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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科22巻8号

1968年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・130

眼瞼のVaccina

著者: 進藤晋一

ページ範囲:P.1051 - P.1052

〔解説〕
 種痘に伴う併発症は,全身的にも,眼局所的にも種々観察されて,多くの報告があるが,現今は,衛生思想の向上,種痘手技の改良などと相俟つて,重症例を見る機会は稀になつた。著者は,比較的に激しい臨床症状を呈した1例に遭遇したので,その眼所見ならびに経過,その他一,二の所感を略述する。

臨床実験

緑内障の手術時期決定について—特に視野変化を中心として

著者: 中村千春 ,   北沢克明

ページ範囲:P.1053 - P.1060

I.緒言
 緑内障が,その薬物療法によつて眼圧のコントロールが不良であるとき,または薬物治療で眼圧がコントロールされているにもかかわらず視野変化が進行する場合には,外科的手術を行なうのが原則である。しかし,手術が円滑に行なわれたにもかかわらず,手術侵襲を契機として視野の増悪が生じうる場合もあると言われているが,なお異論がないわけではない。このような手術を契機とする視野の増悪が,術前視野変化が高度である症例に起こるとその意味は重大である。したがつて視野狭窄が極度に高度である場合は手術の非適応であるとする説も生じてくる。かかる手術による視野の増悪が,どのような条件下で,どのような頻度で生じるかを知ることは,薬物治療より転じて手術時期を決定するにあたり,きわめて有意義であると考えられる。今回われわれは,この点について術前視野,視力,視神経乳頭所見,眼圧などを中心に検討を加えたので,ここに報告する。

いわゆる慢性CO—中毒症の視野と脳波変状の相関性について

著者: 楢崎嗣郎 ,   小池祐司

ページ範囲:P.1061 - P.1066

I.緒言
 近来CO—中毒は炭鉱や家庭内の炭火や都市ガスによる中毒のみでなく,広く自動車による排気ガスによる大都市の公害問題としても重要な課題となりつつある。今回われわれは都市ガス配管工に発生しつつあるいわゆる慢性CO—中毒症の医学的所見について,眼科のみでなく,内科,精神科,脳神経外科,耳鼻的の全科を挙げて総合的に検索を行なつた。それらについては牛尾ら1)の文献を参照されたい。なかんずくわれわれは慢性CO—中毒症の視野障害が中枢性のものか,あるいは末梢性のものかを検討するため,脳波との相関性を検討してみたところ,興味ある成績を得たので報告したい。

新抗結核剤Ethambutol〔dextro−2,2'—(ethylenediimino)—di−1—butanol・2HCl〕による眼障害例について

著者: 玉井嗣彦

ページ範囲:P.1068 - P.1077

I.緒言
 Ethambutol〔dextro−2,2'—(ethylenediimino)—di−1・butanol・2HCl〕は既存の結核剤に感受性の結核症は勿論,耐性を示す重症結核症に対しても,単独または併用療法で優れた治療効果を示す新しい二次抗結核剤で,1961年米国のWilkinsonら23)により合成開発されたものである(第1図)。その基礎的臨床的成績の優秀性は多くの報告にみるところであるが,眼に対する副作用の点で今一つ一沫の不安をもつて迎えられている事実も否定できない。
 今回,某療養所よりEthambutol服用中視力障害を生じた2例の患者をみる機会を得,本剤服用による眼障害例について若干の検討を加えたのでここに報告する。

糖尿病性網膜症の治療に対する二,三の考察について

著者: 大岡良子 ,   河本道次 ,   森川幸子 ,   松岡洋子

ページ範囲:P.1081 - P.1087

I.はじめに
 現在のところ糖尿病性網膜症の治療に関して,根本的には糖尿病の内科的コントロールが基礎的治療法であり,眼科領域ではもつばら対症療法が行なわれている。
 今回われわれは糖尿病性網膜症の一治療法として,主として脂血清浄作用,脱コレステロール作用などがあるとされているデキストラン硫酸の一製剤であるMDSを使用し,全身的な面からの治療効果を検討し,あわせて対症療法として最近種々なる網膜症に用いられているVB1,VB6,VB12の合剤であるVitamedin使用例と,また従来よりその効果を認められているATP製剤の腸溶錠を用いた症例につき,おのおの治療効果について比較検討した結果をここに報告する。

パロチン錠の老人性白内障進行防止効果について

著者: 松下和夫 ,   谷美子 ,   津村暁 ,   宮浦康児

ページ範囲:P.1089 - P.1093

I.緒言
 20世紀は視覚文化の時代だといわれている。現代,たとえ少しでも視覚障害を有することは,労働能力の低下はいうに及ぼず,快適にして自由な日常生活を送ることが許されない。
 眼科臨床において,老人性白内障患者は近年増加の傾向がみられている。これは最近の医療の目ざましい普及によつて,成人病と眼との関係が重要視され,精密な眼底検査を行なうケースが増加し,老人性白内障を発見する機会が多くなつたこともあろうが,根本的には平均余命が延長し,老年人口の増加に伴つて起こつた必然的な増加現象とみるべきであろう。

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眼科ニュース

ページ範囲:P.1093 - P.1093

小児眼科グループディスカッション
日時:昭和43年11月9日(土)PM 1.00〜5.00
場所:大阪市立大学医学部臨床講堂

欧文雑誌略称(眼科関係)

ページ範囲:P.1142 - P.1143

第21回臨眼グループディスカッション

白内障

著者: 樋渡正五・他

ページ範囲:P.1095 - P.1104

 第6回白内障グループディスカッションは昭和42年11月10日(金)に国立教育会館で行なわれました。出席者も相当数にのぼり,回を追つて盛会になつてゆくのは,白内障手術が眼科領域での手術においてやはり重要なものの一つであるからと思います。
 できるだけ質疑応答も抜けないように努力はいたしましたが,なにしろfreetalkingの質問・応答のこととて,各所に抜けた点が多くご質問された先生方のものが各所でもれているのではないかと危惧していますが,だいたいの傾向はご理解いただけるものと考えております。不手際な点をお詫びいたします。

眼感染症(第4回)

著者: 大石省三・他

ページ範囲:P.1109 - P.1113

 今回はだいたい次の4つを主題として選んだ。1.アデノウイルス,Ⅱ.ヘルペスウイルス,Ⅲ,トラコーマ病原体,Ⅳ.感染症に対する眼科薬剤,の研究である。
 その他として,sarcoidosisの1題とマイコプラズマ1題,トキソプラズマ1題の計3題である。

糖尿病と眼

著者: 鹿野信一・他

ページ範囲:P.1115 - P.1119

 文部省の科研班"糖尿病性血管障害研究"と同一会場で行なわれた。最初に班研究として内科,生化学,病理各班員の研究経過報告があり,ついで眼科部門の報告が行なわれた。したがつて班研究報告の後半にはグループ・ディスカッションと共通する部分もあり,聴衆あるいは討論も班員のみでなく,広い形で行なわれた。班研究部門の報告をこの部門で省略することは,不自然に思われるけれども,限られた紙数の面でおゆるしねがいたい。その報告題名を記しておく。

眼・光学学会

Toric LensesのSpot Diagramについて

著者: 沢口勉 ,   岡島弘和

ページ範囲:P.1121 - P.1125

I.はじめに
 乱視用眼鏡レンズは主としてtoric lensが用いられている。それらのレンズから実質的に所定の非点隔差を有するレンズが求められてきた。しかしながらSeidel近似でequal astigmatismの条件を満たすtoric lensにtyreとbarrelの2つのtypeがあり,これによると同じレンズのジオプターに対してもtypeにより組み合わせるレンズ面の屈折力が異なる。眼鏡レンズは曲面の曲率半径がより大きい方が望まれるので,いずれのtypeを使用する方がよいかを調べてきた。
 今回はtoric lensをspot diagramによって,さらに詳しくimage patternを調べ,astlgma—tism以外の収差による影響も検討したので報告する。

印象記

第72回日本眼科学会総会(2)

著者: 谷口慶晃 ,   小山綾夫 ,   塚原勇 ,   田川貞嗣 ,   杉浦清治 ,   諫山義正 ,   桐沢長徳

ページ範囲:P.1129 - P.1140

 網膜に関する業績は相変わらず多く,演題数は27題で,全講演数100題中の3割近くになる。これらの講演は第1日午後の後半から第2日午前,第3日午前とすべて第1会揚に割り当てられている。関連した演題が全部同一会場で行なわれるということは誠に便利であり,司会者の配慮のほどが偲ばれる。しかし網膜に関する講演もその内容については種々さまざまで,形態学的なもの--特に電顕によるもの--,あるいは螢光眼底についてのもの,電気生理学的なもの,また生化学的なものと多岐にわたつている。
 今期日眼総会は,東京では雨の最も少ない時期で,ストを回避して期日を選んだという桑原会長のご挨拶であつたが,あいにくと第1日からすでにかなりの雨で,第2日も前目来の雨がなお降り続いており,小雨そぼ降る中に第2日目の学会が始められた。

談話室

ネパールにおける眼科の集団治療—ネパールの民族と歴史(その3)

著者: 神谷貞義

ページ範囲:P.1145 - P.1150

第3部ネパールの近代史
現ネパール王家,グルカ王朝の成立
 第二次世界大戦の時に日本兵と戦い,また一部は日本に傭われ英国と戦い,また最近はホンコンで暴徒慎圧に当つているグルカ兵とは,英国に傭用されているネパール人のことである。現ネパール,シャー王家はグルカであるが,通称のグルカ兵が,グルン,タマン,ライ,ランガール,リンブであるのと民族的には異なるのである。本来の民族学的な意味でのグルカは,インドの北部に住む種族,殺帝利族の商と称する精桿な種族で,1303年インドから追放され,最初ネパールの中央部の丘陵に逃れて避難していたが,そこに定着し,しだいに勢力を拡大していつた。1559年に小都市グルカに住んでいた王を打ち破つてそれを支配した。このことからグルカの名が生まれた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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