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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科24巻7号

1970年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・152

弾力線維性仮性黄色腫にみられた梨子地眼底

著者: 松井瑞夫

ページ範囲:P.951 - P.952

〔解説〕
 弾力線維性仮性黄色腫Pseudoxanthoma elasticumに網膜色素線条retinal angioid streaksがみられることは広く知られているが,近時色素線条と一緒に,あるいはこれとは無関係に,網膜にびまん性の顆粒状の色素変化が出現することが注目されるようになつてきた。本邦においては,清水がこの所見について詳しく論じ,梨子地眼底とよぶことを提唱している。そして,清水は,Klienの病理組織学的検索などを参照にし,本病変は,硝子膜の肥厚変性,色素上皮内の色素の移動が原因となつて起こるものと考えられ,また,本病変が弾力線維性黄色腫患者の唯一の眼底病変であることがあり,診断的,病因論的に色素線条と同等の値価を持つものであること,色素線条出現以前の,比較的初期に属する変化であることなどを明らかにした。欧米では,この病変は,mottled fundus, pigment stippling, peudo d'orangefundusなどとよばれている。
 今回の症例は,24歳の男性であり,頸部腋窩などにやや黄色調を帯びた線状配列をとる皮疹に気づき,駿河台日大病院皮膚科を訪れ,弾力線維性仮性黄色腫と診断され,眼底検査の目的で,われわれの眼科外来を訪れたものである。家族歴,既往歴にも特記すべきものなく,視力は両眼とも1.5で眼鏡不応であつた。

臨床実験

高血圧患者における眼底血管の態様について(I)—血管分岐形態について

著者: 北田元幸

ページ範囲:P.953 - P.959

I.緒言
 高血圧患者における眼底の動脈,静脈の諸変化の判定については,1939年にKeith-Wagener,Barkerによつて分類された眼底所見が,またこのKeith-Wagenerの分類をさらに高血圧性変化と動脈硬化性変化とに分けて分類したScheieの分類をはじめとして,その他これらを基本とする種々の変法,たとえばKeith-Wagener—慶大変法などが見られ,その多くは網膜血管の動脈ないし静脈の交叉現象,血管口径の広狭,Throm—bose, Embolie,網膜白斑,その出血程度,先細り(Tapering),Gunn現象,Guist現象,Salus交叉弓,乗り越え現象(Humping),塞き止め(Banking),Atherom斑,血柱反射,うつ血乳頭,銅線,銀線動脈,ねじれ(kink),平行Gunn現象,反射の拡大,動,静脈瘤の状態などを主体として成立しており,それらの出現度によつで種々の程度表が作成されており,国際的に共通な基準として用いられているのが通例であることは周知のことである。

高度遠視眼にみられる眼底異常,ことに乳頭黄斑間網膜襞について

著者: 植村恭夫 ,   森実秀子

ページ範囲:P.961 - P.965

I.緒言
 小児の高度遠視は,発育異常の一つとして取り扱われており,十分なる矯正視力が得られないことから弱視とされているものが多い。
 高度遠視の中には,ブドウ膜コロボーム,小眼球,小角膜などの明らかな先天異常を示すものがあるが,これらはそれら先天異常を主体として取り扱われている。著者らは,従来から視力不良な小児にみられる眼底変化に関する研究を続けてきたが,今回は,+10D以上の高度の遠視を有する小児にみられる特有な眼底変化について報告することとする。

閃輝暗点症に対する一治療法

著者: 石川明

ページ範囲:P.967 - P.971

I.緒言
 閃輝暗点症は必ずしも数多い疾患ではない。昭和43年度における東電病院眼科外来患者の統計では新患者総数3116名のうち,わずか14名を数えるにすぎない。しかしながら閃輝暗点症はその特異な症状がきわめて印象的である。すなわち前駆症についで,突然起こる視野内の一過性の星芒状の閃輝,あるいは非定型的な閃輝的ちらつきと視野の欠損を自覚し,ついで頭重,頭痛,あるいは眩暈,嘔気,嘔吐,全身の倦怠感を伴い,その後しばしば同様の症状をくり返すことによつて,患者にかなりの苦痛と不安を与える疾患である。事実,忙しい生活に追われ,多くの仕事を抱えて,日々これを処理せねばならない勤務者や,入試などのために,連日,猛勉を夜遅くまで続けねばならない受験生が,くり返すこの発作のために悩まされ,われわれを訪れた時,一日も早くこの苦痛から解放させようと心を悩ます者は,おそらく著者一人だけではあるまい。「よく眠りなさい」とか「少し仕事をやめなさい」という言葉はなんら患者の現実的な悩みの解決にはならないのである。著者の経験では,この疾患はむしろ都会生活者に多く,高年者より若年者に,肉体労動者より頭脳勤労者に,高血圧患者よりも血圧正常か,低血圧傾向の人々,性格的には神経質で几張面,内省的で責任感の強い性格の持主に多いようである。成書によればこの疾患の原因は,脳の皮質,あるいは,皮質下における脳障害によつて起こるものである。

Steroid Glaucoma経過例の遠隔期における諸検査の様態

著者: 大橋武昭 ,   三宅謙作 ,   平田国夫

ページ範囲:P.973 - P.976

I.緒言
 Cortico-steroid点眼,内服などにより高眼圧をきたすことは広く知られてきた。米国学派の一部のごとく,これをProvocationに利用する者もいる1)が,わが国ではいまだ一般化するには至らない。以前に高眼圧をきたし,これが確実にステロイド点眼によると思われる症例について,それらの遠隔期における各種緑内障検査の様態を検討し,逆にステロイド点眼の誘発試験としての意義にも考察をすすめたい。

手術

Fiber Light Diathermyによる網膜裂孔閉鎖術

著者: 松原忠久 ,   水野勝義

ページ範囲:P.977 - P.982

I.緒言
 近年各種fiber scopeをはじめとするfiberopticsの医学面への応用が盛んになつてきた。これは普通の光学系とは異なつて,光が曲がる,冷たい,明るいなどの特性をそなえている。眼科領域においては,Worst1),Cardona2)などはgoniotomy lensにglass fiberによる照明を組みこんだ新しいtypeのgonio-lensを発表している。またAmoils3)はgoniotomy knifeの方にglass fiberを組み合わせたself illumi—nating goniotomy knifeや硝子体内に脱臼した水晶体を取り出すためのself illuminating in—travitreous cryoprobeを開発した。著者はop—tical fiberを集束成型して作つたlight guideを用いて,その中心部にジアテルミー電極を組みこみ強膜外よりtrans-illuminationを行ないながら網膜剥離の手術を行なう器具を試作した。

第23回臨床眼科学会原著

網膜剥離症と赤道部変性症における螢光眼底血管造影所見(予報)

著者: 佐藤清祐 ,   綱川典子 ,   稲葉光治

ページ範囲:P.983 - P.989

I.緒言
 網膜剥離症に関する螢光眼底造影の報告は他の眼底疾患に比しきわめて少なく,またあまり特異な所見も報告されておらず1)〜3),わずかにRosen4)がいくつかの注目すべき所見を報告しているのみである。
 われわれは網膜剥離症において,特に裂孔部付近を目標に螢光眼底造影を行ない,また網膜剥離症の前段階であるところの赤道部変性症についても螢光眼底造影を行ない,それぞれにきわめて興味ある所見を得たので報告する。この両者の総合的な検討によつて赤道部変性症の進行,ひいては網膜剥離発症の機序について重要な示唆が与えられたと考えられるので,それについてもいささかの私見を述べる。

わたしの意見

眼科医の近代化とは(その2)

著者: 井上洋一

ページ範囲:P.994 - P.995

近代化への道
 私は,近代化というものは,日常の診療または研究の中から生まれてくるものであり,改善または改革せずにはおれない意欲を動機として展開されてくるものと考えている。したがつて新しい器械が備えられ,診療室を近代的に装備することで完成されるものではなくて,医師の良識と職業倫理によつて定められるものであると考えている。具体的に実際的に話をすすめるために,先般本誌に掲載された「日本の眼科の将来」をとりあげてみる。いろいろ建設的な意見が述べられているなかで,大学の指導者が開業医に批判的なことはわかるが,これらの開業医を育てた医局自体に反省のないことはいささか気になる。また,改革の方法として,いわゆる古い先生方の再教育をとりあげているが,「洗眼」,「乙表にしがみつく」等々の事柄にしても,これを改革していくことは,封建的な医局を改革する以上にむずかしい問題ではなかろうか。
 私は,いわゆる古い先生方の改革は期待できないと思う。「20年,30年,トラコーマ治療として洗眼を続けてきて,いまさら新しい検査の勉強はできない」という先輩開業医の言葉は真実であり,聞くべきだと思う。したがつて,洗眼が眼科のすべてでないことを十分にわきまえたうえで,毎日の診療に従事し,自分の領域以外の異常を認めたならば,ただちに専門施設に紹介することを義務と認識してもらうことが大切ではないかと考える。

学会印象記 第74回日本眼科学会総会(I)

お勉強に終始した日眼総会

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.997 - P.1000

 学園粉争がだいぶ下火になつたこのごろでも,まだ学会が開かれなかつた科も,2,3あるだけに,今年の神戸での日本眼科学会総会にも多少の懸念はあつたが,まことに立派に,かつ平静に終了したことは慶賀の至りであつた。
 総会は5月15,16,17日の3日間,神戸大学井街教授主催の下に,同市の国際会館で行なわれたが,その前日に,新緑したたる六甲山頂のオリエンタルホテルで役員会(理事会,評議員会)が開かれ,日眼の諸計画が検討されたので,まずその内容について記すこととする。

第74回日本眼科学会総会 シンポジウム(宿題報告)

眼底所見による知見螢光眼底写真)

著者: 加藤謙

ページ範囲:P.1001 - P.1006

 第74回日本眼科学会(会長:神戸大学井街譲教授)のシンポジウム形式の宿題報告は,昭和45年5月17日(日曜日)午後2時より神戸市国際会館の大講堂で約4時間半にわたつて行なわれた。シンポジウムの主題は,表題のように螢光眼底写真による知見というもので,報告担当者は,京都府立医大の谷道之教授,日本大学医学部の松井端夫助教授および東京大学医学部の清水弘一講師の3名であり,筆者が座長をつとめた。主題は,現在広く関心をあつめているためか,2,000名収容の大講堂も一応満席に近い状況であつた。
 螢光眼底撮影法が北米で開発きれてから,本年は10年目にあたり,わが国に導入きれてから5年余を経た。この間本法は速やかにかつ広範に世界各国に普及し,すでに昨年(1969年)の5月には,フランス南部のAlviにおいて,第1回国際螢光眼底シンポジウムが開かれ,また本年3月には,北米Miamiにおいて,第2回国際シンポジウムが開かれて筆者も招待をうけ,これに参加した。今回のシンポジウムは,わが国におけるこの領域の最初のシンポジウムである。

第23回日本臨床眼科学会 GROUP DISCUSSION

眼感染症(第6回)

ページ範囲:P.1008 - P.1018

第1部 眼トキソプラスマ症
I.眼トキソプラスマ症の問題点
鬼木 信乃夫(九大) 眼トキソプラスマ性網脈絡膜炎について下記の問題点を提供した。
1)臨床像(1)先天感染が多い。(2)先天感染の再発にはhypersensitivityが関与している。(3) Rieger型中心性網脈絡膜炎と後天性眼トキソ症との関係をどうして実証するか。(4)眼ヒストプラスマ症との鑑別(眼ヒスト症のスライド供覧)。

角膜移植

ページ範囲:P.1019 - P.1023

I.角膜移植600例の検討(治療的角膜移植)
水川 孝・片野隆生・曲直部 恵造(阪大)
 昭和33〜44年10月まで阪大眼科で経験した605例の角膜移植の術式は,40年初期まではPlastic CAP法が大部分で40年以降は直接縫合法である。
 また直接縫合法による40年以降の透明治癒率は59%である。そのうちわけは円錐角膜100%,角膜変性84%,角膜ヘルペス68%,角膜片雲83%,角膜斑64%,角膜白斑44%,梅毒性角膜混濁55%,角膜移植後再手術19%などである。ただしこの中には光学的な目的以外に治療的角膜移植や種々の合併症を持つ症例を含んでいるので,これを考慮すれば角膜移植の成功率は80%以上の治癒率を得ている。次に治療的角膜移植の中で最近経験したヘルペス4例,匐行性角膜潰瘍1例,瞼球癒着1例について報告した。治療的角膜移植の場合,薬物療法とかみあわせて手術術式,時期を決定するのはなかなか困難な点であるが,症状によりすみやかに手術にふみきるべきで,病巣が比較的表層の場合表層移植も考えられる。また症例によっては光学的な意味より眼球保存消炎のため速刻角膜を必要とする時には長期保存角膜(たとえば冷凍保存)をおおいに活用すべきである。

銀海余滴

再びフルオレスチン診断液について

著者: 進藤晋一

ページ範囲:P.1018 - P.1018

 現代の眼科診断学上,フルオレスチン使用による螢光眼底撮影は一つのハイライトであろう。殊に立体写真を駆使しての病巣部位の判定,深さの確定などは,従来の,いかなる方法にもまさる診断法であろう。
 ところが,本誌24巻4号の515ページに書いたように,フルオレスチン診断液について,私のような小さな医院で開業しているものにとつては,はなはだ大きな不安がある。次の1例は私が最近経験して,びっくりし,あわてふためいた例であるからご参考までにあらましを書いて,とにかく,大学や研究機関が,もつと積極的にアドバイスをくださるよう希望したい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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