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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科23巻8号

1969年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・141

麻疹による視神経網脈絡膜炎の1例

著者: 徳田久弥 ,   布田龍佑

ページ範囲:P.953 - P.954

〔解説〕
 麻疹による眼合併症としては,急性カタル性結膜炎とびまん性表層角膜炎(時に虹彩炎を伴うことがある)が知られており,後者はビタミンA欠乏を合併すると,角膜軟化へと進展する。
 われわれの経験した本症例は,3歳の女児で,麻疹発症後3日目に両眼の視力障害をきたし,極度の夜盲が現われ,眼底には急性の網脈絡膜炎を起こしてきた非常にまれなもので,三上(1913)の同じような報告につぐ本邦2番目の例である。この例では乳頭炎と硝子体混濁および前房内微塵を伴つていたので,広範囲のブドウ膜炎が病変の中心であつたものと思われる。それに視神経と網膜も一緒におかされていたから,視神経網脈絡膜炎とでもいうべきものであろう。初診時の眼底所見で目立つていた点は,網膜が全体として黄色に混濁していたこと,血管が非常に狭細化していたこと,周辺部に小白斑の散在していたことの3点である。そして経過中に黄斑に星芒斑が現われ,最後には眼底後極部に広い範囲にタペーツム様反射が出現し,これらの所見は発病4カ月後にもなお残存していた。視力は徐々に回復し(16病日),70日後0.1,4カ月後0.2となつている。

臨床実験

麻疹による視神経網脈絡膜炎の稀有例

著者: 徳田久弥 ,   布田龍佑

ページ範囲:P.955 - P.958

I.はじめに
 麻疹羅患による視神経網膜炎または急性脈絡膜炎の報告は,後述するように,わが国では今までに3症例しか報告されていない。したがつて,まず稀有な合併症と考えてよいのではないかと思われる。われわれは最近その定形的な症例を経験したが,文献にとどめておくという意味でも心要と考えたので,ここに報告する。

色順応を用いたフリッカー法による色覚検査

著者: 浦久保光男 ,   池田光男

ページ範囲:P.959 - P.963

I.緒言
 色覚正常者に特有の性質として,選択色順応(selective chromatic adaptation)というのがある。たとえば,赤の順応光を与えると赤領域における感度が他の領域,たとえば緑領域における感度よりもずつと低下するという性質である。あるいはまた,緑の順応光を与えると,逆に緑の領域における感度が赤の領域のそれに比してずつと低下するのである。この選択色順応の性質は,正常者が赤と緑の領域にそれぞれ別個の色感機構体を有していると考えれば理解できる。一方,色覚異常者は赤緑の領域でただ1個の機構体のみしか有せぬと仮定するならば,正常者に見られた選択色順応の現象は存在せぬことになり,赤で順応しても緑で順応しても,分光感度は赤緑の領域で一様に低下すると考えられる。実際そのような資料は多く報告されている1)2)
 Boyntonらは選択色順応の有無が色覚異常の検出に役立つことに着目して,2色閾値法を採用した色覚検査法を発表している3)。また本邦では藤井ら4),および深見ら5)の試みが発表されている。

糖尿病と網膜中心動脈圧の様態

著者: 小島克 ,   矢藤仁久

ページ範囲:P.965 - P.973

 網膜中心動脈圧(以下CAPと略す)を血糖の面から観察した。

眼疲労および偽近視の治療に対するイノシン点眼薬の効果

著者: 石川明 ,   豊島滋

ページ範囲:P.975 - P.981

I.はじめに
 イノシンはヒポキサンチンとリボースからなり,化学名をヒポキサンチン・リボサイド(Hy—poxanthine riboside)と言い,イノシン酸を脱燐酸したNucleosideで,その薬理作用はATP類似の作用をもつ薬物である。すでに各科領域において,心臓疾患を始め末梢神経の麻痺などに対して広く応用されているが,この薬剤の最大の特性はアデノシンやグアノシンに見られない細胞透過性がきわめて高いという点である。この観点から少量の点眼によつて眼内移行が行なわれ,イノシン本来の薬理作用が有効に行なわれるであろうことは容易に推察されるところである。豊島らは14C-InosineをScintillation spectrometerを用いて,そのradioactivityを時間的に測定し,眼内移行の経過を確認した(第1,2表)。
 その成績によれば,イノシンは点眼後すみやかに房水に出現し,2時間をピークとして漸次減少,6時間後にはほとんど消失する。

手術

外傷性硝子体膿瘍に対する手術

著者: 神前正敬 ,   大林一雄 ,   武村睦子

ページ範囲:P.983 - P.986

I.はじめに
 従来,硝子体感染症は血行性,外傷性および手術後感染により発症し,ほとんど失明を余儀なくされた疾患である。しかしながら他の化膿性疾患とともに,化学療法剤の進歩により,現在その発症数は激減した。
 われわれは最近,外傷性硝子体感染症の1例に遭遇し,化学療法および手術的療法により,良好な結果を得たので報告する。

眼・光学学会

視覚系のスプレッド関数によるマッハ・バンドの再構成

著者: 藤村郁夫 ,   山本勝昭

ページ範囲:P.987 - P.990

まえがき
 視覚に関する知覚心理特性(視力,輝度弁別能力,対比効果など)を単一概念で一義的に取り扱うにはレスポンス関数またはその逆フーリエ変換である広がり関数が便利である。Mach現象と呼ばれる輪郭線知覚強調効果について,われわれはすでに報告した1)。Mach効果はlateral inhibi—tion回路2)と呼ばれている横方向に相互に抑制し合う視神経線維によつて生じ,Bék3)は単一インパルスに対する応答(広がり関数)を"neuralunit"と呼んだ。
 Patel4)は視覚系の広がり関数を眼球光学系によるものと視神経系によるものとに分離して示した(Fig.1)。眼球光学系でぼけた網膜像を神経系のlateral inhibition作用で修正している様子がよくわかる。

大型眼底カメラ(第1報)

著者: 野寄達司 ,   馬場賢一 ,   岡島弘和 ,   加藤尚臣 ,   田尾森郎

ページ範囲:P.991 - P.994

I.序
 眼底カメラを設計する上で最もむずかしい問題といわれるのは,機械内部に生じる反射,特に使用する対物レンズの表面反射を除くことである。この表面反射を除く方法には幾通りかの種類があるが,大別すると,
1)手持ち直像鏡のように照明する部分と撮影する部分をまつたく別にし,反射が出ないようにする。

電動ズーム手術検微鏡の使用経験

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.995 - P.997

 ズーム手術検微鏡は眼科手術や内耳手術をやりやすくする目的で作られたもので,これらのマイクロサージェリーでは変倍率光学系を用いると,視野が一時遮断されるので,スムーズに手術を進行するためには,この頃はもつぱら足ふみスイッチで操作されるモーター駆動ズームによつて連続的に倍率が変化する手術検微鏡が好んで用いられるようになつた。ツァイスとストルツ型では微動は足ふみスイッチを用い,キーラー型では消毒すみのゴムキャップをはめた手動式となつている。
 電動ズーム手術検微鏡は角膜異物を細隙燈で除去することになれている眼科医には,容易に使うことができる。

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ペルリ提督の下田港実測図

著者: 中泉行正

ページ範囲:P.1000 - P.1000

 ペルリの天秤と液量カップが先般来問題になり新聞紙上をにぎわしている。せつかく東大理学部でみつかり,上野の科学博物館に保管ということになり一安心と思つたのに,アメリカの展覧会に貸したところ,返つてきたら天秤もカップもキズだらけになつていたということである。輸送方法に細心を欠いた点があつたらしい。ともかく,かかる貴重品は文化財であるから大切にしなければならない。
 ペルリ提督の率いる東インド艦隊4隻は嘉永6年(1853)浦賀に入港して日米和親条約を徳川幕府に迫つた。翌安政1年(1854)に再度浦賀に入港して函館と下田の両港を開港する条約を結んで帰つた。翌年(1855)にはドイツ船も下田に入港して日仏日蘭和親条約を結んだ。さらに1857年にはハリスが下田に入港して,下田条約を結んでいる。

第22回臨眼グループディスカッション

角膜移植

ページ範囲:P.1003 - P.1007

Osteo-Odonto-Keratoprosthesisについて
野中杏一郎・臼井正彦(東京医大)
 従来の人工角膜は,支持部と光学部が同一の材質,すなわち,同一のplasticで出来ていたのであるが,1963年にStrampelliは支持部に患者自身の生体組織である歯とその周囲の骨を用いて良好な結果を得たことを報告し,これをOsteo-odonto-Keratoprosthesisと名付けている。支持部が自己組織であるために角膜内への生着が良好で,従来のplasticのものに比べて,異物排除作用が少なくてすむわけである。
 今回はこの手術方法の概要と追試の目的で,家兎の頭頂骨を円盤状に採取し,これを支持部とする人工角膜移植の実験を試みたのであわせて報告する。

神経眼科

ページ範囲:P.1009 - P.1014

 新潟は度重なる地震と火事にもかかわらず,不死鳥のように,昔より立派に生れ代わつていた。特に会場の県民会館は,百万都市神戸にも及びもつかぬ豪華さ。三国教授のお世話でその中の立派な会議室に100名近い会員が終日熱心な討論に加わつた。
 演題は20題,このうち脳腫瘍,血腫などの臨床症状中,視野,中暗に関するもの6題,髄液化学2題,SMON病の開頭例などの他,半数約10題が眼筋核付近の血管系,眼筋運動異常,myopathy筋萎縮の電顕,組織化学に関し,はなはだ多彩の問題が論ぜられた。

眼感染症(第5回)

ページ範囲:P.1015 - P.1019

トキソプラスマ症と思われる網脈絡膜炎の1例
谷合方子・涌井嘉一(東大分院)
 ピリメサミン投与開始後に治療したトキソプラスマ症と思われる47歳男子の滲出性網脈絡膜炎の1例を報告した。自覚症の発生から1カ月後に初診し,周辺部網膜に多数の限局性滲出性病巣を認めた。初診の2週間後に滲出性病変は融合拡大して乳頭縁まで及んだ。ピリメサミン50mg1カ月間の投与で後極部の病巣は消褪し,その後2カ月間の25mg投与により周辺部の病巣も治癒した。治癒後約1カ年の現在まで再発を認めない。ピリメサミンは投与開始から1カ年間継続投与した。ピリメサミンの投与方法およびスピラマイシンとの診断的価値について検討した。
 田中 ピリメサミンの自覚的な副作用はいかがでしようか。

印象記 第73回日本眼科学会(その1)

涙器 角膜 ブドウ膜—5月9日午後 第1会場,他

著者: 水川孝

ページ範囲:P.1020 - P.1027

 神鳥教授独特のユーモアたつぷりの特別講演で多分にリラックスしたあとさらにしばらく休憩,定刻より第14席内田ら(東女大)の涙液リゾチーム簡易測定法がはじまつた。菌感受性テストにヒントを得て考案された生物学的検定法で,日常臨床でも簡便に行なえるのが特長,結膜嚢内で涙液をしませた経6mm円形ろ紙をMicrococcus lysodeikticusのブイヨン培養寒天平板上におき,24時間後に菌の発育阻止円の大きさを測り,あらかじめ検討しておいたコントロールと比較しリゾチーム量を知るもので,必ずしも絶対量とはいえないが,ろ紙の保存やB.sub—stilisを用いたときの値とも比較するなど基礎的な固めもぬかりなくやつてあつた。また涙液減少例では誤差が多いとの臨床応用の限界も明らかであつた。はつきりした理論と実用限界をまとまりよく報告された点では本学会講演として実に適切なものと好評なのも当然と思われた。
 第16席吉田(阪市大)はウサギに通電刺激や副腎皮質ステロイドを投与し,その影響を角膜上皮細胞のH3—thymidineとりこみをスカラにストレスの生体作用として,みたもので,池田教授一門のおはこの研究。その結果は必ずしも演者のいうように差があると判断するのには反対だとの討論があつたり,刺激量変化による変動の成績をもみせてもらいたいとの発言もあつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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