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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科26巻11号

1972年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・181

眼球打撲と隅角離解について

著者: 高橋禎二 ,   鈴木光雄 ,   藤田邦彦 ,   鈴木正子 ,   千代田和正 ,   中島章

ページ範囲:P.1289 - P.1290

〔解説〕
 眼球打撲に起因するangle recession (隅角離開)は,外傷性緑内障の病因と見なされている。Angle recessionの存在は,現在正常眼圧であっても,将来緑内障の発生の可能性が考えられ,経過観察が必要と考えられるが,angle recessionは軽度眼球打撲でも発生することが確認されている。われわれは,スポーツ選手,老人性白内障患者中のangle recessionの頻度について検討した。検出したangle recessionを有する被験者の数例について,隅角写真を供覧する。

臨床実験

眼球打撲と隅角離開について

著者: 高橋禎二 ,   鈴木光雄 ,   藤田邦彦 ,   鈴木正子 ,   千代田和正 ,   中島章

ページ範囲:P.1291 - P.1296

緒言
 眼球打撲は,その受傷時の外力により,重篤な眼球組織の破壊をきたすものから,眼瞼浮腫程度ですむ場合までさまざまであるが,その後遺症,併発症もさまざまである。
 外傷に起因する各種緑内障も,現在では成書に系統的に分類されているが1),眼球の鈍的外傷後(打撲後),あたかも原発性広隅角緑内障のごとくの経過をとる緑内障と,隅角部変形(angle reces—sion)との関連が証明され2),原発性広隅角緑内障との鑑別がされをようになつたのは,比較的最近のことである。

糖尿病性網膜症の分類と病態—新しい分類の提案と文献的考察

著者: 菅謙治

ページ範囲:P.1297 - P.1312

緒言
 1875年にLeberが糖尿病に合併する網膜病変をRetinitis (Retinopathia) diabeticaと命名し,さらに1877年にMachensieが糖尿病患者に毛細血管瘤を認めて以来,糖尿病に合併する網膜病変が注目されるようになり,1890年にはHir—shbergによつてその全容がほぼ明らかにされたが,その後糖尿病性網膜症には異なつた2種類の病変が存在することがわかり,1953年のEhlers以来,糖尿病性網膜症を単純型病変と増殖型病変に分けて考える人が次第に多くなつてきた。一方網膜病変を進行状態に応じて把握しようとする試みも行なわれ,1934年のWagenerの分類をはじめとして多くの人によつて病期分類が行なわれてきた。
 病期別分類は第1表に示したごとくに「個々の病変の進行程度に重点をおくか」あるいは「網膜症全体の進行程度に重点をおくか」によつて2つに大別される。さらに後者は網膜症を完全に増殖型と単純型に区別しているか,あるいは不完全に区別しているか,または全く区別していないかによつて3つに細分されるが,これは「増殖型病変が必ず単純型病変の存在下に発生する」という所見に対する解釈の仕方の相違によるものである。

中心性網膜炎のFellow Eye Syndromeについて

著者: 甲田尚也

ページ範囲:P.1313 - P.1319

緒言
 中毛性網膜炎についての病態生理的解釈は,螢光眼底撮影を応用することにより大きな進歩を遂げたが,その病因の本態は依然として不明のままである。そして本疾患はだいたいにおいて片眼発症の形をとるが,時を異にして,また,ごくまれには同時に他眼にも発症することはよく知られている事実である。先に稲富は中心性網膜炎のfellow eyeにつき興味ある1例を報告しているが,今回著者は,中心性網膜炎患者25例につき,両眼の螢光眼底撮影を行ない,患眼と"健眼"の関連性について検討を試みた。

外直筋麻痺に対する筋移植後,合併症を起こした2症例

著者: 長谷川一郎 ,   相沢芙束

ページ範囲:P.1321 - P.1328

緒言
 1907年にHummelscheim1)が外直筋麻痺に対し,上下直筋の外側1/3を麻痺筋付着部の上下へ移植する方法を提唱して以来,麻痺性斜視に対する筋移植術は多数行なわれてきている。本邦においても,中島実氏2),須田経宇氏3)らの報告があり,1965年には,近藤正彦氏4)の35例の報告がある。国内,国外を通じて,最も報告の多い麻痺は外直筋麻痺の症例で,手術法は内直筋の後転,外直筋の短縮とともに上下直筋の移植という4直筋を同時に操作する方法が最も多く行なわれている。しかし,4直筋を同時に操作することは,眼球に対する侵襲がかなり大きいと予想され,術後,前毛様体血管の虚血壊死による合併症を起こした症例が1957年にStucchi5)らによりなされて以来,Forbes6),Girard7)などにより追加報告されているが,本邦における報告はみられないようである。今回,われわれは過去2年間(1970年,1971年)に,3名の外直筋麻痺患者に対して,4直筋の同時筋移植を行なつた結果,術後に合併症を起こした2症例を経験したので報告する。

ステロイド点眼剤メドリゾンおよびフルオロメソロンの眼圧に対する影響

著者: 藤田邦彦 ,   高橋禎二 ,   鈴木光雄 ,   鈴木正子 ,   糸井素一

ページ範囲:P.1329 - P.1335

緒言
 眼科領域においてもステロイド剤は重要な薬物であるが,一方においてステロイド局所使用による緑内障や,感染症の誘発を起こした例も多く,ステロイド点眼剤の副作用はわれわれ眼科医にとつて大きな問題となつている。したがつてステロイド局所使用にさいし細心の注意を払うのはもちろんであるが,十分な消炎効果があり,しかも眼圧上昇の副作用の少ないステロイド点眼剤の開発や,新しい使用方法の工夫がなされている。われわれは最近アメリカで発売されている新しいステロイド点眼剤,メドリゾン(アレルガン社調剤,千寿製薬提供)およびフルオロメソロン(参天製薬調剤)を入手できたので,この薬物を採用する意義があるかどうかを知るために,この2つのステロイド点眼剤が眼圧異常上昇を起こすかどうかを調べてみた。メドリゾンは現在国内では販売されていないが,フルオロメソロンはオキロン軟膏(皮膚科用軟膏)として主に皮膚科領域で用いられ,低濃度で強い消炎効果が得られ,しかも局所から吸収されても全身への影響は少ないとされている。

手術

鑷子型虹彩リトラクター

著者: 松崎浩

ページ範囲:P.1337 - P.1339

 Cryo-surgeryが進歩し,特に白内障の冷凍嚢内摘出法(cryoextraction)が一般化してきている。従来嚢内摘出術は嚢外摘出術にくらべ高度の技術を要し,また危険度が高いといわれていたが,冷凍手術法の発展や器械器具の改良で比較的容易に,しかも安全に全摘出術を行なうことができるようになつたためと思う。
 白内障全摘出術を冷凍法で行なう場合,術中術後の偶発事故に出遇うことなく,円滑に行なうためには,眼圧の制御と瞳孔を適当な大きさに保つことが必要であるとされているが,著者はこれに加えて虹彩リトラクターの適応なものを選ぶことが存外重要であると考える。

談話室

日本近代眼科開講百年史—幕末における日本眼科事情その1

著者: 中泉行正

ページ範囲:P.1345 - P.1353

緒言
 近代日本医学のあけぼの,それはすでに江戸時代中期に始まる。
 安永3年(1774)杉田玄白らによるはじめての本格的翻訳医学書「解体新書」の公刊は,わが国にいやが上にも蘭学熱を盛んにし,ついに西洋医学への道を切り開いた。眼科においてもこの蘭学熱の影響により杉田立卿が「和蘭眼科新書」を訳述し,これによつて日本近代の眼科もその基礎が固められ,その知識はさらにシーボルトの来日によつて実地に教えられ,ここに西洋眼科が名実ともに紹介されたのである。そしてこの西洋眼科がより多く,より正確に修得されるようになるのは幕末から明治期にかけてであつて,多くの欧米人をわが国に招き直接の指導を受けたのである。またその指導が組織的に行なわれるようになつたのは,明治新政府が樹立され,わが国の医学体系を独逸医学に範をとつて教師を独逸から正式に招いて開講された明治4年(1871)以降であり,そして西洋眼科が日本人自身の力により,わが国の医学教育の中に独立した一分科として採り入れられて行なわれるようになつたのは明治10年以後のことである。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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