icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科23巻2号

1969年02月発行

--------------------

視覚障害者指導の必要性

著者: 湖崎克1

所属機関: 1大阪市立小児保健センター眼科

ページ範囲:P.226 - P.226

文献概要

 ここ10年の間の眼科臨床の進歩は誠に著しいものがある。多くの研究者,臨床医家はこの新らしい知識を持つて,それぞれの得意の分野で患者に立ち向かつている。
 筆者もその例にもれず,10年ほど前からわが国に始まつた弱視治療を手がける人たちの仲間入りをして,大学の外来にそのクリニックを作り,その治療の必要性を人ごとに説いてきた。大阪では弱視治療は,当時では筆者1人であつたためか,珍らしがられたが,新聞に「弱視は治る」「弱視を治そう」といつた具合に何回も紹介された。当然の帰結として,患者が外来を大勢訪れてきた。この患者がすべて筆者の思わくどおり,治療対象の弱視なら問題はないのだが,従来から弱視という概念はpartial sightednessとして,視覚障害の程度として長い間一般通念となつていた。そのため熱心に外来にやつてきた障害児は,視神経萎緒,小眼球,眼球振盪といつた弱視治療のまつたく対象とならない小児ばかりで,新聞記事をみて,いつたんあきらめた希望を再び燃やして,外来診療室にやつてきた母親に,治療の手段のないことを宣告した筆者は,まつたく人騒せな,酷なことを新聞記事に提供したことになる。再び涙にくれる母親を前にして,医学の無力さにがく然としてしまつた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら