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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科23巻12号

1969年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・145

サルコイドージスの螢光像—特にその網膜静脈周囲災について

著者: 米地利夫 ,   山田酉之 ,   佐藤紀子 ,   千葉美和子

ページ範囲:P.1369 - P.1370

〔解説〕
 サルコイドージスの眼底所見として,網膜静脈周囲炎,蝋様滲出斑,網脈絡膜炎,乳頭浮腫および視神経萎縮,中心静脈血栓症および増殖性網膜炎,乳頭,網膜上の肉芽腫,硝子体混濁および前網膜滲出小片その他種々のものが記載されている。それらの中で網膜静脈周囲炎が最も多数を占め,眼サルコイドージスの20ないし40%に見られる。
 図譜は,24歳男子(本文症例4)で,葡萄膜炎,BHL (Wurm-Heilmeyer IIa)ツ反陰性,顔面神経麻痺,微熱などよりHeerfordt症候群の不全型と診断されたその旺盛期の眼底写真および螢光眼底像である。Fluorescein静注後54秒から3分24秒までの静脈相後期の8枚の写真を合成した。

臨床実験

サルコイドージスの螢光像—特にその網膜静脈周囲炎について

著者: 米地和夫 ,   山田酉之 ,   佐藤紀子 ,   千葉美和子

ページ範囲:P.1371 - P.1376

I.緒言
 サルコイドージスの眼症状について,すでにわれわれの教室から多くの報告をしてきた1)〜6)。一方,サルコイドージスの螢光眼底所見についてもすでにいくつかの報告7)〜9)があるが,今回われわれはサルコイドージスの網膜静脈周囲炎とステロイド治療によるその経過に関し,螢光眼底撮影によって得られた知見を述べる。

Persistent Hypoglossal Arteryを伴つた脈なし病の1例

著者: 須田栄二 ,   木戸愛子 ,   大沢武志

ページ範囲:P.1377 - P.1386

I.緒言
 胎生初期に内頸動脈と脳底動脈との間には,いくつかの吻合路があるが,発育の途上で次第に吸収されて消退するのが普通である。しかしまれに,これらの吻合路が成人で遺残していることがある。この遺残吻合路は上位からpersistenttrigeminal artery, persistent acoustic (otic)arteryおよびpersistent hypoglossal arteryの3種が報告されているが,persistent trigeminalarteryは最も多く,100例以上をかぞえ,またpersistent acoustic arteryはきわめてまれで,これまで4例にすぎない。またpersistent hypo—glossal arteryもかなりまれであつて,これまで26例の報告があるのみである。著者らは脈なし病に合併したpersistent hypoglossal arteryの興味ある1例を経験したので報告する。

高周波低強度集束超音波による水晶体無軌跡限局侵襲装置の臨床的応用

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.1387 - P.1390

I.緒言
 さきの報告において集束超音波照射装置を発表し,音響的設計の根拠として超音波ビーム直径を0.5mmφとした。これは球面変換器に関する0'neil理論を採用し変換器の半径,変換器から輻射器先端までの距離,および周波数を決定したものである。結果として破壊モデル実験および回析音場音響像の観察とよく一致し,白内障水晶体の音波減衰から考えて,水晶体以外の他組織への副障害は全く問題にならないことを確認した。
 さらに低周波(1Mc以下)の集束超音波では介達的,無軌跡的の水晶体侵襲は困難であり,直達的に超音波を利用すべきことを知つた。

眼瞼下垂を伴つたWaardenburg症候群の1例について

著者: 小口芳久

ページ範囲:P.1391 - P.1396

I.緒言
 1951年,P.J. Waardenburgが,眼瞼,鼻根部,眉毛の発育異常に,虹彩,頭髪などの色素異常や先天性聾を合併する症候群を発表し,以後前記の各症状を伴つた症候群は,彼の名に因んで,Waardenburg症候群と名付けられ,現在まで数多くのWaardenburg症候群としての報告例が,国内,国外にあるが,最近著者は眼瞼下垂を伴うWaardenburg症候群と考えられる症例に遭遇したのでここに報告する。

持続性抗コリンエステラーゼ剤Ubretid点眼液の使用経験

著者: 菅原憲 ,   佐藤紀子 ,   氏家瑞恵 ,   木村良造 ,   高久功

ページ範囲:P.1397 - P.1402

I.緒言
 ウブレチッドUbretidはオーストリアのSt—ickstoffwerke A. G.で開発された抗コリンエステラーゼ剤で,2個の機能基(4級アンモニウム)がヘキサメチレン基で結合されており,主としてTrue Cholinesteraseと可逆的に結合し,持続的な抗コリンエステラーゼ作用を示す。
 構造は第1図に示した通りである。

縮瞳剤治療中における散瞳トノグラフィー

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.1403 - P.1406

I.緒言
 緑内障ですでに縮瞳剤治療を受けている患者を初診に遭遇することがしばしばある。そのさい治療前の眼圧や房水流出状態を知り得ないことが多い。
 開隅角眼における縮瞳剤の眼圧下降作用機序はまだ解明しつくされていないが,大部分の症例に著明な房水流出の改善をみることが1950年Grantのトノグラフィーによる観察以来知られている。他方また,毛様弛緩作用の散瞳剤が隅角を機械的に閉塞することなしに房水流出抵抗を上昇させ得ることが知られている(Galin 1961,Christensenら1963,Bárányら1967,真壁1966,1968,1969,岩田ら1968など)。

二次性糖尿病に合併した進行性の糖尿病性網膜症の1例

著者: 福田雅俊 ,   山崎篤巳

ページ範囲:P.1407 - P.1412

I.はじめに
 糖尿病性網膜症(以下網膜症と略す)の予防,治療に全身治療,特に血糖のコントロールが大切なことは,すでに福田が何度か強調したところであるが,過剰な治療,すなわち低血糖の反復も網膜症に悪影響を与えるものであることが,徳田,勝瀬らによつて報告されている。
 われわれも最近このような全身療法の不適切なことが,網膜症の発症,進行を促進したと思われる二次性糖尿病の1症例を経験し,その全経過を追跡し得たのでここに報告したい。

HOD—27(メチル—B12)の眼科的応用

著者: 山本由記雄 ,   富田美智子 ,   大塚佳世子

ページ範囲:P.1413 - P.1416

I.緒言
 VB12も,CN-B12よりOH-B12,補酵素型B12と種々進歩した製剤が出現してるが,今回,さらに優秀な製剤と考えられる補酵素型VB12のメチル化類似体であるメチル−B12(5,6—dimethylbe—nzimidozolyl cobamide methyl)の眼科領域における治験を経験できたので,ここに報告する。

Lincomycinの眼内移行に関する研究III—Clindamycinについて

著者: 今井正雄

ページ範囲:P.1417 - P.1426

I.緒言
 Clindamycin (以下CLM)(7—Chloro−7—deoxy—lincomycin)はLincomycin (以下LCM)の誘導体で,LCM同様アメリカのUpjohn研究所で開発された新しい抗生剤である。抗菌スペクトルはグラム陽性球菌の主体であることはLCMと同様であるが,抗菌力においては数倍まさるし,吸収,排泄においても良好なことが知られている。本剤と蛋白との結合率はLCMよりやや高いが,不活性化は少なく,肝マイクロゾームによる不活性化もLCMより少ない。水にはきわめて溶け易く,分子量は約480である。
 私は本剤の眼内移行については実験したのでここに発表する。

エタンブトールによる眼障害—網膜に一過性の出血斑を出現した2例

著者: 宮田ユキ ,   佐野豊子

ページ範囲:P.1427 - P.1432

I.緒言
 新結核治療剤エタンブトール(以下EBと略す)の名が登場してすでに久しいが,その使用に伴う副作用もまた,各種報告せられて,治療上留意せねばならぬ問題となつているのは周知の通りである。現在,その副作用の主たるものは,眼科的には,球後視神経炎様の症状1)2)5)(視力障害,中心暗点,乳頭発赤),色覚の異常,ならびにERGの変化8),内科的には,下肢のしびれ感,軽度の精神障害5)(たとえば,精神不安定,思考力減退など)が知られている。われわれは今回,当院入院患者でEB投与例のうち,従来,眼症状としては詳細には報告されていない網膜出血の2例を経験したので報告し,若干の考察を加えてみたい。

水晶体後部毛様突起延長癒着について

著者: 植村恭夫 ,   田村秀子

ページ範囲:P.1433 - P.1436

I.緒言
 1966年に牧,市川らは,水晶体後嚢の奥に密着した茶褐色膜様組織を有する先天異常の1症例を報告し,松尾,大熊らもそれぞれ1症例の経験を追加報告した。著者らも,日常の小児眼科の臨床において,白内障を伴うこれらの症例を数例経験してきたが,従来よりこの膜様組織は,延長した毛様突起の癒着であるとの考えをいだき,これが,第1次硝子体過形成遺残persistent hyperplas—tic primary vitreous (PHV)のカテゴリーにいれるべきものなのか,別個のものなのかについて検討してきた。著者らは,さきにPHVの定型的2症例について報告したが,今回は,水晶体後部毛様突起延長癒着と仮称するこの先天異常について症例を報告し,PHVとの比較検討を行ない,その関連の有無について論じ,諸賢のご批判をこう次第である。

銀海余滴

「タイム・カプセル」EXPO'70と眼科関係収納品

著者: 山地良一

ページ範囲:P.1446 - P.1447

 万国博の開会も来年3月に迫り,地元大阪を中心とした地域では各界がそれぞれに,なんらかの形で関係して,着々と準備が進んでいる。
 その中で,毎日新聞と松下電器が共同して計画しているタイム・カプセルは,1970年の人類の文化・生活を5000年後に遺すという発想と保存技術の開発という点から注目の的となつている事業の一つである。

シネラリアのミステリー

著者: 進藤晋一

ページ範囲:P.1447 - P.1447

 日本の眼科医が,白内障(殊に外傷性)の薬物療法として愛用しているシネラリア。これが奇怪なことに,アメリカ全土で発売されている薬品の総目録に載つていない。ほとんど日本の電話帳ぐらいはある目録であるから,それに,日本で使用されるようになつてから10年ぐらいにはなるのだから,意外というよりは奇怪なことである。私の知るかぎりのアメリカの眼科医に聞いてみても誰も知らない。「日本では白内障の薬物療法が,そんなに盛んなのか」と皆,目を丸くする。いく種類かの白内障治療薬の存在を話しても,眉唾ものだといつた受け取りかたで,まともには聞いていない。「Dr.Shindoも患者に使用しているのか」とけげんな顔さえする。「私は薬の効果というものには,神経質な位に批判的で,懐疑的なのだが,外傷性白内障に限つて,シネラリアは著効があつたと思われるCaseもある」というようなことを述べても,「しかし,そこに書かれている名の会社は,この総目録にも載つていない。その州にその会社はあるはずがない」と彼らは言う。日本に輸入されるからには,私の常識としては,一応まともで,名も通つている会社の製品と信じたいのだが,しかも,健保で採用され1cc 100円位はする高価薬であるのだが,彼らは一顧をも与えない。

談話室

東アフリカの眼科事情

著者: 青木功喜

ページ範囲:P.1450 - P.1452

 私はエチオピア帝国アスマラ市にトラコーマ研究のため,約1年にわたつて生活することができた。この間エジプト,スーダン,ソマリア,タンザニア,ケニア,ウガンダという熱帯東アフリカ諸国の眼科事情を少しく知り得たのでこれらについて以下紹介したい。
 この地域は赤道下でも,いわゆる高原地帯と平地とでは全く気候の様相を別にしている。すなわち,エチオピアより始まつている高原地帯はタンザニアまで続き,このためエチオピア,ケニア,ウガンダ,タンザニアは,気温が年中日本の秋のようにさわやかでしのぎやすい。これに対してエジオピア,スーダン,ソマリアはいわゆる熱帯性気候で40C°を示すこともまれでなく,きわめてむずかしい生活環境を呈している。

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臨床眼科 第23巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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