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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科23巻10号

1969年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・143

Iridoschisisを伴つたアトピー性白内障の1例

著者: 茂木劼 ,   小林啓子 ,   小林明博

ページ範囲:P.1147 - P.1148

〔解説〕
 われわれは最近Iridoschisisを伴ったアトピー性白内障の1例に遭遇した。アトピー性白内障は本邦でもすでに18例の報告があるが,合併症としてIridoschisisを伴つている例は欧米にも報告がないようである。患者は17歳の男子で,幼児期より高度のアトピー性皮膚炎に罹患し,昭和42年5月にはじめて左眼の視力障害を自覚した。
 昭和43年3月入院時には両眼とも手動弁となり,両眼ともIridoschisisを伴う成熟白内障を認めた。

臨床実験

Iridoschisisを伴つたアトピー性白内障の1例—貼布反応により手術時の使用薬剤を選択して良好な結果を得た例

著者: 茂木劼 ,   小林啓子 ,   小林明博

ページ範囲:P.1149 - P.1156

I.緒言
 アトピー性白内障はまれな疾患であるが,本邦ですでに18例1)〜6)の報告があり,特に近年2,3の報告をみる。著者らはIridoschisisを伴つたアトピー性白内障の1例に遭遇したが,手術前に皮膚科医の協力を得て,高度なアトピー性皮膚炎の改善をはかり,また手術時に使用する薬剤の影響をできるだけ少なくするため,種々の薬剤につき貼布反応を行ない,薬剤を選択してから手術を行なつて,術後順調な経過をみた症例を経験したのでここに報告する。

高周波低強度集束超音波による水晶体に対する無軌跡限局侵襲装置について

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.1157 - P.1165

I.緒言
 超音波の医学領域における応用の歴史は古く,1927年Woodが生体に対する影響を発表して以来,医学の新分野として発展しつつある。眼科領域への応用は,1938年Zeissが超音波の眼組織に及ぼす影響を調査して以来多くの研究がなされてきた。すなわちZeissの報告以来Lavine(1952),Christopher (1955),Donn (1955),Baum (1956),Torchia (1967)らによる超音波の眼組織に及ぼす影響について,研究がなされてきた。
 超音波の外科的応用は集束超音波のエネルギーによつて破壊したい部位のみをtracklessに破壊することを目的として考えられ,脳外科においての深部定位手術もその応用例である。すなわち人体に対する外科的超音波侵襲は,1954年Fryが報告して以来Ballantine,岡,吉岡,和賀井,植木らによつて実験検討された。

8年間経過を観察した膠様滴状角膜変性症の1例とその組織所見

著者: 進藤晋一

ページ範囲:P.1167 - P.1174

I.緒言
 膠様滴状角膜変性症は,わが国の文献には30数家系,約50例が報告されているが,外国においては,わずか1,2の報告があるにすぎない。著者は約8年間にわたつて,本疾患の1例を観察し,その経過中に1眼の眼球内容除去を行ない,組織学的に検索する機会を得たのでここに報告する。

Lincomycinの眼内移行に関する研究I—Lincomycinの局所使用について

著者: 今井正雄

ページ範囲:P.1175 - P.1182

I.緒言
 Lincomycin (以下LCM)は1962年,米国Upjohn社によつて開発された新しい抗生剤で,新放線菌Streptomyces lincolnensis var.lin—colnensisの培養濾液より得られた塩基性の抗生物質である。白色の結晶で水に易溶,メタノールおよびエタノールに可溶で,分子式はC18H34N2O6S・HClH2O,分子量は約461である。
 本剤はMacrolidesと同様,蛋白合成阻害剤であるが,Macrolidesのように構造式中に巨大な環状ラクトン構造をもたない点で,これと区別されている。しかしその抗菌スペクトルはグラム陽性菌に限られていること,Macrolides系抗生剤に高度耐性のブドウ球菌は,LCMに対しても高度耐性であることなどにより,Macrolides類似の抗生剤と考えられている。

興味ある角膜ジストロフィー(異栄養症)の症例について

著者: 須田経宇 ,   原敬三

ページ範囲:P.1183 - P.1187

緒言
 著者らは日常いろいろの角膜ジストロフィー(異栄養症)を経験するが,ここで取り上げる3症例中,第1例はまだ日本では報告されていないようであり,第3例は外国の文献にもないと思われる稀例であり,第2例はわが国でも報告はされているが比較的まれなものであるので,写真または図を添えて述べることにした。

Duane症候群とMarcus Gunn現象との合併について

著者: 竹内真 ,   丸尾敏夫

ページ範囲:P.1189 - P.1193

I.緒言
 Duane症候群は日常比較的しばしばみられるが,外転障害,内転時眼球後退および瞼裂狭小というその特異的な症状は,外直筋の異常神経支配によるものであることが,筋電図学的研究により明らかにされている1)
 一方,Marcus Gunn現象は眼瞼下垂がみられるが,開口時には瞼裂が開大し,眼瞼下垂が消失するという症状である。これは眼瞼挙筋と外翼突筋との異常連合運動であることが知られている2)

両鼻側半盲を伴つたうつ血乳頭の症例

著者: 中谷一 ,   別所建夫

ページ範囲:P.1195 - P.1200

I.緒言
 両眼乳頭に浮腫があり,視野には両鼻側半盲を伴つている症例に薬物療法を行なつたところ,諸症状が改善したのを経験したので,ここに報告する。

Kowa眼底カメラによる立体撮影

著者: 三国政吉 ,   八百枝浩

ページ範囲:P.1201 - P.1207

I.緒言
 眼底を立体撮影するには眼底カメラの光軸を平行移動して行なう。これにはカメラ平行移動制御装置を用いたり,平面平行ガラス装置を用いる方法などがある。これらのことについては著者らのすでに報告したところである。
 Kowa眼底カメラRC−2はCrahn型眼底カメラで,被検眼に接近して用いるので,平面平行ガラス装置を対物レンズの前方に取りつけることはできない。故にこれでは光軸移動装置をカメラの光学系内に内蔵する方式がとられている。

抗結核剤エサンブトールによる両耳側半盲の2例

著者: 浅山琢也 ,   兼子勉

ページ範囲:P.1209 - P.1212

I.緒言
 新しい結核剤として注目されているEthamb—utolはその使用経験により副作用として視神経障害などの出現することがわかり,これまでにもかなりの報告がある1)〜4)。著者らも最近この薬剤による眼障害として視力低下,色覚異常を伴つた両耳側半盲の2例を経験したが,このような症例はまだ知らないので報告したい。

手術

無眼球症における義眼装用の工夫について

著者: 小沢博子

ページ範囲:P.1213 - P.1216

I.緒言
 先天性無眼球症および小眼球症については,古くより数多くの報告がみられるが,その形成治療に関する報告は少ない。多くの場合,ごく普通の義眼を装用するか1),義眼の装用も困難な小結膜嚢に対しては,初めより結膜嚢形成術が行なわれている。最近秋山氏はシリコン製のSelf Dilatorを考案し,これを用いてsocketの再建を図り,好結果を得た2)
 著者は今回,非常に小さい結膜嚢を有した5カ月の片側性先天性無眼球症の男児に,手術的操作を加えることなく,この秋山氏考案2)によるシリコン製のSelf Dilator (袋型義眼+パンタグラフ型圧迫体)を装用し,袋内のシリコンオイルの量を加減することにより結膜嚢の拡張を図り,かなりの効果を得たので報告する。

学会案内

第23回日本臨床眼科学会演題一覧

ページ範囲:P.1222 - P.1226

外人講演
座長  浅山 亮二先生
前眼部に対する光凝固 東独・フンボルト大学眼科 D. W.コンペルグ先生
通訳  清水 弘一先生

第22回臨眼グループディスカッション

高血圧・眼底血圧

ページ範囲:P.1229 - P.1233

高血圧自然発症ラットの眼底所見
高橋茂樹・渡辺 仁(弘大)
 高血圧自然発症ラット(岡本・青木) F14およびF15について,生後まもなくより血圧測定,眼底所見を観察し,さらに種々の検討を加えたところ,次のような結果が得られた。

糖尿病

ページ範囲:P.1235 - P.1240

 世話人小島教授は欠席されたが,出席者約100名終始にぎやかな討議がかわされた。また最後にはDr.モーニンゲンが飛び入りで腎絲鞠体の病変との類似について予報した。

学会報告

第35回中部眼科学会 第66回中・四国眼科学会 第15回山陰眼科集談会 演題一覧

ページ範囲:P.1242 - P.1243

9月27日 午後の部
Ⅰ.眼病理研究会演題
1.下眼瞼の悪性黒色腫 三重大 横山 実・他
2.Hemangiopericytoma 慈大 忍田紀三郎・他

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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