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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科24巻6号

1970年06月発行

文献概要

特集 第23回日本臨床眼科学会講演集(その6)

角膜潰瘍の成因と治療

著者: 糸井素一1

所属機関: 1順天堂大学医学部眼科

ページ範囲:P.879 - P.882

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I.はじめに
 角膜実質の潰瘍は,あとに不正乱視とか角膜の混濁を残すから,潰瘍の発生を起こさないように注意しなければならない。もし不幸にして潰瘍ができた場合は,その進行をできるだけ早い時期に止めることが必要である。しかし残念なことに,今までは角膜の潰瘍の発生予防,あるいは進行防止には完全な方法はなく,いまでも相当の数の患者が潰瘍のために視力を失つている。
 実質の潰瘍に共通の症状は,実質の破壊である。角膜の実質は,コラーゲン線維で構造を保つており,実質の破壊はとりもなおさず,コラーゲン線維の破壊を意味している。コラーゲンは非常に丈夫な蛋白で,生理的なpHではコラーゲナーゼ以外のいかなる酵素にも侵されない。だから,実質潰瘍の場合のコラーゲンの破壊は,コラーゲナーゼによつておこると推定するのがむしろ自然である,コラーゲナーゼは大きく分けると,Clostri—dium hystoliticumから作られる細菌性のコラーゲナーゼと,オタマジャクシの尾ではじめて発見され1),その後皮膚2),子宮3),歯肉4)5)滑液膜6)7)などでも検出された動物性のコラーゲナーゼの二つがある。角膜にはいろいろの原因による実質潰瘍があるが,Clostridiumを証明できないのが普通である。言葉をかえていえば,細菌性のコラゲナーゼで角膜潰瘍の成立を説明できない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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