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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科22巻7号

1968年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・129

自然に治癒した内頸動脈海綿静脈洞瘻の1症例

著者: 入野田公穂 ,   宮城勇

ページ範囲:P.941 - P.942

〔解説〕
症例:11歳男子
初診:右眼充血および眼球突出

臨床実験

網膜下液より原虫を証明しえたトキソプラスマ眼症の長期観察例について

著者: 三国郁夫

ページ範囲:P.943 - P.948

I.緒言
 1908年,Nicolle,Manceauxにより,北アフリカのCtenodactylus gondiiより発見された,Toxoplasma gondii (以下T.p.と略称する)感染による疾患に関しては,近年その基礎的研究の発展とあいまち,臨床各領域においても非常に重要視されるにいたつた。
 特に眼科領域においては,先天感染による脈絡膜炎をはじめとして,葡萄膜炎,網脈絡膜炎の原因の一部としてきわめて重要視されるにおよび,その検索は日常診療においてもroutineな検査となりつつある。

血清肝炎の前駆症としての眼症状

著者: 小原博亨 ,   赤塚俊一 ,   倉尾襄

ページ範囲:P.949 - P.952

I.緒論
 血清肝炎は輸血後に生ずる一種のvirus hepa—titisと考えられている。その前駆症を知ることは血清肝炎の早期発見に役立ち,したがつて予後をも良くするであろう。また無黄疸性肝炎の発見が遅れて,後年肝硬変性に移行する不幸事の予防にも役立つと考えられる。
 元来,肝疾患と眼症状の関係はあまり多くは知られていない。ただわずかに黄疸,ウィルソン氏病などの特定の場合に限られて,その眼症状が知られているのみである。

螢光眼底写真による脈なし病の眼底所見

著者: 徳岡富喜 ,   染谷芳豊 ,   近藤健太郎

ページ範囲:P.953 - P.956

I.緒言
 脈なし病は1908年高安右人9)が,『奇異なる網膜中心血管の変化の1例』として報告して以来,高安病として多く報告され,その特異な眼底所見(花環状動静脈吻合)に加えて,大西6)により"脈の触れないことplusless"が判明,またRoss& Mc.Kusick7)はaortic arch syndromesと呼び,欧米でも多くの症例が報告されている。1961年Alvis & Novotony1)により螢光眼底撮影法が発表されて以来,本邦でも清水8)を初めとし,脈なし病の眼底変化について報告しているが,われわれも今回,螢光眼底撮影法により脈なし病患者の特徴ある眼底所見を見ることができたのでその1例を報告する。

種々の眼症状を伴つた先天性風疹症候群の1例

著者: 荒井優子

ページ範囲:P.958 - P.963

I.緒言
 妊娠初期に風疹に罹患した場合,その母親から生まれる新生児に,種々の奇型を伴うことは,Gregg2)が1941年にはじめて記載して以来,これまでにも数多くの報告がある。本疾患の病原ウィルスの分離は,1962年Weller,NevaおよびParkmannらのグルーブがおのおの独立して試みており,ほとんど同時期に成功した3)
 本邦における眼病変に関する報告は,1960年紺山1)が最初に行なつているが,著者の渉猟した範囲では,かかる症例はこれまでのところ記載されてない。

慢性緑内障に対するサークレチン錠内服の治療効果について

著者: 原田勲

ページ範囲:P.967 - P.972

I.緒言
 緑内障に対する治療として,眼圧調整後に視力視野などの機能を保持する目的で,循環系調整剤,サークレチン錠の内服を試みて経過を観察し,いささかみるべき結果を得たので以下に報告する。

出血性眼底疾患に対するAngininの使用経験

著者: 佐竹幸雄 ,   工藤英夫 ,   斉藤一宇 ,   斉藤三恵子

ページ範囲:P.973 - P.978

I.まえがき
 1962年,島本,石川両氏らによつて開発されたAngininは,ピリジン誘導体で,キニンによる静脈攣縮を緩解し,その炎症作用に拮抗するといわれる。眼科領域においても,動脈硬化性網膜症,糖尿病性網膜症などで,かなりの効果をみているようである。
 われわれも,本剤を各種出血性眼底疾患に使用したので報告する。

宿題報告「頭部外傷と眼機能障害」(日眼,71;1950,昭42)を拝見して

著者: 仁保正次

ページ範囲:P.981 - P.986

I.緒言
 臨床眼科18巻12号1403頁,1964で「脳神経と眼科」と題して佐野教授,鹿野教授が対談されてから,この問題の混乱が始まつた。著者はこの混乱を救うために〔「脳神経と眼科」佐野教授,鹿野教授の対談を拝見して〕を臨床眼科19巻7号907頁,1965に掲載した。
 その後井街教授,深道博士,佐野教授が担当されて,この問題について宿題報告をされることになつた。しかしこのメンバーでは一般臨床眼科医が望んでおられるchiasmaより前方,眼窩に入るまでのいわゆる視神経管骨折の諸問題の解明にはならないのである。それは井街教授,佐野教授は開頭により視神経管の上壁を論じ,深道博士は経篩骨蜂巣手術法により視神経管の内下壁,前方1/2までの不十分な開放術を論ぜられるからである。すなわち内壁,上壁をともに一時に手術をして,視神経の十分なる減圧手術を行なわない方々ばかりで宿題報告されたところに問題があろう。

中心性網膜脈絡膜炎の臨床(第1報)—中心性網膜脈絡膜炎における眼底後極部血管の態度

著者: 渡辺千舟 ,   吉田繁一 ,   藤堂勝己

ページ範囲:P.987 - P.991

I.緒言
 診断技術の進歩に伴つてその病態が究明され,かつ,有効な薬剤の出現によつて恩恵を蒙むるにいたつた多くの疾患がある反面,いまだに病因不明のまま,対症療法のみで過ごされている疾患がある。そのなかでも,近来増加の傾向を示しつつあるいわゆる中心性網脈絡膜炎は,その原因,原発病巣などについて,識者間でもなお意見の一致をみていない,いわば眼科領域での盲点ともいうべき疾患の一つである。
 その主なる理由は,剖検例に乏しい上に,生井氏の報告例ではpreretinalに,上岡氏の例ではsubretinalに滲出液を認めた以外に,病理組織的所見にいくつかの相異点があることによつている。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.991 - P.991

小児眼科グルーブデイスカッション
日時:昭和43年11月9日(土)PM1.00〜5.00
場所:大阪市立大学医学部臨床講堂

第21回臨眼グループディスカッション

角膜移植

著者: 桑原安治

ページ範囲:P.993 - P.999

1.無水晶体眼の全層角膜移植について—附水晶体同時摘出例—
 先に全層角膜移植術の緑内障予防処置として,術時に虹彩毛様体解離および虹彩根部切除を施行することを推賞した。その症例中の11眼は無水晶体眼であり,またその他の4眼おいては同時に水晶体摘出術を試みたものである。これら11眼中透明癒着したものは7眼(63.3%)を数え,また同時水晶体全摘出術を試みたものの4眼中2眼に透明治癒をみた。その中1例に術中硝子体脱出をみたのみである。
 なお,手術に際しては,術前処置としてmannitolの静注などによる十分な減圧と,術中Frielinga's ringの装着による眼球萎縮防止と,術後は縫合を密にして生理的食塩水の注入により確実な前房再生を行なつたところ,透明治癒が多数の例に得られた。

色覚異常

著者: 大熊篤二

ページ範囲:P.1001 - P.1004

1.幼児色覚検査の興味づけについて
 保健所で行なう3歳児検診で,石原式幼児用色盲検査表第2部の図形のカードを見せ,その名称を言わせたところ,184名中正答率は丸100%,花9%,四角4%,三角3%であつた。
 保育所において2〜5歳児に対し,丸・三角・四角・花を画いたカードを作つて,カード合わせをしたり,フランネルグラフを使用して対応した形を張る遊びをしたり,ペープサードで形の対応の話を実演した後に,石原表による色覚検査を行なつた。3種の遊びのうちフランネルグラフ遊びは,幼児色覚検査の興味づけとしては一番適当と思われる。

弱視および斜視

著者: 石川哲

ページ範囲:P.1005 - P.1008

 今回のグループディスカッションは眼振(Nystag)mus)という最も難しい問題をとり上げて,8人の方々から最近の知見を紹介していただいた。以下抄録を中心に若干の私見を記させていただく。

眼・光学学会

弱視における眼屈折状態に関する研究—第2報不同視を除く弱視について(その1)斜乱視を有するもの

著者: 神谷貞義 ,   西岡啓介 ,   西信元嗣 ,   秋吉聡子

ページ範囲:P.1009 - P.1015

I.緒言
 前回第1報に不同視弱視について統計学的考察を行なつたが,今回不同視を除く弱視患者のうち,弱視眼に斜乱視を持つ症例69名の特に屈折状態について考察を行なつた。

弱視における眼屈折状態に関する研究—第3報不同視を除く弱視について(その2)斜乱視を有せざるもの

著者: 神谷貞義 ,   西岡啓介 ,   西信元嗣 ,   秋吉聡子

ページ範囲:P.1017 - P.1023

I.緒言
 前回第1報不同視弱視,第2報に弱視眼に斜乱視を持つ斜視弱視の統計学的考察を行なつたが,今回は,弱視眼に斜乱視をもたない斜視弱視患者90名について,特に屈折状態を中心として統計学的考察を行なつた。これらの患者は現在斜視弱視の訓練を行なつている全患者296名の34%に当る。また斜視弱視患者185名の48.6%に当る。

印象記

第72回日本眼科学会総会(1)

著者: 越智通成 ,   高久功 ,   川畑隼夫 ,   箕田健生

ページ範囲:P.1031 - P.1037

 開会式に引き続き,9時40分三井教授が座長席につき一般講演が始まる。
 第1席:石津氏(山口大)は流行性角結膜炎の診断にspecificな螢光抗体を得るため,免疫血清の作成法を比較検討し,感染HeLa細胞にadjuvantを加えて免疫した家兎血清がすぐれていること,また各型に群共通抗原があるが,第3型で十分吸着すれば,第8型は血清で証明しうることを,単純ヘルペスウイルス感染細胞や,流角患者の結膜擦過標本によるスライドで示した。群共通抗原を除き,一歩前進した臨床応用のきく研究であつたが質問はなかつた。

談話室

ネパールにおける眼科の集団治療—ネパールの民族と歴史(その2)

著者: 神谷貞義

ページ範囲:P.1039 - P.1043

第2部ネパールの中世史
タクール王朝とチベット開国
 これから以後の日本と,チベットおよびネパールのとつた歴史は,すべて似ており,どれを先に話しても同じであるが,ネパールおよびチベットから話を進めよう。
 ネパールは紀元前350年から始まつたリッチャヴィ時代が,その黄金時代を築き,カドマンズー盆地に華やかな古代文化を開花させていた時,インドから侵入してきたタクール族は,それらのネワールの文化を吸収して,タクール王朝を建てた。当時チベットでは,チベットの最初の国王,ソン・ツェン・ガンボーが出て,武力国家としてのチベットを着々と統合して,国家を確立しようとしていた。これを知つたタクール王,アムシュ・ウアル・マンは,娘ブビクチイをソン・ツェン・ガンボーの妃として嫁した。そして引出物として沢山の仏教の聖典と,金銀の彫刻家および建築技士を娘に併わせて贈つた。当時ネパールでは,美術,金銀の細工,建築技術は高度に発達していたので,ネパールの文化は,チベットに伝えられ,そしてこの時にチベットに伴われていつたネパール人の子孫は,長く今日までも,チベットの技術者としてとどまつているのである。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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