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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科26巻10号

1972年10月発行

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連載 眼科図譜・180

黄斑部血管走行異常

著者: 前川暢男 ,   武井洋一 ,   米地和夫

ページ範囲:P.1201 - P.1202

〔解説〕
 網膜血管の発生学についてはいまだ十分に解決されていないが,われわれは黄斑部周辺の血管分布異常を認める2例に遭遇したので報告する。
 2例とも上耳側静脈のかなり太い分枝が中心反射内に入り,中心窩近くまで達しているが,中心窩を避け,動静脈吻合は認められなかつた。また,他眼は正常である。

綜説

水晶体におけるCortisol代謝,特にCortisol-binding proteinを中心として

著者: 小野繁 ,   平野浩子 ,   小原喜重郎

ページ範囲:P.1203 - P.1209

 生体内におけるsteroid hormoneの代謝は広範に研究されているが,水晶体にはsteroidhormoneの代謝系ははたして存在するかどうか現在まで不明であつた。
 近時steroid hormoneの長期投与による副作用の一つとして統計的な観察ではかなりの頻度で蛋白代謝の低下による水晶体の混濁をきたすことが報告されている1)2)。しかしながらその成因については明らかでなく,それに関する生化学的な検索はなされていない。われわれは水晶体においてsteroid hormoneがどのように代謝されるかを知ることはこの興味ある問題を解決する上に重要であると考え,検討を加え,数々の知見を見出したので,本領域におけるsteroid hormone代謝に関する研究の嚆矢としてのわれわれの仕事について紹介し,steroid白内障の成因についても考察を加えたい。

臨床実験

網膜静脈枝血栓症に対する光凝固術

著者: 瀬戸川朝一 ,   渡辺玲子

ページ範囲:P.1211 - P.1214

緒言
 網膜静脈の一枝に血栓が生じると,その支配領域に神経線維の方向に一致した出血がみられる。なかでも最も頻度の高いものは,上耳側静脈,ついで下耳側静脈である。これら一枝だけの閉塞では,網膜中心静脈血栓症のごとく,突然の視力低下を訴えることはないが,それらがいずれも黄斑部の上方もしくは下方に位置するため,徐々に黄斑部に病変が及び,出血斑,白斑,および黄斑浮腫をきたし,視力低下につながる。また網膜静脈枝血栓症は,自然にあるいは薬物療法によつて,きわめて緩慢ではあるが治癒することが知られている。しかし,その経過の長いこと,視力の予後が保障されないこと等不満足な面が多々ある。著者らはこの度,網膜静脈血栓症の症例に光凝固術を試み著効をみたので報告する。

球後視神経炎,ついで下垂体腫瘍を疑わせた術後性副鼻腔嚢腫の一例

著者: 高畠稔 ,   藤崎裕治 ,   松浦皓二 ,   三谷恭夫 ,   岩槻清

ページ範囲:P.1215 - P.1222

緒言
 球後視神経炎は原因の不明なものが多く,ステロイド等の投与により,原因の判らぬまま症状の好転する例を少なからず経験する。われわれは最近,球後視神経炎の診断のもとに,ステロイドの結膜下注射,内服等で1年以上ものあいだ寛解と再発をくりかえし,視野および頭部X線像,脳血管像等より下垂体腫瘍を疑つて開頭した結果,後部副鼻腔の術後性嚢腫の圧迫による,いわゆる球後視神経炎と判明した興味ある症例を経験したので報告する。

黄斑部扁平網膜剥離を伴う先天性視神経乳頭窩

著者: 大田実 ,   浅山盾夫

ページ範囲:P.1223 - P.1227

緒言
 先天性視神経乳頭窩は1882年Wietheによりはじめて記載された比較的まれな疾患である。Regenbogen1)によれば,その25%に中心性網膜症,黄斑部嚢腫,黄斑部網膜剥離,黄斑部裂孔,黄斑部網脈絡膜出血,黄斑部変性,色素沈着等の黄斑部障害が認められる。先天性視神経乳頭窩に合併して各種の黄斑部障害の起こる機序が種々推測されているが,私どもも今回扁平な黄斑部網膜剥離を伴う乳頭窩の2症例について,螢光眼底造影によりその機序を推測しうる所見を得たのでここに報告する。

小型広角検眼鏡について

著者: 野寄達司 ,   馬場賢一 ,   藤田邦彦 ,   田中宏和 ,   加藤尚臣 ,   田尾森郎 ,   清水利治

ページ範囲:P.1229 - P.1231

緒言
 検眼鏡には多くの種類があり,それぞれに特徴を有しているが,現在最も広く使用されているのは直像式小型検眼鏡であろう。この直像鏡は,小型プリズムで瞳孔の下半部から照明し,上半部からレコスレンズ盤で観察するというきわめて簡単な光学系でありながら,全体が小型で正常瞳孔で鮮明に眼底を正立像として観察することができ,臨床上欠くことができない診断器具のひとつである1)。しかし一方に視野が狭いこと(12°前後),患眼の屈折異常による像の大きさの変化が著しいことと,特に強度の屈折異常,たとえば高度近視では像が拡大し乳頭またはその一部しかみられない(相対的な視野の狭小)という欠点も生ずる。この狭い視野を補うために,直像鏡による眼底の観察法は,いわゆる組立て法であつて,眺めまわして頭の中で所見をまとめるわけであるが,時に見落とす危険も多い。また最近では眼底病の精密な診断には,写真撮影を含めて散瞳する場合が多くこの場合には正常瞳孔による観察という直像鏡の最大の利点が失われるのみでなく,射出瞳の拡大のために鮮明度が低下する恐れがある。
 さてこれらの直像鏡の欠点を補い,特に観察視野を広げることにより,眼底所見の位置的関係を明確にすることは,病変の正確な診断のために非常に有益なことである。この目的で現在市販されている検眼鏡は,たとえば,ナイツC型検眼鏡,およびA.O.monocular ophthalmoscopeがある2)

落射型螢光顕微鏡所見にもとづく螢光眼底像の解説

著者: 水野勝義

ページ範囲:P.1233 - P.1239

緒言
 フルオレスセン組織化学の発達に伴い,螢光眼底像を単なる推論としてでなく,形態的,病理学的見地から解読しようとの試みが進みつつある。しかし,その目的に関する限り,パラフィン,ないし凍結切片を用いて,螢光顕微鏡で観察する古典的な方法による所見のみでは,十分な情報が得られない。したがつて,網脈絡膜の伸展標本の螢光顕微鏡的研究が必要となつた。凍結乾燥伸展標本作製法は水野1),Mizuno et al.2),Mizuno3),佐々木ら4)により報告されてきたが,これらの方法では,従来の螢光顕微鏡を用いているため,透過光線によつて試料を観察している。したがつて,螢光眼底写真の撮影では,常に励起光が前面から入射されるという条件とは根本的に異なり,この方法のみでは確実な論拠を与えるに至つていない。そこで,励起光を標本の前面から照射する螢光顕微鏡の必要性を痛感し,斜照型(落射型)螢光顕微鏡を試作し,これにより伸展標本を観察し,螢光眼底写真所見における種々の問題点に新しい解釈を試みたので報告する。

第5回アジア・アフリカ眼科学会印象記

第5回アジア・アフリカ眼科学会を終えて,他

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1248 - P.1268

 第5回アジア・アフリカ眼科学会は本年7月9日から13日まで5日間にわたつて帝国ホテルで開催された。学会前に登録された参加者約500名,当日登録して参加した者約200名で,予想をはるかに上回る盛会であった。会場は800人を収容できる場所であつたが,開会式の時には座席が不足し,大勢の人が立つたままでなければならないほどであつた。外国からの出席者は約120名で,所属は世界各国にわたつた。すなわち,アルジェリア,ブラジル,象牙海岸,チェコスロバキア,セイロン,エジプト,印度,インドネシア,イラク,朝鮮,レバノンモロッコ,ナイジェリア,パキスタン,フィリピン,カタール,サウジアラビア,ルーマニア,南ア,スーダンシリア,タイ,トルコ,チュニジア,米国,ソ連,西独マレーシア,フランス,台湾,ニュージランド,セネガールおよびジョルダン(順序不同)であつた。本学会が計画された当初の予想は参加国数31,参加見込人員国外100,国内250,計350ということであつたので,予想外の盛況であつたということができる。最初の計画では日生会館を会場とする予定であつたが(収容400),ここではとても収容することができない見通しとなつたため,帝国ホテルに変更された次第である。また会期も演題多数のため4日間から5日間に延期され,会場も最初なるべく一会場でできるように計画したけれど,到底収容しきれないことが判明したので,午後は3日間を2会場に分けて行なうことになつた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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