.緒言
 涙道の閉塞に基因する流涙症のうち,鼻涙管閉塞および慢性涙嚢炎に対しては,涙嚢鼻腔吻合術が根治的治療法として確立されているが,涙小管閉塞に対しては,現在まだよい方法は見出されていない。そのため,涙小管閉塞による流涙症は難治流涙症として,根治的治療法の開発が期待されている。
 私どもは涙小管閉塞に対して,閉塞部を切除し,涙小管を涙嚢に直接縫合する方法を考案した。この方法で涙小管閉塞10例に手術を行ない,とくに涙小管閉塞のうち,大部分を占める閉塞部位が涙嚢付近にあるものにはすぐれた成績が得られたので,涙小管閉塞に対する根治的治療法として,それを紹介しておきたいと思う。

茯苓(Pachyma Hoelen)の眼圧下降作用機序についての実験的研究

著者: 道口博

ページ範囲:P.440 - P.449

I.緒言
 茯苓(Pachyma Hoelen)は真菌植物門に属し,従来より生薬の一つとして用いられてきた。
 先にわれわれは茯苓煮沸滲出瀘液の静注による家兎眼圧に及ぼす影響を検討し,これが眼圧下降作用を有することを報告した1)。そこで今回は生薬としての茯苓が利尿剤の一つとして用いられているところから,茯苓の眼圧下降作用機序について,茯苓の利尿作用に関連して一連の実験を試みたので引続き報告する。

上頸交感神経節摘出が房水流出率に及ぼす影響

著者: 増野彰

ページ範囲:P.451 - P.455

I.緒言
 上頸交感神経節切除が眼圧に及ぼす影響は古くより論ぜられていたが,最近Linnér, Prijot1)らにより上頸交感神経節摘出後に一過性の眼圧低下をきたすことが指摘され,その後の実験もまたこのLinnér, Prijotらの成績に一致する成績が報告されている。
 この眼圧低下の原因については房水産生の減少,あるいは房水流出抵抗の低下という二つの考え方が報告されている。

隅角部冷凍手術(Cryogoniocautery)の試み

著者: 水田茂 ,   東郁郎 ,   市橋賢治

ページ範囲:P.457 - P.460

I.緒言
 近来,眼科領域においても冷凍手術が注目をあび,水晶体の全摘出や網膜剥離などに広く応用されつつある。緑内障に対する冷凍術は1950年のBiettiが初めてであり,以来二,三の報告を見るのみである。しかもそれらのいずれもが毛様体部の冷凍術である。今回われわれは緑内障の治療に隅角部の冷凍術を試み,基礎的,臨床的にその機能面からの検討をおこなつたので,その成績をここに報告する。

緑内障眼の隅角の広さと濾過手術後の前房再生との関係

著者: 百々隆夫

ページ範囲:P.461 - P.466

I.まえおき
 その眼が,同じく濾過手術の適応であつても,術後の前房再生状態が異なることを,われわれは緑内障眼で経験する。その原因は,単一なものではなかろう。術式の相違であるかもしれないし,緑内障の種類あるいは,その進行程度によるのかもしれない。
 しかし,同じ単性緑内障の同じ程度に進行した症例に,同じ術式の濾過手術を施行しても,前房再生状態がいちじるしく異なることがある。

濾過手術後のlate infectionについて

著者: 荻野紀重 ,   桝田英郎 ,   土屋雅彦

ページ範囲:P.467 - P.472

I.緒言
 Elliotの管錐術,虹彩はめこみ術と近年広く行なわれるようになつたScheieの手術などの瀘過手術は,各種の緑内障に対して適用が広く効果も著明なので,古くより一般に使用されている術式である。この術式の一つの欠点とも言うべき晩発感染(late infection)については多くの人から問題にされており,わが国においても河本1)2)以来多くの報告があるが,いずれも少数例である。
 著者らは最近10年間に,14例14眼の晩発感染の例を経験した。これらについて検討するとともに,特に,β線照射を行なつた症例についても興味ある結果を得たので報告する次第である。

両側性Posner-Schlossman症候群の3例

著者: 岩田和雄 ,   福地裕子 ,   難波克彦 ,   代田徳彦

ページ範囲:P.473 - P.479

I.はじめに
 Posner-Schlossman症候群はGlaucomatoc—yclitic crisisとも呼ばれる。その経過中にプレチピタートの出現する再発性の急性緑内障である。厳密には原発性とも続発性ともつかない特殊な緑内障で,最初Kraupa (1935)がGlaucomaallergicumと命名したが,1948年Posner-Schlo—ssman両氏が詳述して以来Posner-Schlossman症候群と呼ぶものが多い。
 その記載によれば,本症候群は常に片側性で,同一眼に反復して発作が起こることが鑑別診断上重要な根拠の一つとされている。

斜視の手術時視能矯正について

著者: 筒井純 ,   渡辺冴子 ,   本多暢子 ,   深井小久子 ,   藤井弘子

ページ範囲:P.481 - P.487

I.緒言
 斜視の手術時視能矯正とはsurgical orthop—tics (手術的視能矯正)とでもいおうか。手術すなわち外眼筋の移動による視能矯正効果をより的確にするために術中両眼視機能の計測と誘発を行ないながら手術を進める方法である。視能矯正法を大別すると手術的方法と非手術的すなわち訓練的視能矯正法がある。手術的方法としては従来から行なわれている斜視手術がこれに相当するが,術中両眼視機能の変化がほとんど実測されておらず視能矯正という点では,やや物足りない感じがあつた。
 手術的視能矯正法の特色としては従来種々の量定法があるが必ずしも常に眼球を良い位置にすることができない。しかしこの方法では術中に眼位をsynoptophoreでたびたび計測するために任意の位置に眼位を調節することが可能で誤差は2°以内である。そして筋移動によつて起こる両眼視機能の変化が手術終了時にわかつているので術後の視能矯正に入りやすい。また手術後の視能矯正に不合理な手術結果を作ることがさけられる。

先天性味涙症候群について

著者: 植村恭夫 ,   田村秀子

ページ範囲:P.489 - P.496

I.緒言
 味涙反射(gusto-lacrimal reflex)とは,食事のときに涙液分泌増加の起こる背理性の反射で,別名「わにの涙症候群」(the syndrome ofcrocodile tears)と呼称されている。この反射は,1913年Oppenheim, Engelenによつて最初に注目され,1924年,Bingがgusto-lacrimalrefiex (略称g.l.r.)なる名称を用いた。
 1928年Bogoradは,本反射について詳細な報告をなし,the syndrome of cro—codile tearsなる名称を用い,今日,この両者が使用されているが,名称としては,gusto-lacrimal re—flexが適当とされている。

色覚不調の実態

著者: 堤修一 ,   仁田正雄 ,   田中雅男 ,   中村善寿

ページ範囲:P.497 - P.502

I.はじめに
 色覚不調とは,従来,色覚異常,障害,色弱,色盲などと呼ばれてきた色覚の調子の乱れをいう。
 色弱,色盲に対する日本の社会の長い根深い偏見あやまりを少しでも正したく,私は,今後,色覚不調という言葉を,色覚の調子が少しおかしいのだという程度の軽さを強調するために使つてみるつもりである。

Lantern型色覚検査器の規準の検討

著者: 市川宏

ページ範囲:P.503 - P.508

I.緒言
 関,深見,馬嶋氏らの適性規準一般に関する一連の研究や,堤氏の独自な色覚定量化の試みなどにより職業適性の基準化の問題は,手の届くところにきていながら,もう一歩のところで足踏みをしている。
 この隘路の最たる部分は適性検査法に信頼のおけるものが見出されないところにあろう。しかし現実にわれわれは100 hue testとlantern testをもち,近くはPanel D−15の検討に手をつけられるようになつた。この問題をさらに押し進めれば,各適性検査法の能力の追求が最も要求される段階とみるべきであろう。

小児色覚検査の検討—第2報保育所におけるスクリーニングと検査の限界について

著者: 湖崎克 ,   大畑垂穂 ,   三上千鶴 ,   許秋木

ページ範囲:P.509 - P.513

I.緒言
 保育所は児童福祉施設の一つとして,保育に欠ける乳児,幼児,児童の保育を目的に設置され(児童福祉法第39条)入所児童は1年2回学校保健法による定期健康診断に準じた診断を行なうように決められているが(児童福祉施設最低基準第13条),実際上なかなか励行されにくい。
 われわれは,第1報で幼稚園児について各種の色盲検査表を使つて色覚スクリーニングを行ないその成績を検討し,基本図形がよいことを指摘したが,今回は幼稚園児よりさらに年齢が低い保育所児童の色覚スクリーニングを行なつて若干の知見を得たので報告する。

一色覚検査法について

著者: 岩垣正典

ページ範囲:P.515 - P.517

I.緒言
 先に著者は,白地に黒のストライブを持つ円板を回転せしめて,その円板の黒線上に出る三種の色相(回折スペクトル分布)を,色覚異常者は,正常者と異なつた色相に誤認することを述べ1),本法が色覚検査に利用できることの基礎的考察を行なつた2)3)
 この方法が新しい色覚検査法として発展するため,さらに実験の例数を重ねたので,ここに今までの基礎的な諸問題について総括的に論述する。

視力の発達加速現象

著者: 大江謙一

ページ範囲:P.519 - P.521

I.はじめに
 1935年Koch, E.W.が人間の発達速度は世代を新たにするにつれ促進されていくという事実を明示した。この人間の身体の成長,成熟の過程の変移,すなわち発達速度の増加を発達加速現象と呼んでいる。発達加速現象は成長成熟という人間の身体発育のすべてを含むいろいろの側面に現われ,単なる個別現象ではない。これまでに身長,体重の増加の加速,歯牙発生の前傾,初潮年齢の前傾などが報告されている。
 筆者は本年,保育園児約2,200名の視力測定を行ない,その成績を5年前の保育園児と比較し,平均視力の増強が認められた。これは視力における発達加速現象であろうと思われるので報告するしだいである。

おぼえやすい日本人眼調節力正常値の提案とその根拠

著者: 広瀬泉

ページ範囲:P.523 - P.527

I.はじめに
 石原調節力曲線1)は日本人の開発した近点計により,広い年齢範囲を対象としている点,今日もなお,日本人調節力値の標準として揺がぬものがある。
 先生が,その原著に引用されたDonders2),Duane3)両氏の欧米人計測値は,例数こそ圧倒的多数であるが,近点計の精度からみると,石原曲線とはくらべものにならない杜撰な面をもつている。

環境と眼精疲労

著者: 鈴村昭弘 ,   三輪武次 ,   谷口正子

ページ範囲:P.529 - P.537

I.緒言
 近代病といわれる,近時増加の眼精疲労においては,従来の成書にみられる眼精疲労の分類の範囲には入りがたいものが多い。すなわち,近代生活の進展に伴つて,随所に生体への異常刺激となるものが増大しており,とくに視覚刺激においていちじるしい。これらの生体刺激によつて生じているのではないかと思われる眼精疲労が多い。すでに萩野氏1)はその分類の中に,visuomentalfatige, general reaction fatigeという分類を入れ,また池田氏2),田野辺氏3)らは近代生活におけるいろいろのストレッサーが深い関係のあることを述べている。筆者4)らは先に居住性の良否が意外と眼精疲労の発現に関係深いことを報告した。
 このような環境からの刺激がどのようなメカニズムでもつて眼精疲労発現に関係するかを明らかにすることはなかなか困難だが,環境よりの刺激によつて生体のリズムの乱れということも十分考えられるところである。

CDP-cholineのERGに及ぼす効果について

著者: 山本覚次 ,   那須欽爾 ,   大本佐和子 ,   桑元久美子

ページ範囲:P.539 - P.543

I.緒言
 CDP-cholineは一般名をciticolineといい,cytidine diphosphate cholineを化学名とする物質で,生理的に動物の各種組織内に存在する。
 分子式はC14H26O11N4P2で,分子量は488.34である。CDP-cholineの代謝経路については,Kornberg, Kennedyなどにより明らかにされ,現在はTab. 1に示すような代謝経路をとるものと考えられている。

眼球鉄片外傷のEOGとERG

著者: 今泉亀撤 ,   高橋文郎 ,   堀江栄次 ,   熊谷茂樹 ,   小川健次 ,   庄子宇一

ページ範囲:P.545 - P.551

I.緒言
 眼外傷に併発する化膿性炎症による失明は,近年各種の抗生物質,ステロイド製剤,代謝促進剤等の開発により,しだいにその姿を消しつつある。
 しかし,眼球鉄片外傷の場合の予後は,単純な眼外優とは異なつて複雑な進行過程をとり,いまだ不幸な運命を辿る率が高い。すなわち,本症は,飛入した鉄片の種類,大小,形状,侵入部位,停留部位,停留期間等の諸条件により,種々の合併症を惹起せしめ,鉄片の摘出方法および治療方針の決定は今日なお困難とされている。

眼内および眼窩内異物摘出におけるメタルロケーターの意義について

著者: 中林正雄 ,   愛川和代

ページ範囲:P.553 - P.559

I.緒言
 眼内異物,とくに鉄片異物に対して,われわれは従来,レ線像による位置判定ののち,手術用マグネットによる牽引摘出を行なつている。しかしこの場合,摘出は必ずしも常に可能とは限らない憾みがある。また単に異物摘出のみを目的とするならば問題は少ないが,あくまで網膜剥離などの障害を起こさないために大きな侵襲を避けて,摘出する必要がある。
 そのためには,診断にあるいは手術の補助に,レ線像とマグネット以外に,なんらかの手段が望まれるのである。われわれは最近メタルロケーターを入手して以来,その利用を試み,さきに眼紀にも報告したが,その後症例を重ね,多少工夫を加えて,得る点があつたように思われるので,ここに報告する。

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眼科点数表(甲,乙)の解説

ページ範囲:P.562 - P.563

I.診察料
再診料と内科加算について
 △同時に2以上の傷病について診察を行なつても,再診時基本診療料は1回として算定する。
 △医療法に規定する総合病院では,診療科目を異にする診療のときそれぞれ再診を算定できる。

眼科ニュース

著者: 中島章

ページ範囲:P.577 - P.577

アイバンク運動10年ならびに『角膜移植に関する法律』について(その2)
「角膜移植に関する法律」について
 角膜移植法が我国に制定されて,この10年間に眼科,殊に角膜移植の技術は進歩して,10年前の実状を基として制定されたこの角膜移植法は,そろそろ今日の実状に合わない点が多くなつて来た。
 実は,この法律は制定以来,厚生省がアイバンク設置の認可をして発足させる迄には,数年間の空白があつた。

手術

絶対緑内障ならびに無水晶体緑内障に対する鞏膜虹彩切除術の一新法

著者: 太根節直 ,   山田春雄

ページ範囲:P.565 - P.567

I.緒言
 絶対緑内障や白内障手術後に起こつた無水晶体緑内障は,ときに眼圧のコントロールが困難で手術にも手こずることがあるが,前者には従来,眼球内容除去術,眼球摘出術,および各種の瘻孔手術が行なわれており,後者にはジアテルミー手術や種々の瘻孔手術が試みられている。すでに失明している絶対緑内障眼に対しても,患者の自己眼球の保存意欲は通常強いものなので,著者らは眼圧下降の強力かつ確実な鞏膜虹彩切除術の一新法を考案して絶対緑内障眼に試みたところ,おおむね満足すべき結果を得ることができ,また本法を無水晶体緑内障眼に試みてもよい結果が得られたので,ここに大要を報告する。

臨床実験

Cyclopentolateの臨床

著者: 百瀬皓 ,   井上潤一

ページ範囲:P.569 - P.577

I.緒言
 1952年,Treves & Testa1)がarylacetic acidとalkyl, aminoalkylおよびN-piperidinoalkylのesterである一連の化合物を合成し,そのうちphenylacetic acidとaminoalkylのesterの3つ,彼らがCompound 75G.T., 92G.T., 93G.T.と名付けた下記のごとき構造をもつ化合物は,その後いずれもatropine様の散瞳,調節麻痺作用があることが報告された。
 引続きこの3つの化合物の作用については多くの研究2〜8)10)が行なわれ,このいずれもがshort—acting cycloplegicsとして有用であるが,そのうちでも現在cyclopentolateと呼ばれ,Cy—clogylの商品名で,米国において市販されている75G.T.が最も短い,しかし十分深い調節麻痺作用をもち,かつほとんど無刺激で,調節麻痺作用時間の長いatropineやhomatropineに代つて屈折検査によりよく利用できることが知られた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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