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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科24巻3号

1970年03月発行

雑誌目次

特集 第23回日本臨床眼科学会講演集 (その3)

先天性停止性夜盲症の1異型(いわゆる斑紋眼底)のEOGおよびVEP

著者: 神鳥文雄 ,   栗本晋二 ,   玉井嗣彦 ,   福永喜代治 ,   瀬戸川朝一 ,   渡辺猛 ,   村岡稔通

ページ範囲:P.313 - P.321

I.緒言
 1959年,神鳥1)はまだ記載のなかった先天性停止性夜盲の1異型を発表し,これを斑紋眼底(以下fleck reti—na)と呼んだ。以来神鳥ならびにその共同研究者2)〜9)によつて,眼底所見,ERG,螢光眼底像,およびその他の諸検査成績の詳細が報告されて,欧米においてはfleckretina (Kandori)と呼ばれている10)〜15)
 今回,10数年観察するも停止性の1症例にEOGならびにVEP的検索を行なつたので,ERG所見とともにここに報告する。

視神経乳頭硝子疣と網膜色素線条症の共存せる症例について

著者: 松原忠久

ページ範囲:P.323 - P.327

I.緒言
 視神経乳頭硝子疣は1858年Müllerにより初めて記載され,最近10年間の文献を見ても毎年数例の報告が見られ,それほどまれなものではない1)。他方網膜色素線条症は1889年Doyne,内藤らの報告以来現在までに報告されたもののみをみても,内外合わせて数百におよぶものと思われる2)。しかしこの両者の共存せる症例はかなりまれであり,特に親子2代にわたる遺伝例はいまだ見られない。ここにその1例を報告し,あわせて若干の考察を試みることとした。

各種自律神経作動薬剤の調節に及ぼす影響

著者: 吉原正道 ,   石崎俊介

ページ範囲:P.329 - P.349

I.はじめに
 近年,電子顕微鏡,組織化学的検索,およびエレクトロニクスの発展に件つて,眼の調節についても,漸次明らかになりつつあるが,しかし,いまだ最も基本的な問題ともいえる調節の機序や支配神経についても,種々の説があつて,未解決の部分も多い。すなわち,眼の調節の原動力となると考えられている毛様体筋の神経支配についても,大塚教授1),平野氏2)3)は,副交感神経単一支配を主として述べており,谷口氏4)5)6),田川氏7)8)9),中村氏10)11),田川氏ら12),宇賀氏13),は二重神経支配を報告し,また鹿野教授は,本年の日眼総会(73回)の「眼と自律神経」と題する特別講演で,毛様体筋の支配神経についても述べられ,交感神経支配の関与を示唆されたが,明確に断言はなされなかつたようである(現在,原著は未刊であるが,間もなく発刊されよう)。このように,毛様体筋については,神経支配は,副交感神経単一支配なのか,二重神経支配であるかの判定は,なかなかむずかしい。
 一方,自律神経作動薬剤は点眼薬として,偽近視の治療に広く使用せられており,その有効理由は,毛様体筋を支配する自律神経を介して毛様体筋をcycloplegicにするか,もしくはcycloplegiaの状態にすることによつて調節状態を変動せしめて,治療するというところにある。

緑内障治療へのadrenergic potentiatorの応用について

著者: 北沢克明 ,   川西恭子

ページ範囲:P.351 - P.356

I.緒言
 近年交感神経系に関する知見は飛躍的に増大したが,なかでも交感神経節後線維末端の伝達物質が従来いわれていたようにエピネフリンではなくノルエピネフリンであること1),さらにまた,中枢よりのimpulseにより節後線維末端より放出されたノルエピネフリンはアセチールコリンのごとく酵素により分解されてではなく,再び神経終末へ取り込まれて(re-uptake)その働きを失うことが判明したことは特記すべきである2)。この神経末端へのuptakeは,体内で神経末端より分泌されたノルエピネフリンについてばかりではなく,体外より投与されたノルエピネフリンやエピネフリンなどのノルエピネフリンと類似の構造を有する種々の物質についても生ずることも判明した2)
 adrenergic aminesの眼圧および房水動態におよぼす影響については,近年いくつかの報告がある3)〜6)。中でもエピネフリンは古くから緑内障治療に用いられており14),そのほかノルエピネフリン,イソプロテレノールもまた眼圧下降作用を有するとされている5)

Behçet病治療法の検討(その2)

著者: 二神種忠 ,   青木功喜 ,   斎藤一字 ,   実藤誠 ,   藤岡憲三 ,   菊池浩吉 ,   加藤紘之

ページ範囲:P.357 - P.362


 未知の原因で発症し,再発を繰り返して不幸な転帰をもたらすBehçet病の治療法については,Steroid長期使用の生命,眼障害の予後への悪影響を考えるとき,新しい観点に基づいてこの治療を考える必要がある。すなわち,われわれは前回の臨眼において免疫機構への変調がこの病気の発生機転の根底になんらかの形で関与していると考えて,種々の免疫抑制療法(胸腺摘出,脾臓のX線照射,6MP)を試みたが,その観察期間はまだ短いものであつた1)。今日は前回の症例を1年以上追跡するするとともに,最低5カ月間の観察をした新たな症例を加えて再検討したので報告する。

線維柱組織における酸性粘液多糖類の局在

著者: 瀬川雄三

ページ範囲:P.363 - P.367

I.緒言
 房水流出抵抗の一部は,線維柱組織に存在するヒアルロニダーゼに感受性のある酸性粘液多糖類によるものであるということが,灌流実験によつて明らかにされている1)〜3)。この見解は,組織化学的研究によつてもまた支持されている4)。しかしながら,線維柱組織のどこに存在する酸性粘液多糖類が流出抵抗に関与しているかという問題に対しては,現在なお定説がみられない。
 一方人眼の場合,線維柱組織を構成する内皮細胞には高頗度の小孔が存在し,Schlemm氏管内壁には低頻度の細孔が存在することが,超薄連続切片法5)6),ならびにレプリカ法7)を用いた電顕的研究によつて明らかにされており,房水はこの通路を通つて流出するものと推定されている。

若年層における高眼圧症例の検討

著者: 相沢芙束 ,   持田祐宏 ,   志賀満 ,   大川忠

ページ範囲:P.369 - P.379

I.緒言
 一般に原発性緑内障を臨床的に取りあげる場合に,小児のHydrophthalmusと成人より老人にみられる緑内障例については注意が喚起されているが,その中間にある若年者層のそれについてはしばしば等閑に付される傾向がある。
 また,若年者層の緑内障については現在,なお十分に病態は解明されておらず,成人の緑内障との関係,あるいは先天性緑内障との関係においても議論の多いところであります。

1%トロパ酸アミドと1%ピロカルピンの併用点眼による偽近視の集団治療成績

著者: 山地良一 ,   中山周介

ページ範囲:P.381 - P.387

I.はじめに
 昨年春の日眼総会宿題報告の近視に関する諸問題のシンポジウムにおいて,偽近視の研究についての山地の報告1)に対して,三井幸彦氏1)は「アトロピンのような高度の調節麻痺を起こさせる薬およびピロカルピンのようなCyclospasmを起こさせる薬は,ともに調節のIm—pulseを減弱ないし消失させる作用がある。こういう状態を持続させれば薬を抜いたあとも調節のSpasmはとれる可能性がある。ところが弱いCycloplegic drugを用いると,不完全なCycloplegiaが起こる。こういう時期には患者はなんとかして近くを見ようとして,非常に強い調節のImpulseを出す。このことは調節性輻輳が著明に大きくなることによつて測定される。たとえば就寝時に点眼して,翌朝その作用がわずかでも残つていると,翌日は同じ調節をするために平常より強い調節のImpulseを出し続けることになる。そのために薬を抜いたあとReboundとして,かえつて強いCyclospasmを誘発するおそれがある。こういうおそれをなくするためには就寝時に弱いCycloplegic drugを用いたら,翌朝Cyclospasticを用い,夜と昼で交互に使用していくのがよいのではないか」と述べられた。

毛様体突起における房水産生部位の考究—Na-K—ATPaseの分布について

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.388 - P.388

 毛様体突起が房水産生の場であることは,今日良く知られた事実であるが,房水産生の生化学的機序に関しては近年研究が始められたばかりである。これらの研究で毛様体突起のナトリウムおよびカリウムイオンの共存で活性化され,ウワバインで阻害されるATP分解酵素(Na-K—ATPaseと呼ぶ)による,陽イオンのActiveTransportが,房水産生の主役であることが認められている。
 しかし毛様体突起の2層の上皮のいずれが房水産生の主役であるかは問題で,これまでにも組織学的,電顕的にNa-K—ATPaseの局在が論じられているが,数量的にこれをはつきり示すことができなかつた。

Neuro-Behçet症候群の臨床像について

著者: 窪田靖夫 ,   十束支朗

ページ範囲:P.389 - P.393


 Behçet病にしばしば精神神経症状を合併することはすでに古くより知られており1)〜3),その臨床像に関する報告も多い。しかし従来,本症候群,すなわちNeuro—Behçet症候群(以下N-B症候群と略す)の臨床像については精神神経科領域よりの報告が比較的多い。実際にBehçet病に最も多く接するのは眼科医であり,したがつてその出現頻度などの統計は,眼科領域よりなされるのがより正確であろう。われわれは最近10年間における千葉大眼科外来のBehçet病患者を対象としてN-B症候群の臨床像について検討を行なつたのでここに報告する。

先天緑内障(晩発型)の手術術式について

著者: 井上洋一 ,   井上トヨコ ,   大西幸子

ページ範囲:P.395 - P.402

I.緒言
 若年者の緑内障の治療はなかなか困難なものである。ことに手術治療にいたつては,これまでは単性緑内障に準じて手術が行なわれることが多く,術式の選定はともかくとして,若年者眼球の解剖学的,生理的な特徴に考慮が払われないまま手術がなされるために,術後の成績もよくない。1回の手術では眼圧の調整がうまくゆかず,2,3回と再手術される例が多い。著者らは先天緑内障(晩発型)の1家系を調査し,その特異な眼圧について報告した1)。その後,これらの症例の手術治療を行なうにあたつて,若年者眼球の特徴に考慮を払い,6例11眼に濾過手術を施行した結果,興味ある成績を得たので報告する。
 元来,濾過手術の成績は,年齢の若い者ほどよくないと言われている2)。すなわち,高齢者ではテノン氏嚢がうすくなるため,水胞がよく形成されるのに対して,小児,若年者では,テノン氏嚢が厚い3)ために,水胞の形成が悪い。また濾過手術の目安となる水胞がうまく形成されても,眼圧の制御されぬ場合がある。このような事実から,濾過手術におけるテノン氏嚢切除の降圧効果に及ぼす影響を,各症例について観察してきたので,それらの成績から若年者における緑内障の手術術式について検討してみた。

緑内障集団検診に関する研究Ⅲ—トノグラフィーを併用せる飲水試験による追跡成績について

著者: 小野弘光

ページ範囲:P.403 - P.410

I.緒言
 緑内障の早期発見の必要が叫ばれて以来,緑内障検出のための集団検診が,これまでに多数行なわれてきており,それ自体が非常に意義のあることであった。しかし,そのさいに検出された緑内障は別として,ある検査のみが陽性のもの,あるいは疑似緑内障として検出された例が,いかなる経過をとり,どのような症例が真性の緑内障に発展するのかという点に着目し,長期にわたり追跡し分析することは,さらに緑内障集団検診の意義を深めるものである。このような点に関する報告は著者の調べ得た範囲では,外国に少数1)〜5)のものがみられるのみで,わが国には見当たらない。
 著者は,昭和39年に40〜50歳の国鉄職員502例,1004眼に対して,飲水試験を第1次検査に,またトノグラフィーを第2次検査に採用した集団検診を行ない,その結果を日眼会誌上に発表した6)。さらに,そのさいのトノグラフィーと飲水試験の成績を比較検討した結果を臨眼誌上に報告した7)。それ以後,約5年を経過しているか,そのうちの109例218眼に対して,トノグラフィーを併用せる飲水試験による追跡成績を得ることができたので報告する。

周辺部に骨小体様白斑を伴つた黄斑変性症

著者: 松尾治亘 ,   田坂定晴 ,   遠藤成美 ,   浜崎陞

ページ範囲:P.415 - P.420

I.緒言
 黄斑部の変性性疾患に関しては,古来幾多の報告があるが,Best (1905),Stargardt (1909),Oatmann (1911),Behr (1920)らが,遺伝性,家族性黄斑変性症を多数,詳細に報告し,本疾患を体系づけている。しかし,なお症例によつては,鑑別診断に困難を感ずることも少なくない。以下に報告するものは,家族性,遺伝性に発生したと思われ,網膜周辺部に骨小体様,さんご状の小白斑を伴つた黄斑変性で,その鑑別診断に困難を感じた症例である。

連載 眼科図譜・148

周辺部に骨小体様白斑を伴った黄斑変性症

著者: 松尾治亘 ,   田坂定晴 ,   遠藤成美 ,   浜崎陞

ページ範囲:P.309 - P.310

〔解説〕
 患者は23歳,男子で7歳頃から視力障害に気づいていた。これを主訴として来院。
 眼底をみると特異な所見が得られた。

銀界余滴

前房洗滌の効果

著者: 進藤晋一

ページ範囲:P.410 - P.410

 眼内手術については,各人が,それぞれの自己の経験に基づく工夫がある。殊に白内障手術のように油断をすると足をすくわれるような手術では,教科書や,他の奨める手法が自分にとつて,やりやすい手法とは限らないことは周知の通りである。把針器ひとつをとつても,使いにくい時には,自分でヤスリをかけて自分の好みに作りかえた方がよい。丸と平の2枚の「カネヤスリ」と目のこまかい「紙ヤスリ」があれば,高価な新品を買いあさることはない。

わたしの意見

眼科医の近代化とは—(その1)

著者: 井上洋一

ページ範囲:P.426 - P.427

眼科開業医の地位
 大量生産時代に入ると,すべてがベルトコンベア式に運ばれてしまい,パーツにばらつきがあり,組み立てた製品に案外故障が多い。これは,祖母にすすめたカラーテレビの工合が悪く,修理に来てくれた業者の話である。例外的に高く評価されている製品にしてこの調子では,他は推して知るべしであろう。私ども眼科開業医もこの10数年,大量生産的に患者を診察してきており,洗眼台を効台並べて患者をさばいていくのが近代的であると考えている人もある。現代の社会のすさまじい流れを見ていると,医者が流されていくのも仕方ないことであろう。開業して間もない頃,私は次のような檄を草した。
「現行の健康保険制度の中には,多くの問題がひしめいている。これを扱う医師の態度にも複雑な影がうかがわれる。これが制度自身のゆがみであるか,医師の意識のゆがみであるかは決められない。しかし制度の欠陥のみを,これでもか,これでもかとあまりに強調しすぎるきらいがあり,読んだ後,聞いた後の味がちつともすつきりしない。むしろ,私ども医局出たての開業医は,制度の欠陥のみにその責任を負わせようとする傾向には反発を感じる。等々……」

臨床実験

糖尿病性眼合併症の実態II—網膜症について

著者: 福田雅俊 ,   武尾喜久代 ,   工村裕子

ページ範囲:P.429 - P.434

I.緒言
 現在糖尿病に伴う眼合併症のうち,その頻度と予後とから考えて最も重大視されねばならぬのは網膜症であるが,いま一つの視力障害の原因となる,頻度も高い眼合併症である白内障の手術予後を左右するのも,この網膜症であることを前報1)で明らかにした。したがつて,この網膜症に関する事項は,さらにほかの対象群の統計結果も加えて,本報において重点的に論じたいと思う。

「眼科領域におけるサークレチン—F」の使用経験

著者: 河瀬澄男 ,   内山幸昌 ,   桜井正則

ページ範囲:P.435 - P.441

I.緒言
 哺乳動物の膵臓から抽出された循環系作用物質サークレチン(学名カリクレイン)は,生体微小循環系の調節に大きく関与し治療面での応用範囲は広く,各科領域における臨床報告は多い。しかし従来の単位薬用量では時として治療効果をあげがたいこともあり,なお一層,高単位サークレチン投与の必要を感じていたところ,従来の4倍の生物学的単位のカリクレインをふくむサークレチン—Fが製造され,これを眼科領域の疾患に応用し若干の知見を得たので報告する。サークレチン—Fを投与した疾患は次のごとくである。
 中心性網脈絡膜炎,ベーチェット病,硝子体出血,脈絡膜出血,網膜出血,網膜中心静脈枝血栓,網膜血管硬化症である。

眼・光学学会

He-Ne Gas Laserの光凝固II

著者: 小松伸弥

ページ範囲:P.443 - P.449

I.緒言
 最近数年の間にいろいろなLaser装置が開発され各方面に応用されているが,特にGas Laserについては(1)連続発光である,(2) Cohercncyが強いなどの点が固体レーザに勝るものとして注目されてきている。網膜剥離などに対する光凝固機として従来は主にクセノンが使われてきたが,最近ではRuby Laser (固体レーザ)が使われてかなりよい成績をあげている。しかしすでに第1報でも述べたごとくHe-Ne Gas Laserはこれら両者に比べて種々の優れた点をもつており,前回は動物実験において満足すべき結果を得たが,今回は人眼網膜の腫瘍およびその周辺の網膜の光凝固を行なう機会を得,臨床面における効果を確かめることができたのでその経過について報告する。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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