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臨床実験
動眼神経不全麻痺とChiari-Frommel症候群をきたした脳血管腫の1例
著者: 小原博亨1 中村一夫1 村上正固1 安井貞夫1 宮島忠1 阿久津澄義 新城長昭
所属機関: 1名古屋鉄道病院
ページ範囲:P.1278 - P.1284
文献購入ページに移動脳下垂体およびその付近の腫瘍が潜在する場合,妊娠中に視神経交叉部を圧迫して,半盲症,視野欠損,視力障害などをきたし,出産を契機として,これらの眼症状が忽然として消失することは良く知られている。著者らがここに報告する症例は,妊娠中に左眼の瞼下垂と左頬部のしびれ感をきたしていたが,分娩の翌日にはこれらの症状は全く消失したという既往歴を持ち,分娩後6年を経た今日もなお,引き続き無月経で乳汁分泌があるが,再び左眼瞼下垂と瞳孔不同症をきたしたため来院したものである。この既往歴から著者は脳下垂体腫瘍を疑い,頭蓋単純撮影を行ない,トルコ鞍の拡大および形態の変化を見出して脳下垂体腫瘍と診断を下したが,脳血管撮影を行なつてみると,左側頭葉下面に大きな腫瘍があることが判明し,開頭手術により左前側頭葉下面に大きなHaemoangioma Cavernosがあることが判明した。
なお,本例には6年前の出産以後,引き続き無月経と乳汁分泌が存続し,子宮が萎縮している。これはChiari-Frommel症候群といわれるものであり,剖検を行なつていないので下垂体腫瘍があつたか否か,また,下垂体が圧迫されていたため,明らかにすることはできなかつたが,はなはだ興味がある症例であるので報告する。
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