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連載 眼科図譜・149
トキソプラスマ原虫を証明したbrawny scleritisの1症例
著者: 徳田久弥1 岡村良一2 釜野久枝2
所属機関: 1杏林大学 2熊本大学医学部眼科学教室
ページ範囲:P.461 - P.462
文献購入ページに移動brawny scleritisのbrawnyとは塩漬にした肉という意味の言葉で,病変部の強膜が非常に厚く肥厚発赤するところからつけられたもので欧米ではこの病名がよく用いられている。わが国ではgeratinous scleritisという名称の方が広く用いられているが,強膜炎のほかに難治のブドウ膜炎を合併し予後の不良なことが多い。好んで中年の女子をおかし,原因は結核・梅毒,リウマチなどいろいろいわれているが,実のところ不明である。
われわれの経験した症例は,45歳の女子で,右眼に虹彩炎を初発し徐々に眼内炎へと進み,2年後にはじめてbrawny scleritisを起こしてきた珍しい例であつて,結局3年日に眼球摘出をした。しかも左眼が右眼摘出後1年で右眼と全く同様の重篤なbrawny scleritisと眼内炎を生じ失明同様の状態におちいつた。ところが,トキソプラスマHA抗体価が異常に高いことがわかり,スピラマイシンとステロイド剤の併用を強力に行なつた結果,炎症が消退し視力もやや回復,同時にHA抗体価も低下した。
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