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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科26巻2号

1972年02月発行

雑誌目次

特集 第25回日本臨床眼科学会講演集(その1) 学会原著

流行性角結膜炎の感染予防について

著者: 根来良夫 ,   今西二郎 ,   岸田綱太郎 ,   原一仁

ページ範囲:P.108 - P.112

はじめに
 流行性角結膜炎については1959年の日眼総会において,宿題報告として三井,杉浦,大石らによつて大きくとり挙げられた。またその後も数多くの研究がなされ,その治療や感染予防について多くの報告がされている。しかし,現在もなおその流行におとろえをみせていない。
 昨年,私達はウイルス増殖抑制因子1)(インターフェロン)を流行性角結膜炎の治療,および予防を目的として局所的に使用し,その結果を報告した。この前回の臨床実験においてインターフェロンは本疾患の予防に効果的であると考えられたので,今回は家族内感染の予防のみを目的として投与を行なつた。また,本疾患の第一の感染源と考えられる院内感染を防ぐ目的で,消毒法についても実験を行なつたのでその結果を報告する。

黄色鉛筆による眼瞼肉芽腫とその実験的研究

著者: 松尾信彦 ,   岡部史朗 ,   山元和子

ページ範囲:P.113 - P.121

緒言
 色鉛筆による眼障害に関しては,すでに古くから紫色鉛筆について詳細な報告があるが1)〜12),黄色鉛筆による眼障害はいまだ報告されていない。著者らは最近,黄色鉛筆(ベンジジンイエローを含む)によつて眼瞼肉芽腫を形成した1例を経験し,さらに動物実験によりマウスの皮下に同様な腫瘤形成を認めたので報告する。

国立がんタンター病院における眼リンパ腫10例の検討

著者: 桐淵光智

ページ範囲:P.123 - P.131

緒言
 眼科領域のリンパ腫は悪性リンパ腫の一分症として現われる時と孤立性に現われる時とある。
 全身のリンパ組織の系統的病変が認められる時は前者と診断は容易であるが,これが存在せぬ孤立性リンパ腫ではこれが良性のものか悪性のものか鑑別するのに悩むことも少なくない。

涙嚢鼻腔吻合術後の長期観察例—特に吻合部の内視鏡ならびにX線造影所見について

著者: 田島幸男 ,   丸山宜子 ,   池上宗洋

ページ範囲:P.133 - P.141

緒言
 涙嚢鼻腔吻合術Dacryocystorhinostomy (以下DCRと略す)は,閉塞した鼻涙管のバイパスとして涙嚢から中甲介前方の鼻堤に開口し,総鼻道に通ずる涙液の流出路を造設する方法である。これによつて涙液のうつ滞は全く解消されるので,流涙の停止,涙嚢内に充満していた膿の消失など見事な結果が得られる。
 しかし,DCRの古典であるToti法による成績は満足されるものではなかつたので,いく多の改良が加えられ,涙嚢と鼻腔との粘膜を縫合するDupuy-Dutemps法8)に至つて,その優秀性が明確に立証された。

網膜下にフィラリアの迷入せる1症例

著者: 高久功 ,   三島恵一郎 ,   中塚和夫 ,   井上隆史 ,   金光二郎

ページ範囲:P.143 - P.150

緒言
 Filariaが眼球内に発見されることはまれであるが,わが国の文献では,古くから前房内あるいは硝子体中にFilariaが発見された報告が十数例ある1)〜14)。しかし,網膜下に生存せるFilariaを認めた症例はなく,外国において数例報告されているにすぎない15)17)〜19)
 われわれは網膜下に生存しているFilaria様寄生虫を発見し,寄生虫斃死後のブドウ膜炎の経過を観察し得たので報告する。

人工透析の眼圧に及ぼす影響

著者: 清水由規 ,   三原良武 ,   中村福志

ページ範囲:P.151 - P.154

緒言
 今回私どもは,尿毒症のため腹膜灌流を行ない,治療していた患者が,緑内障発作をきたし虹彩切除術を行なつた症例を経験した。
 血液滲透圧と眼圧との関係については,以前より諸家の報告があるので,本症例においても,患者が尿毒症であつたということと,腹膜灌流を行なつていということより,人工透析と眼圧との関係について検討したみた。

眼球圧迫試験(須田)後にみられた前房隅角出血

著者: 井上洋一 ,   井上トヨ子

ページ範囲:P.155 - P.159

緒言
 シュレム管(S管)に相当する部位に充血の認められることは,Salzmannの記載1)以来幾多の報告がある2)。しかしながら,一定の外力を加えてS管に充血を誘発せしめて観察したのは,Kronfeld3)4)がはじめてである。わが国においても,眼球加圧後のS管の充血現象について,池辺5)〜7)(10例20眼),大野8)(47例81眼)の詳細な観察がある。いずれもS管の充血を認めても,血液の漏出を伴つた例は皆無と報告している。
 著者らはPosner Schlossman の1症例で,S管の位置,幅等の状態を調べるために,須田圧迫試験を施行し,充血現象を誘発せしめたところ,加圧除去後S管より前房内への出血を認めた(Fig.1)。これまで,須田圧迫試験においては,いわゆる定型的な充血現象3)を認めるのみで,かような出血例の報告がなかつたので,さらに症例を追加して検索した。そして6例7眼にS管よりの出血を認めたので,その出血の状態とその原因と考えられる因子について報告する。

SINUSOTOMY IN GLAUCOMA SIPMLEX

著者: ,   C. Rai

ページ範囲:P.161 - P.164

眼精疲労患者より緑内障疑者の検出について

著者: 新居啓子 ,   宇津木勝彦 ,   杉本圭弘

ページ範囲:P.167 - P.171

緒言
 一般に緑内障患者は眼精疲労症状を訴えると言われている。私どもは,眼精疲労症状を訴えた患者を対象として,これらの症例より緑内障患者,あるいは緑内障疑いの者が検出できるか否かを検討してみた。眼精疲労症状といつても主訴は各種であるので,一応初診時において眼精疲労の検査ならびに眼圧を測定し,一応眼精疲労と診断された症例を再度来院させて,フリッカー視野を主とした視野の測定,アプラネーショントノメトリー,トノグラフィー,隅角検査を行ない,緑内障疑者の検出を試みた。
 対象は各年齢の23例である。これら症例の大部分は,すべての検査において緑内障あるいは緑内障疑いと思われるような所見は得られなかつたが,ついで述べる3症例は異常なフリッカー視野が認められ,1例ではフリッカー視野に変化はないが,その後の経過で明らかに緑内障症状を呈するに至つたふつうにみられる症例である。

原発閉塞隅角緑内障の研究—特に周辺虹彩前癒着の量と手術適応について

著者: 能勢晴美

ページ範囲:P.173 - P.181

緒言
 原発閉塞隅角緑内障の治療は外科的なそれが第一とされているが,その術式の選択,就中虹彩切除術,濾過手術のいずれをとるかの選択にさいして,隅角検査所見およびトノグラフィーによる房水流出率が重要な資料となることはいうまでもない。
 原発閉塞隅角緑内障の眼圧上昇機転は,虹彩根部による隅角線維柱帯の閉鎖であることは周知の事実であるが,この隅角閉鎖には二種類あるとされている。一つは虹彩根部が単に隅角線維柱帯に接しているだけで器質的癒着のない可逆的なもので,いわゆるappositional closureと呼ばれているものである。もう一つは両者の間に不可逆的な器質的変化,すなわち周辺虹彩前癒着(以下PASと略す)が存在するものである。これらの二者の鑑別は圧迫隅角検査を行なうことにより可能である。

Waldenström's Macroglobulinemiaにおける眼球の組織学的所見—特に静脈のソーセージ様変化について

著者: 酒井文明

ページ範囲:P.183 - P.195

緒言
 Waldenström's macroglobulinemiaのさいにみられる多彩な網膜変化のうち,静脈の怒張,蛇行とともに本症に特有な血管変化として,astring of sausage, sausage like appearanceなどと形容される静脈のくびれがしばしば認められる。著者は第1報7)において,網膜,虹彩等にみられる本症の変化につき報告したが,今回は網膜静脈にみられるこれらの変化を,他疾患の場合を参考にして,形態的変化を中心として,螢光眼底撮影による所見などを加味し,いわゆる"くびれ"の問題につき考察したので報告する。

連載 眼科図譜・172

涙腺排出管結石症の1例

著者: 長嶋孝次

ページ範囲:P.105 - P.106

〔解説〕
 涙腺排出管にみられる疾患は少なく,先天性涙腺瘻1),ダクリオープス1)2),睫毛異物3)ぐらいなものである。結石症については外国文献にはみられるらしいが4),わが国ではまだその報告がない。
患者:30歳男性会社員

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眼底検査のすすめ—眼底写真読影会

著者: 初田博司

ページ範囲:P.200 - P.201

 眼底の風景は公開された。

談話室

西北ネパール,ジュムラにおけるEye Campに参加して—(その2)

著者: 神谷貞義 ,   西岡啓介

ページ範囲:P.203 - P.207

Eye Campの診療結果
 全受診患者840名のうち,男子564名,女子240名中,異常のないもの42名,不明4名であつた。それら患者の年齢分布を示せば第1表のごとくである。
 この表から,16歳から60歳までのものが567名で多数を占め,しかもそのうち男子が392名である点は,ジュムラ地区において,女が主として家を守り,男子は比較的自由な時間を持つ生活様式がとられていることが推測される。

臨床実験

広角眼底カメラによる螢光撮影について

著者: 田中宏和 ,   野寄達司 ,   馬場賢一 ,   藤田邦彦 ,   加藤尚臣 ,   田尾森郎

ページ範囲:P.213 - P.215

 著者らは,さきに発表した両凸型対物レンズを使用した大型眼底カメラ1)を用いて螢光撮影を行ない,良好な結果を得た。本カメラの特長はその撮影視野の広いことで(45度),従来のカメラ(30度)の約2倍の包括面積を有しているから,乳頭,黄斑部を含む後極の病変を一画面に撮影可能である。特に螢光撮影のごとく,変化が早く撮影中に視野の変更が困難な場合非常に有用である。今回は本カメラの使用経験から特にフィルター,フイルム等撮影条件について検討した。

緑内障のメンキンテストに関する研究

著者: 細田淳雄

ページ範囲:P.217 - P.228

緒言
 Menkin1)は炎症に対して新しい概念を有している。それによると炎症は,まず毛細血管における体液交流の障害をもつてはじまるという。すなわち,炎症局所では毛細血管の透過性が強く亢進するので,正常の濾過平衡も失われるために,組織細胞も透過性が亢進する。その結果,細胞内液が細胞外へ滲透してくるので,毛細血管周囲組織は血管と傷害細胞とから滲透してきた液で満たされるようになる。このような液は,血漿と傷害細胞から遊離してきた物質とから成り立ち,滲出液と名付けている。この滲出液中の毛細血管の透過性を高める因子は何かというに,MenkinはLeu—kotaxineなる物質を抽出した。Leukotaxineは比較的簡単なポリペプチッドで,拡散性で透析膜を通過するものであるが,Menkinはこれが炎症局所の傷害細胞の蛋白が崩壊する途中の産物であるとしている。そしてLeukotaxineの透過性を抑制し得る物質は,副腎ホルモンのみであると考えている。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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