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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科24巻6号

1970年06月発行

雑誌目次

特集 第23回日本臨床眼科学会講演集(その6)

SMONの眼科臨床的ならびに病理学的検討

著者: 奥田観士 ,   松尾英彦 ,   那須欽爾 ,   岡部史朗 ,   古賀旭 ,   上野脩幸 ,   淀川正和

ページ範囲:P.799 - P.804

I.緒言
 いわゆる腹部症状をともなう脳脊髄炎症は,清野ら1)高崎ら2)によって報告された症例に始まり,1964年日本内科学会のシンポジウム3)にとりあげられるに至つた。本症の名称については,さまざまの命名があつたが,現在では椿ら4)のいうSMON (Subacute myelo-optico—neuropathy)が,一般的となつている。本症の原因については,感染説,ビタミン欠乏,代謝障害説,薬物中毒説など,いろいろ考えられているがいまだに決定的でない。感染説については新宮ら5)6)のECHO−21型ウイルス説もあるが,これは追試による確認がなされておらず甲野7)のslow virus感染説などもあるが,まだ明確でない。
 SMONの眼症状に関する報告は,眼科領域でもかなり多数みられるようになつたが,今回われわれは岡山県下におけるSMON多発地である井原地区および湯原地区の眼科的集団検診の結果およびSMONで死亡した患者の視神経を病理組織学的に検索したので報告する。

脳腫瘍の眼症状

著者: 野崎尚志

ページ範囲:P.805 - P.809

I.緒言
 脳腫瘍のさいに現われる眼症状についてはすでに数多くの報告がなされている。それにもかかわらず数はそれほど多くはないが脳腫瘍の症例で眼科的疾患と混同されている例に遭遇する。私はこのような観点から最近5年間に名大病院にて手術を行ない診断が確定した72例を選びその眼科的症状を主に分析し,過去に発表された症状と比較してみた。

糖尿病者の眼圧

著者: 矢藤仁久

ページ範囲:P.811 - P.822

I.緒言
 糖尿病患者の眼圧の問題はHeine (1903)1),Krause(1904)2)が糖尿病性昏睡時に著しい低眼圧を示す症例を報告したのに始まるが,その後あまり注目されなかつた。1920年代に入つて,血糖と眼圧の変動の関連が報告された。糖尿病者では眼圧の変動が一般に大きいといわれ,また糖尿病性網膜症の有無によつて差があるともいわれている.このような糖尿病者における眼圧の変動やくり返す低眼圧が網膜症発症進展のfactorになりうるという報告も多い。糖尿病と緑内障との合併は,出血性や続発性緑内障については古くより知られているところであるが,原発性緑内障については,Armstrong (1960)が糖尿病者では単性緑内障の合併率が一般対照より高率であると報告して以来,それを支持する報告は多い。
 しかし実際臨床上,糖尿病者の白内障や白内障手術例にはよく遭遇しても,原発性緑内障の合併,特にその手術例はほとんど経験しない。糖尿病者の眼圧には多くの要因の介在が考えられるが,現在なお相反する意見が多く,不明の点が多い。

一定地域に多発した両眼視力低下児童に関する研究(予報)

著者: 石川哲 ,   稻葉光治 ,   内藤誠 ,   山崎篤己 ,   藤野貞 ,   太田陽一 ,   大戸健 ,   鬼頭昭三

ページ範囲:P.823 - P.826

I.緒言
 長野県佐久地区を中心に最近両眼視力が低下している原因不明の疾患を有する児童群が存在することを知り,われわれはこれら児童に対して44年8月に大がかりな集団検診を行ない,その後得られた結果からその原因の究明,治療その他につとめている。今回は予報として,第1回目の検診で得られた結果をごく簡単に紹介し,どんな眼症状を有するかについて報告する。

輪状網膜症の光凝固療法

著者: 清水弘一 ,   戸張幾生

ページ範囲:P.827 - P.831

I.緒言
 輪状網膜症Circinate retinopathyには,黄斑部をとり囲んで生じる定型的なもののほかに,特に特定しない眼底部位に硬性白斑のやや不規則な輪状の集合として起こることがあり,糖尿病性網膜症,高血圧性網膜症,Coats氏病,Leber氏病(miliary angiomatosis ofthe retina)の部分症状として,しばしばみられる。これら続発性の輪状網膜症では,通例として輪状白斑の内部に毛細血管瘤で代表される網膜血管病変が存在することが眼底検査ならびに螢光眼底造影で確認され,しかも光疑固によりこれら異常血管を破壊することにより輪状白斑の消失をみることを比較的長期間観察できた4例について経験したので以下に報告する。

保存強膜層間移植法による網膜剥離手術経験例について

著者: 川畑隼夫 ,   勝目紀一

ページ範囲:P.833 - P.838

I.緒言
 網膜剥離に対するScleral bucklingの材料として従来合成樹脂が多く用いられてきたが,これらの材料は硬軟いずれの素材であつても,時として異物としての反応を起こしたり,結膜下や眼球内へ脱落することがあり,網膜の復位は良くても最終的には抜去しなければならないという欠点があつた。そこで最近は,同化あるいは吸収性の材料,特に人体組織の利用が注目されるようになつた。
 1961年Paufiqueは裂孔部の強膜層間にポケットを作り,人眼強膜をその中に挿入する方法を発表した。その後,欧米においては,網膜剥離に人眼強膜を用いる数種の手術法や,それらの結果が報告されるようになつた。しかし本邦においては浅山教授らや武田氏のほか報告をみない。われわれはけPaufiqueの原法に従い,網膜剥離4例に保存人眼強膜を用いた手術を行なつたが,かなりの成績を得た。またこれと同時に,移植強膜片の母眼に対する反応を調べる目的で,家兎を用いてPaufiqueの手術方法で同種保存強膜移植を行なつた。さらに人眼に対する異種強膜移植の可能性を調べる予備実験として,家兎に対して犬眼保存強膜移植を行ない,組織学的検索を加えた。今回はこれらの成績について発表する。

眼症状を呈したアミノ酸代謝障害—CystinosisおよびHomocystinuriaの各1例

著者: 松本和夫 ,   浜井保名

ページ範囲:P.839 - P.845

I.緒言
 最近,臨床生化学の進歩に伴い,先天性代謝異常の研究は長足の発展がみられる。
 眼科領域でも,従来,原因不明とされてきたある種の疾患について,その疾患の本態,あるいはその原因の解明のために,臨床生化学的検索は不可欠の手段として大いに注目されるようになつた。われわれは最近,全身症状に加えて,眼症状を呈したアミノ酸代謝障害によると考えられるCystinosisおよびHomocystinuriaの各1例に遭遇したが,これら症例の詳細な生化学的検討を行ない,診断を確定したのでここに報告し,特にこれら疾患に対する生化学的検査の重要性をあらためて喚起したい。

涙嚢篩骨洞吻合術の遠隔調査成績

著者: 山本一喜 ,   徳永次彦 ,   井上浩彦 ,   福崎隆

ページ範囲:P.847 - P.852

I.緒言
 涙嚢鼻腔吻合術に対比するに足る涙嚢篩骨洞吻合術は,当時長崎大学耳鼻咽喉科教授であつた後藤敏郎氏によつて考察されて以来1)〜3)17年経過したが,ようやく眼科医の間にも普及の傾向にある術式である4)〜10)。すぐれた着想であるこの術式を検討するため,今回われわれは16名18例について長期遠隔成績を調査したのでその結果を報告し考察を試みたい。
 症例はいずれも長崎大学医学部附属病院眼科およびその関連病院において手術が行なわれたもので,術式は後藤の原法および若干の変法が用いられた。

先天性色覚異常における遺伝的保因者の色覚に関する研究(第5報)—中心窩の明度識別閾値と2色閾値法の応用

著者: 馬嶋昭生

ページ範囲:P.853 - P.860

I.序
 色覚異常の遺伝的保因者の特性に関する研究として,試作heterochromic flickerphotometerによる第1および第2異常保因者の視感度の測定1)2),色相配列検査3),試作器による彩度識別能検査4),第1異常保因者の網膜各部の明度識別閾値測定(予報)5)を行ない,第1異常保因者に関してはある程度の特性を知ることができた。しかし,第1異常保因者をすべて発見することはなお不可能であり,第2異常のそれについてはほとんど手がかりが得られていない。
 網膜各部の明度識別閾値についてさらに追究する前に,今回は中心窩のみについての明度識別閾値の測定とStilesの2色閾値法(two-color threshold method)を応用して保因者のπ—mechanismについての検討を試みた。

結節性壊死性強膜炎の1例

著者: 小野弘子 ,   中島章 ,   沖坂重邦 ,   稲富誠

ページ範囲:P.861 - P.866

I.緒言
 強膜に穿孔を起こす疾患として,一般に強膜の外傷,ゴム腫,結核結節,ブドウ膜の腫瘍などがあげられるが.その他に強膜の変性疾患で,リウマチ性関節炎を合併し,その強膜病巣と考えられているものにScleromala—cia perforansがある。またこの疾患と同じカテゴリーに属するが臨床所見の相違で鑑別されている疾患にNodular necrotizing scleritisがある。これは非常にまれな疾患で諸外国でも報告が少なく,またわが国では過去に荻窪氏1)の報告をみるにすぎない。われわれは最近,治療に手をやいた稀有な強膜疾患に遭遇した。その臨床像に,いわゆるNodular necrotizing scleritisの病像に一致する点があるので,その疾患の1例としてここに報告する。

角膜潰瘍に対する結膜弁被覆法の効果について

著者: 早川正明 ,   三島済一

ページ範囲:P.867 - P.872

I.緒言
 角膜周辺部の裂傷,潰瘍などに対する結膜弁被覆法は古くから用いられ,成書にも記載されている。角膜中央部の難治な潰瘍に対してGunderson1)は新しい結膜弁被覆法を考案してこれを応用し有効であることを報告した。最近IDUに抵抗する難治なヘルペス性潰瘍が増加する傾向にある。わが国においてもこのようなヘルペス性潰瘍に対し結膜弁被覆法が有効であることが2,3の人2)3)により記載された。しかしながら詳しい術式や系統的な臨床成績の報告はいまだ見られない。われわれは難治なヘルペス性潰瘍,神経麻痺性角膜炎,匐行性角膜潰瘍などに対しGundersonの方法をやや改変して結膜弁被覆法を行ない,非常に有効な成績を得た。
 結膜弁被覆法がなぜ有効であるかという機序についてはいまだ十分に理解されていないようである。角膜は無血管組織であるため角膜中央部における遊走細胞や高分子蛋白質,特に抗体はすべて輪部血管に依存しているため中央部においてはこれらの濃度が低いことが生理的に知られている。したがつて角膜中央部は組織を透明に保つために防御反応を犠牲にしていると考えられる。結膜弁被覆法が角膜中央部の潰瘍に対する遊走細胞や蛋白質の浸入に対しどのような影響を持つかということをウサギを用いて実験し,結膜弁によつて被覆された角膜に遊走細胞や蛋白質が速やかに到達することを知ることができた。

Center-Off-VERについて

著者: 横山実 ,   米倉欣彦

ページ範囲:P.873 - P.877

I.緒言
 VERは,主として網膜黄斑部に関連する視路の諸ニウロンの活動状態を反映する電気現象である。しかし,視野中心部における機能障害をより精細に検出するには,単に面積の大きな散光刺激を行なうだけでは不十分で,視標の大きさや形に種々の工夫がなされている。微小光刺激を用いるのも一つの方法であるが,この揚合,VERの早期波が全般に減弱し,波形にも変化をきたして,従来の成績との比較に困難を感じたり,適応例の範囲が減少する不便がある。
 現在までに多くの研究者によつて検討されてきたVERには,要素電位はともかくとして,一応,それを構成する成分波が存在し,一定の時間関係を有することが知られている。その中で,固視あるいは注視などの中心部機能と最も密接な関連性を有するのはどの部分であろうか,という疑問を解明する目的で,われわれは,比較的大きな白色視標の中央に,小さな円形の遮光部分を作り,どのような効果が現われるかを観察した。結果は予期以上に興味深く,VERの最初の陰性波の先端部に,かなり選択的な振幅の縮小を認めた。そのようなVERを,現在,Center-Off-VERと仮称しているが,今までに得られた観察の結果を簡単にまとめて報告しておく。

角膜潰瘍の成因と治療

著者: 糸井素一

ページ範囲:P.879 - P.882

I.はじめに
 角膜実質の潰瘍は,あとに不正乱視とか角膜の混濁を残すから,潰瘍の発生を起こさないように注意しなければならない。もし不幸にして潰瘍ができた場合は,その進行をできるだけ早い時期に止めることが必要である。しかし残念なことに,今までは角膜の潰瘍の発生予防,あるいは進行防止には完全な方法はなく,いまでも相当の数の患者が潰瘍のために視力を失つている。
 実質の潰瘍に共通の症状は,実質の破壊である。角膜の実質は,コラーゲン線維で構造を保つており,実質の破壊はとりもなおさず,コラーゲン線維の破壊を意味している。コラーゲンは非常に丈夫な蛋白で,生理的なpHではコラーゲナーゼ以外のいかなる酵素にも侵されない。だから,実質潰瘍の場合のコラーゲンの破壊は,コラーゲナーゼによつておこると推定するのがむしろ自然である,コラーゲナーゼは大きく分けると,Clostri—dium hystoliticumから作られる細菌性のコラーゲナーゼと,オタマジャクシの尾ではじめて発見され1),その後皮膚2),子宮3),歯肉4)5)滑液膜6)7)などでも検出された動物性のコラーゲナーゼの二つがある。角膜にはいろいろの原因による実質潰瘍があるが,Clostridiumを証明できないのが普通である。言葉をかえていえば,細菌性のコラゲナーゼで角膜潰瘍の成立を説明できない。

螢光眼底撮影法による循環時間の検討I

著者: 真鍋礼三 ,   尾辻孟 ,   別所建夫

ページ範囲:P.883 - P.887

I.緒言
 高血圧症,糖尿病などの全身循環障害を伴う疾患において,眼底の検眼鏡的所見は病態病期の判定に利用され,Keith-Wagener, Scottなどの形態的変化による分類が臨床的に応用されている。またNovotonyらによる螢光眼底撮影法の開発は,より精細な形態的変化の観察および機能的変化の観察を臨床的に容易なものとし,これまで多くの新しい事実が発表されてきている。
 しかしながら,これまで観察されてきている多くの所見は形態的変化についてのものであり,血流動態そのものに関する報告は少ない。そのかぎりにおいて眼底の観察は一次元的なものであり,時間的因子を加味した動的な網膜循環動態の観察方法の開発が必要である。螢光眼底法は血流を螢光色素の流れとして観察が可能であり,色素の血管内を流れる様相より,これをstage別にとらえることも可能である。それゆえに本法は時間的因子を加味した二次元的観察の可能性を有しているといえる。

網膜,脈絡膜循環障害とKallikrein,Kinin等の動態

著者: 宮永嘉隆

ページ範囲:P.890 - P.898

I.はじめに
 生体の炎症反応あるいはallergy反応時に,Bradyki—ninをはじめとする生体活性Kinin類が,他の起炎物質,Chemical mediatorなどとともに重要な役割を果しているであろう事実は,すでに多くの研究が実証しているところである1)2)。なかでもBradykininは他の物質に比して,毛細血管透過性亢進作用,末梢血管拡張作用(静脈側の収縮による)がきわめて強く,臨床的にも多くのallergy疾患,炎症性疾患にその増量活性化が認められ,抗Bradykinin剤が治療面で大きな効果をあげている事実がある3)4)。こういった意味で眼科領域においてもKinin物質の関与しているであろう疾患を多く想定できるし,とりわけ血管系に富む脈絡膜,網膜の循環障害による疾患にはKinin系物質がその一大原因となつているとも考えられる。そこで今回,私は各種眼疾患における血中Kallikrein,Bradykinin系物質の測定を試み,特に網膜,脈絡膜循環障害を原因をする疾患をとりあげ,その患者血中Kallikrein, Bradykininの動態を検討し,あわせて抗キニン剤の効果を研明するとともに黒ウサギを使用し,その脈絡膜,網膜に及ぼすKallikrein, Bradykininの直接効果を検討し,いささかの成績を得たので報告する。

連載 眼科図譜・151

バセドー氏病眼の自然脱臼

著者: 井上洋一 ,   井上トヨ子

ページ範囲:P.795 - P.796

解説
 バセドー氏病のさい,眼球突出が脱臼状態へ移行することは古くから知られているが,実際にはそれほど多いものではない。
 症例は35歳,女性。数年来バセドー氏病のために専門医師の管理下にあり治療を受けていた。睫毛内反があり,時々眼科医にみてもらつていたという。

銀海余滴

学会の功罪

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.866 - P.866

 5月の日本眼科学会総会も平静に終了したが,学会によつては2,3年来「総会不要」を唱える青年医師に演壇を占領され,混乱に終始したものもある。

わたしの意見

眼科の将来

著者: 清水昊幸

ページ範囲:P.904 - P.905

眼科の当面しているこんにちの問題
 1年半ほど前,現在の病院に赴任する折に,種々不足の設備備品などを補充するよう院長に交渉したのであるが,眼科になぜそれほど多額の設備投資が必要なのかを理解させるのに,非常に苦労した。
 参考までに,私の要求した設備備品の内容をあげてみると,光凝固装置,手術用顕微鏡,フォトスリット,細隙灯顕微鏡(アプラネーション眼圧計,三面鏡・隅角鏡セット,前眼部撮影装置付),電気眼圧計,ERGスコープ,双眼倒像眼底鏡(ファイソン・スコープ),ボンノスコープ,冷凍手術機械,自覚検眼器,メニスカス・レンズ・セット,手持眼底カメラおよびメス・ハサミの類を手術法別にセットにしたもの40組ほどで,総計1500万円前後であつた。オフタルモメーター,レフラクトメーター,眼底カメラ,量的視野計は,既存のものがあつたので,それを使用することにした。さらに欲をいえば,EMGの装置や斜視弱視の訓練用機械器具なども欲しかつたが,とてもそこまで手がまわらなかつたし,また,私自身の考えで,都内では各病院がそれぞれある程度特色を出して専門化すべきだと思つていたので,自分の目差す老人性眼疾患を中心に設備を整えることとし,これらのものは割愛したのであつた。

臨床実験

特発性破嚢により眼圧急性上昇をきたしたSteroid Cataractaの1例

著者: 岩田和雄 ,   新保信夫 ,   藤井青

ページ範囲:P.909 - P.912

I.緒言
 1960年Blackらは長期間副腎皮質ホルモンの全身投与を行なつたリウマチ性関節炎患者に,高率に後嚢下白内障が発生することを記載した。以来,ステロイド白内障はいわゆる医原性疾患の一つとして注目されている。
 ステロイド白内障は通常後嚢下に限局し,一般に急速に進行することはなく,比較的良好な視力を保持するものが多い。

インテバン・スパンスール・カプセル

著者: 山田昌一 ,   間世田博之 ,   東野巌 ,   北野周作

ページ範囲:P.913 - P.914

I.緒言
 非ステロイド系抗炎症剤であるIndo—methacin (商品名インテバン)の眼科領域における応用については,先に報告1)を行なつたが,手術後の刺激症状に対して82%,炎症性眼疾患に対し67%の有効率が得られている。
 副作用としては85例中,9例に頭重,頭痛,めまい,胃部不快感,食欲不振などが認められたが,いずれも軽度で投薬中止により消失した。

Ampicloxの眼科的応用

著者: 三国政吉 ,   大石正夫 ,   周田茂雄 ,   今井正雄 ,   高橋篁子

ページ範囲:P.917 - P.924

I.緒言
 Ampicloxは,広域性PCであるAminobenzyl PC(AB-PC)と,Penicillinaseに安定なMethylchloro—phenylisoxazolyl PC (MCI-PC)を1:1の割合に等量配合した合剤である。
 両剤の組合せにより,抗菌スペクトルの拡大,抗菌力の増強が期待され,in vitro, in vivoにおいて相乗作用が認められている。また合剤による毒性の増強はみられず,ほかの抗生剤に比べて安全性の高い製剤である。

第23回日本臨床眼科学会 GROUP DISCUSSION

高血圧・眼底血圧

ページ範囲:P.927 - P.933

I.医学部学生の眼底所見検査
○落合淳郎・宮本吉郎・国友 昇(日大)
 20歳代の正常血圧者の眼底検査をして,これからいろいろな高血圧症による変化をおこしてくる者に対して,スタンダードの眼底所見を得ようとした。日大医学部学生362名について眼底検査を行ない,そのうち121名は眼底写真をとつた。そしてA/V比,狭細,口径不同,反射,迂曲,動静脈交叉,分岐部などについて検討した。その結果A/V比については写真による判定がよく,狭細,口径不同は乳頭付近では判定に慎重を要し,反射は写真だけで判定する場合には誤りを犯す危険率が高く,正常血圧者には動静脈交叉の異常は出現しにくいことを知つた。
 新井1)若年正常血圧者の眼底写真上の口径不同が直像鏡検査でみとめられなかつた点につき,中等度以上(Scheie分類2度以上)の所見でもそのようなことがありましたかどうか。さらにその付近の網膜や血柱反射の増強によつて口径不同の判定が影響されることが知られておりますが,今回の写真判定でその点はいかがでしたか。

神経眼科(第7回)

ページ範囲:P.935 - P.938

 「神経眼科研究会」も回を重ねて第7回となつた。昭和44年10月26日,岐阜大学清水新一教授の主催で第23回臨床眼科学会がにぎやかに展開されたが,その前日,25日の午前午後にわたつて19のグループディスカッション(G.D.)が行なわれ,その一つとして商工会議所大ホールを会場として,100名に余る同好学者の参会を得て,私どものG.D.も4時間12題の講演討議が行なわれた。
 元来,日本臨床眼科学会は日眼と異なり,内容が固苦しくなく,臨床に直結した諸問題が多くとり扱われることにより広く大学人だけでなく,勤務医にも,一般開業医にも絶大な人気があるが,ことにG.D.は,各自が「特に興味をもつ方向に問題を集中して」少人数で,自由に懇話会風に知識の交換を計り得る便宜から,年々盛大になるとともに,細分化されて,ますます人気が溢れてきた。ただし惜しいことに,本年度は19のG.D.が10の会場で,午前,午後に分かれて同時に行なわれたため,気の多い人でなくても聞きたいものが3カ所にも4カ所にも重なつて,なにかを主催し,世話を引き受けた人には,ほかのものは一切拝聴できない始末となつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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