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特集 第23回日本臨床眼科学会講演集(その5)
血圧変化に伴う網膜動脈径の変化—動脈硬化性変化との関連
著者: 近山行夫1 飯田稔1 守分志津江1 明里泰子1 小町喜男1
所属機関: 1大阪府立成人病センター
ページ範囲:P.713 - P.714
文献購入ページに移動高血圧症の眼底所見において,網膜細動脈狭細は,高血圧性変化の主要所見の一つとされている。細動脈狭細の成り立ちには,機能的,器質的の2種があると考えられているが,その両者の移行および鑑別に関しては,必ずしも細部まで明らかにされているとはいいがたい。一般には,高血圧症の初期から機能性狭細が現われ,その後,高血圧の持続ないし進展に伴い,(その間に多少の動揺があるとしても),狭細が増強していき,器質的な狭細と化すると考えられているようである。われわれは,疫学調査を通じて得た眼底カラー写真による血管計測を行ない,高血圧症が進展しても,それに伴つて,網膜細動脈が直線的に狭細化するものでなく,動脈硬化により血管壁の収縮力が弱化するために,網膜細動脈は,ある時期には,収縮した時点からみれば,むしろ拡張を起こすと考えられる知見を得た。また,同一人の眼底を経年観察することにより,この事実を確認し,さらに,血管内径を忠実に表わすと考えられている螢光撮影法によつても確かめた。これらは,昨年までの日本公衆衛生学会,日本老年医学会において発表してきた。
今回は,機能的狭細の存在を確認するとともに,網動脈狭細に対する細動脈硬化の影響を明らかにするため,血圧の変化と,網膜細動脈径の変化の関連を検討した。
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