icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科24巻4号

1970年04月発行

雑誌目次

特集 第23回日本臨床眼科学会講演集 (その4)

遺伝関係の明らかな網膜色素変性家系の臨床的観察

著者: 今泉亀撤 ,   高橋利兵衛 ,   渥美健三 ,   高橋文郎 ,   庄子宇一 ,   山田莞爾 ,   今泉信一郎 ,   三田洸二

ページ範囲:P.465 - P.476

I.緒言
 網膜色素変性の遺伝型式には6種類の型が推定1)〜3)されているが,近年,小林4)により伴性優性遺伝と思われるきわめてめずらしい1家系が報告されたので,現在,遺伝学的に考慮され得るすべての遺伝型式が,網膜色素変性の場合にも見出されたことになる。
 網膜色素変性が,かように多彩な遺伝型式をとつて遺伝することから,Fall1),François2), Duke-Elder3),小林4),Franceschettiら5),川上6),小林7)らの諸氏は,一様に,網膜色素変性と診断される疾患の中には,その遺伝型式の違いにより多種症状のvarietyを示すものが包含されることを推測した。

ガレーン動静脈瘤によると思われる視神経萎縮の1例

著者: 塩崎英一 ,   森川幸子 ,   松岡洋子

ページ範囲:P.477 - P.482

I.緒言
 脳血管の疾患はMillikanの分類によつても明らかなごとく種々のものがあるが,近年脳血管撮影の進歩により,比較的容易にその鑑別診断が可能となつてきた。その中で特に脳血管外科の対象となるものに脳動脈瘤,脳動静脈瘤,脳動静脈奇形(脳動静脈瘤)などがあげられるが,ガレーン動静脈瘤は脳動静脈奇形の中でも頻度が少ないといわれている。
 今回,著者らは両眼の視力障害を主訴として来院した患者について,椎骨動脈撮影の結果,ガレーン動静脈瘤を発見し,脳外科にてTolkildsen手術を施行したが,経過不良にて死の転帰をとつた1例につき,検討し,いささか知見を得たので,ここに報告する。

糖尿病患者眼底の血管径計測による経過観察

著者: 小島道夫

ページ範囲:P.483 - P.487

I.はじめに
 糖尿病患者においては網膜静脈の拡張の著明なものほど網膜症の発症,進行率が高いといわれる(福田ら1964年,石川ら1964年)。このことは網膜動・静脈径と網膜症の発症,進行との間になんらかの関係を予想させる。実際これまで糖尿病患者の網膜血管径計測を行なつたのはLobeck (1936),Jütte (1956),小島(道)(1964),佐野ら(1965)であるが,これらの人々は正常者と糖尿病患者の非網膜症および網膜症群について論じたので,糖尿病患者の眼底経過を網膜血管径計測により追究した成績はまだ報告されていない。
 著者は今回昭和28年月から43年まで15年間に新潟大学眼科学教室を訪れた糖尿病患者のうち5年以上経過を観察することのできた102名において眼底写真撮影を行なつてその経過を観察し,しかもその写真が網膜血管径計測に必須の条件にかなつている50例89眼について,その5年前後の写真について計測を行ない,その結果から網膜症の発症,進行因子を追究してみたところを報告する。

糖尿病患者の眼底およびERG所見の経過観察

著者: 倉知与志 ,   米村大蔵 ,   小坂輝彦 ,   吉村卓也 ,   蓮井勲 ,   山田芳明 ,   藤村和昌 ,   武内重五郎 ,   高松弘明 ,   真田一郎

ページ範囲:P.489 - P.495

I.緒言
 糖尿病患者のERGで,律動様小波1)2)の選択的減弱または消失が,高率に出現することが確認されている1)〜20)22)26)。律動様小波の減弱の可能な一因子として,糖尿病患者の網膜の少なくとも双極細胞層付近の低酸素状態が指摘されている8)。糖尿病患者の血糖値と律動様小波の関係については,2,3の報告がある2)8)9)21)。ここでは,糖尿病患者において,律動様小波と若干の全身的条件との関係をやや長期にわたって調べ,2,3の知見を得たので報告する。

螢光眼底撮影法による糖尿病性網膜症の研究—家族性糖尿病および二次性糖尿病について

著者: 高慶二

ページ範囲:P.497 - P.508

まえがき
 糖尿病の発病には,現在のところ遺伝負荷の影響が大であることが,ひろく一般に認められている。そして,その遣伝様式については,D.Vaughanら1)は偽優性遺伝pseudo-dominant inheritanceであるとし,宮尾2)は多因子説を支持している。また,糖尿病性網膜症にみられる網膜細小血管症microangiopathyに関しては,糖代謝異常を起こす糖尿病の遣伝因子が,microangio—pathyをも起こすとする考えかたと,糖代謝異常をおこす遣伝因子以外の因子によつてもmicroangiopathyが起こるとする3)4)5)二通りの考えかたが行なわれている。
 一方,螢光眼底撮影法は,その開発以来ほぼ10年の間に,多くの眼底疾患の病態の解明に貢献してきた。その理由の一つに,生体眼において,本法が病理組織学的所見に最も近い水準で網膜血管系の病変を検索できるということがある。そして,この方向から糖尿病性網膜症に関しても,数多くの研究が行なわれてきた。たとえば,検眼鏡的に網膜病変を認めない症例,あるいは,前糖尿病状態prediabetic stateの症例において,micro—angiopathyの早期発見に非常に意義のある検査法であるとされている。

前房隅角電気分解術の房水動態に及ぼす影響

著者: 長谷部信武

ページ範囲:P.511 - P.515

I.緒言
 原発性緑内障を手術した場合,時に眼圧調整が十分行なわれないことを経験する。著者はこのような症例に対する再手術を目的として,前房隅角電気分解術の装置を試作し,1966年臨床眼科学会でその概要を報告した。最近のGolubev2)の論文抄録を見ると,ロシアにおいてもGeroschewskiが,牛眼に対し前房隅角ジアテルミー手術を行ない効果をあげているという。抄録内容より判断すると,この手術は前房隅角電気分解術にはなはだ似かよつた手術と思われるが,詳細は明らかではない。著者はこの前房隅角電気分解術が,房水の動態にどの程度の影響を及ぼすか家兎眼について実験を試みた。なお今日緑内障に広く用いられているScheieの手術と本法との効果を家兎眼について比較してみた。

意識障害者・小児の視野計測法—赤外線テレビによる瞳孔反射視野計

著者: 杉田虔一郎 ,   杉田雄一郎 ,   六鹿直視 ,   高岡淑郎

ページ範囲:P.517 - P.523

I.緒言
 現在まで視野計測はすべて患者の光刺激の認知による返答によつて行なわれたため,小児や意識障害者の視野計測は全く不可能であつたが,われわれは患者の返答のかわりに対光反射を指標とすることにより,検査に非協力な患者の視野計測も可能な装置を考按した。
 古く1881年Wilbrand17),1883年Wernicke16)は半盲側からの光の投射に対しての対光反射は,その健側に比べて弱いことを記載している。Hess (1907)9)やG.Braun (1934)3)らは種々な装置を考按して,そのことを確かめるべく努力した。1949年H.Harmus8)は対光反射による視野計測を視野内の一経線上ではあるが定量的に計測し,その事実を実証している。これらの研究はすべて細隙灯などの通常の光学系に頼り,手技上多くの煩雑さがあつた。われわれは赤外線テレビジョンを使用することにより,容易に全視野にわたる対光反射による視野計測を行ないうる装置を考按し,臨床例にて十分な成績を得た。

無核白内障(軟性白内障)の吸引法における術式と合併症との関連について

著者: 田中靖彦 ,   小林彰雄

ページ範囲:P.525 - P.531

I.緒言
 無核白内障(軟性白内障)に対する吸引法は,昭和34年に本邦で初めて桑原教授が紹介して以来,比較的手術操作が容易であり,安全で,患者の負担も少なく,また忌むべき合併症も少ないなどの多くの利点から,最近では広く無核白内障に対し利用できる優れた方法として,わが国でもここ10年来,その症例数が年々増加の傾向にある6)7)9)
 当教室においても,昭和37年以来,無核白内障に対し,routineに吸引法が行なわれてきたが,この間桑原教授は,漸次術式に工夫改良を加え,現在までに術式に関し,三つの時期的変遷を見ることができる。今回昭和37年4月より,昭和44年3月までの7年間に,無核白内障に対し,これら3期の各術式で水晶体吸引を行なつた124例145眼につき,合併症を中心に統計的分析を試み,あわせて各種の臨床所見につき,術式別に比較検討したので,ここに報告する。

Myasthenieの原因的考察

著者: 松田一夫 ,   伊東泰子 ,   安積慶子 ,   中村晏子

ページ範囲:P.533 - P.539

I.緒言
 重症筋無力症の眼症状についてはMattis1)(1941)やWalsh (1945)の報告がある。筋無力症は一つの症候群であり,特に重症筋無力症(Myasthenia gravis)も従来の一つの疾患とみなされてきていたが,これにしても単一の原因によるものか否かはまだ明らかではない(Rowland2)3),1961)。
 Myastheniaの障害部位は,主として神経筋接合部であり,運動終板の変形がみられ,かつ治療として抗Cholinesterase剤が広く用いられている。

眼科領域における遺伝相談I

著者: 小林守

ページ範囲:P.541 - P.544

 眼科領域には先天性ないし遺伝性疾患の種類が非常に多い。しかも近年に至るもそれら疾患の相対的頻度は減少せずに,むしろ増加の傾向にある1)
 眼科外来において,しばしば眼遺伝病の患者ないしは家族その他から遺伝相談を受けるチャンスが少なくない。

Color Flickerを用いた試作色覚検査器

著者: 浦久保光男 ,   池田光男

ページ範囲:P.545 - P.549

I.緒言
 赤色と緑色のカラーフリッカーおよび赤色順応光を用いた実験装置により,正常者と第1・第2色覚異常者との3者の間の比視感度曲線(luminosity curve)の異なり,および選択色順応(selective chromatic adaptation)効果の違いを測定することによつて,正常者と色覚異常者および異常の型を簡単かつ確実に分類することができるということが基礎実験の結果わかった。これの理論的考察および基礎的な実験の結果はすでに本誌1),その他2)3)で発表している。
 基礎実験装置は,三つの光路のそれぞれに別々の光源を用い,複式単光器(double monochrometer)を2台用い,また光学系の諸要素は光学ベンチ上にアレンジされているので,装置としてはたいへん大がかりなもので移動不可能なものであつた。その上暗室を必要とした。以上の理由から,場所を移して多数の被験者について実験を行なうことができなかつた。

臨床面からみた眼鏡レンズ材料の検討

著者: 戸塚清 ,   西川信子 ,   母里義郎

ページ範囲:P.552 - P.553

 眼鏡レンズとしては古来光学ガラスがもつぱら用いられている。しかし戦後は合成樹脂も使用されるようになつてきた。主体は,はじめはメタアクリル酸メチルの重合物であつたが,最近はアリル樹脂がかなり奨用されている。コンタクトレンズは,戦後になつて広く使用されるようになつてきた眼鏡レンズの一種であるが,この素材はメタアクリル酸メチルの重合物である。
 われわれは,時として眼鏡の重さを苦痛に感じることがある。また外傷などの症例をみて,割れないガラスがあつたらなど時折考えさせられることがある。そこでアリル樹脂とかメタアクリル樹脂のような眼鏡レンズ材料が,実際臨床的にどの程度の強さ,硬さ,耐久力を持つているのか,従来の光学ガラスと比較,検討してみる必要を感じた。以下に検討結果の概要を述べてみる。

試作ステレオカメラについて—主として前房隅角立体撮影用として

著者: 山田栄一

ページ範囲:P.554 - P.555

I.緒言
 従来前房隅角の写真撮影は平面写真であつた。立体的構造をもつ隅角部を平面写真で表現する場合,いろいろな不満を伴うのは免れ得ない。このような不満を解消するため,立体撮影装置を試作した。本装置はZeiss手術用顕微鏡にとりつけたstereoscopic cameraと照明装置よりなつている。

眼底計測とdistortion

著者: 三国政吉 ,   八百枝浩 ,   霜島正 ,   中川治平

ページ範囲:P.557 - P.564

I.緒言
 平凸レンズを虫眼鏡のようにして碁盤目をみると直線が歪んでみえる。レンズの中心から縁にいくにしたがつて歪みは強くなる。
 これを像の歪曲distortionといい,球面収差,コマ非点収差,像の湾曲とともにレンズの収差の一つにあげられる。

トキソプラスマによるbrawny scleritisの1症例について

著者: 徳田久弥 ,   岡村良一 ,   釜野久枝

ページ範囲:P.565 - P.571

I.まえがき
 Schlodtmann1)の命名によるSultzige Scleritisは予後の不良な強膜炎としてしられ,わが国では膠様強膜炎とよばれているが,欧米ではその形状からbrawny sc—leritisとして記載されているようである。しかしブドウ膜炎をともない両眼に発生するこのbrawny scleritisについて詳細に報告したもの,とくに病理組織学的に詳しく記載したものはわが国では皆無である。このbrawnyscleritisは原困がいまだ不明であり,そのため結核,梅毒,膠原病などとの関係がとりあげているが,今回われわれはトキソプラスマによると考えられる非常にまれな症例に遭遇し,本症の原因に一つの光明を与えたものと思うので,ここに報告する。

人工腎臓および腹膜灌流による眼底所見の変化

著者: 保坂明郎 ,   関根高子 ,   星英子

ページ範囲:P.573 - P.580

I.緒言
 近年腎機能不全に対して人工透析が行なわれ,有力な治療法となつている。われわれの大学でも昭和42年以来腹膜灌流をはじめ,さらに43年7月より人工腎臓が設備され着々と成果をあげている。腎機能不全による眼底所見が人工透析によつていかに変化するかは治療効果の判定上,また治療方針の決定上参考になると考え観察してきた。本邦にはこの種の文献がないので,まだ少数例であるが報告し,ご批判を仰ぎたいと思う。

船員の頭部外傷の眼所見について

著者: 篠塚清志 ,   秋田和一郎 ,   雪森英美 ,   木村博

ページ範囲:P.581 - P.595

 船員に多発する眼疾患1)2),ことに眼外傷3)4)の治療は近時重視されているが,最近2年6カ月間に東京船員保険病院眼科を訪れた船員の眼疾患患者614名を検討,眼外傷が186名と最も多発することを知つた(第1図)。
 これら最近頻発した船員の眼外傷のうちで頭部外傷は40例と多数を占め,眼精疲労などの不定愁訴が最も多いが,視神経炎,視神経萎縮,うつ血乳頭と網膜の大出血などの眼底に変化を見た例もあり,眼筋マヒをきたした例なども経験したので,船員の頭部外傷の眼所見について,受傷機転,脳外所見などをあわせて検討したしだいである(第1表)。

連載 眼科図譜・149

トキソプラスマ原虫を証明したbrawny scleritisの1症例

著者: 徳田久弥 ,   岡村良一 ,   釜野久枝

ページ範囲:P.461 - P.462

〔解説〕
 brawny scleritisのbrawnyとは塩漬にした肉という意味の言葉で,病変部の強膜が非常に厚く肥厚発赤するところからつけられたもので欧米ではこの病名がよく用いられている。わが国ではgeratinous scleritisという名称の方が広く用いられているが,強膜炎のほかに難治のブドウ膜炎を合併し予後の不良なことが多い。好んで中年の女子をおかし,原因は結核・梅毒,リウマチなどいろいろいわれているが,実のところ不明である。
 われわれの経験した症例は,45歳の女子で,右眼に虹彩炎を初発し徐々に眼内炎へと進み,2年後にはじめてbrawny scleritisを起こしてきた珍しい例であつて,結局3年日に眼球摘出をした。しかも左眼が右眼摘出後1年で右眼と全く同様の重篤なbrawny scleritisと眼内炎を生じ失明同様の状態におちいつた。ところが,トキソプラスマHA抗体価が異常に高いことがわかり,スピラマイシンとステロイド剤の併用を強力に行なつた結果,炎症が消退し視力もやや回復,同時にHA抗体価も低下した。

銀海余滴

額帯式倒像検眼鏡について/螢光眼底撮影について

著者: 進藤晋一

ページ範囲:P.515 - P.515

 日本人の眼科医はあまり使用していないが,アメリカの眼科医で,この額帯式の電源を内臓した倒像鏡を持たぬ人は,まずいない。Willseye hospitalを訪ねた時も,5台の寝台を置いた暗室の中で,患者をねかせた状態で検査していた。
 日本人の眼科医で「どうも使いにくい」と訴える人が多いが,観察する光線の位置の悪い人が多い。すなわち,自分の手に光線を受けて,視野の上端に光線を置かねば見にくいのである。使いにくいと訴える人は,視野の中央に光線の位置をもってきているから,角膜や,使用するレンズの反射のために見にくいのである。これさえ誤らねば,河本式やその他の日本で多く使用されている倒像鏡よりははるかに便利である。

わたしの意見

吉田義治先生に寄せておもうこと

著者: 杉田慎一郎

ページ範囲:P.602 - P.603

 吉田先生がお亡くなりになってから,もう10年以上の年月が流れた。若い眼科医の方たちの中には,そのお名前すら知らない方もあろうかと思う。名古屋市立大学初代の眼科教授としての吉田先生は,外見的には決して華やかな方ではなく,集談会での話も,重い口から出る表現は難渋なもので,言外にふくまれた長年の経験からの含蓄深い内容は,なかなか汲み取りにくいものであった。お弟子さんのお世話も決して上手ではなかつたようで,いわゆる"指導者"としては,それほど最適な方であつたとはいえないと思う。私は先生の指導を受けたものでもなく,先生が教授を退官されてから2年ほどたつてお亡くなりになる前に,ある機会からわずか半年ぐらい,それも週1回午前中私どもへおいでいただいて,むずかしい患者をみて教えていただいただけの関係である。その半年間先生の示された臨床的態度は感銘深く,私の現在の診療の根底の一部となつているような気がする。吉田先生は,京都大学で市川先生の下で助教授をされ,最後のころに1年間,当時ドイツ第一と言われたLiebzigのHertel教授の下に留学された。そこで非常に良い学究生活をされたらしく,2年後やはり中島実先生もHertelのところへ行かれて日本人の実に評判の良いのを母国に報告されている。その後,大阪の赤十字病院の眼科部長として,手術の名人といわれた市川清先生とヨーロッパでの数々の見聞をもとにして縦横に腕をふるわれてから名市大に就任された。

臨床実験

網膜芽細胞腫摘出眼窩内にみられた涙腺貯溜嚢腫の1例

著者: 馬嶋孝

ページ範囲:P.605 - P.608

I.緒言
 涙腺嚢腫は,1903年Schmidt1)により最初に報告されて以来数十例に達するが,まれなものとされている。今回,著者は網膜芽細胞腫にて眼球摘出をうけて,3年後摘出眼眼窩に腫瘍を生じ,網膜芽細胞腫の再発として眼窩内容除去術を施行,組織学的検査の結果,この腫瘍は涙腺の貯溜嚢腫であつたという,稀有な症例を経験したのでここに報告する。

片眼うつ血乳頭の3症例について

著者: 服部ゆみ子

ページ範囲:P.609 - P.613

I.緒言
 一側性にうつ血乳頭をきたす疾患としては,1911年に,初めて報告されたFoster-Kennedy1)症候群が有名であるが,そのほか,多くは副鼻腔,眼窩,眼球内病変に原因があると考えられている。われわれは,最近,1眼にうつ血乳頭を認めるが,他眼には異常所見なく,脳波,脳脊髄液検査,そのほか,諸種の脳神経学的,耳鼻科的検査によつても,その原因を追求し得なかつた3症例を経験したので,ここ報告する。

第23回日本臨床眼科学会 GROUP DISCUSSION

近視

著者: 佐藤邇・他

ページ範囲:P.616 - P.618

1.ミドリン点眼69ヵ月後の成績について
○石崎俊介・山地良一・古田効男・中山周介(阪医大)
2.偽近視治療適応者の選び方について
○中山周介・山地良一・古田効男(阪医大)
 1,2は関連のある演題なので先に講演し,後で一緒に討論した。1では従来の実験に20カ月を追加し,視力で73%,屈折で86%に有効であつた。2では偽近視の治療はミ点眼後の検影,視力の改善および眼圧上昇のないことを確かめて行なわぬと無効であつたり,危険とのこと。

小児眼科

ページ範囲:P.620 - P.622

本グループの歩み
 小児眼科研究グループは昭和42年の臨床眼科学会を第1回とし,ついで昭和43年は中部眼科学会において,そして本年の臨床眼科学会でやつと3回目をむかえる歴史の浅いものである。それだけに,わが国眼科にとつて急速な進歩を望まれるものだけに,第1回目から,計画的な会の持ち方をしてきた。
 小児眼科は新しい分野であるだけに,他領域からの知識の吸収が必要であり,特別講演として,第1回目には,関東逓信病院眼科小林守1)博士に「小児先天異常の染色体」を,第2回目は大阪小児保健センター内科大浦敏明博士2)に「眼症状を伴う代謝異常」を,第3回目は名市大小児科小川次郎教授に「新生児と目」について依頼をした。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?