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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科23巻9号

1969年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・142

Rieger's Syndromの新症状

著者: 高橋禎二 ,   鈴木光雄

ページ範囲:P.1047 - P.1048

 Rieger (1935)により報告された症候群は次のような特徴をもつ疾患と言われ,Rieger's Syndromと呼ばれている。すなわち,おもな眼症状として,Hypoplasiaof anterior iris,Irido-trabecular strand,Posterior embryotoxonなどがあげられ,このほかに全身的症状として,難聴,顎骨発育不全,歯芽発育不全などの所見が報告されている。最近4年間に,当教室では6例の本症を経験したが,4例にトルコ鞍の著明な拡大を見出し,さらに,全例にトルコ鞍の拡大の有無と難聴・顎骨発育不全・歯芽発育不全の有無との間に,密接な関係のあることを見出した。
 ここにあげた症例は,本文中の症例2であり,典型的な眼症状を示している。Rieger's Syndromは,かなりまれな疾患でもあるので,ここに供覧する。

臨床実験

Rieger's Syndromeの新症状

著者: 高橋禎二 ,   鈴木光雄

ページ範囲:P.1050 - P.1060

I.はじめに
 Rieger's Syndrome1)は,先天性緑内障の1型であり,特異な症状を呈する疾患であることが認められている2)〜8)。先天性緑内障の大部分はいわゆる牛眼であり,ほかは眼科的および全身的異常を伴つている一群に分類することができる9)
 Rieger's Syndromeは外観的には,眼軸長延長,巨大角膜,扁平角膜の傾向があり,牛眼に似ており,また高眼圧の処置は,たとえ同一であつても,細隙燈所見,眼球以外の所見では,牛眼と非常に異なつている疾患である。過去4年間に6例のRieger's Syndromeを経験し,新所見と思われるトルコ鞍拡大と神経性難聴を見出し,さらに,永久歯欠如,上顎骨発育不全との間に,一定の関係があり,これによりRieger's Syndro—meを二群に細分できることを見出したので報告する。

テタニー白内障の2例

著者: 秋山健一

ページ範囲:P.1061 - P.1069

I.緒言
 1887年Meynert21)は特発性テタニーに白内障が合併することを初めて報告した。Landsberg18)は1888年甲状腺手術後に起こるテタニーに合併した白内障の症例を報告した。その後20世紀の初めにかけて欧米では数多くのテタニー白内障の報告がなされたが,わが国においてはその臨床報告例は比較的少ない。文献を見ると,著者の調査し得た範囲内では,特発性テタニーに合併する白内障では,景崇徳15),日比野清10),青木平八4),曲直部正夫19),生田啓吉11),大石省三24),矢ケ崎薫28)の7例,術後テタニーに合併する白内障では,平井信一9),瀬戸川朝一25)の2例の報告がある。
 白内障を併発する慢性テタニーは大きく三つに分類できる。(1)特発性副甲状腺機能低下症に見られるテタニー,(2)術後副甲状腺機能低下症に見られるテタニー,(3)偽性副甲状腺機能低下症に見られるテタニーである。(1)および(2)に併発した白内障の報告は前述したごとく,多く見られるが1),(3)に併発した白内障については,内科,小児科領域における報告はあるが2)8)12),眼科領域ではまだその報告例を見ない。

合併散瞳暗室緑内障負荷試験—その4非合併試験との比較および作用機序

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.1071 - P.1074

I.緒言
 点眼散瞳試験と暗室試験を併用することにより,緑内障診断の信頼度が高められる。詳細は前三篇に記述したごとくである。本篇では,点眼散瞳試験と暗室試験を合併せず別々に施行した場合の成績を両者合併施行の成績と比較し,特にその合併試験の作用機序について検討する。

眼・光学学会

立体眼底写真による眼底の等高線図

著者: 三国政吉 ,   藤井青 ,   八百枝浩

ページ範囲:P.1075 - P.1081

I.緒言
 眼底の立体写真には,写真のもつ記録性,写実性の他に,長時間の観察,検討が可能であるという生体観察では求められない特性があり,眼底の立体観察方法としてきわめてユニークな位置を占めるものである。
 われわれは本法についていろいろ研究中で,すでに眼底立体撮影法,観察法,眼底上の高低の深径計測法などについては発表した。

He-Ne Gas Laserの光凝固

著者: 小松伸彌

ページ範囲:P.1083 - P.1086

 Laserというのはいうまでもなく,光のエネルギーを増幅して,新しい波長の光を出す装置であつて,laserの材料としては,おもに固体および気体が用いられている。現在すでに実用化されているlaserとしてはルビー,ネオディミウム・ガラスなどを用いたもの,gas laserとしてはHe—Ne,Ar,Co2を用いたものなどがあるが,HeとNeを混合したgas laserはlaserの中では最も安定しており,可干渉性も一番すぐれている。しかし従来はその出力が弱かつたために,この種の実験には用いられなかつた。しかし最近のlaserの技術の進歩は目覚ましく,今回日本電気KKにおいて,かなり強力なHe-Ne gas laserが開発されたので,これを使つて家兎網膜に凝固実験を行なつてみた。
 Laserの出力は管球の長さの二乗に比例して増加するのであるが,本器の場合は約2メートルあるので,その支持方法などに特別の工夫をこらしてある。その特長としては。

タイ人と日本人の眼屈折要素の比較

著者: 木村健 ,   紺山和一 ,   中島章 ,   中川治平

ページ範囲:P.1087 - P.1093

I.緒言
 屈折異常の成因については,遺伝的素因の占めの役割は大きいと考えられ,そして,それに環境る影響が加わつたものと解釈しても過言ではない。事実,明らかに屈折異常の頻度に人種差が見られ,日本人や中国人に近視が多く,白人には少ない。また,アフリカの住民では近視はまれだといわれている。
 このように,屈折異常の分布に人種差が生じたのはなぜか,ということについては,遣伝学の立場からもいろいろ論じられているが,眼科の立場からも,屈折異常の成因の解明の一端としてとり上げるべき問題であろう。日本人の眼屈折と,他民族のそれとの比較は,文献上のみでは不十分であり,また,屈折要素にまでわたつて比較検討する必要がある。そして,完全なことを望むならば,世界中のあらゆる民族について調べなければならないが,それは不可能なことである。しかし調べ得るところから一つ一つのデータを積み重ねることによつて,一歩ずつ目的に近づくとができる。このような意味で,われわれはタイ人の屈折を調べる機会を得たので,日本人の屈折と比較検討した結果をここに報告する。

コンタクトレンズを破壊しない断面観察法および装置—(第1報)

著者: 曲谷久雄 ,   平野東 ,   高井信 ,   厚沢正幸

ページ範囲:P.1095 - P.1099

I.緒言
 コンタクトレンズ(以下C.L.と略す)に関する検査装置には,眼鏡と共用できるものと,専用のものが種々開発されている。光学的性能に関しては,一部に若干の不便または議論の余地のあるものもあるが,一応整つていると考えられる。しかし装用成績に大きな影響を与えるレンズの周辺部の断面形状を適確に検査する装置については,まだ適当なものがない。
 著者らは今回新しい液面切断法を利用した断面検査機を実験試作したので発表する。

銀海余滴

小児眼科医のたわごと

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.1104 - P.1104

 国立小児病院が,昭和40年10月に発足して以来満4年を迎えようとしている。近代医学の進歩に伴い,その専門分化が進むにつれて,各分野の専門医師の協力による疾患の総合診断と治療の場を作ることは,各総合病院において発展し,組織化されている。小児疾患に対しては,小児科自体が,その専門分化および総合という面でたちおくれており,またとくに,外科,泌尿器科,眼科,耳鼻科などにおける小児専門医師の育成は,小児外科が,ようやく分化の機運をみせ,小児外科学会への発展をしているほかには,他の各科においてはほとんど行なわれていないのが現況である。
 小児医学における各科の連繋も決して緊密とはいえない。小児病院が発足して,関連各科がその理解を深め,連繋をとるまでには,やはり相当な期間を必要としたが,まだ満足すべき状態にあるとはいえない。しかし,それでも,少しずつは進展をしており,今度発足予定の小児医療センターには,遺伝奇形科なる部門を独立させる計画などは,その一端であろう。小児病院に来院する患児の半数以上は,先天異常をもつものであり,それも,単独の臓器奇形にとどまらず,全身多発奇形の患児が多い。このような患児の診療に,遺伝奇形科は,染色体をはじめ各種の検査を指示し,関連各科の検査結果をまとめ,かつ原因を探究し,必要とする治療をその科に依頼し,遺伝相談も行なう部門であり,中央検査科的役割と遺伝相談にあたるものである。

わたしの工夫

著者: 戸塚清

ページ範囲:P.1105 - P.1105

眼球突出の測定
 眼球突出はふつうヘルテル氏の眼球突出計ではかる。患者の,両側の,眼窩外縁の一番凹んだところを触って,ヘルテル氏突出計のスライドする部分を,ちようどうまく適合するように滑らせて按配し,ここに当てがつて保持し,軽く押しつけるようにしてから,正面から鏡に写る目盛りを読むのである。
 しかし突出計の,骨に当たるアーチ型の,丸く凹んだ部分と,眼窩外縁の骨の凸のカーブとがはたして完全に一致しているかどうか,あまり自信のない場合も日常かなり経験する。もし両方のカーブが一致していないと,1mmぐらいの誤差はすぐ生じてくることになる。また眼窩外縁といつても,皮膚のすぐ下に骨があるわけではなく,場合によつては多少の皮下細織も存在し得る。したがつて突出計のこの部分への押しつけ方の強弱も,すぐ1mmや2mmの誤差を生じる原因になり,なかなか正確な値を得ることができない。やさしいようでいて本当はむずかしいことを痛感している。

第22回臨眼グループディスカッション

近視(第7回)

ページ範囲:P.1107 - P.1109

 第1,第2の演題はともにビタミンB1と近視との関係が扱われたもので,前者は大村博,横田庸男氏ら(都立大久保病院)が治療機序を,後者は山下竜雄氏(日大)が治療効果の判定を述べた。
 大村氏説には反対が多かつたので,不利なことを書かれては困ると氏が主張されたので,大村氏の講演のみは同氏の自抄を用いた。

緑内障(第10回)

ページ範囲:P.1111 - P.1114

I.滲透圧剤の眼圧下降機転について
座長:河本正一(東京警察)
宿題報告 須田経宇(熊大)
 この問題について私どもの実験成績を中心に考察した。

網膜剥離

ページ範囲:P.1115 - P.1122

 網膜剥離グループディスカッションは午前9時10分より午後5時30分まで,昼食時の休憩時間をのぞき7時間余にわたつて行なわれ,16題の講演とそれに関する熱心な討論がなされた。
 以下に講演ならびに追加,討論の要旨をまとめるが,編集の都合上,紙数の制約もあつて,膨大な記録を適宜短縮あるいは削除せざるを得なかつたことを,講演者および発言者におことわりする。

印象記 第73回日本眼科学会(その2)

結膜・ウイルス・水晶体など—5月9日午前 第1会場,他

著者: 杉浦清治

ページ範囲:P.1124 - P.1132

 総会第1日,快晴,5月の風が頬に快い。会場には早朝から熱心な会員がつめかけている。このあたり一帯の東北大キャンパスは,折しも美しい新緑につつまれ,紛争に明け暮れする大学の多い中で,ここはまた別天地のような静けさである。まず桐沢会長が過去3回行なわれた仙台での日眼総会の歴史を回顧し,今回は清楚で,しかも実のある学会にしたいと学会簡素化についての平素からのお考えを述べられた。そういえば会場内の設営は素顔のままで,仰々しい垂れ幕も飾りらしいものも何一つなく,それがかえつてスマートな感じを与えていた。鹿野理事長の会務報告の後一般講演に移つた。
 岡野(群大)の報告はParotinが幼若兎殊に雄の花粉性アレルギー性結膜炎を激しくし血中抗体価をも上昇させることをみたもの。Parotinが,胸腺機能を賦活するためであるという。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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