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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科24巻8号

1970年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・153

典型的な進行性糖尿病性網膜症の1例

著者: 福田雅俊 ,   井出健彦 ,   三木英司

ページ範囲:P.1045 - P.1046

〔解説〕
 Scott分類Ib型と呼ばれる進行性の強い糖尿病性網膜症は,従来わが国では比較的まれなものと考えられていたが,短時日で失明に至る危険率がきわめて高く,多くの専門医におそれられている。ここに報告する患者は26歳の女子で罹病期間7年の若年型糖尿病を持ち,当院初診までは未治療,増悪時までの血糖コントロールも不良であつた。次にその左眼の眼底病変の推移を時間をおつて供覧する。

座談会

国際眼科学会に出席して—日本眼科の将来を語る

著者: 桐沢長徳 ,   鹿野信一 ,   加藤謙 ,   戸塚清

ページ範囲:P.1047 - P.1055

はじめに
 司会(桐沢)きようはお忙しい先生方にわざわざここまでおいで願つて,ほんとうにありがとうございました。ご承知のように3月にメキシコで国際眼科学会が開かれて,皆さんがご出席になったわけでございますが,その学会の印象談であるとか,あるいはこれからの国際眼科学会に対する日本の行き方であるとか,またご存じのように次々回は日本で開催されることにほぼ決まつたという国際眼科学会というものについて,この機会にいろいろお感じになりましたことを伺わさせていただきたいと思います。
 なお私は,ずつと前に本誌に「国際眼科物語」というものを書きました。これは当時国際眼科というものに対する関心が一般に薄かつたので,それを少し刺激する意味で書いたのですが,残念ながら途中で尻切れトンボになりました。この機会に,近くこれを追加させていただきたいと思つております。

臨床実験

高血圧患者における眼底血管の態様について(II)—血圧左右差と眼底所見について

著者: 北田元幸

ページ範囲:P.1057 - P.1062

I.緒言
 前篇においては網膜血管分岐部のTu型分岐が正常血圧者においても血圧的,年齢的変動に応じてその数などにおいて変化をきたすのみならず高血圧患者においては,さらにそのTu型分岐が血圧的,年齢的変動に加えてKeith-Wagenerの分類などの中にも微妙な立場をとりつつ関連性を示すことなどについて論じ,有意義な結果を示したことを述べ,今後高血圧患者のKeith-Wage—nerの分類などの判定にこれらのTu型分岐をも加味して検討するのが意義があると思われる点などについて述べたが,さらに高血圧患者で両眼についてその眼底所見を検索していくと,両眼の侵襲程度が左右同程度のものももちろんあるが,必ずしも同程度でなく,1眼にはKeith-Wage—nerの分類やScheieの分類などにおいて第3群のごとき変化を示すものでも,他眼にはそれほど変化がなく,第1群とかあるいは全く高血圧性変化や細動脈性変化のない者などに遭遇することは,しばしばわれわれの経験するところである。かような場合にはいかに説明したら良いか,またその判定にはより変化のある方の1眼をもつて全身状態,ひいては予後を判定するか判断に苦しむ場合が少なくない(第1〜4図)。
 この両眼の不一致の現象をいかにみるかについて前項で述べたTóthはここでもまた,これら左右の所見の差について報告しているのを知る。

典型的な進行性糖尿病性網膜症(Scott Ib型)の1例

著者: 福田雅俊 ,   井手健彦 ,   三木英司

ページ範囲:P.1063 - P.1074

I.はじめに
 糖尿病性網膜症(以下網膜症と略)のなかには,比較的太い網膜血管系の異常—特に広範な血管新生—を主要病変とした進行性の強い一群があること8)11)が従来知られていた。Scott16)〜18)はこれをIbからVbに至る特別な1系列の病型と考えて,ほかの一般的な経過をとるものと区別することを提唱したが,この型のものは短時日のうちに失明に至る危険率のきわめて高いため,その治療的対策には,下垂体手術2)7)10)23)や網膜光凝固療法12)15)などの多くの苦慮が払われてきた。
 最近われわれはこのScott Ib型17)と判定し得る典型的な進行性網膜症を有する若年型糖尿病の1症例を経験し,全身療法の改善強化と網膜光凝固療法とにより,その進行を一応阻止し得たので,ここに報告したい。

HOD−27の眼精疲労に対する効果

著者: 土屋一

ページ範囲:P.1075 - P.1078

I.緒言
 眼精疲労Asthenopiaは1843年にSir Willi—am Mackenzieが命名した症候群で,視矇,流涙,頭痛を主徴とする。原因としては,眼自体の病気のほか,患者の内因的,外因的な環境条件があげられている。
 内因的,外因的に大いに左右される病気で著明なものに糖尿病がある。これは戦争が起こると少なくなる。逆に平和が続くと増加する。また,経済不況の時代では,脚気と夜盲症が,臨床家のカルテの一部を専有する。

周辺部輪状網膜剥離を伴つたブドウ膜炎

著者: 升田義次 ,   堀ヤエ子

ページ範囲:P.1081 - P.1085

I.緒言
 網膜剥離を伴うブドウ膜炎には,まず原田病がある。さらに,最近一つのentityとして認められつつある周辺性ブドウ膜炎もしばしば網膜剥離を伴うという。
 今度,両眼に網膜剥離を伴うブドウ膜炎で,原田病とは異なつたものであり,特に左眼の網膜剥離が特異な形の,いわゆる周辺部輪状網膜剥離を示す症例を経験したので報告する。そして,特に周辺性ブドウ膜炎との異同について論じてみたい。

手術

網膜剥離の簡便な冷凍固定術

著者: 宮田幹夫 ,   水野勝義

ページ範囲:P.1087 - P.1091

I.緒言
 網膜剥離への冷凍手術の応用は,その長所のため近年ますます盛んになり,冷凍手術器具は改良され,cryoprobeに徹照装置を装着した器具も開発されてきている1)。しかしいずれも価格の点で,一般に普及するにはなお問題があると思われる。
 われわれは,簡便な冷凍手術法として,ドライアイス片,およびドライアイス—アセトンを用いるペンシル型冷凍器による網膜固定術を検討した。予備実験として家免網膜を冷凍凝固し,ジアテルミー焼灼網膜と,組織学的に比較検討し,ついで特発性網膜剥離23例26眼に応用して好結果を得た。

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中南米の惡印象とその原因

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.1094 - P.1095

 3月中旬のメキシコでの国際眼科学会に出席したついでに,北米,ブラジル,アルゼンチン,ペルーを回つてきました。
 中南米は16年前にいつたことがあり,今度が2度目です。今回は1月たらずでサッと見た印象で,確かなことは言えませんが,中南米で苦しめられた印象を書きます。観察は上記のように確かではありませんが苦労したという印象は正直のところです。というのは私と妻は帰つてから20日ばかりになつても,毎晩2人とも中南米で苦労したという夢を見ました。外国へはなん度もいき,ヒマラヤ,アフリカの奥地など今度の南米より危険な所へもいつたのですが,このようなことはありませんでした。

第74回日本眼科学総会を終えて

著者: 井街譲

ページ範囲:P.1097 - P.1100

 5月15日から17日までの3日間,神戸の国際会館で行なわれた日眼総会は,お陰さまで誠に盛大に終始しました。
 この会は日本医学会の各分科会の中では,内科学会についで,古い歴史をもつております。日本眼科医会の方は開業の方が多く,会員が4,500人といわれておりますが,眼科学会の方は現在会員数3,450人です。これは昨年より227名増で,全国46医科大学平均して5人宛の割で会員が増えた形といえます。ところでこのたびの総会にはちようどその半数以上が参加されたことになり,正式に会場費を払つている人が1,500人弱で,このほか県下眼科医会の会員と名誉会員評議員などを,特に会長招待しましたので,これを加えると300人以上になるので,第3日の特別講演,宿題の時などさしもの大会場も一杯になりました。従来のどの会より多数の参会を得られたものと思われます。年々盛大になつていますことを心から嬉しく思います。

学会印象記 第74回日本眼科学会総会 桑原教授特別講演

有核白内障の吸引法について

著者: 大熊篤二

ページ範囲:P.1101 - P.1103

 慶応大学桑原安治教授の特別講演は,学会第3日5月17日の午前10時から,大塚任教授の座長で催された。演題は「有核白内障の吸引法について」である。これは桑原教授が長年行なってこられた若年者の無核白内障(軟性白内障)に対する吸引療法の経験に基づいて,この吸引法を老人の有核白内障(硬性白内障)にも適用し,術後管理を安全容易にして,患者を白内障手術後の安静の苦痛から解放するために,約10年来続けてこられた研究の成果を集大成して紹介されたものである。
 講演は研究目的に関する緒言のあと,白内障の吸引法の歴史が述べられたが,その中で馬嶋流の白内障吸引針の写真がスライドで示されたのは,わが国においても古くから無核白内障の吸引法が用いられていたことを知つて興味を引いた。有核白内障に吸引法を適用するためには,固形の水晶体核を吸引可能な細片に破砕しなければならない。この水晶体核破砕法には,まず機械的方法や化学的方法が考えられるが,これらの方法では実用に供し得る成績が得られなかったので,超音波による破砕が試みられるようになつたという。

銀海余滴

眼科の魅力

著者: 宇山安夫

ページ範囲:P.1103 - P.1103

 ある日,地方の医学部を卒業したばかりの知人の娘さんが,その母親に伴われて私を訪ねてきた。多分婚期にある娘の親として,一応私にも紹介しておこうというのであろうか,それとも,さしあたり今後専攻する科をなににしたらよいかを相談にでもきたのであろうと思つて,心よく会つた。
 来意は果して私の想像したとおりであつた。そこで私は「なに科を選びたいご希望ですか」と卒直に訊ねてみた。すると「まだはつきり決めてはおりません」との答えであつたので,「眼科になさつてはいかがです。眼科というのは,あなたもご存知のように,学問的に大変面白い科であるし,仕事が健康的で女性の体力に適しているし,比較的手軽に開業することもできると思います」と,むしろ先方の決心を半ば確かめるぐらいの期待で話した。ところがこれは案外,「先生,とんでもないことです。眼科ほどつまらぬ科はないと私は思います」との思いがけない,半ば反抗的な答えが,即座にはね返つてきたのには,開いた口が塞がらないほど驚かされた。戦後の女性は強くなつたとよく言われるが,私がかつて大学の眼科の教師を長く勤めたことを百も承知で,私に向かつて「眼科ほどつまらぬ科はないと思います」とは,なんという暴言を吐くことかと思つたのであるが,なにも私は今いわゆるゲバ学生と問答しているわけではなし,眼科のつまらぬという理由を問い訊す必要もなかつた。

第23回日本臨床眼科学会 GROUP DISCUSSION

緑内障(第11回)

ページ範囲:P.1105 - P.1108

I.低眼圧緑内障
宿題報告 訳田 惇(熊大)
 視野や眼底に緑内障を思わせる所見があつても眼圧の高くない症例の存在は以前から注目され,多くの人々により種々の名称がつけられているが,その意味するところは必ずしも同じではない。私はかかる症例を,
 A群:眼圧の異常上昇が看過されるもの,すなわち,綿密な検査,経過観察により眼圧上昇のチェックできるもの。

弱視斜視

ページ範囲:P.1109 - P.1112

 弱視斜視グループディスカッションは昭和44年度秋季日本弱視斜視研究会総会として開催された。日本弱視斜視研究会では,従来は一つの主題を決め,それについて討論を行なつてきたが,これでは主題に関連のない研究者が発表の機会をもてないことになるので,今年度から春季総会は特定の主題について討論を,秋季総会は自由演題で一般講演を行なうことになつた。
 司会は,湖崎克博士(大阪市立小児保健センター)で,以下のように,一般講演10,特別講演1,招待講演1が行なわれた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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