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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科24巻2号

1970年02月発行

雑誌目次

特集 第23回日本臨床眼科学会講演集 (その2)

春季カタルの瘙痒について

著者: 小口昌美 ,   清水由規 ,   宮田昭雄 ,   星善雄

ページ範囲:P.177 - P.183

I.序
 春季カタルは,瘙痒,充血,眼脂などを主訴とする疾患で,小口ら1)の統計では,瘙痒は64.8%,充血は33.9%,眼脂は10%,羞明は7.2%,異物感は5.5%,流涙は5.0%,眼痛1.5%,結膜着色は1.0%,霧視は0.6%,眼精疲労0.1%,訴えなし4%で,瘙痒は重要な主訴となつている(第1表)。
 しかしながら,春季カタルの瘙痒の本態についての報告をみない。Bickford2)はヒスタミン溶液を皮内に注射すると,10数秒後に注射部位に自然に瘙痒が発生することを報告した。近年,皮膚科領域3)では起痒性物質として,ヒスタミン,アセチルコリン,アミノ酸,ペプトン,リポ核酸,胆汁酸,尿酸,尿素,グリコーゲン,蛋的分解酵素などが報告されている。春季カタルはアレルギー性疾患である。アレルギーショック説にはヒスタミン説,アセチルコリン説,プラスミン説などがある。かかる見地から,まず春季カタルの瘙痒の原因として,ヒスタミン,アセチルコリン,セロトニンについて検討した。

ショーグレン氏症候群患者血清の免疫グロブリン

著者: 犬養恭四郎 ,   内山幸昌 ,   桜井正則

ページ範囲:P.185 - P.187

 乾燥性角結膜炎・唾液減少症・関節リウマチの3主徴のあるショーグレン氏症候群については,最近,自己免疫疾患として解明せんとする努力が盛んのようであります。
 著者は今回,該症候群患者血清の免疫グロブリン各成分の定量を免疫拡散板法を用いて行ない,若干の知見を得たのでここにご報告します。

糖尿病性網膜症における血中成長ホルモン動態に関する研究Ⅱ—糖尿病性網膜症の経過と成長ホルモンとの関係について

著者: 武尾喜久代

ページ範囲:P.188 - P.188

 前報において糖尿病性網膜症と成長ホルモンとの関係につき推計学的な検討を加え,成長ルホモンは糖尿病性網膜症の進行因子の一つではないかということを推定した。今回はその裏づけとして,前報の糖尿病患者35例のうち眼底所見の経過を観察することができた16例(糖尿病性網膜症の認められるもの12例,認められないもの4例)および新たに加えられた3例(いずれも糖尿病性網膜症を認めた),計19例につき,その眼底所見の経過と血中成長ホルモン動態との関係を観察した。
 検査方法としては,まず眼底所見の経過は原則として1カ月に1度,各症例について一般検眼鏡的眼底検査を行ない,さらに,螢光眼底検査を初診時より3〜6カ月おきに施行し観察した。なお,網膜症の分類はScottのそれに従つたが,その進行経過は眼底の出血,白斑などの増減より判定した。

瞳孔運動の研究

著者: 佐久間芳三

ページ範囲:P.189 - P.195

I.緒言
 瞳孔運動を連続的に詳細に記録し観察することは診断上,また予後の判定上,きわめて有意義なため,古くから多くの人々により,この記録が試みられている。その代表的な研究者は,Lowenstein1)で初期は映画撮影法を利用していたが,後にElectronic pupillographyを確立し,各種疾患につき瞳孔運動を記録し報告している。しかしこの方法はslitのついたdramを高速回転し,虹彩面を走査する方法であるが,機械的な弱点があることと,2mm以下の縮瞳状態では計測できないことと,被検者の眼が1点を固視していても,必ず不規則に左右動をしていることと,時々瞬目運動をくり返しているなどによつて十分記録できない欠点を有していた。この被検眼が微動することと瞬目運動が瞳孔運動にいかに関与するかの究明は,過去の記録法では全く不可能な事柄であつた。本邦でも最近光電管を利用した高木式瞳孔伸縮度測定器が市販されているが,前述の欠点は依然として,種々の問題点を残している。また43年には,内藤,石川氏2)は赤外線ビジコンカメラによつて虹彩面を撮影し,これを映像解析器のシュミット映像回路,積分回路によつて瞳孔面積を自動的に算出し,pen-recor—derに記録する方法を報告しているが,これでもやはり前述の欠点を十分には解決していない。

輻輳—調節比計算図表

著者: 西岡啓介

ページ範囲:P.197 - P.199

 日常,眼科外来において,NC/D比(Rd),すなわち近見輻輳比(heterophoria methodにて測定した値)をもつて,おおよそのAC/A比の値としているようてあるが,著者は,ここ2〜3年来,両者を区別することを主張してきた。
 そこで,今回,日常忙しい眼科診療において,少しでも,時間が節約できればと思つてR.D.Reineckeのnomogramに修正,改良を加え,NC/D比(Rd)のみならず,PC/D比,およびAC/A比を計算できるような,nomogramを試作したので,ここに紹介する(第1図)。

H-S自記眼精疲労計簡易型の試作とその応用

著者: 鈴村昭弘 ,   谷口正子 ,   端山久子 ,   石川みどり

ページ範囲:P.201 - P.209


 老視年齢において眼精疲労の訴えの多いことはすでに前報にて報告した。これらの眼精疲労,あるいは近距離視の困難を訴えて来る者のうち,その初期症状ともいうべきものに,夜間照明の不十分な場所における視障害が最も大きい。そこで今回は,萩野・鈴村式自記眼精疲労計の簡易型の試作を行なつたので,本装置を使用してNight presbyopia夜間老視現象ともいうべき上記訴えがどのような機序で生ずるかについて,さらにこれらに対する薬物の効果について検討を試みた。

3歳児健康診査における視力検査の検討

著者: 湖崎克 ,   内田晴彦 ,   三上千鶴

ページ範囲:P.211 - P.217

I.緒言
 小児の視覚管理の上で,その発達過程で,6歳までに十分な視覚管理を実施すべきは衆知の通りである。われわれはその面でいろいろな機会に集団検診における視力検査の重要性を主張し,さらに検査方法も開発し,その統一的な方法の普及に努めてきた。就学時健康診断,幼稚園健康診断,保育所健康診断はその検査方法については問題はなく,後はその普及に行政的措置が望まれるのみである。
 これらの各種健康診断の対象年齢は,就学時では満6歳児,幼稚園では満4,5歳児であり,4歳未満の視覚管理にとつてさらに重要な時期ではわずかに保育所があるのみである。しかし保育所の満3歳児は非常に少数であり,それをもつてしては,公衆衛生学的な価値は非常に低いものといわねばならない。そこで考えられるのは,保健所における3歳児健康診査である。

Hallermann-Streiff症候群の眼異常に関する臨床的および病理組織学的研究

著者: 植村恭夫 ,   森実秀子 ,   清水興一 ,   岡田良甫

ページ範囲:P.219 - P.226

I.緒言
 先天性白内障に限らず,白内障の研究には全身状態との関連は常に注目せねばならぬ。臨床的に,全身異常に随伴する先天性(発達性)白内障の症例は,しばしば遭遇する。多発性奇形の一環として先天性白内障のある場合,これら奇形をもたらす共通の原因を追及し,その成因をつきとめる必要がある。先天性風疹症候群は,風疹ウイルスの胎内感染により,ウイルスの細胞内寄生により種々の奇形がもたらされることを明らかにしたのがその1例である。また,膜様白内障(全白内障)をもたらすもののなかにcongenital comedo cataract synd—romeのようなectodermal dysplasiaという大きなカテゴリーに入る症例の存在を例示した。今回報告するHallerman-Streiff syndromeもこれに属するものである。

Fibrous dysplasiaについて

著者: 下奥仁 ,   田淵昭雄

ページ範囲:P.227 - P.235

I.緒言
 Fibrous dysplasia (線維性骨異形成症)は線維性組織が単一のあるいは複数の骨にみられ,その重症例では皮膚色素異常沈着,早熟,甲状腺機能亢進などの骨以外の異常を伴う疾患である。この疾患は臨床的に次の3型に分けられている。すなわち,(1)一つの骨が冒された場合をmonostotic type,(2)二つ以上の骨が冒かされた場合をpolyostotic type,(3)皮膚色素沈着,早熟あるいはそのほかの内分泌症状を伴う場合をAlbright's syndrome,あるいはendocrine typeと分けられている。しかし病理組織学的にはその臨床像に関係なく,冒された骨には線維性組織の蓄積が認められることが基本的な変化である2)3)8)
 頭蓋における病巣はmonostotic typeとして頭蓋骨のみに病巣を発見する場合もあるが,polyostotic typeにおいて著明な骨格の変化がある場合には例外なく頭蓋もまた冒されていることが多い2)。これらの場合には頭蓋や顔面骨の変形がしばしば見られる症状であるが,眼窩部が冒されると,眼球位置異常,眼球突出などがみられ,頭蓋底が冒されると視神経が圧迫されるなどの神経眼科的にも興味ある症状を呈する2)3)5)

眼窩蜂窠織炎様の症状を呈したWeber-Christian病の1例

著者: 田島幸男 ,   菅野雄行 ,   助川勇四郎 ,   岡野正 ,   堀内知光 ,   横地圭一 ,   吉田苑 ,   石田陽一 ,   深井孝治

ページ範囲:P.237 - P.244

I.まえがき
 Weber-Christian病(以下W-C病と略す)は,発熱などの全身症状を伴い,再発をくりかえすことを特徴とする,非化膿性結節性脂肪織炎(relapsing febrilenon-suppurative nodular panniculitis)の別名である。本症は1892年Pfeifer1)の報告以来,内外ともに比較的多くの記載がみられ,わが国では昭和26年,横山,籏野ら7)の報告に始まつて,すでに100例を越している。しかるにこれらの報告例は,皮膚科あるいは内科などで観察されているのみで,眼科領域におけるW-C病の記載は,わが国にはまだ見当たらず,海外においてもきわめて少ない。
 著者らは,終始,眼窩蜂窠織炎様の眼部変化を主徴とした本症の1例を経験したが,眼窩における病変は,病理学的にW-C病の本態である脂肪織炎であることが確認された。本例のように,主病変の場が眼窩組織を占有したという報告例は,内外ともに全くみあたらず,すこぶる興味ある症例と思われるので,ここに報告する。

斜視手術におけるゼルフィルムの応用

著者: 湖崎克 ,   内田晴彦 ,   三上千鶴 ,   森和子 ,   柴田裕子

ページ範囲:P.245 - P.251

I.はじめに
 斜親の手術が単に第1眼位における眼球偏位を矯正することのみが目的でないことは衆知のことである。第2眼位,第3眼位さらに日常の眼球運動が矯正されなければ,その目的は達せられない。一般に手術量も,後転量は6mmまでと定められているのも,術後の運動障害のおこらぬためである。また斜親手術が,同一眼に何回か繰り返して実施された例で,眼球運動が著しく障害された例もあり,その場合,運動障害のための複視や両眼視機能障害をみることも多い。要するに,斜視手術はあくまで眼球運動障害を残さぬよう留意すべきものである。
 術後眼球運動障害の原因としては,過剰後転で赤道部より後方に眼筋が付着した場合,眼筋そのものが何回もの手術操作で著しく損傷された場合,眼筋が周囲組織と著明に癒着し,運動制限が著しい場合などがあるが,最も多く見られるのは,周囲組織との癒着である。われわれが,再手術のさい結膜を切開して最も多く遭遇するのは,眼筋と強膜とのまつわり部分の癒着より,テノン氏嚢,ひいては制御靱帯との癒着であり,第2回の手術の量はもちろんのこと,初回の手術の筋露出のさいにも細心の注意が必要となる。

内分泌性眼筋ミオパチー

著者: 箕田健生

ページ範囲:P.253 - P.254

 甲状腺機能異常の患者には眼球突出,眼瞼後退症(lid retraction) Graefe徴候(lid-lag)などの眼瞼症状,および上転障害を主とした眼球運動障害がしばしば合併することが知られている。ところがこのような患者に対して眼科医は,甲状腺障害によるものとして内科医,または外科医に治療を全くゆだねるのが通例である。しかし甲状腺機能が治療によつて正常に復した後も,上記眼症状は残ることが多いのみならず,時には眼症状が増悪する例もあり患者には著しい苦痛を与えるものである。そこで著者はこのようないわゆる,内分泌性眼筋ミオパチーの患者を眼科医の立場からとりあげ臨床的,病理組織学的および電子顕微鏡学的に研究を行なつた。

非球面レンズの白内障眼鏡Ⅱ—楕円面レンズについて

著者: 大島祐之

ページ範囲:P.255 - P.259


 眼鏡レンズのほとんどは球面またはトーリック面に磨かれたものだが,無水晶体眼に主として使われる強度凸レンズつまり白内障眼鏡においては,その一面を球面ではなく非球面とすることにより,強度凹レンズの場合とは違つた利点が期待されることから,戦前のZeiss製その他の非球面白内障眼鏡レンズが開発されていた。しかし非球面のこの種の活用が目的とした所は,非点収差の理論的な除去にもつぱら関心が向けられ,レンズの光学的性状を眼鏡装用時の視機能に結びつけた検討が十分になされていたとはいえなかつた。前報1)において双曲面の強度凸レンズを無水晶体症例に眼鏡として調整使用せしめた結果を,球面レンズ眼鏡およびコンタクレンズ使用の場合と比較して報告したが,その後試作した楕円面レンズを上記と同一症例に使用させ,3種の眼鏡装用時の視機能を比較検討できたのでここに報告する。

渦静脈の組織学的研究およびその病理

著者: 平田史子

ページ範囲:P.260 - P.260

 ブドー膜循環,眼球栄養に重要な役割を演ずる渦静脈について,生後2カ月より80歳代までのヒト渦静脈の正常構造を調べ,また,原発緑内障,出血性緑内障,ブドー膜炎その他に起因する続発緑内障,外傷眼などの渦静脈の病理組織検索をおこない,さらに家兎において渦静脈を結紮し,ヒト渦静脈病変とを比較検討した。
1)ヒト渦静脈では,強膜内に存在する範囲では,組織構造は毛細血管に似るが外膜細胞はなく,強膜外の渦静脈は小静脈に類似し,その管壁は弾力線維,好銀線維に富む。

外人講演

前眼部に対する光凝固療法

著者: コンベルグD.W. ,   清水弘中

ページ範囲:P.174 - P.176

 前眼部に対する光凝固療法は,光学的には比較的恵まれた条件下で行なうことが可能であります。眼底の場合のように,瞳孔に邪魔されることがなく,観察には,強い反射面が介在しないためであります。
 問題点はもちろんいろいろありますが,適応症を慎重に選択すれば,きわめて有効な治療を行なうことが可能であります。皮膚や結膜など,純粋な表面凝固は,本来の光凝固の目的からそれ,また,特に利点があるわけでもないので,われわれはほとんど行ないません。

連載 眼科図譜・147

コバルト60照射による網膜症の1例

著者: 金子明博 ,   谷島輝雄

ページ範囲:P.171 - P.172

〔解説〕
 放射線療法は,最近悪性腫瘍の治療に,しばしば用いられ,良い治療成績をあげ,生存率が高くなつているが,その反面,眼部の放射線照射による障害に悩む患者は増加している。眼底に,放射線による障害を起こした症例の報告は,わが国では少ない。ここに,その1例を供覧する。
 患者は41歳の女子で,右下眼瞼のLymphoblastensarkomに対して,コバルト60を5130R,33日間に受けた。腫瘍は消失したが,しだいに視力の低下していることに気づいた。

銀界余滴

最近の読書から

著者: 進藤晋一

ページ範囲:P.259 - P.259

 鹿野,清水両先生の「Atlas ofFluorescence Fundus Angiogra—phy」は桐沢先生が激賞なさつている通りに,まことにすばらしい。殊に私は四切位の大きさに拡大された毛細管像に魅了させられてしまう。Background Fluorescenceのうち,pre-arterial phase以前の眼底の状態についての解釈がゆき届いているように思う。私は脈絡膜の螢光撮映についてのprot,Gassの仕事に興味を持つているので,両者を併せ読むと日常の眼底病変の解釈が容易に思われる。また黄斑の孔形成についての記載もわれわれ開業するものには種々と思考の根拠を与えてくれる。ベーセット病の項も然りである。緑内障性変化は螢光では病勢の進行とともにどのように推移するのか,これも豊富な資料の中から,是非第2版には追加していただきたいと思う。スペイン語版,イタリァ語版もすぐ出版されるという。私の知るアメリカの眼科医は皆,大変に欲しがつている。
 「臨床眼科全書」日本眼科全書が,多くの読者の期待に反して,戦前の版は戦争で中止となり,戦後のものは読者に一言の理由も明かさずにこれまた続刊中止となつた。随分と購読者を馬鹿にした話である。その埋め合わせというわけではあるまいが,今回,臨床眼科全書全8巻のうち第7巻が出た。これは,内容的にも新しく,手頃な記述である。

わたしの意見

改革を実現するための自然淘汰的方法

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.268 - P.269

 月に人間が行けるような自然科学の急速な進歩にくらべ,政治,経済,道徳,宗教などの人文科学は昔のままである。そして一般人の科学的考え方が,最近の情報伝達法のため幾何級数的に促進されると,昔のままの人文科学の矛盾はいたる所で明らかにされ耐えられぬものとなつた。このため旧制度の崩壊,その権威や面目の失墜が続発し,世界的に不安定な状態が起こつた。
 したがつて不合理な政治制度や時代遅れの権威を振りかざす大学教授などがまず批判の対象とされたのは自然のなりゆきである。私は大学教授制度(眼臨,56巻,535ページ,昭37),学会制度(眼臨,56巻,612ページ,昭37),医局,医師会制度(眼科,5巻,77ページ,昭38)などの改革案を昭和37年頃から繰り返し発表した。昭和43年1月の東大医学部ストライキを初めとした多くの医学部紛争,日眼のあり方委員会では,私が取り上げた矛盾がだいたい問題となつている。したがつて私が以前に発表した意見を再び述べるより,いかに改革案を実現するかを論ずる方が有意義であろう。

臨床実験

コバルト60照射による網膜症の1例

著者: 金子明博 ,   谷島輝雄

ページ範囲:P.273 - P.276

I.はじめに
 放射線エネルギーの眼に対する作用については,これまでに多くの研究が行なわれている。臨床的には,外眼部,水晶体に関する障害は,しばしば経験されるが,眼底に変化を起こした症例の報告は,日本では,田野8),飯沼ら9),山田ら10)のものを除いてはない。われわれはこの1例を観察し,網膜血管の障害につき2,3の知見を得たので,ここに報告する。

乳頭状を呈した後天的血管腫(Granuloma pyogenicum)

著者: 秋元正二 ,   大林一雄 ,   中世古一 ,   野口順治

ページ範囲:P.277 - P.280

I.緒言
 血管腫は一般に先天的発生異常であつて,眼瞼結膜や球結膜に発生する血管腫は,さほどまれなものではなく,小さな血管腫の場合,他の皮膚同様に暗赤色を呈し,皮膚面からやや隆起し,ボタン状で,大きいものは地図状を呈するのが普通であるが,今回われわれは右眼下円蓋部結膜に乳頭状に成長した血管腫に遭遇し,これがはなはだしく毛細血管に富む一種の炎性肉芽ではないかと考えられたので報告する。

内頸動脈海綿静脈洞瘻の2例—自然治癒例について

著者: 宮城勇 ,   川口進

ページ範囲:P.281 - P.289

まえがき
 内頸動脈海綿静脈洞瘻は解剖学上,特殊な条件のもとに動静脈が交通することによってひきおこされる興味ある疾患である。その原因,症状,治療などについては,今日までに少なからぬ報告がなされている。わが国の眼科領域でも,拍動性眼球突出症として約50例近くの報告がみられる。近年脳血管撮影が,その進歩と普及によつて頭蓋内疾患の重要かつ有力な診断法の一つとなつたこと,一方,交通外傷の激増する社会情勢において,本症の発生原因の7割近くが外傷によることを考えると,本症は今後,われわれ眼科にたずさわる者にとつて遭遇する機会はますます多くなるものと思う。本症は一度発生すると,一般に進行性であり,自然治癒の少ないものとされている。今回著者らは,本症で良好な視力を回復し得た症例と,視力は回復し得なかつたがやはり自然治癒をきたした症例を経験したので報告する。

Ubretid点眼による緑内障の治療

著者: 塚原重雄

ページ範囲:P.291 - P.296

I.緒言
 緑内障に対する降圧剤としてエゼリンが使用されて以来1),種々なる抗コリンエステラーゼ剤が登場し,この方面に広く応用されている。その主なるものとしては,Demecarium bromide, Phospholine iodide, DFP,Arminumらがあるが2)〜10),しかしながら最近これらの薬剤に対して多くの副作用の存在が指摘されつつある15)〜21)。そこで緑内障の治療薬としてより持続性があり,副作用の少ない抗コリンエステラーゼ剤の開発が望まれていたところであるが,1957年オーストラリアのÖsterreichische stickstoff wmerkeの研究所でDistig—mine bromide (BC 51 or Ubretid)が合成され,主として経口投与により重症筋無力症,各種の排尿障害,弛緩性便秘症などに使用され,この薬剤効果の持続性,副作用の少ないという点で注目されている11)〜14)。本薬剤の構造式は第1図のごとくで白色結晶粉末,無味,無臭できわめて水溶性であり安定性も高い。Ubretidのほかの抗コリンエステラーゼ剤と異なる点は,その作用が可逆性であることにあり,この点から本薬剤の作用がmildであることが起因していると思われる。

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第1回光凝固研究会報告記—Dr.Combergによる光凝固講習会

著者: 深道義尚 ,   清水弘一 ,   佐藤清祐 ,   清水昊幸

ページ範囲:P.297 - P.300

 最近わが国における光凝固装置の普及は誠にめざましく,その臨床的応用も日々新たに適応範囲を広げている。今日光凝固は網膜剥離およびその前段階をなす諸変化に対してはもとより,広く各種の網膜脈絡膜疾患に用いられている。すなわち,悪性腫瘍や各種の網膜血管病変,さらにはこれまであまり有効な治療法のなかつた中心性網膜炎や未熟児網膜症などに対しても,画期的な治療法となっている。また,種々の前眼部疾患にも用いられ,特に人工瞳孔形成には広く応用されている。かように,光凝固装置は今や眼科の治療器具としてなくてはならぬ存在となつた。使いなれた者にとつて光凝固を失なうことは手足をもがれるような感じだと言つた人があるが,まさに同感である。
 しかしなにぶんにも光凝固装置は開発されてまだ日も浅く,使用範囲も多岐にわたるため,疾患ごとの適応基準や使用方法に関する情報の集積が十分でない。各人がそれぞれ試行錯誤を繰り返して行方を模索しているとの感が深い。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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