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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科23巻5号

1969年05月発行

雑誌目次

特集 第22回日本臨床眼科学会講演集 (その5)

Fundus Flavimaculatusの1例

著者: 由利肇 ,   赤羽信雄 ,   田島幸男

ページ範囲:P.604 - P.608

I.緒言
 Fundus flavimaculatus (以下F.f.m.と略記)という病名は,1962年Franceschetti1)によつてはじめて提唱され,次のような特徴をもつ疾患である。
1)網膜深層に多数の黄灰白色の斑点が存在する。

上顎悪性腫瘍治療に伴う眼障害について—第1報臨床像

著者: 山田酉之 ,   木村亮子 ,   渡辺幸子 ,   神山巽 ,   高橋和子 ,   高橋信夫 ,   田中邦枝 ,   金子豊 ,   相馬廉

ページ範囲:P.609 - P.615

I.はじめに
 上顎腫瘍,特に上顎癌に対して,通常手術とその前後の強力な放射線治療が行なわれるが,これに伴つて重篤な眼障害がほとんど必発する。この障害はしかもきわめて難治で,長期間患者を苦しめ,しばしば失明に至り,あるいは苦痛のために眼球摘出を余儀なくされる。
 われわれ4)は先にこの障害について報告したが,その後の症例も加えて,臨床像,視力の予後などについてさらに検討した。

眼科領域におけるASL-O値およびその新しい測定の検討

著者: 宮永嘉隆 ,   大国寿士

ページ範囲:P.617 - P.622

I.まえがき
 眼科領域に限らず,一般にその病態と従来のASL-O値との関係が矛盾する疾病にしばしば遭遇することがある。すなわち同一眼科疾病においてもASL-Oの値がばらばらであり,これを治療の対照目的に入れるべきか困惑する場合が非常に多い。これには従来のASL-O値の感度の低さもその一因があろうと考えられる1)。そしてその感度の低さの一因にはSL-Oの純度の問題があるであろうと考えられる。そこでこの数年来大国らはSL-Oの精製をすすめるとともに,新しいASL-O測定法として,ホルマリン処理感作血球凝集反応を応用した方法を考案し,これが従来の方法に比してどのような関係をもち,また感度のよさがあるかを検討してきた2)3)。一方眼科疾病において,ASL-Oか高値を示す疾患,またそれに類似の疾患でASL-O値の高くないものなど種々病例をとりあげ,これらの患者の血清を対称として従来のTodd単位によるもの12)と新しいHaemagglutination(HA)によるわれわれの方法とを比較検討し,いささか知見を得たので報告する。

脳腫瘍術後視機能の推移について

著者: 野崎尚志 ,   三宅謙作 ,   小島克 ,   渡辺郁緒

ページ範囲:P.623 - P.631

I.緒言
 今までに脳腫瘍の術前術後の視力,視野を比較した症例は多数発表されているが,これらは下垂体腫瘍に関するものが最も多いように見受けられる。われわれは比較的長期観察できた症例,chromophobe, adenoma eosino—philic adenoma, pituitary carcinoma, craniopharyn—gioma, meningioma astrocytoma, nerinomaなどにつき検討したいと思う。

近視における屈折要素と血清成分との関係について(男性例)

著者: 斎藤信之 ,   山崎守成 ,   普天間稔 ,   中島章

ページ範囲:P.633 - P.635

I.緒言
 近視の発生原因と生化学的関連性についての追求の一つの手がかりとして,本年2月,女性453例を対象に屈折要素と血清成分との関連性につき統計的分析を行ない,興味ある結果を得た。その報告は,日本眼科学会および東京眼科集談会において行なつている。
 今回は,女性で得た結果をさらにつきつめるため,対象を拡大し,男性の近視と血清成分との関係を多変量解析により追求したので,その一部をここで報告する。

Waardenburg症候群の姉弟例について

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.637 - P.643

I.緒言
 色素が先天的に不足している状態は,昔から事実としても,伝説としても,よく知られていて,特に有色人種では,頻度も高く,かつ際立つて目立つ存在ではあるが,部分的なalbinismも多少とも眼症状を伴うことがまれではない。すなわち,虹彩変色と先天性聾を合併するもの,白い前髪と虹彩変色と聾とを合併するもの,内眼角の外方偏位を含併するもの,鼻根の発育過剰を合併するもの,口蓋垂の欠如を合併するものなどが以前から報告されていた。
 1951年Waardenburg1)は広範な調査に基づいて,これらの種々な先天異常が合併して遺伝することを明らかし,以来その名を付してWaardenburg症候群と呼ばれている。すなわちそれぞれの症状は,

中心性網膜脈絡膜炎の螢光眼底写真による観察

著者: 稲富昭太 ,   白木泰子 ,   藤沢洋次

ページ範囲:P.645 - P.650

I.まえおき
 中心性網膜脈絡膜炎の螢光眼底撮影法による研究はすでに1965年および1966年に藤沢1)2)が詳しく発表し,その後も次々と研究が発表されているが,未解決の点も少なくない3)〜7)
 われわれは,本症の初発症状をとらえる目的で非罹患眼すなわちfellow eyeの観察をつづけたところ,興味ある所見に遭遇し,また一方,典型的な症例において,特徴ある螢光写真像をとらえることができたので,二,三の所見を報告する。

いわゆる老人性円板状黄斑部変性

著者: 工藤高道 ,   木戸愛子 ,   菅原ひで ,   宮城勇

ページ範囲:P.651 - P.654

I.緒言
 老人性円板状黄斑部変性は,高年者で脈絡膜血管系からの漏出または出血による黄斑部の網膜色素上皮(または網膜)の剥離,隆起を特徴とする眼底疾患であり,末期には瘢痕組織を形成するため,著明な視力障害をのこすことが多い。
 「老人性円板状黄斑部変性」の名称はOeller (1900)によつて初めて用いられたが,本名称のもとに統一され一つのclinical entityと認められるようになつたのはJunius and Kuhnt (1926)の報告以後である。

網膜細動脈のBright Plaqueについて

著者: 吉岡久春 ,   中村三彦

ページ範囲:P.655 - P.672

I.緒言
 1958年Hollenhorst13)が初めて頸動脈閉塞性疾患を有する例の網膜細動脈分岐部にしばしば認められるbrightorange plaqueが栓子によるものであろうことについて注意を喚起し,同年Witmer and Schmid37)も高血圧で治療中脳乏血症状のため長期間治療されていた54歳の1例で,急に左眼窩部に疼痛を自覚したが,視力,視野に異常なかつた。眼底には,光輝ある短形濃黄色物が上耳側動脈の第1分岐部にみられ,混濁物は動脈管腔をみたしていたが,動脈閉塞症状はなかつた。そして,このものは眼底血圧測定時,拡張期圧に一致すると,血柱は虚血状態となり,乳頭面上まで移動し,収縮期血圧に近づくと,再びもとの分岐部にもどるのをみ,氏はその色,形からこれをコレステリン結晶と考えた。

眼底に大出血を見た数例について

著者: 篠塚清志

ページ範囲:P.673 - P.680

I.緒言
 最近約1カ年間に東京船員保険病院を訪れた網膜静脈血栓症,眼外傷,糖尿病性網膜症,白血病性網膜症などの眼底に大出血を見た数例1)について報告する次第である。

Vitamin B2の網膜に及ぼす影響についての実験的研究—第1報Vitamin B2の視紅再生について

著者: 宮浦康児

ページ範囲:P.681 - P.688

I.緒言
 すでに古く1935年,Euler, Hellström u. Adler1)氏らは,螢光顕微鏡で魚の他に人,牛,家兎,ネズミなどに遊離のVitamin B2(以下VB2と略す)が多量に存在するをみて,これが黄色酵素として新陳代謝に関係するのではなく,VB2,すなわちFlavinの有する螢光によつて網膜に弱光に対する感光度を増強するのではないかと考えKarrer, Fritsch2)氏らはFlavinの螢光の光学的飽和量が,魚の網膜のVB2含量に相当する事実を認めて,この考えに賛成している。以来光覚とVB2との関係については,わが国において種々の実験的報告が続いているが,その中には相反した結果の解決されていない部分もある。また近年VB2の薬化学が発達し,活性の強いFlavin adenine dinucleotide (以下FADと略す)が製造され,かつ,FADを基とした新しい形の薬剤も生まれつつある。今回これらの点に鑑み,FADおよびその製剤の1)視紅再生に及ぼす影響,2)実験的網膜変性症のERGに及ぼす影響,3)暗順応ならびに網膜色素変性症に及ぼす影響について種々の実験を試み,網膜色素変性症の治療に関する基礎的な実験的研究を行なつたので,ここに報告する。

網膜色素変性症における残存視機能と加算ERG所見との関係

著者: 永田誠

ページ範囲:P.689 - P.701

I.はじめに
 一次性網膜色素変性症においては,大部分の症例でERGが比較的早期から著しい振幅低下ないし消失をきたし,視力,暗順応,視野のような自覚的機能の検査成績との間に著明な不均衡を示すことが知られている。
 ERGの臨床応用の初期Karpeの標準条件のような弱い光刺激で記録したERGでは,本症のほとんど全例でextinguishedであることが認められていた。

網膜色素変性におけるERGの長期観察

著者: 今泉亀撤 ,   渥美健三 ,   高橋文郎 ,   小川健次 ,   庄子宇一 ,   山田莞爾 ,   今泉信一郎

ページ範囲:P.703 - P.712

I.緒言
 一次性網膜色素変性(以下色素変性と略す)のERGが,およそ消失型であるというKarpe1)以来の見解は,ERGに関する測定装置の進歩発達,測定技術の改善向上などが著しく発達した今日,すでに否定されたといつても過言ではない。
 しかし,Armington2)以後,数多く報告3)〜16)された,なんらかの形のresponseをもつ本症のERGにしても,そのタイプはかなりまちまちであり,しかも,それらのタイプが,色素変性のいかなる病期あるいは病態の反映であるか,また,これらのERG responseは,どのような変化をもつて推移するのか,などの臨床的経過ないし意義についての解明はあまりなされていない。

網膜色素変性の内分泌機能検査について

著者: 山本覚次 ,   矢守楠雄 ,   芳谷義行 ,   藤原久子 ,   那須欽爾 ,   松浦皓二 ,   桑元久美子 ,   大本佐和子

ページ範囲:P.713 - P.719

 著者らは網膜色素変性の患者について種々の内分泌検査を行ない,次の結果を得たので報告する。

トキソプラスマ症の実験的研究—II.眼疾患とトキソプラスマ抗体保有率との関係

著者: 大川親正

ページ範囲:P.721 - P.728

I.緒言
 わが国における眼トキソプラスマ症(以下Tp症と略記)の存在は,1954年生井ら1)が中心性滲出性網脈絡膜炎の患者の髄液よりTp原虫を発見して以来注目されはじめ,近年特にその研究が活発となり,先天性,後天性ともにTp症の中で眼Tp症の占める役割の大なることが一般に認められてきている。しかしながら眼組織よりの虫体検出がほとんど不可能であるため,眼Tp症の診断に対する決め手となるべきものがなく,現在なお推定診断にとどまつているにすぎない。
 Tp症が眼科領域で発症する場合,なんらかの特異的病巣を示すものかどうか,あるいはまた特異的所見がなくともいかなる病巣所見を示すことが多いか,という観点より眼疾患患者におけるTp抗体保有率の検索が多くの人々によりなされてきている。そのためには,まず健康人におけるTp抗体保有率を調べることが必要となつてくる。

無水晶体眼の前房深度について

著者: 大橋利和 ,   安藤賤江 ,   星英子

ページ範囲:P.730 - P.736

I.緒言
 われわれは先に,Goldmann 900型細隙燈顕微鏡の付属品であるHaag-Streit社製の装置を用いて,正常眼245眼について測定を行ない,平均2.834mmであり,10〜19歳で最深で,以後加齢とともに浅くなることを知つた。
 今回は,白内障手術前後の前房深度の測定を行ない,術前,術後の比較,および術後視力と前房深度との関係などについて検討した。

先天性白内障に関する研究—その2先天性風疹症候群

著者: 植村恭夫 ,   田村秀子 ,   清水興一 ,   奥山和男

ページ範囲:P.737 - P.745

I.緒言
 先天性白内障は,先天異常の成因の解明に関する研究には,またとない疾患の一つといえる。一般に先天異常の成因は,1)遺伝,2)環境,3)特定の遺伝子を指摘できない遺伝要因と,不明の環境要因の合力による3つに大別される。Neel (1958)は,16,000人以上の小児について異常の成因を追及し,遺伝によるものは20%,染色体異常によるもの10%,ウイルスによるもの10%,残余の60%は、特定の成因が明らかでなく,遺伝と環境因子の合力によるものと推定している。先天性白内障の成因については,Verrey (1957)は,89例について調査し,そのうち23例(25%)しか成因を明らかにし得なかつたと報告している。23例の内訳は,10例が遺伝性,3例が風疹ウイルス,8例は慢性あるいは急性疾患によるとしている。
 先天異常の環境因子として,現在までに明らかにされているものは,放射線,化学物質(サリドマイド,アミノプテリン),ウイルス(風疹,巨細胞封入体症),トキソプラスマ,酸素欠乏などがある。この中で,眼奇形に関係するのが明らかに証明されているものに,風疹,トキソプラスマ,サリドマイドがある。このうち,先天性風疹症候群が最もよく研究されている。

冷凍白内障手術における硝子体後退の可能性

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.747 - P.748

 眼科冷凍手術は白内障,網膜剥離,角膜疾患,虹彩脱出,緑内障,翼状片,腫瘍,前房出血塊の摘出など広い適応症をもつている。今日では眼内手術は術者の好みに応じて独自の手術が開発されている。
 本文は私の試法でご参考になれば幸いである。用具はクライオッェプス(千寿扱)とスペイン製冷凍器,虹彩鈎の代わりに無鈎虹彩鑷子を用いた。これは種々の細かな操作に便利である。英キーラー製モーターズーム検微鏡を用いた。30例の私の経験では,本法は比較的安全で,硝子体はやや後退する可能性を見出した。

嚢内摘出術後早期離床例の遠隔成績について

著者: 藤永豊

ページ範囲:P.749 - P.753

I.緒言
 白内障嚢内摘出術後早期離末例について,退院時の結果はすでに報告1)したが,今回はこの報告例について遠隔成績を調査し,術後の経過を観察し,早期離床がどのような影響を与えているかを検討した。

連載 眼科図譜・138

Fundus Flavimaculatusの1例

著者: 由利肇 ,   赤羽信雄 ,   田島幸男

ページ範囲:P.601 - P.602

 1962年Franceschettiによつてはじめて提唱されたFundus flavimaculatusは,次のような特徴をもつ疾患である。
(1)網膜深層に多数の黄灰白色の斑点が存在する。(2)軽度の夜盲を訴える。(3)周辺視野は正常。(4)しばしば黄斑変性を合併する。(5)視神経乳頭,網膜血管は正常。

手術

水晶体の乳化,吸引手術

著者: ,   三国政吉 ,   木村重男

ページ範囲:P.762 - P.764

 これからお話しすることは,現在研究課題の段階にあるものである。使用する器具,設備ならびに技術面の開発などにいろいろ問題が残されているので,まだ一般に普及するには至つていない。
 従来の白内障嚢内剔出においては,角膜辺縁部を180度切開し,6〜8針強角膜縫合を行なう方法が行なわれる。この方法によるときは6〜7日間の入院と,ひきつづき4〜6週間の自宅療養が必要である。これからお話しする方法は,約2mmの切開孔から水晶体を剔出するもので,手術後の入院は不要で,術後ただちに日常生活が可能である。

臨床実験

Kowa眼底カメラによる前房隅角の立体撮影について

著者: 三国政吉 ,   岩田和雄 ,   八百枝浩

ページ範囲:P.765 - P.771

I.緒言
 前房隅角検査は緑内障診断に欠くことのできない検査方法の一つである。隅角は三次元的な奥行をもち,復雑な微細構造をもつため,平面的な観察より,立体観察のほうがはるかにすぐれたものであることはいうまでもないことである。
 隅角の立体観察はDonaldson (1950)によつて初めて試みられたもので,その後Heinzen etal.(1959), Beuningen et al.(1960), Matth—äus (1961),わが国では河本(1964)らの記載がある。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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