銀海余滴
変な人種がふえてきた
著者:
初田博司
所属機関:
ページ範囲:P.1455 - P.1455
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医学医術を介して医者と患者との交渉があり,すべてはきわめて科学的に事務的に処理されてよいわけなのだが,そこはやはりお互いに人間である。往時の初診の患者はといえば,病院なりそこの医者なりを一応信頼しているからこそおずおずと門をたたく形だつた。医者の方も誠意をつくして信頼に応えるべく努力したし,その誠意に対して病気の経過とは別に患者は心から感謝し,さらに信頼を深めたものだつた。それが現代となるといろいろの人種がふえた。初診の患者で医者のテストにやつてくるものがいるかとおもうと,医者をやとつているぐらいの腹でいるらしく信頼どころか全くごうまんな態度で早くやらないかとばかりふんぞり返つて順番を待つている奴がいる。
「どうしました?」という最初の問に「診れば判るだろう」などというのがいたり,それほどでなくてもだまつて指で自分の眼を差すのが多い。久し振りの二度目の再診なのに,「いつこうによくなる気配がない」と大きな声で不満をぶつつけてくる奴もいる。良くなつてあたりまえだという考え方だから不満が先にたつし,治つてきたつて感謝の気持など毛頭ない。こんなのがくると全く世の中も悪くなつたもんだと思う。