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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科23巻7号

1969年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・140

ホモシスチン尿症

著者: 涌沢成功 ,   高久功 ,   佐藤裕也 ,   木村良造 ,   吉川稔男

ページ範囲:P.867 - P.868

 ホモシスチン尿症は両側水晶体偏位,知能障害,歩行異常,骨粗鬆症およびクモ指症などの骨変化,皮膚および頭髪の異常,血栓・栓塞症を伴う心血管変化,脂肪肝,その他を示すメチオニンの先天性代謝異常である。著者らもその症例に遭遇したので供覧する。

臨床実験

ホモシスチン尿症の眼症状

著者: 涌沢成功 ,   高久功 ,   佐藤裕也 ,   木村良造 ,   吉田稔男

ページ範囲:P.869 - P.874

I.緒言
 ホモシスチン尿症は知能発達障害と両側水晶体偏位を主徴候とするcystathionine synthetase欠乏によるメチオニンの先天性代謝異常である。1962年,Fieldら1)2)およびGerritsenら3)により,尿中にホモシスチンの排出をきたす先天性アミノ酸代謝障害としてはじめて記載され,その後Carsonら4)により詳細な臨床症状の検討がなされて以来,現在まで80例をこす報告がある。われわれは3例の本症を経験する機会を得たので報告する。

先天性白内障に関する研究—その3膜様白内障について

著者: 植村恭夫 ,   田村秀子 ,   清水興一

ページ範囲:P.875 - P.880

I.緒言
 膜様白内障membranous cataractsは,1833年von Ammonによつて報告されて以来,数多くの症例が報告されている。この名称は,臨床所見から,瞳孔領域に膜様に存在する白濁した白内障に対し,この名称を用いている場合が多く,事実,その組織学的検索を行なつているものの記載をみるとさまざまである。このことは,膜様白内障が,いろいろの原因によつて起こつてくることを示唆するものであり,先天性白内障の原因の解明にもつながる点で興味ある存在といえる。膜様白内障は,臨床的にまれな存在ではなく,Bouzas(1955)は,先天性全白内障90例中10例にみられたことを報告している。著者らは,組織学的検索を試みた先天性白内障の症例を報告し,全白内障との関連において論じてみることとした。

米糠油中毒眼症の1例

著者: 野村穆

ページ範囲:P.882 - P.885

I.はじめに
 米糠油中毒症は昭和43年10月上旬頃より九州北部を中心として,中国,四国,近畿など西日本一帯に拡大蔓延せる,ある特定の米糠油の食用によつて起きた,主として顔面その他に発現する皮膚疾患であるが,まだこの米糠油中毒症における眼障害についての詳細な報告に接しない。著者は最近その1症例を経験したのでここに報告したいと思う。

2色閾値法による色覚検査—(第2報)臨床実験

著者: 深見嘉一郎 ,   池田光男 ,   藤井徹

ページ範囲:P.887 - P.891

 2色閾値法を応用した色覚検査器が試作された。その原理や装置の詳細は第1報1)で述べた。今回は色覚正常者と異常者とに使用した結果を報告する。

手術

ソケット部分形成(Partial Socket Reconstruction)について

著者: 吉川太刀夫 ,   百々隆夫

ページ範囲:P.893 - P.896

I.まえおき
 外傷や慢性炎症による結膜の瘢痕化や結膜下の線維組織の増殖(fibrosis)に起因するソケット(結膜嚢)の収縮は,われわれがしばしば経験するものである。このようなソケットの収縮が著明で,義眼の挿入の困難な場合には,いわゆるソケット形成が必要となる。
 ソケット形成には,全形成と部分形成とがある。一般に,ソケットの収縮が,ソケット全体に及ぶほど著明な場合には,全形成の行なわれる場合が多い。一方,ソケットの収縮が部分的なものすなわち,結膜の瘢痕化や結膜下のfibrosisがソケットの一部に限局しているものでは,部分形成が可能である。私は,このソケット部分形成の症例を経験したので報告する。

眼・光学学会

分光視感度に対する視力ならびにコントラスト効果

著者: 江森康文

ページ範囲:P.899 - P.902

I.まえがき
 道路照明にて,ナトリウム・ランプが広く用いられているように,特定の視覚条件では,ナトリウムランプが他の白熱電球,および水銀燈に比較して物体の認知に大きい効果をもつていることが知られている。これに関してDeBore,Arndt,Dreslerらが研究を行なつている。
 これは視力検査において,照明光源の質を十分に考慮する必要があることを意味する。測光学で用いられる比視感度は放射エネルギーを測光量に変換する特性で,明るさが一定という視覚条件における眼覚の分光感度と考えることができる。これと同様に視力レベル(acuity)が一定であるときとか,コントラスト・レベル(contrast)が一定であるときの眼の分光感度を求めることは,上記のような光源の図形認知の効果を知るうえ,きわめて有意義であると思われる。この種の実験にっいてはV.S.Khazanovが広範囲な研究を行なつているが,実験条件が一定でないという欠点がある。したがつて測定条件を一定することに留意して装置を製作し実験を行なつたので,その結果について報告する。

ヒト水晶体の屈折率分布

著者: 中尾主一 ,   大野崇司 ,   永田良 ,   岩田耕一

ページ範囲:P.903 - P.906

 著者らは先に光学位相差測定装置を用いてウサギ,ネコ,サルなどの水晶体屈折率分布を測定し,平均的光学模型を設定して,光線追跡を行ない,その球面微収差を計算した。今回はヒト水晶体屈折率分布に関する二,三の測定結果を得,球面微収差に関する理論的計算結果を発表する。
 測定方法使用せる試料は角膜移殖後の水晶体4個(18歳男子2眼,61歳男子2眼)眼球内容除去後の水晶体(30歳女子1眼)である。動物眼におけるごとく全眼球についての切片作製,剔出前の調節筋毒の点眼は不可能であつた。測定装置およびその他の測定方法は従来発表せるものとまつたく同様であつた。

Cyclogylによるいわゆる偽近視の治療

著者: 保坂明郎 ,   大橋利和

ページ範囲:P.907 - P.911

I.緒言
 cyclopentolate hydrochlorideは,1952年に,Treves and Testaが報告した一群の新しい鎮痙剤および散瞳剤の一つで1),白色結晶,水に可溶性のエステルで,融点は139℃である。
 化学式は,C17H26O3NClで,構造式は次に示すとおりである。

不同視眼に対するコンタクトレンズの効果

著者: 許秋木

ページ範囲:P.913 - P.913

実験目的
 屈折異常の矯正にはコンタクトレンズの使用が有効であるが,不同視眼に用いた場合,両眼視機能がどのように推移するか検討した。

手持式細隙燈顕微鏡Kowa SL

著者: 小沢秀雄

ページ範囲:P.915 - P.920

I.まえがき
 眼底カメラはかつては,ツァイスに代表される大型でなければ実用価値がないとまで考えられていた。しかし約10年前に野寄氏によつて考案された手持式の眼底カメラは,その後二,三のメーカーによつて改良発展し,現在では大型と同等の性能をもつようになつた。しかも大型ではできない用途も手持式であるために可能となつて,手持式眼底カメラの需要は大型をしのぐほどになつてきた。
 細隙燈顕微鏡の分野においても,眼底カメラと同様に手持式の存在理由は十分あると考えられるが,いろいろな問題点のため今まで実用にたえる高性能な手持式は開発されなかつた。本年4月より発売された手持式細隙燈顕微鏡Kowa SLは,従来の大型と同じ性能をもちながら手持使用を可能にしたもので,本格的な小型コンパクトな手持式である。

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中泉行正博士の叙勲を祝う

著者: 初田博司

ページ範囲:P.922 - P.923

 昭和44年4月29日の天皇誕生日に中泉行正博士は多年にわたり眼科界の発展につくされたご功績により勲四等瑞宝章に叙せられた。誠にご名誉のことで私ども心から祝意を表する次第である。
 中泉行正博士は明治30年1月25日のお生れであるから本年は満72歳になられたのであるが,人も知る童顔巨躯の温厚なご風貌は,さしずめフアットマンクラブの会長というところであり,ご多忙な毎日で,その八面六臂のご活躍振りは,若い者達もとうてい追いつけないほどである。

第23回日本臨床眼科学会のお知らせ

ページ範囲:P.928 - P.928

第1日10月25日(土)
グループディスカッション

第22回臨眼グループディスカッション

視野の会(第6回)

ページ範囲:P.925 - P.927

視神経疾患の量的視野における光波長特性について
古田効男・藤堂勝己(大阪医大)
 今までTübinger Perimeterによる静標視野測定法を用いて,おもに,視標の波長を中心にして測定した正常眼の基礎資料から,短波長光の450mμと長波長光の656mμとの間に,量的に網膜の視細胞の選択性に差のあることが判明した。今回は,さらに,視路における両波長光の特性にいて調べる目的で,視神経疾患と思われる6症例について測定した結果を報告した。
 測定条件は,視野面輝度0.1asb,視標18',450mμと656mμ円形視標,測定部位水平経線視野視角30°の範囲である。6症例の内訳は,急性球後視神経炎4例,慢性軸性視神経炎と視神経網膜炎が各1例で,各症例の詳細な経過については省略するが,その経過は,種々多様である。いずれも,656mμの感度曲線の低下が強く認められており,その病状の回復時期になると上昇する場合が認められた。しかし450mμの感度曲線については,656mμの感度曲線と平行して低下する場合とまつたく低下しない場合とがあつた。このことから,視神経においても網膜同様,長・短両波長光に対する選択性があり,視神経疾患の場合,おもに長波長光の伝達経路すなわち錐体機能伝達経路が強く障害されやすいのでないかと思われる。

眼の心身症

ページ範囲:P.929 - P.931

瞳孔緊張症の病態に関する一考察
玉井 嗣彦(松江市立病院)
 瞳孔緊張症の病態はいまだ不明である。自験の3症例--19歳女(右眼),44歳女(左眼),35歳男(左眼)--を介して本症の問題点を論じた。
 3例とも管状視野陽性,かつ自律神経不安定状態であり,発症前になんらかの精神的動揺をきたしたという点で一致しており,本症の一原因にpsychosensorischeReaktionの関与も無視できなかつた。

眼の形成外科(第4回)

ページ範囲:P.933 - P.936

第2回植皮シンポジウム
船橋知也
有毛植皮術,特に眉毛移植について
百々 隆夫(京都府立医大)
 植皮術の基本的な考え方を述べ,眉毛移植の原則と術式とを経験,症例とともに紹介。
 眉毛の偏位に対しては,Z-Plastyが脱毛のない点で,きわめて有効である。眉毛欠損は部分欠損と全欠損とでは,量的な相違があるばかりでなく,母床および周囲組織の瘢痕化,およびfibrosisの面からも,部分欠損は全欠損より眉毛移植が容易である。したがつて,部分欠損ではhair-bearing free graftの成功する可能性も大きい。しかし全欠損では,有毛有茎回転植皮か,含血管有茎有毛植皮術——特にisland pedicle flap(Mustardé)——が必要となる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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