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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科25巻9号

1971年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・167

白点状網膜炎の螢光眼底写真

著者: 霜鳥政光 ,   窪田靖夫

ページ範囲:P.1943 - P.1944

〔解説〕
 カラー螢光眼底撮影は清水1)が最初に発表し,松井2)が各種フィルターの組合せを工夫し,眼底の色調と螢光のコントラストを出すのに努力している。清水の方法は光源にフジ・TV-Bフィルターを,観察側にフジ・No.12フィルターを使用するもので,著者等はこの方法を用い白点状網膜炎のカラー螢光撮影を行なつた。
 白点状網膜炎は1882年Moorenが記載し,1910年Lauberが進行性の白点状網膜炎と停止性の白点状網膜炎の二つに分類した。両者は臨床症状が異なるが3),螢光眼底所見に於ても差異があることは,著者等4)や諸家の報告がある。

臨床実験

正常人及び糠尿病患者の涙液糖量についての研究

著者: 泉二嘉代子

ページ範囲:P.1945 - P.1950

緒言
 正常者の涙液糖量(以下涙糖)に関しては,1922年本邦の和田1)が涙液中に糖の存在をみとめて以来,諸家の報告がみられるが2)〜8),測定方法も異なりその結果もまちまちである。この相違は,測定方法の異なることにもよるが,涙糖がごく微量である上に,涙液の採取が困難なことも一因と思われる。
 また,糖尿病患者における涙糖の定量的な研究としては,Lewis4),徳田5)及びGasset6),の報告があるのみである。しかし,今迄のこれらの報告における測定法は,涙液中のglucoseの量のみを測定したものではない。

新居浜地区に多発した盲目牛について(第2報)

著者: 大石省三

ページ範囲:P.1951 - P.1954

緒言
 1969年の早春,新居浜地区に多発した盲目牛の眼所見については,既に同年の中,四国眼科学会で発表し1),その成因については今後の研究を俟ちたいとした。
 今年も,同一牧場で1月初旬より相次いで盲目牛がホルスタイン種の間に出て,数回の検診を行ない,特にNHK職員と石川哲氏等2)が現地の調査を行ない,氏等の現地調査では農薬との関係を考えられたようである。

内斜視に対するUbretid点眼液の使用経験

著者: 豊増典子 ,   今村由美子 ,   山下敦子

ページ範囲:P.1955 - P.1962

緒言
 調節性が疑われる斜視にたいして,まず強力抗コリンエステラーゼ剤である縮瞳薬の点眼を行なつてみることは,今日ではもはやルーチンの方法となつている。当教室の斜視弱視室ではこれまで,調節性因子が関係していると思われる内斜視に,主として0.06%のPhospholine iodide (以下PI)を使用し,かなりの成績をあげてきたが,今回Ubretid (以下UBR)点眼液を使用する機会をえて,若干の患者に使用を試みたので,その結果を報告する。

健常結膜嚢内および前眼部起炎性細菌の抗生物質耐性(第3報)—耐性ブドウ球菌の出現頻度およびファージ型の動向について

著者: 葉田野博 ,   飯島亨

ページ範囲:P.1963 - P.1968

緒言
 著者らの1人飯島は1963年2月より7月までの6カ月間,東京都墨田地区において外眼部感染症より採取した病原性ブ球菌104株に対する抗生物質の感受性およびファージ型について検討し,第1報に報告したが,その後,日本化学療法学会においてもブ球菌耐性研究班を組織し,ブ菌の抗生物質感受性を全国的に検討するために,菌の感受性測定法の規準を一定し,その成績を相互比較し得るようにし,各地における結果を年次的にまとめて報告している7)〜11)
 一方,菌の耐性とファージ型の関係,耐性菌の地域的差異などについても検討を重ねていたので,それらの発表を参照考慮するために著者の成績を公表せずにおいた。しかし,その後,眼感染菌に関する報告も多数行なわれ1)〜5),耐性菌に対する知見も進歩したので,われわれはこれらの諸成績を参照考察し,今後の臨床的応用にも資する目的をもつて第1報,第2報を含めて,第3報において総括的に記述することとした。

人眼ERGの陰性および陽性off応答

著者: 河崎一夫 ,   土田豊

ページ範囲:P.1969 - P.1973

緒言
 生体眼の網膜電図(ERG)のoff応答(刺激光の遮断に対する応答)は,杆体優位網膜では陰性方向(下向き)の振れ(陰性off応答)で始まり1)〜6),錐体優位網膜では急峻な陽性方向(上向き)の振れ(陽性off応答)で始まる1)3)6)〜8)。Brown6)によると,杆体系優位のERGと錐体系優位のそれとの間の,波形上の最大の差異はoff応答にある。混合綱膜を持つ人眼では,刺激光の強さにより,陰性または陽性off応答が得られる9)〜14)。人眼のoff応答と,暗所視(杆体系)および明所視(錐体系)過程との関係を追求した研究として,Biersdorf15)のもののみがある。彼は陽性off応答のみに着目し,陰性off応答には全く注目していない。本報では,正常人,停止性夜盲症例および杆体一色覚症例における陰性および陽性off応答について記し,これらの応答と暗所視および明所視過程との関連に言及する。

牛眼を伴えるPierre-Robin症候群の3例

著者: 松田一夫 ,   伊東泰子 ,   安積慶子 ,   中村晏子

ページ範囲:P.1975 - P.1979

緒言
 Pierre-Robin (以下PRと略す)は小顎症と気道の機械的狭窄との関係について注目し,かかる場合にはしばしば口蓋破裂の合併がみられると記載している。高度の小顎症では舌下垂病をきたし,喘鳴,呼吸困難,栄養不給性栄養失調の原因となる。このような高度の小顎症による舌下垂と口蓋破裂を合併した奇形を1923年PR症候群1)と呼んだ。本症候群については外国では既に多数報告されている。本邦では昭和31年(1956年)小川2)により初めて報告されている。その後数例になつているが,これに先天性眼疾患の合併症のあることの報告が広田3),飯島4),小島5)によってなされている。即ちPR症候群に先天性緑内障,高度近視,白内障,斜視,網膜剥離等が合併する。吾々は牛眼を合併せる3例に遭遇したので報告する。

Ectodermose Érosive Pluriorificielleの3例について

著者: 河瀬澄男 ,   宇多重員

ページ範囲:P.1981 - P.1985

緒言
 Ectodermose érosive pluriorificielleはRendu (1916),Fiessinger (1917)等が従来のHebra型多形滲出性紅斑とは侵襲部位が異なる独立した新疾患として報告以来,仏国では比較的広く知られた疾患である。
 本疾患の主な症状は,急激な発熱と共に,多数例において皮膚に発疹並びに身体諸開口部粘膜,即ち,眼結膜,口腔,鼻腔,外陰,肛門部等が侵されるものである。

角膜ヘルペスに対するタチオンの球結膜下注射の効果

著者: 山田宏圖 ,   村田充輝

ページ範囲:P.1987 - P.1990

緒言
 角膜ヘルペスに対する治療については,種々の報告がある。しかし実質まで炎症がおよんだものには満足すべき効果が得られていない。グルタチオン点眼を初めに使用した小口氏以後タチオン点眼による効果は表層の角膜疾患に有効である。今回我々は角膜実質まで侵した重症の角膜ヘルペスに対し,タチオンの球結膜下注射を行ない,良好な成績を得たので報告する。

網膜剥離を伴つたCongenital Optic Pit

著者: 吉岡久春 ,   川島謙一郎 ,   永吉寛治

ページ範囲:P.1991 - P.1997

緒言
 視神経乳頭のpitは,稀な先天性の疾患ではあるが,しばしば黄斑部の異常を伴う事から注目され,又その黄斑部異常の成因については種々の議論があり,未だ定説をみていない。
 最近本邦でも渡辺等1),水野等2)及び荻野等3)に依り,pitから黄斑部に連なる浮腫を伴つた症例についての報告があるが,久留米大学眼科に於ても1968年より1970年の3年間にoptic pitの5例を経験し,そのうち3例に後極部網膜の限局性の透明な剥離,2例に網膜の円孔及び裂孔を伴う特発性網膜剥離の合併を見,各々に対してゴールドマン三面鏡に依る眼底検査,及び螢光眼底血管撮影等を行ない,pitに合併してみられる網膜剥離に関していささか考察したのでここに報告する。

第24回日本臨床眼科学会 Group Discussion

眼の形成外科(第5回)

著者: 松崎

ページ範囲:P.2003 - P.2006

 まず世話人,慈恵医大船橋知也教授の司会,ついで松崎浩(慈恵医大眼科)座長を推せん,予定演題に若干の変更があり,直ちに一般講演に入る。

糖尿病性網膜症

ページ範囲:P.2007 - P.2009

 多数の参会者(約100名)のもとに8題の講演が行なわれた。大部分の講演に盛んに討論が行なわれ,3時間の討議は賑やかであると同時に実りの多い会であつた。

新刊紹介

—Duke-Elder S.—System of Ophthalmology Vol. 12:Neuro-Ophthalmology/—Blodi, F. C. et al.—Ste. eoscopic Manual of the Ocular Fundus in Local & Systemic Disease Vol.2

ページ範囲:P.2006 - P.2006

 It is impossible to deny that neurology is one of the most fascinating subjects in the whole of me—dicine, and when it is remembered that neurooph—thalmology with its visual, pupillary, ciliary, motor, sensory and secretory systems permeates every portion of the central nervous system, and that 30% of our total sensory impulses are derived from the retinae, this aspect of neurology must be of particular importance.

第9回北日本眼科学会 特別講演

角膜移植の年度別推移

著者: 今泉亀撤 ,   渥美健三 ,   葉田野雅夫 ,   今泉信一郎 ,   三田洸二 ,   石川靖彦 ,   宮下浩

ページ範囲:P.2011 - P.2021

はじめに
 我国における角膜移植は,現在でこそ世人に特異の感をいだかせることが少なくなってきたが,最近の本手術の急速な進歩と広範な普及とを,20年以前に予想し得た方が,果して存在したであろうか。
 角膜移植そのものの歴史は,決して新しいものではなく,諸外国では,今世紀初頭から既に生体摘出眼の応用が試みられていたが,1928年,Filatovが初めて死体角膜の全層移植に成功して以来,アメリカを初めとする各国では,本手術は,社会的に何等の制約を受けることなく,臨床面で盛んに施行されるようになった。Filatovの1945年の報告例は,実に824例にものぼっている。

学会印象記 第9回北日本眼科学会 グループディスカッション

螢光眼底

著者: 杉浦清治

ページ範囲:P.2023 - P.2025

 第9回北日本眼科学会は1971年6月12,13日の両日,入野田教授主宰の下に,青森市において開催された。初日の午後に五つのグループディスカッションが行なわれたが,筆者は「螢光眼底」に出席したので,その模様をやや綜説的に述べてみたい。螢光眼底については第2日午後に鹿野前教授の特別講演があり,見事なスライドで聴衆を魅了した。たしかに螢光眼底造影法は臨床をぐんと楽しく,深いものにしてくれた。さて今回の会には,鹿野前教授,清水(弘)助教授,水野教授,船橋教授,石川(清)助教授,その他の諸氏がはるばる参加して討論に加わつてくれた。
 横山(慈大)は眼底写真の螢光像の濃淡と血中フルオレスセイン濃度との関係をみた。螢光造影の強さは頸動脈血のフルオレスセイン濃度と平行し,橈骨動脈や静脈血のそれとは平行はしない。最高の螢光造影は頸動脈血中の濃度が13〜5mg/dlの間にあるときに得られるという。周知のように,よい造影はフルオレスセイン濃度が高すぎても低すぎても得られないのであつて,毛細血管では10−3g%溶液がよく造影されるという実験成績と一致するのである。演者自身が実験台となつて,頸から採血するという熱意に敬意を表したい。血中に混入したフルオレスセインソーダは,24時間の経過では血球やヘモグロビンに結合せず,また螢光度も低下しないという。

臨床電気生理

著者: 米村大蔵 ,   河崎一夫

ページ範囲:P.2027 - P.2029

 第9回北日本眼科学会にあわせて「臨床電気生理」グループディスカッションが1971年6月12日に青森市において開催された。8席の講演と討論の内容および著者らの感想を,発表順序に従つて略記する。

小児眼科

著者: 浦山晃

ページ範囲:P.2031 - P.2033

 1971年6月12,13の両日,青森市において開催の第9回北日本眼科学会(第33回東北眼科学会と合併)の際,五つのグループディスカッションが催され,そのひとつとして「小児眼科」が行なわれた。
 主催者の弘前大学眼科,入野田教授から最初にこの企画について相談を受け,世話人を依頼されたとき直ちに思つたのは,全国的な規模で行なうか,それとも地方的なものにするかの件であつた。毎年秋季の日本臨床眼科学会の際に,同時に行なう中央的なグループディスカッションのひとつとして小児眼科がとりあげられてから,もはや5年になる。最初の1967年には自由演題であつたが,翌年からは世話人の肝煎りで,一つの特別講演と一定の主題のもとに集められた講演とが行なわれている事は御承知の通りである。しかし今回の北日本学会の如く開催地が地方にかたよつている場合には,参加者の範囲が限られてくるので,予め主題を限定してかかることには無理がある。そこで,今回は,小児眼科に関心を持つ者同志が,互いに資料を持ち寄つて意見なり疑問なりをゆつくり話合う場を提供するという主旨で,演題も自由に,小児眼疾患に関する一般として募集した。幸いにしてそれぞれの病院や学校において,自らの興味を以てなされた仕事について多数の応募があり,一部は一般講演に回すなどして,10題を揃えることができた次第である。

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第20回総合医学賞入賞論文発表

ページ範囲:P.2030 - P.2030

 第20同総合医学賞入賞論文は,例年通り昨年1月から12月までの医学書院発行の原著収載各雑誌から最優秀論文として選ばれた下記13篇に決定した。
 贈呈式は7月27日午後6時から東京・麻布のホテルオークラで開かれ,入賞の13論文に対してそれぞれ賞状・賞金・賞牌および副賞が贈呈された。式終了後引続いて行なわれた祝賀パーティーでは選考委員(各誌編集委員),来賓多数が受賞者をかこみ,新らしい研究をめぐっての歓談が続いた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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