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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科23巻11号

1969年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・144

赤外吸光眼底写真法

著者: 山之内夘一 ,   小暮久也

ページ範囲:P.1257 - P.1258

〔解説〕
 Novotony & Alvis (1960)の螢光眼底撮影法は,今日,眼底病の診断にルーチンの方法として広く応用されているが,網膜組織のフィルター作用により,明瞭な脈絡膜血管像をつかむことは困難である。赤外吸光眼底撮影法では,波長800mμのところに吸収のピークをもつIndocyanine Greeneを血行にいれ,これを赤外線フィルムに撮影するため,網膜のフィルター作用を顧慮せずともよく,脈絡膜血行と網膜血行とを分離して観察できる利点がある。
 写真はOwlmonkeyの総頸動脈よりIndocyanine Green (Cardio Green)を注入し,1秒3コマの速度で撮影されたものの一部である。動注後2/3秒で,網膜中心動脈の色素充盈に先立ち,眼底図の周辺部脈絡膜から乳頭に向かう急速な色素充盈が認められ,やがて後極部一帯は青染する。黄斑部も青染する。注入1秒後,脈絡膜の青染はきらに強まり,網膜中心動脈にも色素が入り,乳頭も青染する。このあと脈絡膜の青染は乳頭周囲より消失していき,眼底は明るくなり,葉脈状の脈絡膜血管が青染してみえる.脈絡膜血管の色素は毛細管より小分枝,中分枝,幹部へと褪色していく。注入1 2/3秒後,中心静脈に層流が認められるようになり,漸時中心静脈への色素充盈が強まつて行くとともに,中心動脈の色素は淡くなる。また乳頭の青色も褪色していく。

臨床実験

赤外吸光眼底写真法

著者: 山之内夘一 ,   小暮久也

ページ範囲:P.1259 - P.1262

I.緒言
 1960年Novotony & Alvisにより開発された螢光眼底撮影法は,網膜血行の動態,網膜血管病変あるいは眼底病変の病像の解明に広く用いられるようになり,今日ではルーチンの眼底病診断法の一つとして重宝がられている。
 本邦では1960年谷道之により本法の紹介がなされてから,藤沢洋次(1965),清水弘一(1965),松井端夫ら(1965)をはじめとして,多くのすぐれた研究業績が発表されている。加藤謙,松井端夫(1967)の螢光眼底撮影法,鹿野信一,清水弘一(1968)のAtlas of Fluorescein Fundus An—giographyの単行本はすぐれた本法の指導書としての役割を果たし,特に後者は英文版で,広く世界的に螢光眼底像解明の指針として賞賛されている。しかし本法にも弱点がないわけではない。すなわち,網膜色素上皮あるいは黄斑部組織のフィルター作用のため明瞭な脈絡膜血管像がつかめぬことである。正常眼底の螢光像に脈絡膜血管系による螢光がどのように関与しているかを知ることは病的眼底像の解釈に必要な問題であるが,上記理由からその判断には困難を伴い,今日的段階では病的変性疾患の螢光像により推論する以外方法がない。しかしこれらによつて得られた像はあくまでも病的なものであり,正常像ではないことに留意する必要があろう。

先天性第V因子欠乏症における眼症状

著者: 塚原勇 ,   服部吉幸 ,   森井文義 ,   松村忠樹 ,   高橋正彦 ,   米田紘一 ,   橋本仙一郎

ページ範囲:P.1263 - P.1267

I.緒言
 稀有な疾患である先天性第V因子欠乏症患者についてその眼底検査をする機会を得たので報告する。本症自身がまれな疾患であり,この疾患に合併する眼所見に関する記載はない。

糖尿病性網膜症の臨床的観察—筋注用ビタミンB1,B6,B12製剤の使用経験

著者: 山本隆朗

ページ範囲:P.1269 - P.1272

I.緒言
 糖尿病性網膜症の臨床的観察と題して,過去3回にわたり本誌上に1)網膜症の頻度1),2)デキストラン硫酸の使用経験2),3)ビタミンB1,B6,B12複合内服剤の使用経験3)を報告してきたが,今回は糖尿病性網膜症に筋注用ビタミンB1,B6,B12製剤を使用したのでその結果を報告する。

非ステロイド消炎剤の眼科的実験—一種の組織浮腫法について

著者: 上岡輝方

ページ範囲:P.1273 - P.1276

I.はじめに
 ステロイドホルモンの副作用およびその離脱の困難さが問題となるにつれて,近時,いわゆる非ステロイド消炎剤と称されるものが続々と開発され,まさに花盛りとでもいうべき盛況さでおびただしい数の臨床報告が,各臨床雑誌の誌面を賑わしている。
 現在までにわが眼科領域で報告された多くの臨床実験からは,必ずしもその効果は満足すべきものではなく,肝腎のBehcet氏病を代表とするUeitisに対する効果はほとんど期待できず,その適応は主として外傷性の炎症に対してであつて,特に手術後の反応性刺激症状の抑制にこそ本剤の最大の特徴があろうかと思われる。著者自身は,非ステロイド消炎剤のこれらの特性から,本剤を主として手術後の消炎の目的に限つて使用し,術後の虹彩刺激症状の抑制にかなりの臨床効果を認めてきた。

動眼神経不全麻痺とChiari-Frommel症候群をきたした脳血管腫の1例

著者: 小原博亨 ,   中村一夫 ,   村上正固 ,   安井貞夫 ,   宮島忠 ,   阿久津澄義 ,   新城長昭

ページ範囲:P.1278 - P.1284

I.緒言
 脳下垂体およびその付近の腫瘍が潜在する場合,妊娠中に視神経交叉部を圧迫して,半盲症,視野欠損,視力障害などをきたし,出産を契機として,これらの眼症状が忽然として消失することは良く知られている。著者らがここに報告する症例は,妊娠中に左眼の瞼下垂と左頬部のしびれ感をきたしていたが,分娩の翌日にはこれらの症状は全く消失したという既往歴を持ち,分娩後6年を経た今日もなお,引き続き無月経で乳汁分泌があるが,再び左眼瞼下垂と瞳孔不同症をきたしたため来院したものである。この既往歴から著者は脳下垂体腫瘍を疑い,頭蓋単純撮影を行ない,トルコ鞍の拡大および形態の変化を見出して脳下垂体腫瘍と診断を下したが,脳血管撮影を行なつてみると,左側頭葉下面に大きな腫瘍があることが判明し,開頭手術により左前側頭葉下面に大きなHaemoangioma Cavernosがあることが判明した。
 なお,本例には6年前の出産以後,引き続き無月経と乳汁分泌が存続し,子宮が萎縮している。これはChiari-Frommel症候群といわれるものであり,剖検を行なつていないので下垂体腫瘍があつたか否か,また,下垂体が圧迫されていたため,明らかにすることはできなかつたが,はなはだ興味がある症例であるので報告する。

Lincomycinの眼内移行に関する研究II—Lincomycinの全身投与について

著者: 今井正雄

ページ範囲:P.1289 - P.1297

I.緒言
 著者はさきにLincomycin (以下LCM)の点眼,結膜下および球後注射など局所使用の眼組織内移行について報告したが,今回はこの全身投与の成績について記載する。

外転神経麻痺を主症状とした上咽頭悪性腫瘍の3例

著者: 尾藤昭二 ,   榊三郎 ,   中谷一 ,   竹谷弘 ,   吉岡諄二

ページ範囲:P.1301 - P.1309

I.緒言
 上咽頭腫瘍がしばしば脳神経症状(その多くは眼症状であるが)を伴うことは1922年G.B.Newの報告以来幾多の報告がみられるが,本疾患は本来耳鼻科領域のものであり,かつ比較的少ない疾患であるため耳鼻科以外の脳外科,眼科に属するわれわれが直接これに接することはまれである。一方外転神経麻痺は眼科はもちろんのこと,脳外科領域においても,しばしば遭遇する症状ではあるが,外転神経麻痺からただちに上咽頭腫瘍ではなかろうかと予想することは一般にはまずない。われわれは最近外転神経麻痺を主症状とし,耳・鼻症状はないかあるいはきわめて軽微であった上咽頭悪性腫瘍を3例経験した。いずれもレ線学的に診断し,ついで耳鼻科での試験切片について組織診断を行ない,Co60の放射線治療を施行した。3症例について症状,経過ならびにレ線学的診断などを中心に報告し大方の参考に資したい。

集束超音波による無軌跡限局侵襲後の水晶体表面ナトリウム活量(PNa)について

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.1311 - P.1315

I.緒言
 さきの報告において,角膜などに対する副障害を防止し,水晶体のみに限局的侵襲を惹起し得る集束超音波無軌跡照射装置を考案し発表した。あわせて本装置の電気的,音響的設計の根拠について論じ,超音波ビームの直径は0.5mmであり,破壊モデル実験として,アクリル板への照射を行ない,副障害を防止するための集束性を確認した。
 今回は集束超音波を生体眼に応用した場合の水晶体変化を観察し,また破壁作用と同時に熱作用を検討するために,照射前後における水晶体表面のPNa変動を観察した。

第1次硝子体過形成遺残

著者: 植村恭夫 ,   田村秀子 ,   清水興一

ページ範囲:P.1317 - P.1323

I.緒言
 第1次硝子体過形成遺残persistent hyperpl—astic primary vitreous (PHV)は,硝子体の先天異常の一つであり,水晶体後部線維増殖症,網膜芽細胞腫などとの臨床的鑑別が困難なことが多く,眼球摘出による組織学的検索の結果より本症であることが明らかとされる例が少なくない。本症に,水晶体の変化(白内障,自然吸収など)が随伴することはよく知られており,この場合,単に,通常の先天白内障として取り扱われている例もみられる。本症とretinal dysplasia, congeni—tal retinal foldとの関連も,先天眼異常の研究の上では,真に興味ある問題である。また臨床的には本症は進行性のもので,緑内障などの合併症を伴いやすいので,最近,早期発見早期手術の提唱されている新生児,乳児眼疾の一つである。今回著者らは,その2症例について手術を施行し,摘出標本につき,その病理組織学的検索を行なつたので,それを含めてその結果を報告する。

銀海余滴

これからの病院における眼科診療体制について—パラメディカル職の設置,オープンシステム化

著者: 茂木劼

ページ範囲:P.1330 - P.1330

 最近の医学の進歩は,医療内容の向上とともに,病院における診療体制にも変化をもたらしつつある。中央検査室の設置によつて大抵の全身的検査は,検査伝票によつて依頼すれば可能となつてきた。しかしながら眼科の診療においては,ほとんどすべての検査を眼科外来のなかで行なわなければならないのが特徴である。一方眼科の専問医の供給不足もあり,従来医師によつて行なわれていた検査のうち,医師でなくてもよい検査は次第にパラメディカルの人に移されていく傾向にある。しかし各種の検査が一部これらの人によつて行なわれうるとしても,長時間を要する検査に対しては,予約制が必要となつてくる。
 眼科におけるパラメディカル職の設置や予約制は,すでにいくつかの大学や病院において実施されているところであるが,実例として虎の門病院眼科では,昭和38年検眼士の名の下に,視力矯正,屈折調節検査を主として行なう職種を設置して以来,42年4月に検査助手1名,43年4月に眼科検査士と名称を改めてさらに1名増員し,計3名が常時外来において各種の検査に当たつている。このうち短時間で行ないうる検査は随時行なつているが,比較的長時間を要するゴールドマン視野検査,螢光眼底撮影,眼鏡処方希望の屈折調節検査は,主として午後に予約制で行なつている。また医師が行なう眼底検査のうち,高血圧,糖尿病で内科から依頼された患者の眼底検査は,月曜から金曜まで毎日午前4〜5名を予約している。

視力矯正か屈折矯正か

著者: 湖崎克

ページ範囲:P.1331 - P.1331

 われわれが眼科医として教育を受けたさい,最初に教わるのはcorrectionである。視力検査,屈折検査とともに,眼科医第一歩として,われわれは習熟しているはずである。ところが十分な知識を持つているはずのcorrectionで最近疑問に思えることが幾多もあらわれてきた。
 それは,correctionが視力矯正の意味か,屈折矯正の意味なのか不明だからである。われわれが小児保健センター外来で小児の屈折異常を検査していて,明らかに強い屈折異常を持つているにもかかわらず,眼鏡を全く用いていない小児があまりに多すぎる。その時今までに眼科医に受診したさい,眼鏡使用をすすめられなかつたかを問いただすと,すべて眼科医が,眼鏡で矯正視力が出ないからとか,眼鏡の効果がないからとかいつた理由で,眼鏡をすすめていない。

眼・光学学会

Bausch & Lomb検眼鏡に三国式眼底測微計を装着した場合の計測値の光学的換算法

著者: 三国政吉 ,   八百枝浩

ページ範囲:P.1333 - P.1338

I.緒言
 三国式眼底測微計(1952)は主として網膜血管径の計測を目的に開発されたもので,Olympus光学工業KKにて作製したものである。
 本器はGullstrand簡易大検眼鏡の付属製置として製作したものであるが,Bausch & Lomb検眼鏡にも装着できることは先に報告したところである。

視覚障害児に対する弱視レンズの応用I—盲学校児童生徒の弱視レンズ処方成績

著者: 湖崎克 ,   内田晴彦 ,   岩井寿子 ,   柴田裕子 ,   三上千鶴 ,   森和子

ページ範囲:P.1339 - P.1343

I.緒言
 教育的弱視児の学習に弱視レンズが有効であることは,すでに何度か筆者が述べているが,レンズが高価であることなどの理由で,今日まで視覚障害児の教育現場では,残念ながらほとんど普及を見ていない。
 しかし,昭和42年8月より,身体障害者補装具として,弱視レンズ眼鏡型(弱視眼鏡)が採用されたため,今後の弱視教育の発展に大いに寄与することが期待される。そこで弱視児が弱視レンズを応用して,学習能率をたかめていくためには,使用技術や,使用眼について種々の検討を重ねる必要がある。そこで著者らは,いくつかの盲学校内弱視児童生徒に集団的に英キーラー社LVA弱視レンズを処方し,補装具として各人が給付を受け,その上で具体的に学習を行なわせ,その状態から系統的に検討を行なうことにした。今回はその処方成績について述べる。

非球面レンズの白内障眼鏡

著者: 大島祐之 ,   岡島弘和

ページ範囲:P.1345 - P.1350

I.序
 無水晶体眼の矯正に使われる眼鏡とコンタクトレンズ(以下CL)を比較するとき,光学的にCLは優れた特徴を有するけれども,装用の容易さにおいて眼鏡の使用価値もまた大きい。強度凸レンズのこの種の眼鏡には臨床的ないし光学的に強度凹レンズ眼鏡と異なる問題がある。すなわち強度遠視の無水晶体眼には全矯正の眼鏡を常用させるのに対し,強度近視に使う凹レンズ眼鏡は低矯正とされるのが通例であるし,光学的には,レンズのプリズム作用のために凸レンズ眼鏡を通して見る視野・注視野は狭まり,レンズ辺縁の部に輪状暗点を生ずることや,Tscherning楕円で示されている非点収差を除きうる範囲が凸レンズでは+7.88Dまで,凹レンズでは−24.68Dまでということから,強度凸レンズ眼鏡は凹レンズに比し光学的に改良の余地が残されているともいえる。かつてGullstrandの示唆に基づき非点収差を除くために,非球面カーブを具えた強度凸レンズがKatralレンズ1)と名づけられて,戦前Zeissより発売されたが,このたび日本光学KKにて試作された強度遠視あるいは無水晶体眼用の非球面眼鏡レンズについて検討したのでここに報告する。

第22回臨眼グループディスカッション

弱視斜視

ページ範囲:P.1351 - P.1353

 弓削博士(京都市立病院)を座長に「眼性斜頸」を主題に開催された。
 形式は2人の話題提供者の講演の後,自由討論を行なうというものである。

白内障

ページ範囲:P.1355 - P.1360

永田 誠(天理病院)
手術用顕微鏡下の白内障手術
 白内障摘出手術は肉眼あるいはルーペを用いて十分に好結果を得られる手術であるが,優秀な手術用顕微鏡下にこれを行なうことによつて手術の確実性,安全性は明らかに向上する。眼科手術に顕微鏡を用いるためには対物鏡の焦点距離照明装置,アームの組合せ,顕微鏡と手術台との関係,介助者のスペース,倍率の選択などに手術の種類に応じた考慮が必要となる。
 顕微鏡下の白内障摘出手術にはどのような術式でも可能であるが,特にSliding法はすべての操作を直視下に確実に行なえるので適当な術式である。その術式をスライドおよび立体カラースライドで供覧した。本年1月より7月までに顕微鏡下に行なつた白内障全摘出術の119例中硝子体脱出は1例のみであつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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