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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科24巻1号

1970年01月発行

雑誌目次

特集 第23回日本臨床眼科学会講演集 (その1)

虚血性視神経症について

著者: 吉岡久春

ページ範囲:P.21 - P.28

I緒言
 本症は従来,動脈硬化性乳頭炎,視神経軟化症,血管性偽乳頭炎,乳頭卒中あるいは虚血性乳頭炎などのいろいろな名称で呼ばれていたが,近年,外国では,虚血性視神経症という病名が用いられ,その報告もかなりみられる。しかし,わが国では,教科書はもちろん,症例報告もわずかで一般に注目されていない。
 本症は高年者の主に片眼に急激高度な視力障害をきたし,乳頭の蒼白な浮腫,乳頭周囲の小出血斑および網膜細動脈の狭細がみられるのが特徴で,一般に視力に対する予後は不良である。本症の原因としては,特に側頭動脈炎と動脈硬化とが強調されているが,真因は不明である。われわれも臨床的に本症と思われる例を経験したので報告する。

脳腫瘍の眼症状に関する研究

著者: 渡辺春樹 ,   畠山正

ページ範囲:P.29 - P.29

 最近4年9カ月の間に,東北大学脳神経外科で組織学的に診断の確定した脳腫瘍200例について,限症状の関係する部分を報告する。
 脳腫瘍の発生部位を,視交叉付近,外套および脳幹,小脳に大別すると,それぞれ53例,85例,62例で,組織学的に多いものは神経膠腫,髄膜腫,下垂体腺腫などである。このうち,眼症状を初発したものは65例で,下垂体腫瘍の66%,外套腫瘍の19%,脳幹小脳腫瘍の23%は眼に関する自覚症状で発病していた。

補酵素型VB12の網膜色素変性症に対する治療効果

著者: 宮浦康児 ,   湖崎克 ,   岩井壽子 ,   大浦敏明 ,   一色玄 ,   上村勇 ,   松下和夫 ,   谷美子

ページ範囲:P.31 - P.37

I.緒言
 網膜色素変性症はDonders (1857)によつてその病理組織像,Liebreich (1861)によつてその遺伝性が認められて以来,実に1世紀を超えてその成因は現在なお不明であり,本症の根本的な治療法は望むべくもなく,眼科領域における代表的な不治の疾患となつている。
 しかし,本症の進行を遅らせ,最悪の結末である失明を防ぐために,たとえ次善の方法でも,なんらかの療法を熱心に行なうことが大切である。

糖尿病性網膜症の螢光眼底像Ⅰ—糖尿病性網膜症を認めない症例について

著者: 藤永豊

ページ範囲:P.40 - P.42

I.緒言
 糖尿病性網膜症を検眼鏡的に認めない時期に,螢光眼底撮影法により毛細血管瘤が見出されることが報告されているが,著者は,それほど高率には認められないことが判明し,その対策などについて考按したので述べる。

白内障術後の視力とERG

著者: 三河隆子 ,   田村修

ページ範囲:P.43 - P.46

I.緒言
 白内障の術後の視力は網膜の状態によつて左右される。しかし白内障の術前には眼底検査を十分に行なうことは困離である。したがつて白内障の術前にERGの検査が行なわれる。今回,われわれは徳島大学眼科で手術を行なつた白内障の患者について,術前にERGを記録して術後の視力と比較した。

Angiomatosis retinaeの1治療例

著者: 倉知与志 ,   小坂輝彦 ,   武村肇 ,   浅野弘子 ,   藤村和昌 ,   飛見立郎

ページ範囲:P.47 - P.52

I.緒言
 Angiomatosis retinaeの治療については,これまでに各種の方法が試みられている。本疾患の進行を阻止するためには,初期の血管腫を外科的に破壊することが最も重要かつ効果的であるとされており,Weveら(1939年)がジアテルミーで血管腫の凝固に成功し,その後Meyer-Schwickerath (1959年)が光凝固による治験例で好成績をあげて以来,多数の前記方法による治療報告がなされている。
 最近では冷凍手術法の進歩とともに,本法の各種眼疾患の治療への応用が企てられており,Lincoffら7),Amoilsら1)の冷凍凝固による血管腫の治療成績が報告されている。

網膜色素上皮剥離

著者: 塚原勇 ,   大熊紘

ページ範囲:P.53 - P.58

I.緒言
 漿液性網膜色素上皮剥離の臨床所見に関しては,螢光眼底撮影法が行なわれるまではほとんど注目されなかつた。螢光眼底撮影法と細隙燈顕微鏡によつて観察すると漿液性中心性網膜炎(増田)の眼底ではしばしば認められるし,またブドウ膜炎の一部にも認められることがある。本稿においては,細隙燈顕微鏡検査によつて,明らかに網膜色系上皮の挙上として認められる比較的大きな網膜色素上皮剥離に関するわれわれの最近の経験について報告する。

Hurler Syndromeの角膜組織所見について

著者: 松田英彦 ,   佐竹幸雄 ,   勝俣寛

ページ範囲:P.59 - P.60

I.緒言
 Hurler syndromeは酸性ムコ多糖類の代謝異常によると考えられ,この疾患に角膜の混濁は必発の症状といわれている。われわれはこの疾患の兄弟例を経験し,その1例に角膜表層移植を行ない,得られた角膜を組織学的に検索した。

Duane症候群の手術

著者: 丸尾敏夫 ,   久保田伸枝 ,   竹内真 ,   小暮正子

ページ範囲:P.61 - P.64

I.緒言
 Duane症候群の手術については,すでにこの疾患が記載された前世紀から,種々試みられてきてはいるが,いずれもごく少数例の経験に基づくものばかりであり,多数例についての検討は行なわれていない。
 最近3年間に,私どもは異型例を含む17例のDuane症候群の手術を行ない,現時点における治療方針を確立した。同時に,筋移植法の方法に若干の改良を加えた新しい術式を考案し,それによつて効果をあげたので,その手術方法を,Duane症候群の治療方針とあわせて報告しておきたいと思う。

斜視手術における微少角調整

著者: 筒井純 ,   深井小久子 ,   飛岡延子 ,   内田冴子

ページ範囲:P.65 - P.68

I.緒言
 著者1)2)らは先に斜視手術中にSynoptophoreを主体とする眼位,両眼視測定器械を用いて,手術時にできるかぎり両眼視を獲得しやすい位置に眼球を固定する方法を行なってきたが,今回はさらにその精密度をたかめる目的で,微少角調整法を試みた。これは融像幅のほとんどない斜視や,複視のある斜視には手術時の最終固定点が非常に重要であるからである。しかし,このように苦心して仕上げた眼位が後日再び変化することもあるので,そのような症例もあわせて分析を行なった。

Tensilon Tonographyと筋無力症レスポンス

著者: 岩田和雄 ,   難波克彦 ,   児島守

ページ範囲:P.69 - P.74

I.緒言
 Edrophonium chlorideは筋弛緩剤Curareの拮抗剤で,米国ではTensilon,わが国ではAntirexの名で知られている。静脈内注射として用いられるが,効果発現が迅速で,持続が短い特性があり,主として筋無力症の診断,薬用量の適否,myasthenic crisisの迅速診断などに応用されている。
 筋無力症に本剤を用いる場合,臨床症状の迅速な改善が目標になる。しかし症状のごく軽いもの,反応の軽度なものでは診断に迷うことが多く,最終的には筋電図学的な検索にまつのほかなくなる。

Congenital Anterior Staphylomaについて

著者: 森実秀子 ,   植村恭夫 ,   清水興一

ページ範囲:P.76 - P.77

 Congenital anterior staphylomaは,臨床上それほどの注目が払われていない先天異常である。その理由は,症例がまれであるばかりでなく,臨床上遭遇する時点において,すでに,機能上,予後は全く悪く,またその病変も,全ての変化の末期段階の像を複合して示しているにすぎないと考えられるからである。
 著者らは,その6例について臨床症状の経過を観察し,同時にその病理学的検索を行なう機会を得て,一般に末期のみが注目され,末期の状態に対してcongenitalanterior staphylomaと称されているがごとき本疾患が,実は非常に類型的な進行過程を踏む先天異常であることが明らかとなり,その病理組織学上もきわめて特異な病像を示すことから,その病因として,前眼部,特に角膜の発生途上に生じた組織誘導の異変を表現するものではないかとの概念を持つに至つた。

片側先天性無眼球症の1例

著者: 早川宏道

ページ範囲:P.79 - P.82

 知能障害,右下肢跛行を伴つた片側先天性無眼球症の1例につき,眼瞼,眼窩ともに小なるものに保存的に手術を試み,義眼を装用せしめ諸種の考察を行なつた。

超音波眼部断層法に関する研究Ⅱ

著者: 山本由記雄 ,   富田美智子 ,   末野三八子 ,   大塚佳世子

ページ範囲:P.83 - P.87

I.緒言
 Scan intensity modulated ultrasonography はBaum, G&Greenwood,Ⅰにより,はじめて眼科領域にとり入れられ1),isolated time amplitude ultra—sonographyより検者の技量差,主観差が介入する率が少なく,Purnell, E. W.&Sokollu A2)とともに臨床的応用価値が高いことを報告している3)
 箸者らも1963年に15Mc 5mmφ水晶振動子を使用して,眼部断層法を試みた4)が,実用化にほど遠かつた。次の諸点を克服しなければならなかつたためである。

中心性網脈絡膜炎の螢光漏出現象に対する病理組織学的検討

著者: 船橋知也 ,   上岡輝方 ,   福田順一 ,   今西武彦 ,   徳岡富喜

ページ範囲:P.89 - P.94

I.緒言
 螢光眼底造影法の眼科領域導入によつて,眼底についての新知見が,種々われわれに提供された。そのうちでも,特筆すべきは,本法によつて中心性網脈絡膜炎に螢光漏出点の存在が確認され,この点に光凝固を施すことによつて,本疾患を治癒に赴かせることができるという事実である。
 この螢光漏出,ならびに光凝固による漏出阻止機序に対しては,種々の推測が行なわれている。

眼球保存療法による網膜芽細胞腫の治験

著者: 向井健治 ,   志熊一也

ページ範囲:P.95 - P.103

I.緒言
 好発年齢が2歳以下といわれる網膜芽細胞腫が,視機能のみならず生命の予後に及ぼす影響は,早期に発見治療されるか否かによつて大きく左右される。しかし,乳幼児眼底検診が普及していない今日,網膜芽細胞腫と診断される時にはすでにかなり進行していて,重症側眼の摘出を余儀なくされるのがほとんどといつてよい。したがつて,本症が15%以上の頻度で両側性に出現することから,われわれは軽症側眼の保存に全力を投じなければならないし,たとえ片側性であつても,他眼の定期検査は十分にくり返される必要がある。
 われわれは,眼球摘出後の病理組織学的検査によって,分化型網膜芽細胞腫と診断された3症例の軽症側眼に対して,Zeiss光凝固装置による光凝固を主とした保存的療法を経験した。このうち第1例は,百々,平田16)(1964)が報告したもので,ここにその後の経過を報じ,2症例を追加する。

網膜神経膠腫症例に対し直接電気凝固を試みた治療例

著者: 井街譲 ,   水沢一裕

ページ範囲:P.105 - P.107

I.緒言
 網膜神経膠腫は乳幼児に発生し,末期には頭蓋内および内臓に転移する悪性腫瘍とされており,これが両眼に原発することもまれではなく,諸家の報告1)3)6)7)11)13)をまとめればだいたい20〜36.5%とされている。
 治療法も,放射線療法,化学療法,光凝固法,電気凝固法,眼球剔出術などがあげられている。

再移植を行なつた角膜の組織所見

著者: 弓削経夫 ,   根来良夫

ページ範囲:P.109 - P.111

I.緒言
 角膜移植は眼科臨床の上でしだいに普遍的な手術となりつつあるが,その合併症の多いことでは今日の眼科手術の中でも,最上位に位するであろう。その中でも移植角膜片の混濁は非常に多いもので,その発生機転については多大の関心が寄せられ,多くの実験がなされているが,なお明らかでない。
 Maumenee1)は,その混濁をimmediate cloudingとdelayed opacificationとに分けている。前者は,術後3週以内に起こるもので,創の接合不全や移植角膜片の状態など,主として技術的な問題に帰しており,後者のdelayed opacificationについては,抗原抗体反応を一つの大きな原因とみているようである。この抗原抗体反応が混濁に対して占める役割の重要さは広く信じられ,角膜移植の実験的分野においても,抗源抗体反応を主題としたものがほとんどを占めている。

眼トキソプラスマ症の研究—第2報各種内眼部疾患と本症との関係

著者: 佐藤豊明

ページ範囲:P.113 - P.123

I.緒言
 眼トキソプラスマ症の診断は,その臨床症状,髄液中の原虫または脳石灰化の有無,血清学的検査の結果などを総合して推定されているのが現状である。近年鬼木1)〜6)は,福岡市一般住民および九大眼科における外来患者を対象として,本症に関する系統的な研究結果を発表したが,その中で眼トキソプラスマ症は,後極部限局性網脈絡膜炎で代表されることを実証した。しかしそれ以外に,たとえば増田型中心性網脈絡膜炎,先天性眼疾患,視神経疾患,原田病,Behçet病,強度近視などと眼トキソプラスマ症との関係も,研究者の間で問題になつている。著者は,この点をいささかでも明らかにしたいと考え,昭和41年春から各種眼疾患について赤血球凝集反応(UCLA—医化研法)(以下HAと略す)による追究を試みているが,第1報7)で発表した健康者のそれと比較検討した結果,いささか興味ある知見を得たので,その大要を報告する。

Behçet病における補体価について

著者: 小暮美津子 ,   斎藤弘子 ,   嶋田孝吉

ページ範囲:P.124 - P.125

 ベーチェット病は,1937年Behçetが皮膚粘膜および眼に特異の病変を生じる一連の疾患を,一つの独立した症候群として報告して以来その名がつけられた。
 その後,これら主要症状のほかに,関節,心臓血管系,胃腸管系,呼吸器系,脳神経系などの病変の合併する頻度が高いことがわかり,これらが慢性遷延性に経過することより全身病とされている。

連載 眼科図譜・146

網膜芽細胞腫(Retinoblastoma)保存療法の成功した1例

著者: 清水昊幸 ,   塚原重雄 ,   佐藤千里子

ページ範囲:P.5 - P.6

〔解説〕
 両眼の網膜芽細胞腫(Retinoblastoma;網膜膠腫,Glioma)は従来両眼摘出が唯一の治療法と考えられる向きが多かつた。
 しかし,本腫瘍は網膜に限局している期間が長く,その期間は転移を起こしにくいし,放射線感受性が高く,十分の線量を照射すれば治癒に導くことが可能である。加えて化学療法剤や光凝固法など有力な治療方法が新たに開発され,今や両眼網膜芽細胞腫のさい,片眼は視力を保存して治療することが欧米では常識になつている。本症例は,3カ月の男児で両眼に網膜芽細胞腫を見,はなはだしく進行した1眼は摘出したが,他眼に生じた3個の小腫瘍は上記の種々な治療法を組み合わせて治療した。患者は今日生後満1年に近く,全身状態良好に発育しており,体重も9kgに達した。視力の測定はできないが,日常行動は健常児のそれと全く変わりなく,玩具などを手渡しても正確にこれをつかみ,良好な視力が保たれていることを示している。

新春座談会

日本眼科の将来

著者: 松井瑞夫 ,   水野勝義 ,   宇山昌延 ,   小暮文雄

ページ範囲:P.9 - P.19

学会のあり方
 司会(松井)きようは日本の眼科学の将来と申しましようか,これからどんな方向に向かつてどんな活躍が期待できるだろうかというようなことを中心に,いろいろお話しいただきたいと思います。
 最近眼科学会では,これからの眼科学会のあり方を検討しようということで,「あり方委員会」というものができ本日ご出席の先生がたはその委員をしておられるわけですが,この委員会を持つに至つたいきさつについて水野先生お話しいただきたいのですが……。

銀海余滴

開業医の雑記帳

著者: 三宅正夫

ページ範囲:P.82 - P.82

身体検査時の視力の管理
 神奈川県では眼科医が高等学校の校医を依頼され,生徒たちの健康管理に携わるようになってから3年になる。私は視力に関しては次のように管理している。視力は4〜5月に行なわれる定期検診のほかに10〜11月に再度検査を行なう。年に3回はやりたいが学校側の希望もあり現在は2回しか行なっていない。全生徒の視力を1.0以上のグループ,0.9〜0.6のグループ,0.5以下のグループに三大別している。このように分けた理由と目的は視力低下しても片眼視力各々0.6以上(両眼視力0.7以上)あれば黒板の字は見えるとされている。われわれ健康管理者が視力について意を用うるところは近視の予防である。4〜5月の検診時に1.0以上あった者が10〜11月の第2回目の検査で,0.9〜0,6にまで低下したとすると眼鏡装用しなくても勉学には差し支えないが,そのまま放置しているとさらに視力低下の恐れがあるということと,偽近視であれば治療ならびに注意により1.0以上に回復する可能性があり,また真性近視であっても注意によりさらに視力低下を防ぐことができる。軽度の視力低下にはこのような段階があるということを知ってもらうのが第1の目的である。第2の目的はさらに視力低下が激しく0.5以下になった者は,眼鏡装用が必要であり,そうしなければ学習に支障をきたすかもしれないということを知らせるためである。

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宇山先生の叙勲を祝して

著者: 水川孝

ページ範囲:P.128 - P.129

 今秋(昭和44年11月3日)の叙勲(勲二等瑞宝章)には宇山安夫先生が加つておられるとの内報を聞き,まことにおめでたいことであるとうれしかったが,先生が陛下への拝謁を終えられ,帰阪後,「遅ればせながらもお蔭で叙勲され,わるい気持ちはいたしません……」とのお便りをいただき,さらにそのうれしさは増した。
 先生の叙勲を祝つての一文を依頼されたとき,先生に「先生は文筆がおたちだから先生みずからも"叙勲されて"との一筆をおまとめて下さい」とお願いしたところ,「私の叙勲を祝うなんて書かないで下さい。私は勲章などにはあまり興味をもてないのです。人がおめでとう,おめでとうと親切にいつてくれるものですから,調子を合わせていますがそれほどではないのです。ただ悪い気持はしないというだけです」とのお返事をいただき,まことに先生の人柄をしのばせるものと弟子としてのよろこびを感じたものである。

第23回日本臨床眼科学会見聞記—学会のあり方について

著者: 水川孝

ページ範囲:P.131 - P.134

 第23回日本臨床眼科学会は,岐大清水新一教授会長の司会で10月24〜26日岐阜市で開かれた。3日間にわたつてまことに広大な内容を盛り込み,日本臨床眼科学会としては実に豪勢なもので,このように立派な学会は日本臨床眼科学会としてはこれが最後となるのではないかと思われるほどのものであつた。
 24日(金)には,日眼理事会,評議員会を1日かけて行ない,25日(土)には19ものグループディスカッションを,午前は9会場,午後は10会場において開き,26日(日)は,午前中は五つの大会場を使つて一般講演を100題講演し,午後は各グループディスカッションの世話人からそれぞれの大略を報告するという実に盛りたくさんの内容をもったものであつた。さらに特別講演として,東独フンボルト大学,Dr.D.W.Combergの「前眼部に対する光凝固」があつた。また最近どの学会でも行なわれる学術映画の映写会も26日午前,午後2回にわたつて行なわれているしさらにまた今春,日本眼科学会として認定された視能訓練士による第1回の研究会が24日午後に行なわれていることもいつそうにぎやかさを増していた。

臨床実験

網膜芽細胞腫(Retinoblastoma)保存療法の成功した1例

著者: 清水昊幸 ,   塚原重雄 ,   佐藤千里子

ページ範囲:P.139 - P.143

I.緒言
 両眼の網膜芽細胞腫(Retinoblastoma;網膜膠腫,Glioma)の患者の1眼を摘出し,病理組織検査を行ない,転移の恐れのない場合,他眼を放射線療法などで保存的に治療することは,つとに1930年代から,StallardやReeseにより行なわれて,かなりの成功率を示している。かくて欧米では両眼の網膜芽細胞腫の1眼を保存療法することは,今や常識となつているが1),わが国では,同様の試みが行なわれた例もあるとはいえ2)3),まだ保存療法が広く行なわれているとはいいがたい。著者らはここに報告する症例を取り扱つた経験および外国文献に見られる保存療法の成功率から見て,わが国でも積極的に保存療法が実行されるべきだと考える。ここに症例を報告し,あわせて網膜芽細胞腫の保存療法の問題点を検討するゆえんである。

内斜視と縮瞳剤(第2報)—1%Ubretid点眼による結果について

著者: 石川哲 ,   魏昭博 ,   内藤佐知子 ,   田沢博子

ページ範囲:P.145 - P.151

I.序論
 Ubretid (Ubr.と略)の点眼薬は昭和42年に初めて石川,佐藤により重症筋無力症の眼瞼下垂の治療に用いられ1),その後緑内障,内斜視の治療にも応用され,非常に有効であることが証明され,その予報はすでに報告した2)。その後,予報よりも若干症例数もふえ,follow—upも長くなつたので,今回は過去約2年間に本剤のみで治療した38名の内斜視患者の成績を一応まとめることができたので本剤の使用法,症例の選択,その他につきここに報告したいと思う。また副作用について,Ubr.,P.I.およびトスミレンの比較ができたのでそれもあわせて報告する。

眼・光学学会

光学的模型眼

著者: 中尾主一 ,   大野崇司 ,   峯克彰 ,   鶴岡祥彦

ページ範囲:P.153 - P.160

I.緒言
 生理光学,眼光学,あるいは眼鏡光学ともいわれている学問分野において,眼球屈折要素の光学常数を定め,光学的模型眼を設計することは,その基礎的理論の展開のためきわめて重要なことである。
 古くはHelmholtzの模型眼をはじめとして多くの模型眼や要略眼が発表されているが,とくに有用であり光学器械の設計に使用されているものとしては,1909年発表されたGullstrandの精密模型眼,ならびにその要略眼である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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