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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科26巻1号

1972年01月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・167

ベーチェット病の家族例

著者: 青木功喜 ,   勝俣寛 ,   二神種忠 ,   佐竹幸雄

ページ範囲:P.5 - P.6

〔解説〕
 ベーチェット病の本態に挑むにはこの疾患に共通な因子を種々のアプローチで究明する方法と極めて稀な症例の詳細な検討により,正常対照群との間の差を導き,これより本態に近づこうとする方法が考えられる。前者については病理組織学的検索,免疫血清学的検討,電子顕微鏡的研究,臨床的問題の検索,疫学調査があり,後者については集団発生例の有無,家族内発生例,病原体分離の試み,臨床像と剖検例の対比等種々の可能性が残されており,その結果が少しずつ判明している。今回の報告は後者のunusual caseとして家族症例について述べる。
今迄の報告によると家族例は第1表の如く,同胞例が半数以上を占めており,親子例は少なく,夫婦例の報告は見出す事が出来ず,男女による差はない。遺伝的素因を考えさせる因子や感染による事実がなく,共通した体質というものが多く関与していると推定される。その臨床症例の症状では精神神経症状を示している例が多い事が注目されるところである

新春座談会

明日の眼科

著者: 三島済一 ,   徳田久弥 ,   山本覚次 ,   石川哲 ,   丸尾敏夫

ページ範囲:P.7 - P.17

 三島(司会)きようは「明日の眼科」というテーマで新しい大学の教授に就任されました先生から,明日の眼科に対するビジョンをお伺いしようという趣向でございます。特に山本先生には遠路はるばるおいでくださいまして,本当に御苦労様でございました。

臨床実験

眼窩に発生した骨の好酸球性肉芽腫の1症例

著者: 大西克尚 ,   平島直子

ページ範囲:P.19 - P.22

緒言
 Eosinophilic granuloma of bone (骨の好酸球性肉芽腫)は,細網内皮細胞の増殖を基盤とし,多数の好酸球の浸潤を伴つた特徴のある組織像を示す比較的まれな疾患であり,1940年Lich—tensteinら1),Otaniら2)により命名されたものである。さらにその後Lichtenstein3)(1953)はeosinophilic granuloma of bone, Hand-Schüller-Christian病,Letterer-Siwe病の3者は病理学的には細網内皮系の疾患という点で一致しており,これらは同一基礎疾患の異なつた臨床病型であると述べ,一括してHistiocytosis Xと総称することを提唱した。
 私達は,左側の眼瞼腫脹を主訴とした患者のレントゲン像より,eosinophilic granulomaの存在を疑つたが,病理組織学的にもそれが証明され,腫瘤摘出後にはステロイド療法を行なつて好結果を得た1症例を経験したので報告する。

白内障術前検査としての網膜感電力検査

著者: 原たか子 ,   原孜

ページ範囲:P.23 - P.28

緒言
 1963年,藤井1)はelectric phosphene現象を利用し,網膜感電力の簡便測定法を発表し,次いで,これを白内障術前検査に応用して2)その成績を報告している。著者等は,ここ数年間,白内障術前検査として,網膜感電力検査の追試を行なつてきたが,その結果,本法は簡便であり,ERGの探知し得ないある種の疾患を予知し得ることが可能であり,白内障術前検査としてERGと組み合わせて必ず行なうべき最少の検査法であると考えるに至つたので,ここに追試の成績を報告する。

ERGの各波面積計測法(第1報)—律動様小波消失型糖尿病性網膜症のa波面積値

著者: 瀬戸川朝一

ページ範囲:P.29 - P.32

緒言
 糖尿病性網膜症(以下本症と略す)のERGが特異な変化をきたすことは既に知られている4)6)7)。著者5)は,先に本症21例の律動様小波を検索し,減弱もしくは消失傾向にあることを確かめ,特に各小波群の頂点潜時を比較検討した結果,頂点潜時にやや短縮傾向のみられることを知り得た。今回はa波の面積を計測方法について述べ,本症で律動様小波が全く消失した5例10眼を対象に,a波振幅,a波頂点潜時ならびにa波の谷の面積を計測し,結果を得たので報告する。

アトピー皮膚炎に白内障と網膜剥離を伴つた症例

著者: 橋井麗子 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.35 - P.40

緒言
 アトピー性皮膚炎に合併する眼疾患としては,白内障が最も良く知られているが,その他に,眼瞼皮膚炎,角膜炎,円錐角膜,虹彩炎および続発性緑内障,網膜浮腫,網膜剥離等が報告されている。白内障はアトピー性皮膚炎患者の5〜10%に合併するとされ,わが国でも今迄に19例の報告を数える1)。本白内障の摘出手術後に,網膜剥離の合併率が高いとされている。一方白内障手術に関係なく,網膜剥離が存在することも報告されており,アトピー性皮膚炎に白内障と網膜剥離を合併した症例は,三徴候合併症例(Die Trias Der—matose,Katarakt u Ablatio-retinae)として取り扱われている。このような症例は著者の文献調査において,今迄に14例の報告が見られるが,わが国ではまだ報告をみない。われわれは,最近アトピー性皮膚炎に白内障と網膜剥離を伴つた症例を経験したので報告する。

渦静脈圧Tonography法

著者: 糸井素一

ページ範囲:P.41 - P.47

はじめに
 今から20年前に開発されたTonography1)2)は段々と普及し,今では世界中で広く使われている。眼の房水動態とか,緑内障の問題点を明らかにしたTonographyの功績は高く評価されているが,その反面,Tonographyには誤差が多く,測つた房水流出率とか,房水産生率はあまり信用できないという事実を否定することはできない3)
 この20年の間に,沢山の人がTonography法を改良して,信頼するに足る房水流出率とか,産生率を測ろうと試みたが,Tonographyの誤差をうまく追放することはできなかつた。

LysozymeおよびLysozyme含有点眼薬の急性ならびに亜急性毒性

著者: 豊島滋 ,   藤田晴久 ,   神成裕 ,   大郷利治

ページ範囲:P.49 - P.56

緒言
 Lysozyme含有点眼薬が粘膜刺激性を示さず,安全性の高いものであることはすでに鈴木1),あるいは早川ら2)の報告があるが,我々はこの安全性をさらに確認するため,Lysozyme溶液およびLysozyme含有点眼薬をウサギに1日3回,30日間連続点眼し,その局所刺激性を検べるとともに,Lysozyme抗体産生の有無を眼房水と血清について測定し,アナフィラキレー発現準備状態が形成されているか否かについて検討を加えた。また,マウスに大量投与した際の急性毒性についても検索を行ない,Lysozyme溶液ならびにLysozyme含有点眼薬いずれも何ら刺激性も抗体産生も急性毒性も示さないこととを認めたので,その結果について報告する。

談話室

西北ネパール,ジュムラにおけるEye Campに参加して—(その1)

著者: 神谷貞義 ,   西岡啓介

ページ範囲:P.57 - P.60

ジュムラについて
 Eye Campとは,眼科医を中心とした移動診療隊が僻地を移動巡回して,眼の検診,並びに白内障を中心とした開眼手術を行なうものをいう。こうしたEye Campは,各国,特にインドで頻回に行なわれており,ネパールで本格的なEyeCampが開かれたのは10年前,奈良医大の神谷が,百瀬,畠山,岡の三講師を伴い,カトマンズーにおいて,ネパールの国立病院の眼科医長Dr.Joshi及びDr.Prasadoとともに,共同して開いたのが最初である。その後,このことを契機として,奈良医大とDr.Joshi,ネパールの王家の人達,要人と親交が始まつた。そのことは,ネパールを訪れるまで,全くその国の歴史,文化について知らなかつたのに,カトマンズーに行き,そこで,けんらんたるネパールマルラ王朝の遺跡を見,又,釈迦の誕生地,ルンビニーを訪れ,その国の歴史,文化の歴史的変遷をながめ,それを通して,逆に日本の仏教を中心にした歴史,文化の流れの裏に流れる真の姿を発見できた。
 そのことは,ネパールを,我々日本人の古里と感じとらせるとともに,ネパールの人達とのより深い親近感を増させることになつたからである。

手術

網膜剥離手術と渦静脈

著者: 丸山光一

ページ範囲:P.65 - P.73

緒言
 網膜剥離の場合,網膜裂孔は一般に網膜周辺部に見出されることが多い。しかし時として裂孔の位置が渦静脈の強膜貫通部位近くの網膜に認められることもあり,このような網膜剥離は手術の際渦静脈が妨げになり,著しく複雑困難になる。すなわら,裂孔がかなり深い位置(網膜中心部寄り)に存在するためにdiathermyを行なう際には,強膜をかなり深部まで露出せねばならず,しかも渦静脈に手術侵襲を加えぬように注意を払いながら,的確に裂孔閉塞を行なわねば手術の目的は達せられない。また強膜に対する種々の補助千術(scleral infolding,scleral buckling,equato—rial ring operation等)の場合も,渦静脈損傷の危険が大きいが,これは絶対に避けねばならぬ。またlight coagulation,cryoapplicationの場合も渦静脈は,常に損傷の危険にさらされており,手術法の如何にかかわらず慎重な手術を要求されることはいうまでもない。
 著者は過去において渦静脈近くにある,網膜裂孔により発生した剥離に対して手術を行ない,渦静脈に損傷を加えるという苦い経験を味わったことがある。以下に渦静脈損傷2例を紹介し,あわせて最近著者が工夫採用している渦静脈損傷防止策について述べる。

涙嚢摘出後涙道形成術の一成功例

著者: 三宅正夫

ページ範囲:P.75 - P.79

緒言
 涙道疾患の治療の目的は,導涙機能の保持および回復にある。
 涙嚢摘出を余儀なくされた症例に,涙小管涙嚢窩を経て鼻涙管を利用した涙道形成術を行なつた所,幸いにして成功した。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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