文献詳細
特集 第22回日本臨床眼科学会講演集 (その5)
先天性白内障に関する研究—その2先天性風疹症候群
著者: 植村恭夫1 田村秀子1 清水興一2 奥山和男3
所属機関: 1国立小児病院眼科 2国立小児病院研究検査科 3国立小児病院未熟児科
ページ範囲:P.737 - P.745
文献概要
先天性白内障は,先天異常の成因の解明に関する研究には,またとない疾患の一つといえる。一般に先天異常の成因は,1)遺伝,2)環境,3)特定の遺伝子を指摘できない遺伝要因と,不明の環境要因の合力による3つに大別される。Neel (1958)は,16,000人以上の小児について異常の成因を追及し,遺伝によるものは20%,染色体異常によるもの10%,ウイルスによるもの10%,残余の60%は、特定の成因が明らかでなく,遺伝と環境因子の合力によるものと推定している。先天性白内障の成因については,Verrey (1957)は,89例について調査し,そのうち23例(25%)しか成因を明らかにし得なかつたと報告している。23例の内訳は,10例が遺伝性,3例が風疹ウイルス,8例は慢性あるいは急性疾患によるとしている。
先天異常の環境因子として,現在までに明らかにされているものは,放射線,化学物質(サリドマイド,アミノプテリン),ウイルス(風疹,巨細胞封入体症),トキソプラスマ,酸素欠乏などがある。この中で,眼奇形に関係するのが明らかに証明されているものに,風疹,トキソプラスマ,サリドマイドがある。このうち,先天性風疹症候群が最もよく研究されている。
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