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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科25巻8号

1971年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・166

腎疾患における角膜及び結膜の石灰沈着

著者: 豊福秀尚 ,   S. Harris ,   A. Galin

ページ範囲:P.1831 - P.1832

〔解説〕
 過カルシウム血症における角結膜の石灰沈着は古くより知られていたが,血清カルシウムがむしろ低い腎疾患患者の石灰沈着は1967年のBerlyne等の調査によるまであまり注目をひかなかつた。
 急性或いは慢性の腎疾患を有する尿毒症患者では,血清カルシウムは正常か正常以下であるが血清の燐が上昇している。血清のCa×P値が70mg/100mlか又はそれ以上を有する患者では,図に示したような角膜及び結膜の石灰沈着が認められる。我々の調査では18名の尿毒症患者のうち15名にこれが認められた。沈着は腎機能に応じて消失したり,また現われたりする傾向にある。

臨床実験

網膜層間分離症—主に他の疾患に伴つている症例について

著者: 中川喬 ,   長谷川一郎

ページ範囲:P.1833 - P.1840

緒言
 網膜層間分離症(Retinoschisis,RS)は網膜が神経上皮内で2層に分離する疾患であり,双眼倒像検査,あるいは細隙灯眼底検査法が使われるようになつてから多数の症例が報告されている。わが国でも三島8),塚原5),黒滝9),杉浦10),浅山16)21),らが報告している。
 これらの報告の大部分は若年性網膜層間分離症(Juvenile Retinoschisis)及び老人性網膜層間分離症(Senile Retinoschisis)についてである。

全身性紅斑性狼瘡(SLE)の眼症状

著者: 吉本弘志 ,   柳田泰

ページ範囲:P.1841 - P.1846

緒言
 Systemic Lupus Erythematosus (以下SLEと略す)に関する眼症状は,1929年Bergmeister1)の報告以来,我が国に於てもすでに多くの報告がなされている。それらによれば,本症の眼症状の多くは眼底の変化であり,その他,角膜炎なども生ずるとされている。
 当眼科学教室に於ても,過去5年間に9例のSLE患者を経験する機会を得たので,ここに報告する。

最近の船員の視力の基準と眼疾患について

著者: 篠塚清志 ,   田中弘子 ,   小林守

ページ範囲:P.1847 - P.1851

緒言
 近時,海上交通の増加から,海難事故が頻発し,船長,航海士等をはじめとして船員の視力の基準が日本海難防止協会,運輸省,商船大学等で問題視され,かつ海技従事者の視力,海上交通従事員の視力の基準の研究と船員の重篤な眼外傷の予防と治療2)〜6)が再検討されている(第1表)。
 最近3年5カ月間に東京船員保険病院受診の船員の眼疾患患者を検討し7),眼外傷の最も多発することを知つたが,その予防策の一つとして同時に船員の視力について検討を行なつた。

白内障水晶体の乳酸脱水素酵素アイソザイムについて

著者: 亀山和子

ページ範囲:P.1853 - P.1858

緒言
 Markert Møller1)が1959年に,生体内である反応を触媒する酵素が,蛋白分子構造の上から物理化学的諸性状を異にする一群の酵素群から成る場合があることを指摘して,酵素化学の分野にアイソザイムの概念を導入した。それ以来,多くの動物臓器にアイソザイムが多数見出され,アイソザイムの解析は生化学の領域のみならず臨床医学2)の分野にもその応用が試みられ,診断や予後の判定に重要な役割を演ずるようになつた。
 アイソザイムの存在が明らかにされてから,最もよく研究されたのは,乳酸脱水素酵素(LDH)であり,酵素化学的にはLDHは二つの異なるsubunit (monomer)から成り,分子的ハイブリットによりtetramerを形成することにより5種のアイソザイムが存在し,それぞれLDH1,LDH2,LDH3,LDH4,LDH5と名付けられている。各subunitのペプチド鎖は,それぞれDNAから異なつた遺伝的支配を受けて生合成されているものであり,Shaw Barto3)はシロアシマウス(peromyscus maniculatus)のLDHアイソザイムパターンに遺伝的変異のあることに気付き,ポリペプチド鎖の形成が常染色体の遺伝子で支配され,メンデル型遺伝を示すことを推定した。

角膜真菌症の診断と治療

著者: 菅謙治 ,   永田誠

ページ範囲:P.1859 - P.1866

緒言
 真菌は土壌や空気中に存在し,又動植物に寄生して存在する。人間では皮膚,気管,食道などに常住し,Mitsui1)によると健康者の結膜嚢の18%に真菌が存在する。健康体においては細菌と真菌が一定の平衡を保つて共棲し,真菌には病原性がない。しかしある条件下では,この真菌が病原性をもつようになる。ある条件とは真菌の増加2)と生体の組織抵抗の低下とである。近年に至つて真菌症が増加しているが,これは抗生物質と副腎皮質ホルモンの使用が原因で,角膜真菌症に関しても,Roberts3),Pannarale4),Anderson5)等は抗生物質の使用によつて菌交代現象をきたして真菌が増殖し,Anderson5)Ley6),Hirose7),Montana8),等は副腎皮質ホルモンの局所使用によつて組織抵抗が減弱し,各々,真菌の角膜感染を惹起すると指摘している。
 真菌の眼感染としては,角膜真菌症をはじめ眼瞼炎,涙小管炎,涙嚢炎,脈絡膜炎,乳頭炎等が報告されているが,角膜真菌症は,1879年にLeber9)が1例を報告したのに始まつて,多数の報告があり,本邦においても1910年の槇10)の報告以来,約30例の報告がある。

健常結膜嚢内および前眼部起炎性細菌の抗生物質耐性(第2報)—東京都墨田地区住民の結膜嚢内細菌叢およびその抗生物質耐性

著者: 飯島享

ページ範囲:P.1867 - P.1874

緒言
 正常結膜嚢内の菌種に関しては1908年江口の報告以来,早野,河野,末永,洪,日隈,公,吉村,諸氏の成績があり,また抗生物質の発見使用後は菌種叢に著しい変化を認められた事実に関し,桐沢,檜山,山崎,河田らが報告し,またこれら結膜嚢内細菌の抗生物質に対する感受性については1962年河田が,PC,SM,TC,CP,LMについて報告した。著者は東京都墨田地区住人の結膜内細菌の抗生物質に対する感受性の状態を知るために眼疾患より分離した病原性黄色ブドウ球菌について感受性検査の結果を報告したが,今回は正常結膜100眼より分離した菌種につきその感受性を検査したので報告する。

初期白内障に対する2—Mercaptopropionyl-Glycine (Thiola)の効果—(その3)臨床的観察

著者: 松浦啓之 ,   渡辺猛

ページ範囲:P.1875 - P.1884

緒言
 著者等は前報1)2)にて実験的白内障並びに臨床的に老人性初発白内障に対して,SH化合物の一つである2—Mercaptopropionyl-glycine (Thio—la)の効果を検討し報告したが,今回は更に前回の症例の中で引続き長期間経過を観察した症例と新たな対象例について再び検討したので報告する。

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保険医総辞退と学生ゲバ

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.1888 - P.1889

○あれほど世間をさわがせた学生ゲバがすつかり影をひそめたと思つていると,これに代つて(?)目下ジャーナリズムを賑わせているのが保険医辞退さわぎである。この二つの問題がまさか関係があるとは思えないようであるが,よく考えてみるとそうでもなさそうだ。殊に学生ゲバの発端は医学部のインターン問題から始まつたのであるし,保険医辞退は医者が主人公であることから,われわれ医師としては共に大問題である。しかもそれがどのような共通の問題をもつているのであろうか?
 ○学生ゲバは「わけもわからぬ,わがまま学生が……」と批評されがちであつたが,保険さわぎは最高の知識人と見なされている医師の集団が始めたことであるにも拘わらず,共に「何のためにやつているのかさつぱりわからぬ」という批判を受けがちなことは同じことである。学生の代表が例の紋きり形の闘争用語で絶叫しても,聞いている方には何とも理解できなかつたが.医師会代表の武見会長のテレビでの話は仲々筋が通つているようにわれわれには思えるのだが,一般民衆からはやはり理解されにくいようである。学生が教授をつかまえて「お前」呼ばわりをしているのをみて,日頃威張つている(?)教授連が低姿勢で答えている姿に快哉を覚えた民衆の気持と.最高の権力者として羨やまれている大臣が武見会長の前では教えを乞うような姿でかしこまつているのを見て喜んでいる聴衆の気持には共通した気分があるようであつた。

第2回光凝固研究会報告記

著者: 盛直之

ページ範囲:P.1891 - P.1893

 最近我が国における光凝固装置の普及はめざましく,現在その数は約60台に達している。そして,その臨床応用面も広がり,網膜剥離はもとより,前眼部応用即ち瞳孔形成術,前房内嚢腫,上皮下降,虹彩嚢腫,虹彩脱出等から,広く網膜脈絡膜疾患,血管性病変,殊に中心性網膜炎,網膜静脈閉塞症,糖尿性網膜症,未熟児網膜症,更に眼内悪性腫瘍の治療へと適応範囲が非常に拡大して,眼科領域でなくてはならない治療器械になつてきている。
 昭和44年(1969年)10月Combergが来日して,光凝固講習会が行なわれ,その時の模様は清水昊幸氏により第1回光凝固研究会報告記として臨床眼科24巻2号に掲載されているが,これは講習会であり,又,それより以前,昭和41(1966年)5月にMeyer-Schwickerathの来日の際の講習会もあつたので,演題を募集して行なわれた研究会としては,昭和45年(1970年)秋の臨床眼科学会光凝固グループ・ディスカッションが第1回光凝固研究会であると思われる。

蛍光眼底研究会5年間のあゆみ

著者: 清水弘一

ページ範囲:P.1895 - P.1897

 5月の螢光眼底研究会の記事を編集部から求められたが,本会の記事は他紙に掲載する慣用があるので,螢光眼底研究会の現在までの歩みを回顧することをもつて責を果したい。
 螢光眼底撮影の最初の報告は,Novotny &Alvisによる1960年のことであるが,眼科雑誌から掲載を拒否されたこともあり1),日本ではじめてこれが話題にのぼつたのは,昭和39年(1964)のことである。この年の秋,名古屋の臨眼での糖尿病のグループディスカッションの際,京都府立医大の谷助教授は,糖尿病性網膜症の研究に螢光眼底が有用であること,そして,氏自身ZeissJenaの眼底カメラにフジのゼラチンフィルターを組み込んだことにより螢光撮影に成功したことを述べられた。

第24回日本臨床眼科学会 Group Discussion

網膜剥離

ページ範囲:P.1899 - P.1906

大河内雄幸・上田準一
早川敬子(名大)
1.最近4年間に於ける当科の網膜剥離例について
 1966年より1969年までの4年間に当科を受診した剥離患者例について報告を行なつた。
 症例総数121眼,男子78眼,女子43眼であり,年齢分布をみると,10〜20代,50代において多く,2峰性が見られた。左右差は,右67眼,左54眼であり,この内両眼性のものが17例(14.0%)あつた。発症から来診までの期間は,1週間以内が最も多かつた。剥離範囲別分類では,1〜2象限のものが一番多く,次いで1象限内,2〜3象限,3〜4象限のものであつた。屈折については,近視眼に発症が多く,−6D以上の近視に41眼(33.8%)の発症をみている。裂孔の有無と復位関係については,有裂孔例は96眼(79.3%)あり,復位率は91.6%であり,裂孔不明例では40.0%であつた。全体としては80.9%の復位率を示した。裂孔の位置は耳上側>耳下側>鼻下側=鼻上側であつた。剥離範囲とその結果については,1象限内の剥離の復位は非常によく100%の復位率をみている。範囲が広がるにしたがって,復位率は低下している。

眼科顕微鏡手術の会(第2回)

ページ範囲:P.1907 - P.1910

 第1回の眼科顕微鏡手術の会は本年2月天理市で非公開の形で行なわれた。臨床眼科学会グループディスカッションには今回初めて参加したにも抱わらず,100名以上の参加者があり,討論も活発であり盛会であつた。今後の発展が大いに期待される。

光凝固

ページ範囲:P.1911 - P.1912

 昭和45年10月24日(土)に,第24回臨床眼科学会の行事として,第1回の光凝固グループディスカッションが東京虎の門共済病院講堂で開催された。116人の参加があり,午前8時半から午後1時まで,次のような熱のある発表と討論とが行なわれた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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