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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科25巻5号

1971年05月発行

雑誌目次

特集 第24回日本臨床眼科学会講演集 (その2)

網膜色素変性家系におけるVEP

著者: 三田洸二

ページ範囲:P.1335 - P.1356

緒言
 当教室の庄子1)及び今泉2)は,一次性網膜色素変性(以下色素変性)の本態を究明するためには,本症発病初期の網膜機能を適確に把握する必要性を強調し,その手段として,色素変性家系中の若年者を対象に,主としてERG及びEOGによる電気生理学的検索を行ない,本症家系中の無自覚家族の中に,特徴的な電気生理学的異常を示す者が,多数発見される事実を確かめた。
 一方,これまでにも,色素変性のEEG3)〜6),或はVEP7)〜15)には,non-specificな異常性の見出されることが報告されてはきたが,色素変性患者のみならず,本症家系中の家族,或は,明らかに伴性遺伝と推定される家系の保因者までも対象としたVEPに関する研究は,今泉2)が予報的に発表したものを除いて,著者の調査した範囲では全く見当たらない。

調節麻痺を起こさない持続的散瞳薬

著者: 三木敏夫 ,   松村香代子

ページ範囲:P.1357 - P.1361

緒言
 私達の病院薬剤部で調製された5%塩酸フェニレフリン溶液の中,散瞳力が強く,且つ,散瞳持続時間が長い一つのロットが発見された。他のロットのフェニレフリンをControlとして比較検査して見ると,散瞳最大値の各年齢層の平均値は7.4mmに達し,フェニレフリンの平均値6.2mmに比較して大きい値を示した(第1図)。
 又,散瞳持続時間も平均72時間に及び,フェニレフリンの平均5時間に比して非常に長くなつていた(第2図)。

学会原著

中心性網膜炎に関する心身医学的研究

著者: 森哲也

ページ範囲:P.1277 - P.1287

緒言
 中心性網膜炎(以下RCと略記)の原因については我が国では結核アレルギー説1)2)が,欧米では心身医学的な面よりの機能障害説3)〜6)がその主流をなしている。両者の異同7)8)については現在不明であるが,両者が近縁のもの9),或いは同一のもの10),との報告もみられ,Gass11)の報告をみても両者はほぼ一致するものの様に思われる。一方本邦の増田病についても加藤12),松井13)等は心身医学的調査を行ない,その発病に際し精神的因子が関係するらしいとし,本病を眼心身症として取り扱つている。今回私はCMI,MMPI,ロールシャッハテストを中心に精神身体医学的調査を行ない,心身症発生の素地として重要な意味をもつ神経症的パーソナリィティの有無,精神的ストレスとの関係等につき調査を行なつたのでその概要を報告する。

網膜中心静脈のソーセージ様拡張を示した全身性エリテマトーデス(SLE)

著者: 升田義次 ,   山田芳明 ,   堀ヤヱ子

ページ範囲:P.1289 - P.1294

緒言
 全身性エリテマトーデス(SLE)に眼底変化を伴うことを最初に報告したのはBergmeister(1929)1)である。その変化としては乳頭発赤,静脈怒張蛇行,乳頭周囲および黄斑部に散在する白斑を指摘している。我が国でも田野氏の報告(1949)2)を初めとしてかなりの報告3)〜15)がある。
 眼底変化は上述の如くに,乳頭の発赤,静脈の怒張蛇行,後極部の白斑の散在などであるが,そのなかでも静脈の怒張蛇行は,それがひどくなると念珠状あるいは一連のソーセージ様と表現されるような特異な所見となるといわれている。しかし,それを眼底写真で示したのは鹿野氏の報告12)以外には見当らないようである。

糖尿病性網膜症と光凝固術

著者: 石川清 ,   霜鳥政光 ,   忍足正之

ページ範囲:P.1295 - P.1304

緒言
 著者等はさきに糖尿病性綱膜症(以下単に網膜症と略)に対する光凝固術について述べるところがあつたが,その後症例もふえ,観察期間も1年以上を経過した症例もあり,さらに前回触れなかった術前後の視野及び螢光眼底像の変化,全身症状との関係並びに合併症についても,併せ述べたいと思う。

Zeiss-Zoom式手術顕微鏡の改造と従来の手術顕微鏡との比較

著者: 杉田慎一郎 ,   杉田雄一郎 ,   山田寿一 ,   山崎みきこ

ページ範囲:P.1305 - P.1310

はじめに
 著者の見聞の狭さかもしれないが,我国に於いて顕微鏡を用いてする手術法は,未だ比較的揺籃期にある様に思われるけれども,欧米諸国,特にアメリカでは最近数年間は前とは全く異なり,燎原の火の如き勢いを以つて広がつている1)。我国に於いても,近い将来にそういつた状態に成るのは自明のことであろう。十数年間この方法の良さを信じて絶えず顕微鏡を用いてきた著者にとつては,喜ばしい事である。最近,Zoom式光学系の登場によつて,其れは更に複雑な興味を呈する様になつた。然し,手術用顕微鏡は,例えZoom式光学系であつても,出来るだけ小型であり,恰もルーペの様に,眼の動くところに自由について行くことが出来,出来る限り広い視野と,同軸性及び斜の完全な照明,細隙灯顕微鏡に見られる様な細隙光の装置を持ち,術者と患者の眼の距離は,読書距離である300mmの距離である様なものが開発されれば,更に眼手術法は改良されて来る筈である。例えば,Smith2)に始まり,Kras—nov3)の執拗な数年に渉る探究,Harms4),Mac—kensen5)等の改良に依つて最近脚光を浴びて来たTrabculotomy,Sinusotomy等の緑内障手術の如き手術法等である。

リゾチームの眼科的応用

著者: 犬養恭四郎 ,   内山幸昌

ページ範囲:P.1312 - P.1323

緒言
 1922年Flemingに依り卵白から発見されたLysozyme (以下「リ」と略す)なる酵素は,その後,多くの研究に依り化学的生物学的性質が解明されるにつれ,又生体内に於ける存在意義が明らかになるに従い,各科領域の注目を集め,特に近年は発見当初の溶菌作用のみでなく,種々の薬理作用を有する事が判り,その臨床的応用に大きな期待が寄せられている。
 眼科領域に於いても,涙液中の「リ」含有量が生体中最も多い事に着目し,点眼薬として利用する試みが古くからあり,或程度の成果をあげている。今回我々は動物実験も行ない,人の各種眼疾患特に前眼部疾患に「リ」点眼薬として試用し,興味ある知見を得たので報告する。

先天性全色盲不全型の残存色感

著者: 飯沼巌 ,   近江栄美子 ,   前田裕子

ページ範囲:P.1325 - P.1333

緒言
 須知の如く,先天性全色盲は錐体一色型と杆体一色型に分類せられているが,後者は更に定型(typical)と不全型(atypical)に分けられている。共に杆体機能を主とするが,不全型には痕跡的な弁色能を残存していることが知られている。
 私共は最近この先天性全色盲不全型と考えられる2症例を経験したので,症例を追加報告すると共に,残存色感について私共の考えを述べ,御批判をあおぎたい。

Cyclic oculomotor spasmの3例—周期性眼筋痙攣弛緩現象

著者: 森実秀子 ,   植村恭夫

ページ範囲:P.1363 - P.1369

緒言
 著者らは,さきの第22回臨床眼科学会においてCyclic oculomotor spasm (Cyclic oculolnotorparalysis)の1例につき報告し,動眼神経支配下の筋群(殊に近見輻輳に関与する筋群)に一定の周期で痙攣と弛緩が,覚醒時,睡眠時を通して反復してみられる現象に対し,周期性眼筋痙攣弛緩現象なる名称を用いた。またこの現象は,生理的には,輻輳の皮質中枢から輻輳の持続刺激が発生し核付近の輻輳の中間中枢で制御されているものが,核付近の障害により閾値変動を起こし,周期性興奮が発現するため生ずるのではなかろうかという仮説をたてた。著者らは,その後3例の本現象を示す症例に遭遇し,発現年齢,臨床所見,特に周期や睡眠,麻酔による影響について各症例による差異を認めたので,これらについて報告するとともに,共通した所見としてその垂直性眼球運動障害に関し,若干の知見を得たのでここに報告する。

視覚誘発反応の頭皮上局在についての臨床診断的研究(Component mapping)について

著者: 筒井純 ,   井村ヤス子 ,   竹中純子 ,   深井小久子

ページ範囲:P.1371 - P.1376

緒言
 視覚誘発反応(VER)を頭皮上から記録するとき,異なる部位から得られるVERの波形,振幅,頂点時に差があることが知られているが,部位差についての診断学的な意味づけについてはほとんど考慮されていない。VERは新生児期には後頭部中央に限局して現われ,周囲からはほとんど出現しないが,成長と共に後頭部から広く頭頂,側頭にかけても反応が出現するようになると言われている。そしてこれは脳の皮質連合系の複雑な関連が次第に発達することによるものと考えられている(Weinmann,Creutzfeldt & Heyde1))。
 VERの頭皮上における局在を図に示す試みはRémond2)らによつてなされているが,これは頭皮上の一線上に配置した電極から得られたVERの+−の電位変化を経時的にその高低を表現する図に画いたものであつて,いわば経時的電位分布図Developing Potential mapでspatiotem—poral mapと呼ばれている。このmapでは頭皮上の一線上しか電位の変化が判らないので,私共はVERの主なcomponentについて頭皮上の分布状態を示すcomponent mappingとでもいう方式を試みた。

Leucocoriaに対する細胞診の経験

著者: 日谷博光 ,   木村徹

ページ範囲:P.1377 - P.1384

緒言
 小児のleucocoriaに遭遇した場合,まず念頭におかなければならないのは網膜芽細胞腫であろう。網膜芽細胞腫はその好発年齢と特異な臨床所見によつて,診断は比較的容易なことが多い。しかし他疾患が合併したり,眼所見がatypicalな場合,診断に苦慮した症例や,誤診を免がれなかつた症例の報告も決してまれではない1)〜4)
 1965年から1970年迄の5年間に,白色瞳孔ないし黒内障性猫眼を主訴として広大眼科を受診し,網膜芽細胞腫の臨床診断のもとに眼球摘出を受けた患者は14名14眼で(第1表),それらの摘出眼球を病理組織学的に検索した結果,網膜芽細胞腫を否定されたものが2眼あつた。

硝子体出血の超音波断層像

著者: 山本由記雄 ,   鏑木ふく代 ,   樋川豊子 ,   末野三八子

ページ範囲:P.1385 - P.1390

緒言
 硝子体出血の治療については,眼底所見が把握できる程度の出血量であれば,治療手技の選択に迷いはおこらないかもしれないが,眼底透見不能な程の大量な出血の場合,出血の停溜時間,対出血塊眼内炎性反応の有無など,その出血原因などと併せて,意外なくらい吸収が遅く,ために非吸収性の膜様変化をおこして,手術によらなければ,視力回復の時期を逸してしまう。また観血療法を逡巡して失明させてしまうことが多い。
 私どもは,超音波眼球断層に関して,General電機株式会社の援助の下に,LH 15MC,5φ, sector-scanによるSIMU (Scanned Intensity ModulatedUltrasonography)を完成し,発表してきたが,今回硝子体出血の断層像を調査し,その治療法に2,3の知見を得たので発表する。

前眼部疾患患者の結膜嚢内細菌叢,特に嫌気性菌について

著者: 松浦宏允

ページ範囲:P.1391 - P.1396

緒言
 私は先に健康人結膜嚢内に嫌気性菌と好気性菌とがほぼ同菌数で共存,常在していることを明らかにし1),またこれら一部は結膜炎,涙嚢炎,睫毛眼瞼縁炎,麦粒腫など眼科領域感染症の起炎菌にもなりうるであろうと推定した2)
 ところで,嫌気性菌が前眼部感染症と因果関係にあると考えられる症例はClostridium perfrin—gensによる原発性の結膜炎(Henkind, P.&Fedukowicz,H.3)),Clostridium tetani による角膜潰瘍(Tsutsui4)),穿孔性眼外傷に続いて発症したClostridium perfringensによる慢性涙嚢炎(Beneditti5))などが報告されているにすぎない。このように少ない理由は嫌気性菌の検索が好気性菌の検索に比べて困難であることと,何か発症せしめ難い条件があるためかと思われる。

Behçet病治療法の検討—その3免疫抑制剤

著者: 青木功喜 ,   藤岡憲三 ,   斎藤一宇

ページ範囲:P.1397 - P.1403

緒言
 Behçet病の治療の確立の道は厳しく,むずかしい。我々は免疫的変調がこの病の発症機構に関与しているという考えから,ここ数年この問題に取り組んできている。即ち,脾臓へのレントゲン照射1)2),胸腺剔出3),副腎ステロイドホルモンの検討1)等免疫反応の抑制という療法を行ない,問題点を再検討しつつ,今回の発表になつた。臨床医学は常に基礎医学,生物学等の自然科学の進歩に負うところが多いが,臨床医学の問題は臨床,即ち治療するという事から多くの問題提起を起こさせる。近年臓器移植の普及につれて,化学的,生物学的免疫抑制剤の開発が盛んとなつている。即ち,今回の免疫抑制剤の投与によつて考えさせられた多くの課題に挑む事が必要となつている。一応今回は免疫抑制療法のBehçet病への応用の可能性という意味を含めて,化学的免疫抑制剤の投与結果及びX線照射追跡結果,ステロイドホルモン使用の問題点を報告したい。

Hurler症候群(Scheie Syndrome)の1例

著者: 福永喜代治 ,   玉井嗣彦 ,   渡辺猛 ,   藤永豊 ,   錦織劭

ページ範囲:P.1405 - P.1411

緒言
 Hurler症候群は既に1900年Thompson1)が独立疾患として考え,1907年にBerkan2)により記載報告されたものである。1919年にHurler3)が骨格変形に角膜混濁および知能障害を伴つた症例を報告し,Osteodysplasiasと呼んでいる。
 1952年Brante4)がコンドロイチン硫酸らしいものを患者の組織から組織化学的に証明し,更に1957年から1958年にかけて,Meyerら5)およびDorfmanら6)により組織内の酸性ムコ多糖体の分離および同定,尿中への異常な排泄が明らかにされ,ムコ多糖体代謝異常を主病変とした所謂Mucopolysaccharidosisであることが解明されたのである。その後McKusickら7)の研究により現在では,本症の臨床症状,遺伝形式ならびにムコ多糖体代謝異常の面から6型に分けられている。

汎下垂体機能低下と興味ある眼科的所見の変動を示した嫌色素性腺腫の1例—鼻咽頭伸展を主とした1例

著者: 井街譲 ,   山中昭夫 ,   佐古田雅弘 ,   大倉久直

ページ範囲:P.1413 - P.1420

緒言
 嫌色素性下垂体腺腫は,組織学的には良性を示すが,しばしば鞍外伸展を示すが故に,所謂悪性下垂体腺腫の形をとる事がある。鞍外伸展を示す下垂体腺腫と鞍内型のそれとでは,その予後に於て両者間の格段の差1)2)3)があり,このため前者に対する診断治療は,あらゆる面から実に重要な問題を含んでいる。中でもこの鞍外進展型のうち咽頭進展は,非常に頻度は低く,その生じ得る病像もまだ明らかではない。
 今回我々は,嫌色素性腺腫の咽頭伸展形の1例に於て,興味ある経過を示したものを経験したので,報告する。

眼サルコイドージス,特にその予後について

著者: 山田酉之 ,   米地和夫 ,   朝岡真 ,   氏家瑞恵

ページ範囲:P.1421 - P.1422

緒言
 臨眼25巻719〜723ページに掲載した「眼サルコイドージス(第5報)予後について」の投稿後に観察した15名のサルコイドージス患者を追加して報告する。

体位の変動による眼底血圧に関する研究

著者: 中村滋 ,   清水敬一郎 ,   秋山健一 ,   小口芳久 ,   木村肇次郎 ,   小林彰雄 ,   藍原寧

ページ範囲:P.1423 - P.1427

緒言
 眼底血圧測定法(Ophthalmodynamometry)なる臨床検査法が,1917年Bailliantにより開発されてからすでに約50年が経過し,この間に幾多の研究者により,基礎的及び臨床応用に関する研究がなされ,数多くの知見が得られてきている。特に基礎的問題に関しては,ここ10年来Weig—elin等により我々が測定しているNADは観察部位の血圧ではなく,より上位の眼動脈の血圧であろうとの主張がなされていらい,眼底血圧測定の本質に関して種々の疑義も提出されているのが現状である。しかしながら一方,眼底血圧測定法は比較的簡単にできる臨床手技も幸いして,日常外来において広く行なわれており,我が国においてはすでに一つの確立した臨床手技となっていることも事実である。それ故この方法を日常診療に有益なデーターを提供しうるように,さらに改良,発展させることも又極めて有意義のことと思われる。我々の教室においては特殊外来の一つとしてNAD外来をもうけているが,この外来における多数のNAD測定の結果,めまい,立ちくらみ,頭痛,眼精疲労等を主訴とする患者には,体位変換時のNAD測定,いわゆるLage—wechsel NADが極めて有益な検査であることとを知り,しかも最低安静臥位を15分間継続してからLagewechsel NADを測定することの方が,より主訴に密接するデーターが得られることを確認したので,ここに報告する。

視覚障害を合併したろう児の各種検査成績

著者: 湖崎克 ,   山岨三樹 ,   三上千鶴 ,   大浦敏明 ,   一色玄 ,   曾我部律夫 ,   上村勇

ページ範囲:P.1429 - P.1433

緒言
 心身障害児の福祉には多くの問題がある。そして,その解決の第一歩は,まず十分な医学的検査により障害の実態を把握することから始まることは当然のことである。重複障害の場合には,それはさらに必要なことである。
 最近,わが国では,ろう学校児童生徒に,網膜色素変性症が重複している場合の多いことがわかり,その実態調査を1969年に読売光のプレゼント協会が全国的に提唱した。大阪府下のろう学校(3校)の検診を筆者が受け持つたことを機会に,その眼科検診を単に網膜色素変性症の発見にとどまらず,種々の角度から幅広く行ない,併せて,全身的に,特に代謝面からの検査と聴力検査を実施したので,ここに報告し,また,視覚障害を伴つた聴覚障害児の今後の問題について,諸賢の御理解と御協力をあおぎたいと考える。

両眼性同心性視野狭穿様症状を伴つた低視力小児の多数例の観察(第1報)

著者: 秋山晃一郎 ,   秋山明基 ,   菅井まり子 ,   渡辺文子 ,   早船房枝 ,   和田裕 ,   宮本泰 ,   小原寧 ,   新川隆康

ページ範囲:P.1435 - P.1454

緒言
 最近我々が外来患者をみていると,視力低下以外に何の訴えもないにもかかわらず,周辺視野狭窄を有し,しかもERGは正常である小児が多くみられるのに気付いていた。またその時石川哲氏1)〜3)の農薬中毒による眼障害の発表もあり,それと類似点がある様にも思え,またその数がかなりありそうなので一応調査をする気になつたのである。そして検査が進むにつれ,暗順応が軽度ではあるが犯されている事実などが出てきて,これは従来見られなかつた一連の症候群であるとの確信を持つに至つたので,ここにそのあらましを報告し,我々が調査し得た範囲でその成因について推測を加えて見る事にした。

第24回日本臨床眼科学会 Group Discussion

視野の会(第8回)

ページ範囲:P.1487 - P.1489

 視野の会の目的とするところは,量的視野の普及にあつて,最的視野の一般的な計測法はもとより,新しい視野計測方法等を共通の場で議論し検討するにあつた。阪大水川教授,大阪医大山地助教授等と計り,第1回は昭和38年「視野の術語」に関して討論され,毎年臨眼の折に開催され,年を重ねる毎に盛会となり今回で第8回を迎えるに至つた。
 しかし数年前より,視野の会は,他の境界グループディスカッションに含まれ得る,又,テーマを定める事は,会が閉鎖的になるので演題募集は自由にせよ等の声も聞かれるようになり,実際,演題も臨床に関するものが多くなり,所期の目的ははたした感があつた。そこで,今回を以つて発展的解消をとることにした。

小児眼科

ページ範囲:P.1491 - P.1494

討論テーマ「先天性白内障」
I.診断
(話題提供)植村恭夫(国立小児病院)
1.問診
 生下時より認められる両眼性のもので,完全白内障では,瞳孔領の白色,または,視反応がないことで来院するが,斜視や他の主訴で来院し発見されることも少なくない。先天白内障は約25%に遺伝性のものがあることから家族歴の詳細な調査が必要である。妊娠歴では,風疹やその他のウィルス疾患罹患の有無,薬剤使用,放射線による被爆など詳細に調査する。未熟児については,その1〜5%に未熟白内障が発生することが注目されている。

眼感染症(第7回)

ページ範囲:P.1495 - P.1499

I.先天性風疹症候群
1.先天性風疹
—とくに疫学と病因について—
値田 浩司(九大小児科)
 風疹による先天異常(先天性風疹症候群)は新生児期の一過性の症状(栓球減少性紫斑病・肝脾腫・低出生胎児・骨病変)および永久的の障害(白内障・心疾患・難聴など)がある。妊婦が妊娠第1三半期に風疹に罹患すると胎児に風疹ウイルスの慢性持続感染がおこり,これが多彩な先天異常をおこす病因である。
 血清疫学的調査では妊婦の風疹抗体保有率が,日本北部ではほぼ100%,南部では80〜90%であり,南の離島では風疹抗体陰性の妊婦がきわめて高頻度にみられ,したがつて1965年以来の日本全土を襲つた風疹流行により,風疹症候群児の出生が北部ではきわめて稀,南部に少数の発生,そして沖縄地方には多発がみられた。風疹ワクチンも完成し,本症候群も近い将来に姿を消すであろう。

連載 眼科図譜・163

網膜中心静脈のソーセージ様拡張を示した全身性エリテマトーデス(SLE)

著者: 升田義次 ,   山田芳明 ,   堀ヤエ子

ページ範囲:P.1273 - P.1274

〔解説〕
 全身性エリテマトーデス(SLE)の眼底変化としては,乳頭発赤,静脈の怒張蛇行,乳頭周囲および黄斑部に散在する綿花様白斑が知られている。そのなかでも静脈の怒張蛇行は,それがひどくなると念珠状あるいは一連のソーセージ様と表現されるような特異な所見になるといわれている。
 今度,SLEの患者(29歳,女)で,眼底に静脈のソーセージ様拡張を初めとして綿花様白斑,乳頭上の血管新生など多彩な変化を認めた例を経験したのでその眼底写真と螢光眼底写真を供覧する。なお詳細は本文1289頁を参照されたい。

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レーベル病と細胞質遺伝

著者: 小林守

ページ範囲:P.1458 - P.1459

 レーベル病の細胞質遺伝について略述するにあたり,私事ではあるが,筆者の履歴に少しふれながら話を進めたい。筆者は昭和28年東京都立大学理学部生物学科を卒業したが,当時の教室主任は森脇大五郎教授(現国立遺伝学研究所々長),卒論担当は小野記彦教授(現日本遺伝学会幹事)であつた。理学部在学中,小野記彦教授の著書1)で細胞質遺伝を一読し,非常に興味をそそられたので,理学部4年生の夏休み(昭和27年)に細胞質遺伝の大家であるCorrensの名著"Nicht men—delnde Vererbung,1937年発行(非メンデル性遣伝)"の原著2)を通読し,これをほんやくしてみたことがある(400字詰原稿用紙450枚位)。
 理学部卒業後,さらに1年間の浪人生活を経て東大医学部に入学したのであるが,医学部卒業後,眼科教室に入局した理由の一つは,眼病に遣伝性疾患の種類が多いと聞いていたからである。東大眼科入局早々より稀有なる遺伝性眼疾患をしばしば診察するチャンスに恵まれたが,その中にはレーベル病も含まれており,本病の遺伝型式として種々の仮説が各国の学者により提唱されている事を知つた。それら仮説の中には,我国の今井喜孝・森脇大五郎両氏による細胞質遺伝説3)があつた。

臨床実験

調節麻痺剤—サイプレジン1%点眼液の屈折検査の為の使用

著者: 長谷川栄一 ,   飛岡延子

ページ範囲:P.1462 - P.1468

緒言
 小児の屈折検査の為には,調節麻痺作用も発現が早く,十分深い調節麻痺効果があり,しかも適当な作用時間の得られる薬の出現が望まれる。
 1952年,Traves & Testaにより合成されたアリル酢酸のアミノアルキル誘導体Cyclopen—tolate hydrochloride (米国薬局方第18版にも収載され,Cyclogylの商品名で米国に於て市販されている)は白色の結晶で水溶性,融点139℃,下記の構造式を示す物質である(第1図)。

エピネフリン・ピロカルピン混合点眼液(エピカルピン)の緑内障に対する使用経験

著者: 池田一三 ,   阪本善晴 ,   川辺幸行 ,   今泉正寛

ページ範囲:P.1469 - P.1477

緒言
 緑内障の治療に日常用いられるピロカルピンならびにl—エピネフリン点眼液は,その作用機序が異なるため,それぞれ眼圧下降剤として長所,短所がある。そこでお互いの長短を相補う目的で,両者の併用が考えられ,すでに臨床的にも実用の段階に入つている(Becker et al1),中島12),岸本ら2),船橋3))。
 今回,私共が参天製薬株式会社より提供を受けたエピカルピンは,1%ピロカルプンと1%l—エピネフリンの混合液で,私共はこれを各種緑内障患者に使用し,その眼圧およびトノグラフィーにおよぼす影響について検討し,いささかみるべき成績をえたので報告する。

白内障と単性緑内障が同時に存在する場合の手術方法について

著者: 菅謙治 ,   永田誠

ページ範囲:P.1479 - P.1484

緒言
 1眼に緑内障と白内障が同時に存在する場合の手術方法として,下記の3方法が論じられてきた。
(1)まず緑内障手術を施行し,眼圧を調製してから白内障手術を行なう(Lee1),Guyton2),Castroviejo3),Sternberg4),Kirby5),Elton6))。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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