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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科25巻7号

1971年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・165

圧迫ゴニオスコピーにより観察した周辺虹彩前癒着の型について

著者: 中村泰久 ,   能勢晴美 ,   北沢克明

ページ範囲:P.1699 - P.1700

〔解説〕
 原発閉塞隅角緑内障の診断及び治療方針を決定する上で,周辺虹彩前癒着(PAS)について検討する事の重要性は,原著に詳細に述べ,強調したところである。私達はその中でPASを12型に分類し検討を加えたが,ここにそのうちの数型を供覧する。すなわち,(1)強膜岬に付くテント型,(2)隅角線維柱帯の下から1/3に付く屋根型,(3)強膜岬に付く丘陵型,(4)隅角線維柱帯の下から1/3に付く丘陵型,(5)隅角線維柱帯の下から2/3に付く丘陵型,の5型である(図は全て上段が圧迫前,下段が圧迫後の所見である)。

臨床実験

圧迫ゴニオスコピーにより観察した周辺虹彩前癒着の諸相

著者: 中村泰久 ,   能勢晴美 ,   北沢克明

ページ範囲:P.1701 - P.1707

緒言
 原発閉塞隅角緑内障の本態とその治療法に関しては,現在尚多くの疑問点を残している。隅角閉塞の状態にひきつづいて生ずると考えられる周辺虹彩前癒着(Peripheral Anterior Synechia,PAS)の問題について検討することは,この型の緑内障を解決してゆく大きなてがかりであると考えられる。私達は先に中村1)の報告した直視型圧迫隅角レンズを用いて日常診療に於て圧迫ゴニオスコピーを行なつているが,今回はその中から,PASの型とその分布に焦点をしぼつて検討を加えたので,その結果をここに報告する。
 尚,本論文中で私達は,「隅角閉塞」という語を,虹彩根部が隅角線維柱帯に接着し,しかも可逆的な状態に対して用い,その状態に器質的な変化が加わり,不可逆的な状態になつたものは「周辺虹彩前癒着」と表現した。

Color Flicker Vision Testerによる色覚検査

著者: 深見嘉一郎 ,   池田光男 ,   浦久保光男

ページ範囲:P.1709 - P.1713

緒言
 色覚正常者,第2色覚異常者(deutan)と第1色覚異常者(protan)とは比視感度曲線が異なる。また選択色順応効果は正常者には認められるが上記異常には認められない。この両者を測定することによつて,正常者,protan, deutanの3者を簡単,確実に分離できることが池田・浦久保によつて示された1)2)。この事実を多数の被検者について確認するために,小型軽量化したcolor flickerを用いた試作色覚検査器(Color Flicker Vision Tester)を製作した3)
 今回はこの試作器を用いて,正常者22名,protan 12名, deutan 34名についての検査成績を報告する。今までのところ正常者,protan, deutanは確実に鑑別可能である。なお5名のproto-carrierについて測定したところ,正常者とprotanの中間の値を示すものを認めた。

螢光検眼鏡検査法の再評価と螢光眼底用直像検眼鏡の開発

著者: 錦織劭 ,   錦織雄吉

ページ範囲:P.1715 - P.1726

緒言
 螢光眼底撮影法は,1960年Novotny & Alvis1)の発表以来,多くの研究者の努力によつて方法の改善と観察の積み重ねが行なわれ,臨床に欠かす事の出来ない検査法として,近年広く普及しようとしている。この方法の原理は,第1表及び第1図の如くであり,眼底の血行動態を刻々にフィルムに記録する事により,眼底のmicrocirculationの状況,血管壁の透過性亢進,眼底病巣と血管系との関連等を鮮やかに描出する誠に魅力的な検査法である。
 然しながら,螢光眼底撮影法には第2表の如く,新たに螢光眼底撮影装置を購入したり増感現象処理等の可成厄介な手間が掛かるのは,周知のところである。そもそもFluoresceinを標識色素として行なう眼底観察法には,第3表に示した通り,大きく分けて二つの方法が分類出来る。既に1961年,David, Saito & Heyman2), Hollen—horst & Kearns3),1964年にはPemberton &Britton4)が,肘静脈—網膜循環時間の測定に,co—balt-blue filterを入れた直像鏡を用いている。

眼瞼,眼窩腫瘍に対する冷凍手術

著者: 門田正義 ,   法貴昭

ページ範囲:P.1727 - P.1731

緒言
 冷凍手術は18世紀から行なわれていたが,1960年代に至りCooper等1)〜3)が液体窒素等を効果的に使用する器具を作製して後実用化されるに至つた。最近では,皮膚科4)〜6),泌尿器科7)8),耳鼻科9)10)15),外科,産婦人科11)12)の各科領域にて行なわれている。冷凍手術は操作が簡単で比較的無痛である事,出血が少ない事,術後感染が少なく,瘢痕形成が菲薄である事等が特徴である。
 眼科領域においては,白内障の水晶体摘出術13)網膜剥離,緑内障の毛様体侵襲等に広く応用され,それに伴う器具の改良もさかんに行なわれ,報告も多い。我国においては眼瞼,眼窩における凍結手術は教室の井街等の報告14)があるが,従来より報告がなく,今度我々は,耳鼻科,皮膚科と協力して眼瞼,眼窩腫瘍21例に凍結手術を行ない,観察し,比較的好成績を得たので,それ等を統計的に検討した。

実験動物の眼底所見における2,3の知見について

著者: 河本道次 ,   松原英多

ページ範囲:P.1733 - P.1739

はじめに
 医学の進歩は実験動物に負う所が大きく,広く医学の研究面における活用は,日に日にその頻度を増しつつある現状である。
 さて近年,多くの全身性疾患,特に血管性病変,脳神経系疾患,代謝障害或は先天性代謝異常等の分野において,その病因追求に眼底所見の重要性が強く認識されてきている。

健常結膜嚢内および前眼部起炎性細菌の抗生物質耐性(第1報)—前眼炎より分離したブドウ球菌の各種抗生物質耐性

著者: 飯島享

ページ範囲:P.1741 - P.1750

緒言
 病原性ブドウ球菌の各種抗生物質に対する感受性はいままで多数の報告があり,本邦の眼科領域では,徳田,河田,寒河江,板橋,三国,長谷川百瀬,水川,鈴木ら諸氏の報告がある。また年代を追つて比較した成績も少なくなく,国立病院耐性共同研究班では年度別に全国的な検索のもとに耐性菌の分布状態と,年次的推移を報告しており,また外国においてはNeedham (1953)らの報告もある。
 今回私は東京都墨田地区における眼感染症より分離したブドウ球菌の各種抗生物質に対する耐性状感を知るため感受性検査を行なうと同時にファージ型別検査を行なつたので報告する。

Behçet病100例の検討

著者: 青木功喜 ,   藤岡憲三

ページ範囲:P.1751 - P.1754

緒言
 中途失明者に対するRehabilitation施設の組織化,医療給付の改善とういう面からBehçet病が最近社会的に取り上げられている。この不明な病因できわめて悪い眼の予後を呈するこの疾患においては医学的研究以外に増加しつつある失明者に対して十分な配慮を社会的に行なう必要性が生じてきている。このための関係者への働きかけの一歩は実態を掴むことに始まる。北海道地方においては札幌医大,道衛生部,北大,道眼科医会が協力しつつ,この実態の調査を始めており,この報告は一次調査の予報である。

白内障性水晶体内出血の1例

著者: 増田義哉 ,   小池明子 ,   富田一郎

ページ範囲:P.1755 - P.1758

はじめに
 水晶体はその構造が緻密であり,血管のない組織であるので,前房又は硝子体の出血に比べて,水晶体内出血は非常に稀なものとされているが,今回,我々は,穿孔性眼外傷後に,前房蓄膿と外傷性白内障を起こし,その後その水晶体内に出血を認めた1症例を経験したので,その臨床所見並びに経過及び組織学的所見などを述べて,症例追加としたい。水晶体前被膜に密着した血液や,水晶体後被膜後方即ちBerger腔内に時々見られる出血を水晶体実質内の出血と見誤る事は稀ではないが,真の水晶体内の出血は,Duke-Elder1)もSystem of Ophthalmologyで珍しい事であると述べている。

眼科領域におけるポリサイダル使用経験

著者: 蒲山久夫

ページ範囲:P.1759 - P.1761

はじめに
 眼科領域において感染による炎症に対しては,各種の抗生剤が使用されて多くの成果をあげてきたが,抗生剤の濫用による耐性の問題が生じ,その効果が期待できぬ場合もしばしば生じてきた。
 筆者はこの問題点に着眼し,スルファ剤の効果を再検討すべきであると考え,新型スルファ剤であるポリサイダルを眼疾患に適用し,予想以上の成果を認めたのでここに報告する。

糖尿病性網膜症の臨床的観察—網膜症の頻度(第2報)

著者: 山本隆朗 ,   井上晃一 ,   福田恒夫 ,   大郷恭三 ,   森頴太郎 ,   日下孝明

ページ範囲:P.1763 - P.1767

緒言
 糖尿病性網膜症の発症あるいは進行因子については多数報告され,検討されているが,いまだ明確な回答は得られていない。著者らは前報1)で糖尿病患者500名の網膜症の発生頻度を検討したが,今回新たに528名の糖尿病患者の眼底検査を行なつたので,合わせて1028名の糖尿病患者の網膜症頻度として統計的に検討を加え報告する。

印象記 第75回日本眼科学会

役員会及び第1日・第1会場・午前の部,他

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.1770 - P.1793

 今年の日本眼科学会総会(第75回)は日本医学総会(第18回)の分科会として行なわれたが,総会のマンモス化,お祭化が問題となつていただけに,どのような雰囲気になるのかということが懸念されたところ,会場が急に浦和の県立埼玉会館に変更されたため,眼科だけが隔離される結果となり,日眼としてはかえつて落ち付いた平常の総会と変わらぬ気分で終始することがてきた。それがよかつたか,悪かつたかは人により評価は異なると,思われるが,現在の眼科の医学会からの立場を,奇しくも表徴したような結果となつたことは興味深い。
 総会の前日に赤坂東急ホテルで理事会と評議員会が行なわれたが,そこでの議事内容についてお知らせしよう。

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眼科写真とその将来

著者: ,   清水弘一

ページ範囲:P.1794 - P.1797

 今から2年前に,何人かの眼科写真士が集まって,眼写真学会というような組織結成についてのアンケートを,眼科写真士と眼科医とを対象としてとりはじめました。その翌年,米国眼科学会(American Academy of Ophthalmology & Otolaryngology)の年次総会の際,10人の写真士が発起人となつて眼写真学会の結成を決議し,その結果が本日の会となつたのであります。
 本会の目的は会則の通りでありますが,あらためて要約してみますと,第1は,眼科写真士の活動と技術の向上をめざすこと,第2は,新しい技術の発見開発の援助をすること,第3は,技術情報をいつでも役に立てるように整備しておくこと,第4は,眼写真士の利益を代表する団体を組織しておくこと,第5は,眼写真術を眼科診療助手の間に普及させること,第6は,眼写真術についての教育を促進し,そのために,教材や学術論文の発行や国内外での学会を開くこと,第7は,資格のある眼写真士の名簿を作製すること,そして,第8として,眼写真士の求人求職の仲介をすることであります。

Ophthalmic Photographers' Societyに入会して

著者: 金上貞夫

ページ範囲:P.1797 - P.1797

 Ophthalmic Photographers'Society (O.P.S.)は昨1970年3月6日マイアミのBascom Pal—mer Eye Institutcえで開催された国際螢光眼底シンポジウムの際に,Dr. Lee Allenと同Instituteのophthalmic photographerであるJonny Justice Jr.氏等の肝入りで発足した眼科の写真家の団体である。
 私は,このたび東大の清水弘一助教授の推せんを受け,日本では唯一人のActive memberとして入会することになつたので,ここにO.P.S.の概要をご紹介したいと思う。

銀海余滴

「タイムカプセル」EXPO 70とロゼッタ石

著者: 山地良一

ページ範囲:P.1800 - P.1800

 先に本欄(23巻12号1446頁,1969年)に,「タイムカプセルEXPO70と眼科関係収納品」と題して,万国博の記念事業の一つとして,5000年後に残すタイムカプセルに収納される眼科に関係のある品目を紹介した。本稿はその後日談である。
 タイムカプセル本体と収納品のすべては,万国博の会期中,竹林に囲まれた池に浮かぶ松下館に展示されていたから,ごらんになつた方も多いと思う。皇太子御夫妻,常陸宮御夫妻,デンマークのマルガレーテ王女ら多数の人々が展示館を訪問され,特にマルガレーテ王女は眼科関係の収納品に強い興味を抱かれたようである。

第24回日本臨床眼科学会 Group Discussion

緑内障(第12回)

ページ範囲:P.1809 - P.1812

1.Catecholamineの原発緑内障治療への応用について
〔宿題報告〕 北沢克明(千大)
 近年,生理或は薬理学的研究によつて交感神経系について幾つかの新知見が得られた。中でも,交感神経系の末梢での刺激伝達物質が長年信じられていたエピネフリン(以下Eと略す)ではなく,ノルエピネフリン(以下NEと略す)である事,両者の末梢作用の不活性化が主として交感神経末端への取りこみ(re-uptake)による事が明らかとされた事は特記すべきである。カテコールアミンの内,Eはピロカルピンと並んで古くから緑内障治療に用いられているにも拘わらず,その眼圧下降機序については不明の点が多く,その眼圧下降作用のdose—responseについての系統的な検討も決して十分ではない。今回,私はカテコールアミンの内,l-E,l-NE,l—イソプロテレノールの眼圧下降作用について主として我々の基礎及び臨床実験成績を中心に検討を加え,次の成績を得た。
1) l-E及びl-NEは,ともに正常眼及び原発広隅角緑内障眼に於て眼圧下降及び散瞳作用を有するが,l-NEの眼圧下降作用と散瞳作用の間には明白な相関が認められるが,l-Eによる眼圧の下降と散瞳の間には平行関係は認められない。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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