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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科23巻1号

1969年01月発行

雑誌目次

特集 第22回日本臨床眼科学会講演集 (その1)

側脳室内石灰球による眼症状

著者: 小原博亨 ,   阿久津澄義 ,   新城長昭 ,   中村一夫 ,   宮島忠 ,   村上正固

ページ範囲:P.15 - P.20

I.緒言
 脳内石灰沈着はレントゲン写真を読影するに当つて,きわめて重要な手がかりを与える。脳内石灰沈着には,病的な場合と非病的と認められる場合とがあり,非病的石灰化像としては,松果体石灰沈着,脈絡叢の石灰沈着,その他,大脳鎌,小脳天幕,トルコ鞍部,上矢状洞壁,Pacchioni小体,下垂体などにおける生理的な石灰の沈着の場合を主とし,病的な場合としては,脳腫瘍の石灰沈着,動脈壁石灰沈着,古い脳膿瘍や脳出血,脳動脈瘤,皮様嚢腫,寄生虫の存在などの場合の石灰沈着がある。
 われわれがここに報告しようとする症例は,腫瘍の発生,寄生虫の介在などの病的な原因がなくして,ほとんど正常と考えられる脳室内に巨大な石灰球があり,比較半盲,うつ血乳頭,めまいなどの症状を示し,脳腫瘍の疑いにて,摘出手術を行なつた例であり,剔出物は組織学的検査では脳砂腫と認められた例で,しかも,術後8年を経た今日においても,患者は手術侵襲に基づく脳障害を残すほかは健在であり,石灰沈着の再発もない。すなわち同名比較半盲,うつ血乳頭を起こして始めて発見されたまれな脳室内石灰沈着例である。

眼窩内気体注入撮影法の臨床経験

著者: 雨宮次生 ,   坂上英 ,   元村武夫

ページ範囲:P.21 - P.26

I.緒言
 眼球突出をきたす疾患,なかでも片側性眼球突出症の診断は,これをきたす疾患が全身性疾患を含む種々多岐にわたる原因によるがゆえに困難である。また,眼球突出をきたした原因が眼窩内にあると推定される場合であつても,眼窩ならびにその周囲器官の解剖学的複雑さにより,その鑑別診断は容易ではない。
 近年,眼窩腫瘍の診断にも,超音波検査器やアイソトープが使用されるようになつたが,レントゲン診断は,種々工夫と改良が加えられつつ,現在なお眼球突出症,特に眼窩腫瘍の診断のためには第一歩であろう。

眼窩軟部腫瘍について

著者: 桐淵光智

ページ範囲:P.27 - P.31

I.緒言
 眼窩に原発する腫瘍の分類については,従来より多種多様の分類がなされており,特にその中の主要部分を占める間葉系腫瘍に関しては,その組織形態が特殊であるためもあつて,組織発生の立場よりの病名(線維肉腫,血管内皮細胞腫など)と細胞形態よりの分類(小円形細胞肉腫,紡錘形細胞肉腫)とが混在し,このため各腫瘍の臨床経過や予後についての判断や,それに対する治療などについての記載も一定せず,種々の混乱を招いている。
 1949年,A.P.Stoutが第2回国際癌学会において軟部腫瘍について新しい分類法を提案して以来,各科領域においてもこれにのつとつて,症例の分類,検討が行なわれ,その結果,軟部腫瘍に対する診断,予後の判定に著しく貢献した。

網膜芽細胞腫の保存的療法について

著者: 徳永次彦 ,   原潤一郎 ,   山下壮之助

ページ範囲:P.33 - P.35

I.緒言
 両眼に網膜芽細胞腫がある場合,重症眼が眼球摘出され,軽症眼に保存的療法が試みられるが,著者はこのような両眼網膜芽細胞腫の2例2眼にレントゲン線療法,3例3眼にジアテルミー凝固,1例1眼に光凝固をなしたので,これらの症例について述べ,この3療法を論じてみたいと思う。

うつ血乳頭を主徴としたSympathicoblastomaの1剖検例

著者: 渡辺仁 ,   山野辺隆介 ,   本多孝 ,   杉山喜彦

ページ範囲:P.37 - P.44

I.緒言
 交感神経芽細胞腫は,主として乳幼児,小児の副腎髄質より発生する悪性腫瘍で,早期に肝臓,骨系統,リンパ腺などに転移する予後のきわめて不良な疾患である。また眼科医にとつては,時として主病巣の診断以前に眼球突出,うつ血乳頭などの症状を主訴として訪れることもあり,疾患の悪性度からいつても,見逃すことのできない疾患であろう。
 Wessely1)は幼児が眼球突出をきたし,その原因として,腫瘍が考えられる場合には,本腫瘍をも念頭に置くべきであると強調しているが,本邦眼科領域における報告例は,昭和11年石川2)を初めとして,11例を数えるにすぎない。

虹彩悪性黒色腫の1症例

著者: 山田芳明 ,   吉村卓也 ,   青柳健男 ,   村上恵風 ,   松原藤継

ページ範囲:P.45 - P.49

I.緒言
 眼科領域における悪性黒色腫は,本邦において比較的少ないとはいえ,現在までにかなりの報告がなされている。これらのうち,脈絡膜に原発するものが多いことは外国の統計成績でも同様である。
 著者らは,外国においても少なく,本邦では15例目と思われる虹彩原発の悪性黒色腫を経験したので報告する。

脈絡膜悪性黒色腫の1例

著者: 倉知与志 ,   森田嘉樹 ,   松原藤継 ,   升田義次 ,   八田正幸

ページ範囲:P.51 - P.55

I.緒言
 脈絡膜悪性黒色腫は,白人においては眼球の腫瘍のうちで最も高い比率を示している1)2)。わが国での本症の報告は比較的少ない6)7)
 われわれは脈絡膜悪性黒色腫の1例を経験したので報告する。

全身症状を伴う眼疾患における抗核抗体,抗DNA抗体および抗マイコプラズマ抗体

著者: 国司昌煕

ページ範囲:P.57 - P.61

I.緒言
 Systemic Lupus Erythematosus (SLE)は自己免疫疾患とされており,患者血清中には抗核抗体,抗DNA抗体が高率に検出されるが,Burnsら1)はhistoplas—mic chorioretinitis, toxoplasmic chorioretinitisの患者血清中にもDNA抗体が検出されるものがあり,これら疾患には,自己免疫的な要因が関与しているのかもしれないと述べ,また著者2)はベーチェット症候群発作期の患者血清中にはマイコプラズマ(M.hominis type 1)抗体の上昇しているものがあることを発表した。
 全身症状を伴う眼疾患,たとえばベーチェット症候群,Vogt—小柳—原田症候群,筋無力症など,その発症のメカニズムは不明なものが多く,これら疾患の病因解明の手がかりとして患者血清中における抗核抗体,抗DNA抗体,および抗マイコプラズマ抗体を測定した。

臨床面からみた眼鏡枠材料をめぐる諸問題

著者: 戸塚清 ,   西川信子 ,   春日誠次 ,   原田二郎 ,   露木重明

ページ範囲:P.62 - P.63

 眼鏡は場合によつては50年間も顔の皮膚と接触し,あたかも体の一部のように装用され続ける。したがつてこの材料についての検討を試みることも,あながち国民大衆の健康保持の見地からみて,むだなことではないと考える。
 最近ヴェンナライン社から新しい眼鏡枠材料としてオプティル21の発表などがあるが,まだ情報不足の感もあるので,この検討は後日に延ばすこととし,今回は問題をセルロイド,および不燃性セルロイドの眼鏡枠に限定し,いろいろの条件を設定して,事情究明のため一応の努力を試みた。内容を箇条書きにすると次のごとくである。

眼瞼下垂に対する眼瞼挙筋前転法,とくにその定量法について

著者: 丸尾敏夫 ,   久保田伸枝

ページ範囲:P.65 - P.68

I.緒言
 眼瞼下垂の手術方法のうち,眼瞼挙筋前転法がもつとも生理的状態に近くなるすぐれた方法であることが一般に認められているが,眼瞼挙筋作用がある程度以上存在しない症例では効果がないと,その適応には限界があることも知られている。しかし,眼瞼挙筋前転法が眼瞼下垂に対するもつともすぐれた手術方法である以上,その適応はできるだけ拡大されることが期待される。
 また,眼瞼下垂の手術は本来その程度に応じた定量的手術として行なわれるべきものと考えられる。とくに,眼瞼下垂のうち,もつとも頻度の高い先天性眼瞼下垂は早期に手術すべきであることが,小児眼科の立場から要求される現在,定量的手術の意義は大きい。

未熟児の眼の管理

著者: 塚原勇 ,   服部吉幸 ,   松村忠樹 ,   岩瀬帥子

ページ範囲:P.69 - P.74

I.はじめに
 未熟児の眼の管理には,眼底のみならず前眼部の管理も含まれるが,本稿においては眼底の管理に関するわれわれの成績を報告する。眼底の管理において最も重要な対象は,申すまでもなく未熟児網膜症である。本症は未熟児に対する酸素の投与制限によつて,その発生率が著しく低下し,往年ほどには眼科医の関心を呼ばなくなつてはいるが,Avery1)は酸素を制限するようになつてから,未熟児の死亡率が上昇してきたことを指摘しており,小児科医は特発性呼吸障害症候群idiopathic respi—atory distress syndrome (IRDS),その他呼吸障害のある児には,生後数日は高濃度の酸素を与えることが必要であると考えているので,Patz2)が述べているように再び未熟児網膜症が増加する可能性は否定できない。未熟児の動脈血PO2が150〜160mmHg以下であれば網膜症発生の危険はないといわれているが,動脈血PO2の経時的測定は現状ではすべての病院で容易に行なわれ得るということではないので,眼科医による眼底の観察は依然として未熟児の管理の中で重要な部門の一つである。われわれの病院においても,眼科医による眼の管理が行なわれており,最近の成績を報告する。

弱視の予後判定に関する研究

著者: 外間英男

ページ範囲:P.76 - P.77

緒言および目的
 「弱視とは,器質的変化がないか,あつてもそれでは説明のできない視力低下を認めるもの」とのBangerterによる定義が広く受け入れられているが,実際弱視治療にあたつてみると,器質的変化があると疑つていても,従来の検査では証明できなかつたり,あるいは器質的変化の量的測定が不可能なために,それらがどれくらい視力の低下に関与しているかがつかめないので,一括して弱視の名のもとに治療が行なわれてきた。そのために治る弱視と治らない弱視は,一応治療をしてみなければわからないということになる。
 著者は,弱視が本来は機能的疾患として取り扱われているにかかわらず,乳幼児の能力のために,従来の検査では見出すことができない器質的要素が,この中に含まれているために混乱を惹起したと考えた。弱視の予後判定には,弱視に交じつている器質的要素をいかにして見出すかにあると考え,次の3つの実験を行なつた。

アコマネオレンズによる小児病的眼の防眩に関する研究

著者: 湖崎克 ,   中山周介 ,   柴田裕子 ,   森和子

ページ範囲:P.79 - P.84

I.緒言
 白子眼を持つ小児は,強いまぶしさのため,眼球振盪による視力低下以外に戸外活動や学習に抵抗があり,そのため筆者は,防眩眼鏡として,スモークグリーン,スモークレンズ眼鏡が好適であることを第32回日本中部学会で発表した。しかし,このような着色レンズは体裁の上から,また戸外では良くとも室内へ入ると,どうしても少しは視力に影響のあるため,その後の遠隔成績でも用いられていないことが多く,そのため,着色度の少ない,なおかつ可視光線のあまり障害されないAcomaneo lens (以後アコマネオと略す)を,白子をはじめ病的眼を持つまぶしさを訴える小児に用い,その防眩効果につき種々検討を試みたので,ここに報告する。

Cyclic Oculomotor Paralysisの1例について

著者: 田村秀子 ,   植村恭夫 ,   岡田良甫

ページ範囲:P.86 - P.87

 1884年Rampoldiが,上眼瞼と内直筋および瞳孔括約筋が一定の周期で痙攣と弛緩を反復するきわめて奇妙な1症例を報告して以来,cyclic oculomotor Paraly—sis,またはcyclic oculomotor spasmなど種々の名称で現在に至るまで80余年の間に44の症例が報告されている。
 この奇妙な周期現象は昼も夜も,また睡眠時も常に起きており,その周期はほぼ20〜30秒程度のものが多く,その痙攣と弛緩の様相は,きわめて類型的で確一的であるため,その病因および周期発生機序に関し興味ある多くの推論が提示されている。

新春放談

「臨床眼科」の回顧と展望

著者: 中泉行正 ,   桐沢長徳 ,   鹿野信一 ,   初田博司

ページ範囲:P.7 - P.11

 桐沢 新年おめでとうございます。「臨床眼科」も満23歳の春を迎えました。一昨々年,満20周年記念のさいに,本誌の発展と将来についていろいろ考えたんですが,それからまた3年経過した現在,ご承知のようにいま医学界全体が,いろいろな問題で騒然としております。大学—特に医学部—は教育制度の上で多くの問題がありますが,開業のほうも保険制度の抜本改正などがあつて,本年は学会にとつても,開業医にとつても,重大な時期になるだろうと思います。したがつて本誌は発刊当初からの目標,すなわち「学会と医会の橋渡し」のために歩み続けてきたものですから,この機会に編集に当つているわれわれが昨年1年間の出来事を顧み,さらに現在および将来にわたつてわれわれの進むべき道について話し合つてみたいと思いますので,よろしくお願いいたします。最初に鹿野教授,学会についていかがでしようか。

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眼科ニュース

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.87 - P.87

 螢光眼底シンポジウムが企画され,その第1回の会合が,1969年6月9日から6日間,フランスToulouseのAlbiで開催されることになりました。基礎理論と手技,動物実験,循環障害,網膜色素上皮,脈絡膜などテーマごとにround table discussionの形式がとられ,最終日には,学会形式の一般演題の発表が行なわれます。米・英・独などから,本法の専門者がこぞつて参加の意向を示していますが,日本にも,参加の呼びかけが届いています。口頭発表の他にも,パネルなどを利用したDe—monstration,器械の展示も同時に予定されています。詳細については,組織委員である東大眼科清水氏にお問い合わせください。

世界の眼科書

著者: 中泉行正

ページ範囲:P.94 - P.95

 眼についての医学的記事は古代からたくさん残されている。たとえば紀元前2000年頃に出来たハムラビ法典(Hammurabi 1955 ?〜1913 B. C.)には眼を手術した時,その外科医に対する謝礼と失敗して失明させた場合の罰則についてのことがのつているといわれ,またその他,薬のこと治療のことなど眼科に関する記事は古くから非常に多い。しかし,現存していてしかも確かな記録というものにはなかなか簡単に接することができない。
 さて,世界の眼科書といつてもこれまた数限りないともいえるが,系統医学としての記録には,西にギリシャ医学のヒポクラテス全集,東にカラカ,ススルタによる印度医学の聖典がある。また中国やわが国の古代にもそれら聖典の影響を受けた立派な医典がある。これらの中には眼について,あるいは詳細に,あるいは簡略に長短いろいろ記載されている。それは即眼科専門書とはいいきれないが,少なくともその時代の眼科については専門的立場で書かれたものとして,広い意味で眼科書ともみられよう。というのは古い時代には医学の分野が今日ほど細分化されていなかつたため,医学全書的なものが多かつた。

印象記 第22回日本臨床眼科学会(1)

第一会場 午前/第一会場 午後

著者: 三島済一

ページ範囲:P.88 - P.92

 学会の直前に第一会場での印象を書くようにと申し入れがあつたが,どうしても午前中に一時中座しなければならない用があつたので,別の時間にしてもらえるように頼んでおいた。学会後になつて,聞いたところだけでもよいから書くようにと再度申し込みをうけた。全部聞いていても,なかなか満足に印象記を書くことはむずかしいのに,聞いていないところがあつたのでは,まつたく目的にそわないものしか書けない。第一,聞けなかつた演者の方に失礼でもあるが,編集部で今から別の人に頼むこともできないことであろうし,不満足なものしか書けないのを承知の上で筆をとることにした。なにとぞ,この点読者の方々のご寛容をお願いするものである。
 近年しだいに盛大になつた臨床眼科学会は,今年は実に87題の一般講演と特別講演を消化しなければなかつた。三国教授はじめ新潟大学のプログラム委員の方の方針により,午前中は3つの会場に分かれ,午前中最後の特別講演と,演題の集中した主題を中心とする午後のプログラムを全員が大ホールに集まつて聴くことになつた。演題の配分には非常に気をつかわれてあつたため,一つの会場にじつとしていてなかなかおもしろく聞くことができ,他の会場のものを聞くことができないという不満はもちろん零ではないけれど,あまり強くは起こらなかつた。ことに第一会場は眼腫瘍とブドー膜疾患のシンポジウムのようなもので,問題の理解にはなかなか有意義な3時間であつた。

臨床実験

Ret. Diab.中の重症率と軽症率について

著者: 小島克 ,   吉田智彦 ,   三宅謙作 ,   小島一晃

ページ範囲:P.97 - P.100

 ret. diab.の重症発生,軽症発生について二,三調べてみた。

Ret.Diab.の発生と期間性

著者: 小島克 ,   三宅謙作 ,   吉田智彦 ,   小島一晃

ページ範囲:P.101 - P.106

 ret.diab.の発生に対して罹患期間性が問題になるが,この中において二,三の因子性を考えてみた。

外眼筋の組織化学的電子顕微鏡学的研究—III.外眼筋におけるRod-like Structures

著者: 箕田健生

ページ範囲:P.107 - P.116

I.はじめに
 1963年Shy et al.1)は先天性,非進行性のミオパチー症状を示した4歳の少女の骨格筋biopsy標本において,従来文献に記載されたことのない異常な杆状または糸状の小体--rod-like struc—tures (以下rodsと省略する)--が多数,筋線維内に存在することを発見した。電子顕微鏡で観察すると,このrodsは長軸に垂直方向に約145Åの周期性を持つて整然と配列するfilamentから成り立つていることが認められ,rodsがtropomyosinなどに似た一種の筋収縮蛋白を含有していることが推論された。Shy et al.はこのような臨床的には先天性,非進行性ミオパチー症状を示し,筋線維にrodsが見られる疾患を新しい一つの独立した疾患であるとして,これをnemaline myopathy (糸状筋症)と名づけた。その後,nemaline myopathyの報告があいつぎ2)〜9),またAfifi et al.5),Price et al.6)の研究によつてrodsが筋線維のZ線が局所的に異常な肥厚増殖を起こすことによつて形成されたものであることが明らかになつた。

合併散瞳暗室緑内障負荷試験—その3初眼圧ならびに房水流出率との関係

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.117 - P.120

I.緒言
 緑内障負荷試験における眼圧上昇と試験前眼圧値との関係はしばしば問題にされるが,この点を散瞳試験や暗室試験について論じたものはきわめて少ない。先報で散瞳,暗室試験を合併施行することにより,正常と緑内障との診断および緑内障眼における陽性率が散瞳,暗室個々の試験より高められることを示したが,本篇ではこの合併試験について,眼圧との関係および眼圧動向の基礎たる房水流出率の眼圧上昇に対する影響を特に検討する。

糖尿病性網膜症の臨床的観察—デキストラン硫酸の使用経験

著者: 山本隆朗

ページ範囲:P.123 - P.129

I.緒言
 糖尿病性網膜症の治療として,今日までいろいろな方法が用いられ,使用された薬剤の報告も多数あるが,決定的な治療法は確立されていない。過去の報告にもあるように,糖尿病性網膜症の発症および進行因子は種々あり,その原因はきわめて複雑なものであることは推察できる。したがつて治療法においても同様であり,決定的治療法を確立することは非常に困難なものであろう。
 今回,著者は糖尿病性網膜症の患者15症例に対し,脂血清澄化作用,線維素溶解作用,抗ヒアルロニダーゼ作用などを有し,抗動脈硬化剤として注目されているデキストラン硫酸を投与し,かなりの効果が認められたので,その結果を報告する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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