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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科24巻10号

1970年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・155

Bourneville-Pringle病の1例—主として螢光眼底所見について

著者: 忍足正之 ,   霜鳥政光 ,   窪田靖夫

ページ範囲:P.1231 - P.1232

〔解説〕
患者:19歳女性
初診:昭和41年1月7日

臨床実験

Inosineの家兎角膜・虹彩毛様体酸素消費に及ぼす影響,ならびに角膜透過性について

著者: 松田弘幸

ページ範囲:P.1233 - P.1237

I.緒言
 近年,ATP (adenosine triphosphate)は各科領域において繁用され,眼科領域においても,主として注射や内服などで眼精疲労や調節異常に対してその効果が認めれらている1)。しかし,ATPそのものを点眼薬として用いることは,その化学的,生理的性質よりみて,種々の困難を伴う。すなわち,製剤的に不安定であり,細胞内の取り込みにも問題がある。
 そこで,上記のような欠点もなく,生体内ATPレベルを高めるnucleosideとしてのinosine(hypoxanthine riboside)の点眼薬への応用が注目される。著者は,inosineの点眼薬への応用の基礎的研究の一つとして,その角膜・虹彩毛様体酸素消費に及ぼす影響および角膜透過性について検討したので報告する。

緑内障誘発試験の意義

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.1239 - P.1242

I.緒言
 半世紀来,緑内障診断にいろいろな誘発試験(一名,負荷試験)が考按され実施されているが,自然に起こる性質の眼圧上昇が誘発されることが前提条件である。すなわちそれにより,頻回の眼圧測定を節約し,緑内障の疑われる患者の観察期間の短縮を意図している。この前提条件は従来厳密に検討されたことがなく,そのため緑内障誘発試験の診断的意義を疑う識者すらいる状態である。この問題を,多数の初期単性緑内障患者について,次のごとく二つの面から検討してみた。

緑内障誘発試験とトノグラフィーの比較

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.1243 - P.1246

I.緒言
 緑内障の早期診断の一つに誘発試験が広く行なわれている。人工的に誘発された眼圧上昇が正常眼に比べて緑内障に大きいことを利用したものであるが,その誘発上昇眼圧は自然に起こる眼圧上昇と有意の相関関係にある(真壁,1970)。他方,緑内障の多くが房水流出抵抗の上昇に帰因することから,その非観血測定法の一つであるトノグラフィーが慢性緑内障の診断に重んじられている。この二つの重要な緑内障検査法を検討し,特にその診断的意義を比較してみた。

内頸動脈閉塞に続発する緑内障

著者: 真壁禄郎

ページ範囲:P.1247 - P.1250

I.緒言
 内頸動脈閉塞は近年,眼科医にとつても注目の疾患となつてきている。その眼科的症状の故のみならず,眼底血圧,Ophthalmodynamographie(Hager),頸動脈圧迫トノグラフィー試験(Rod—riguez-Barrios),螢光眼底検査など,診断上にはたす眼科の役割からである。
 内頸動脈閉塞においては眼動脈圧の低下とともに,同側の眼圧は,特に初期には一般に低下している。そこに片側性の緑内障が起こるとは一見奇異に感じられるが,この型の緑内障は従来あまり知られていない。最近この種の患者2例を経験したが,内頸動脈閉塞に遭遇する機会が増大する傾向に鑑み,ここに簡単に報告して,この特殊の緑内障に注目を促したい。

ショーグレン症候群と螢光抗体法

著者: 犬養恭四郎

ページ範囲:P.1251 - P.1253

I.緒言
 著者は先に,ショーグレン症候群患者血清の免疫グロブリン3成分を免疫拡散板法を用いて定量し,γ—Gとγ—Aとが増加しており,本症候群の成立には自己免疫機転が関係しているであろうと発表した1)
 そこで,今回は自己免疫疾患ならば,生体のどの組織を抗原として発生したものであるかを探究するべく螢光抗体法2)を用いて,抗原には耳下腺と胃分泌腺とを選び,実験を行なつたのでその成績を報告する。

球後視神経炎,レーベル病患者の視野の回復について—視野の病態(II)

著者: 諫山義正

ページ範囲:P.1255 - P.1259

I.はじめに
 視交叉部に対する腫瘍の圧迫時と,その圧迫除去時の視野の微細な変動について報告し,考察を行なつたが1),このさい圧迫が比較的長期間にわたつても減圧により,機能を回復し得る線維群の存在すること,減圧直後よりこれら線維群は速やかに機能を回復し得ること,および視神経中隔にかこまれた束単位の線維群の機能が残存する可能性のあることを明らかにした。
 今回は機械的圧迫でなく,炎症(ないし変性)疾患の視野の回復,特に乳頭黄斑線維群について,その代表例を報告する。

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マスコミと眼科医

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.1262 - P.1263

 マスコミがこのごろのように盛んになるとその影響も計りしれないものがある。「白い巨塔」のような小説で医学部のことを書かれると,モデルの真偽は別として,一般の大衆は小説であることを忘れて,いかにもすべての医学部の内部がそのようなものと思いがちになる。悪役はいかにも憎々しげに,善玉は超俗的に崇高な姿に書くほど,読者の興味は高まるので,小説である以上,このことは当然とも言えるが,読む方は小説であることを忘れないでほしいものである。
 仙台藩の原田甲斐が,作者によつて逆臣になつたり,忠臣になつたりするのも小説の面白さといえばいえようが,地下の本人にとつては,どちらにせよ迷惑(?)なことであろう。

第23回日本臨床眼科学会 GROUP DISCUSSION

眼の形成外科(第4回)

ページ範囲:P.1265 - P.1269

 定刻どおり,世話人代行船橋教授司会により開会,京都府立医大百々隆夫氏座長にて進行。

白内障

ページ範囲:P.1271 - P.1275

I.白内障手術の比較検討
後藤保郎(県立尼崎病院)
 対象は昭和41年4月より昭和46年6月までの1496例である。男女別,年齢別の比では高年者になるほど女に多い。これは女の平均寿命の高いためか。しかるに20代,30代は男に多い。これは職業上の必要のためと思われる。術式についての検討は次のようである。結膜弁なしの角膜切開と強角膜切開の有弁のものの成績比較は著明な差が認められない。娩出法のタンブリングとスライディングとの比較では硝子体ヘルニヤ発生には大差がないが硝子体脱出はスライディングの方がはるかに発生が少ない。α—キモトリプシンの使用に関する検討では一時眼圧上昇と続発性緑内障の発生率が高いのに注目すべきである。硝子体ヘルニヤと緑内障の関係は硝子体ヘルニヤの高度なるものほど,緑内障発生率が高い。糖尿病を有する白内障は術後,緑内障の発生率がやや高い。嚢内摘出のピンセット法と冷凍法の比較では冷凍法の方が破嚢率がやや少ない。

網膜と視路の電気現象

ページ範囲:P.1277 - P.1279

 網膜と視路の研究グループは,もとの臨床ERG研究班が臨床眼科学会に参加するようになつてから,網膜のみならず視路全般の電気現象の基礎的ならびに臨床的研究者が集まつて討議をする場となつてきた。昭和44年2月千葉県鴨川でNobel賞受賞者であるGranit教授とRotterdamのHenkes教授が来日された機会に,千葉大学のお世話で一度集まつたので,昭和44年度としては2度目のグループディスカッションであるが,Granit教授とHenkes教授が高く評価されたように本グループは最近かなり専門的にもレベルが高くなり,臨床限科学会での討議としては難解にすぎるとの批判を耳にすることがあり,誠に当然の批判と反省するのであるが,臨床家といえどもこの領域の学問の進歩に一歩も遅れずに研究を重ねていく姿勢もまた必要と思われるので,本研究グループは,今後臨床眼科グループディスカッションの期日を避け,別の会合を持つことになるはずである。これは討論の時間をグループ発足当時のように自由に取りたいことと,臨床眼科学会群討議が最近ますます膨張の傾向にあり,参加者の専門領域も次第に多岐にわたるようになつてきたので,熱心な本研究グループの人たちにもできるだけ他の群討議に参加できる機会を与えるためにグループ構成員の意志によつて決定した。

遺伝性眼疾患(第7回)—特に網膜色素変性

ページ範囲:P.1281 - P.1283

I.盲学校の失明原因調査より先天性白内障の集団遺伝学的考察
 1959〜1964年におけるわが国の盲学校,国立視力障害センターの失明原因調査では,白内障は14〜15%を占め,角膜疾患,小眼球とともに主位を争つている。原因別にみると,1964年には1487名のうち,先天性は1364名あつた。罹患児の両親に血族婚のあるものは22.8〜25.7%あり,後天性散発例,病名の判明しているものの9.0〜7.2%に比べると有意に高く,白子,網膜色素変性のごとく,常染色体劣性型といわれるものよりは低い。また白内障に小眼球を伴うものはさらに高く31.4%あり,いとこ婚の頻度が多いことから推定すると,優性型が多いだけでなく,劣性型の混在も考えられる。

銀海余滴

医科大学の新設

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.1269 - P.1269

 今年は私立医大の3校(北里,杏林,川崎)と官立の秋田大学医学部が新設の認可を受けた。これは戦後はじめてのことであるが,医師不足の解消に少しでも役だてば幸いである。
 医学校の設立には多額の金(最低50億ともいう)が必要であるといわれているが,地方によつては医学校の新設を切望しながらも,その財源や敷地の獲得上,申請に踏み切れなかつたのが実情であろう。それにくらべ,私立では寄付金や財政上のやりくりが官公立の場合よりも自由である点が設立に有利であるといえる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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