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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科25巻11号

1971年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・169

緑膿菌の二次感染による予後不良な麦粒腫の2例

著者: 升田義次 ,   堀ヤヱ子

ページ範囲:P.2143 - P.2144

〔解説〕
 麦粒腫といえば,一般に予後の良好な疾患と考えられている。麦粒腫と診断が決まると医師も患者も一安心するのが普通であろう。しかし,ここに報告する2例は,一見単純な麦粒腫で始まつたが,良好な経過はとらずに,眼瞼の壊死脱落,角膜潰瘍,全眼球炎,眼窩蜂窠織炎といつた予想外の重篤な続発症状を惹起したのである。その理由は.普通の麦粒腫に緑膿菌が二次感染したためであるが,このような緑膿菌の二次感染にはくれぐれも注意を払うべきである(本文参照)。

臨床実験

緑膿菌の二次感染による予後不良な麦粒腫の2例

著者: 升田義次 ,   堀ヤヱ子

ページ範囲:P.2145 - P.2149

緒言
 麦粒腫といえば,抗生物質の出現以前はかなり重篤な合併症や続発症も稀には見られたようである1)が,現在では一般に予後の良好な疾患と考えられている。麦粒腫と診断が決まると医師も患者も一安心するのが普通であろう。
 しかし,ここに報告する2例は,一見単純な麦粒腫で始まつたが,緑膿菌の二次感染により良好な経過をとらずに,眼瞼の壊死脱落,角膜潰瘍,全眼球炎,眼窩蜂窠織炎といつた予想外の重篤な続発症状を惹起した例である。

人角膜移植免疫反応の組織所見

著者: 弓削経夫 ,   根来良夫 ,   島田信夫

ページ範囲:P.2151 - P.2155

緒言
 角膜移植は,すでに眼科臨床で次第に普遍的な手術の一つとなりつつあるが,その適応や予後の予測など,尚未解決の問題を多くかかえている。中でも移植角膜片の混濁には,大きな関心がよせられ,その原因の究明について,移植免疫反応に関する数多くの実験がなされており,臨床的にもそのように解釈し得る点が多くあるにも拘わらず,人においては,移植免疫反応であるという確証が得られることは稀で,特に病理組織学的には,移植免疫反応による所見を得られない報告が多くみられる。
 今回私達は,角膜移植後移植片が混濁したため再移植を行ない,その際得られた角膜片について,臨床的のみならず,病理組織学的にも移植免疫反応によるものと推測された2例と,臨床的には移植免疫反応と推測されたにも拘わらず,病理組織標本では何ら炎症性変化を示さなかつた1例について報告し,人の角膜移植においても,移植免疫反応の存在について改めて強調したい。

初発白内障の細隙灯所見に対するタチオン点眼の影響

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.2157 - P.2162

緒言
 近来老人白内障に対する点眼薬療法が種々行なわれているが(小口,神鳥等),特にタチオン薬の点眼療法が細隙灯所見に対してどのような影響を与えるかはほとんど記載がなく,僅かに最近の著者の第24回臨床眼科学会の特別講演,およびこれに関連する細隙灯的研究の発表(眼科誌)で触れた程度である。著者は1969年来タチオンの点眼をカタリン,ファコリン薬の点眼効果と比較して長期に亘つて観察してきているが,視力の効果に関しては従来記載を見るが,果して細隙灯的に見て如何なる効果を示すかは判定が極めて困難である。これは患者に数剤の点眼薬を投与指示した場合,家庭で果して医師の指示の通りに使用点眼しているか否かを正確に知る由のないためであつて,そのため従来その効果の判定は主として自覚的のみに墜する恐れがあつた。
 そこで今回著者は忠実に点眼を行なう患者のみについて,その初発老人白内障に対する視力的および細隙灯的の効果を比較し,のみならず他の白内障でも少数乍ら追加比較してみたのであるが,年齢は50〜90歳の間とした。

角膜の上皮再生に有効なキャベジン点眼

著者: 青池明

ページ範囲:P.2163 - P.2165

緒言
 角膜の上皮欠損は,眼痛,羞明,異物感,流涙など不快な症状をもたらすもので,これをなるべく早く上皮再生により治癒させることは眼科医のつとめである。しかし上皮欠損にも,角膜ヘルペス,角膜火傷3度のように難治なものもある。それらすべての場合に有効確実な点眼薬は眼科医の切望するところであるが,未だ市販されていない。筆者はかつてより,かかる例にキャベジンの結膜下注射が有効であることを確かめ,1961年眼臨55巻に発表した。最近より簡便な方法としてキャベジン注射液を点眼液として使用したところ,結膜下注射に劣らない効果を確認した。例数は多くないが,全例に例外なく著効であつた。ことに難治の角膜ヘルペス,角膜火傷3度にも著効を呈した。薬剤の入手も使用も容易で一般眼科臨床に普及すればまことに喜ばしい療法であると確信し,これを発表する。

眼窩及び頭蓋底静脈撮影

著者: 高久晃 ,   金山重明 ,   進藤健次郎 ,   鈴木二郎

ページ範囲:P.2167 - P.2179

緒言
 眼窩静脈撮影は眼窩内の血管腫など特異な疾患の診断に際して有効な方法とされてきた。また,その方法としては従来KrayenbühlのV.ang—ularis1)穿刺による方法が一般に試みられてきた。しかし,この方法の手技は必ずしも容易でなく,失敗すると内眥部に大きな血腫を作つたりするためか,敬遠されがちでもあつた。
 著者等はこのV.angularis穿刺による方法にかわり,前額部を縦走するV.supratrochlearis穿刺による方法を施行し,きわめて良好な造影効果を得ることができたので,1966年その最初の報告2)を行ない,また32例に実施した結果につき発表してきたが3)4),その後の文献ではわれわれの報告と相前後して1,2の報告5)6)で同一の方法を施行していることが判つた。しかし,これらの報告では単に眼窩内疾患の診断方法として有効であると述べているにすぎない。

新刊紹介

眼科検査法

ページ範囲:P.2165 - P.2165

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第3回日本医学教育学会に出席して—眼科の立場から

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.2184 - P.2185

 第3回日本医学教育学会は,1971年8月28,29の両日,東京虎ノ門の三会堂ビルの9階会議室で開かれた。あまり広くもない会場であつたが,会衆堂に満つるには至らず,50をこえたかと思われる大学医科,130にも達する臨床研修指定病院から平均1人ずつの出席者などとは,とても言えない状況であつた。牛場会長以下学会運営者の苦労を深く察し,熱意に敬意を表した次第である。この中で赤木さん,桐沢さんの2人の眼科の仲間を見出したことは,私の大きな悦びであつた。その桐沢さんといろいろと大学の現代の問題について語り合つていて,ついにこの原稿を約束させられてしまつた。赤木さんはこの学会の運営委員の1人で,岡山方式教育の経験者でもあり,大いに期待をもつ次第である。
 今回の学会ではつぎの五つの主題が設けられ,深い討論が重ねられた。

眼・光学学会

巨大乳頭の1例,特に眼底写真の倍率による診断について

著者: 三国政吉 ,   八百枝浩

ページ範囲:P.2187 - P.2192

緒言
 巨大乳頭Megalopapillaとは乳頭が正常の範囲を越えて,はるかに大きいものである。Fran—ceschetti (1950)により初めて報告されたもので,わが国では教室石井・山田(1951)の記載がある。
 Franceschettiの症例は25歳男子に現われたもので,眼底検査で甚しく大きくみえたものである。Goldmannのコンタクトレンズを用いてocularにmicrometerを装備し,細隙灯顕微鏡で眼底計測したところ,右眼乳頭径2.45mm,左眼2.11mmで正常乳頭100人における計測平均値1.6224±0.0152mmに対し甚しく大きい値であつたと報告している。盲斑も大きく,レ線による視束管撮影にて視束管も両側とも大きかつた。近視性乱視があつたが,視力はほぼ正常,色神には異常がなかつた。

大型眼底カメラ(第3報)

著者: 野寄達司 ,   馬場賢一 ,   加藤尚臣 ,   岡島弘和 ,   田尾森郎

ページ範囲:P.2193 - P.2197

 第2報にひきつづき新光学系を応用した45°広角眼底カメラの構成,その臨床成績等について述べる。

屈折異常処理の現状と今後のあり方

著者: 許秋木 ,   丸尾孝一郎

ページ範囲:P.2199 - P.2202

緒言
 屈折異常は眼科特有の疾患であるが,その消長は社会環境の影響を受けて頻度が高く,対象も広がり,国民生活に密接につながつた眼疾患となつている。この治療の基本は屈折異常の改善で,その方法は眼鏡,又はコンタクトレンズの使用であるが,対象数が多いため,安易に眼鏡処方してしまう事がある。我々は病院を受診した患者の屈折異常とその処理について検討をしたが,その結果と反省を述べてみたい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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