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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科26巻3号

1972年03月発行

雑誌目次

特集 第25回日本臨床眼科学会講演集(その2)

第25回日本臨床眼科学会講演集目次

ページ範囲:P.246 - P.246

講演
全身麻酔下の小児眼圧について(第1報)
 ――シェッツ眼圧計による方法――………………湖崎  克・他…252
網膜色素上皮剥離について(第2報)
 ――色素上皮剥離を伴う中心性網膜炎の病理組織所見――…………盛   直 之…259

学会原著

全身麻酔下の小児眼圧について(第1報)—シェッツ眼圧計による方法

著者: 湖崎克 ,   山崎康宏 ,   遠藤律子 ,   山阻三樹 ,   柴田裕子 ,   小粟顕二 ,   北村征治

ページ範囲:P.252 - P.258

緒言
 顕微鏡手術の導入により,先天緑内障の治療面の進歩は著しいものがあるが,十分な治療効果を得るには,本症の早期発見が基礎となることはいうまでもない。一方,本症の診断は対象が小児であることから,もつぱら他覚的所見によることが多く,就中,初期の診断には眼圧測定が重要である。しかし,小児の眼圧測定にはしばしば全身麻酔が必要となり,眼圧値を容易に測定することは困難であり,また測定し得ても,いわゆる正常値というものが明らかでないために,必ずしも測定値を有効に生かし得なかつた。
 そこで,われわれは当小児保健センターで,外眼手術を要す患児に,全麻下,局麻下の眼圧をシェッツ眼圧計にて測定を行ない,全麻下の小児の平均眼圧測定目盛値を求めるとともに,局麻下での測定値との比較により,全麻下の眼圧への影響などを検討し,結果を得たので報告する。

網膜色素上皮剥離について(第2報)—色素上皮剥離を伴う中心性網膜炎の病理組織所見

著者: 盛直之

ページ範囲:P.259 - P.264

緒言
 先に1)網膜色素上皮剥離(以下PEDと略す)の臨床所見について報告したが,今回は2年間の経過観察をしたPEDを伴う漿液性中心性網膜脈絡膜炎(以下中心性網膜炎と略す)の患者が死亡し,眼球を剖検する機会を得たので,その病理組織所見について述べる。

網膜細動脈の狭細について—Pheochromocytomaの症例からの一考察

著者: 吉本弘志 ,   田中洋

ページ範囲:P.265 - P.270

緒言
 網膜細動脈の狭細は,褐色細胞腫を含めた種々の高血圧症の眼底変化の主なる所見であることは,すでに多くの研究者によつて明らかにされている1)〜7)9〜16)。一方この狭細という所見について,教室の高橋ら14)15)は,その可逆性,不可逆性について述べ,これを機能的狭細,器質的狭細の二者に分けて考えるべきだとしている。今回,著者らはこの二者のうち,機能的狭細の範疇に入るべきものと思われる症例,すなわち褐色細胞腫Pheochromocytoma (以下PCと略す)について,網膜細動脈の変化をその腫瘍摘出の術前,術後にわたり,観察する機会を得て,その狭細が可逆性のものであると結論できる所見を得たのでここに報告する。

未熟児網膜症の光凝固による治療(Ⅲ)—特に光凝固実施後の網膜血管の発育について

著者: 永田誠 ,   鶴岡祥彦 ,   山本美夫

ページ範囲:P.271 - P.280

はじめに
 重症の未熟児網膜症活動期病変に適切な時期に光凝固による治療を加えれば,ほとんど全例において完全な治癒が得られることは,われわれが1968年以来数回にわたって報告し,その後多くの追試によって確認された。
 しかし治療法が明らかになったというだけでは,本症による失明例を根絶するという最終目標から程遠く,それまでに解決すべき幾多の問題が存在する。このうち特に重要なポイントをなすものは光凝固治療の適否の判定,ならびに治療実施時期の判定の問題である。

糖尿病性網膜症に対する光凝固術

著者: 藤永豊 ,   瀬戸川朝一 ,   玉井嗣彦 ,   渡辺猛 ,   井上福子 ,   渡辺玲子

ページ範囲:P.281 - P.286

緒言
 現在Meyer-Schwickerathによつて考案された光凝固装置の用途は広く多岐にわたつている。糖尿病性網膜症(以下本症と略す)に対する光凝固術の有効性はすでに証明されている。しかし,そのほとんどは病期のかなり進行したもので,比較的早期に加療を始めた報告はあまり見当たらない。われわれは対象の大半をScott Ⅱaとして,最高20カ月の観察期間を経たのでその結果を報告する。

トキソプラスマ性網脈絡膜炎初期例の螢光眼底血管造影法所見について

著者: 吉岡久春 ,   木原秀司

ページ範囲:P.287 - P.295

緒言
 従来トキソプラスマ性網脈絡膜炎の炎症は網膜に初発するといわれ,その根拠として,トキソプラスマ原虫が,病理組織学的に,壊死網膜組織および瘢痕病巣より数mmはなれた健康部網膜組織内に証明される事実2)4),臨床的に,本病初期の検眼鏡所見で病変部の色調が白色を呈し,しかもこの滲出性混濁がその部を通る網膜血管を閉塞したり,あるいはこれをおおつている事実4)などがあげられている。そこで,本病の初発病変が事実網膜にあるものであるかどうかを明らかにする目的で,本病初期例について螢光眼底血管造影法により検討した結果,本病の初発病変が網膜にあることを確認できたので報告する。

網膜動脈のルーフ形成症について

著者: 松井瑞夫 ,   田代忠正 ,   松本和 ,   浅井美子

ページ範囲:P.297 - P.304

緒言
 視神経乳頭上において,網膜中心動脈の分枝がループねじれを形成し,かつ硝子体中に突出している1症例を,1871年にLiebreichが報告して以来,網膜血管ループ形成(ねじれ形成症)は多数報告されている。たとえば,1953年にBislandは6例のループ形成症を報告しているが,それまでに58例,63眼が報告されていると記載している。しかし,多くは1例報告であり,54の報告論文中,3報告が2例以上あつかつているにすぎない。著者らは,最近7例の本症および類似の症例を経験し,眼科学的諸検査,神経学的検査と同時に,眼底立体撮影ならびに螢光眼底撮影を行うことができた。
 現在までの報告症例のほとんどが,他の眼疾患あるいは全身疾患のさいの眼底検査時に偶然に発見されたものであるが,著者らの症例は,いずれも飛蚊症を主訴として眼科医をおとずれ,網膜出血等の診断を受けて当科を紹介されたものであるので,網膜出血の原因として本症を考慮すべきことは臨床上有意義なことと考えて,観察成績の概要を報告する次第である。

人工透析術患者の螢光眼底所見

著者: 山形幸枝 ,   村田充輝 ,   山田宏図 ,   高橋正孝 ,   山形陽

ページ範囲:P.305 - P.309

緒言
 腎不全の患者に対する人工透析術の発達1)2)は近年著しく,その臨床的成果も一段と充実してきた。人工透析患者の眼底所見は患者の管理状態の判定に重要な役割を果すと考え,先に当教室の保坂ら3)は検眼鏡的眼底所見の推移を報告し4)5),われわれ6)も以前に少数例であるが螢光眼底撮影所見より検討した。さらにわれわれは今回人工透析術による眼底の動脈,出血,白斑,うつ血乳頭の変化を螢光眼底所見より探究した。

眼球圧迫時の螢光眼底撮影

著者: 豊福秀尚 ,   ,   Miles A. ,  

ページ範囲:P.311 - P.316

緒言
 正常人眼において,眼内圧を網膜中心動脈収縮期圧よりやや低い圧にまで上昇させると,網膜の循環にはフルオレスチン(以下フルオと略)が現われるが,脈絡膜血管にはフルオは現われない1)。脈絡膜系の循環が開始し,フルオが流入してくるには眼内圧をそれよりやや下げなければならない。このように眼球圧迫時に螢光眼底撮影を行なうことによつて,網膜および脈絡膜循環の圧を知ることができる。私どもはさまざまな眼疾患に,眼球加圧時の螢光眼底撮影を試みている2)〜5)が,本法が,それら疾患における網脈絡膜系血管動態の未知の部分を解明させてくれるのに役立つものと思う。そこで,私どもの行なつているSuctionophthalmolodynamometerによる眼球圧迫時の螢光眼底撮影の手技を紹介し,2〜3の興味ある所見について述べることにする。

小児の字づまり視力と字ひとつ視力の相互の推定

著者: 西信元嗣

ページ範囲:P.317 - P.319

緒言
 かつて報告1)したごとく,小児における字づまり視力と字ひとつの視力は,異なる種類の視覚を測定していると考えられる。ところが臨床や学校保健の場での視力測定が,必ずしも統一されていないので,一方から他方を推定する表を作つた。その結果,字ひとつ視力1.0以上の段階と,1.0未満の段階では,対応する字づまり視力値の態様が異なることが判明した。これは視覚成立機序の解明に一つの示唆を与えると思われるので報告する。

小児にみられる読書遅滞について

著者: 池山恵子 ,   植村恭夫 ,   鈴木昌樹

ページ範囲:P.321 - P.329

緒言
 1896年Morganによりcongenital word bl—indnessとして報告された症例は,14歳の男子で知能低下はなく,個々の文字を読むことはできるが,語句の読みは不可能であり書取も障害されていた。しかし数字の読みは障害されず,計算も相当可能であつたという症例である。この症例が報告されてから今までに外国特に欧米における小児の読書困難の問題が大きくとりあげられ,教育面でも非常に重要視されてきている。これに反してわが国では,小児科,精神科の立場よりの報告は数例みられるが,外国の眼科領域での数限りない報告に対して,眼科的見地からの報告はわが国では全くなされていない。1968年牧田は教師からのアンケートから日本の読書困難児は全体の0.98%であると報告し,これは欧米の約1/10であると考えられる。日本語の特性からしてわが国には少ないことは事実であるが,関心度が非常に薄いことも考慮されなくてはならない。今回著者らは,眼科外来で経験した小児にみられる読書困難の3例について,その臨床症状および種々の検査結果を報告し,その成因,混乱している定義,分類について,また眼科医としていかに対処すべきかを報告する次第である。

後天色覚異常の色順応の問題

著者: 山中妙子 ,   佐久間靖子 ,   三原美智子 ,   養田芳子

ページ範囲:P.331 - P.335

緒言
 ふつう,赤色光に順応した眼では赤の領域の感度が緑の領域のものに対する感度より低下し,また,緑色光に順応した場合,その眼は逆に緑の領域での感度が赤の領域のそれよりずつと低下しており,これを色順応眼の色選択性といつている。Wald1)はこの色順応の性質が色覚に障害のある眼(先天異常)ではなくなつており,たとえば赤色光でも,緑色光でもその分光比視感度に与える影響は同じものとなつてしまうと述べている。この色順応の色選択性の障害がいわゆる後天的色覚異常があるとき,その色覚異常の原因が網膜にあるか,それより中枢寄りの視神経にあるかによつてどのように異なるかを知りたいと思い,次の実験を行なつた。

単色光ERGの臨床的応用に関する研究(Ⅰ)

著者: 吉田輝也

ページ範囲:P.337 - P.344

緒言
 ERGのb波の中に,いくつかの異なつた成分波が含まれていることに関して,本川,三田13)およびAdrian1)は,それぞれ独立して色光による分析を行なつた。本川と三田は中等度明順応時に人眼ERGを記録し,Purkinje現象の存在を証明すると同時に,赤色光でよく現われ,b波に先行する尖鋭な形の陽性波を発見し,それにx波という名称を付した。Adrianもやや遅れて,Deepred, Orangen red等,数種の単色光ERGの明,暗順応下における波形の変化を観察し,b波の中にScotopic, Photopicの二つの成分波が含まれていることを報告した。その後,前者をbs波,後者をbp波と呼ぶようになり,Heck, Re—ndahl10)が最初に指摘したように,bp波の中にも,色光によるいくつかの陽性成分が存在することが知られるようになつた。
 単色光ERGに関しては,その後生理学的な分野では多くの研究が行なわれてきたが2)4)5)6)11)12)現在,臨床的にはあまり普及していない。もちろん,それには,装置,操作の煩雑さと,その効用のバランスということも関連しているわけで,その点に関する検討はいまだ十分には行なわれていない。

網膜中心動脈閉塞症患者のERG所見

著者: 米村大蔵 ,   河崎一夫 ,   奥村忠

ページ範囲:P.345 - P.350

緒言
 網膜電図(ERG)は網膜循環障害のさいに臨床的意義を有するといわれている1)〜6)。この方面の研究の多くでは,ERG諸波の振幅の変化のみを論じてはいるが,その頂点潜時の変化の有無について系統的に取り扱うことはなかつたようである。われわれは網膜中心動脈閉塞症患者4名のERGの律動様小波(OP)の振幅のみならず頂点潜時をも計測し,その成績を,同一記録条件で得たERG資料を推計学的に処理して求めた正常範囲7)8)9)と比較検討した。

頸部損傷者髄液蛋白の分析

著者: 廣瀬清一郎

ページ範囲:P.351 - P.357

緒言
 いおゆる"むち打ち傷害"は数年来大きな社会問題として取り上げられ,本症に関する実験的,臨床的の両面から多くの研究がなされてきている。しかしながら"むち打ち傷害"はあくまで受傷機転をあらわしたものであるが,あまりにも広く大衆にマスコミにより深く印象づけられ,診断名としては全く不適当であるにもかかわらず,医師の中にも混同して使用するむきもある。またこれら患者の訴えは複雑多様で,その上この後遺症が賠償問題と関連して一層複雑化している。そのため病態も多彩で患者の愁訴の起因となる原因をつきとめ的確な診断治療を行なうことが困難で,不幸にして本症に罹患した患者は非常に気の毒である。
 しかし実際眼科的訴えがあり,われわれの臨床で遭遇する患者は,受傷後すでにかなり経過したものが多く,頸椎の靱帯や関節包の損傷すなわち頸椎の捻挫であつても,X線写真では骨に異常がみとめられず,たとえあつたとしても軽微なものに限定される場合が多い。今回は,これら頸部傷害者の眼科的症状と中枢神経系の各種疾患の診断ならびに病態生理解明の上欠くことのできない髄液検査,特にその髄液蛋白分画とを調べ,かつ実験的に頸部打撲を行なつた成犬の経時的脳室液蛋白分画と比較検討した。

老人性白内障の電子顕微鏡的研究—特に後嚢白内障の後嚢およびその付近について

著者: 尾形徹也

ページ範囲:P.358 - P.358

I.目的
 人眼老人性白内障水晶体の前嚢および上皮細胞に関する電顕的観察は2,3報告されているが,後嚢部に関する詳細な報告は皆無である。著者は先に老人性白内障水晶体前嚢および上皮細胞につき報告したが,今回は老人性白内障のうち,特に後嚢側に混濁の強い後嚢白内障の後嚢およびその付近につき検討したので報告する。

交感性眼炎の眼底周辺部にみられる,いわゆるFuchs-Dalén巣の微細構造—第1報巣内の色素上皮細胞の変化について

著者: 石川豊子 ,   生井浩

ページ範囲:P.359 - P.367

緒言
 交感性眼炎のさい,脈絡膜内の炎症に伴い網膜色素上皮層に細胞が結節状に増殖したいわゆるFuchs-Dalén巣(以下F-D巣と略す)は,検眼鏡的には眼底の白色斑として認められる。組織学的には主として脈絡膜内のいわゆる類上皮細胞に酷似した細胞によつて構成されるが,その意義もまた微細構造もいまだ解明されていない。本来,網膜色素上皮細胞層は色素顆粒を保有する一層の上皮細胞によつて構成されているが,ここにみられるF-D巣の形成に色素上皮細胞が直接関与しているとすれば,この部において脱色素現象を含む色素細胞の諸変化の過程が観察されるわけである。
 以上の観点からわれわれは今回F-D巣の微細構造,特に色素上皮細胞の変化の状況について観察したので報告する。

局所過敏症を応用したブドウ膜炎の診断

著者: 三村康男 ,   湯浅武之助 ,   法貴隆 ,   村井保一 ,   松本和郎

ページ範囲:P.369 - P.372

緒言
 感染にもとづく内因性のブドウ膜炎の病因診断には,病変部より直接病原菌を分離,同定することが必要である。しかし,日常の臨床では,早期に抗生物質の投与が行なわれるために,病原菌の同定は必ずしも容易なることではない。また,前房穿刺や硝子体穿刺などは,病変の軽度なときには,侵襲が大きすぎるので,routineにはおこなわれないこともある。そして,先人の報告や病理学的検索のできた症例の臨床所見を参考として,全身所見,血清学的所見より,眼病変の原因を推論しているのが現状といえる。
 今回,私たちは,局所過敏症を応用したブドウ膜炎の診断法を紹介するとともに,その理論的基礎,臨床的応用としての結膜ツベルクリン反応をもちいる眼結核症の診断法を検討した結果,本法の成績とその問題点について報告する。

グループディスカッション

斜視・弱視

ページ範囲:P.413 - P.415

 斜視・弱視グループディスカッションは1971年度秋季日本弱視斜視研究会総会として,筒井純教授(熊本大)司会のもとに,一般演題8題の講演が行なわれた。

近視

著者: 山地良一

ページ範囲:P.417 - P.420

 今年の近視グループディスカッションのメインテーマは,近視の予防である。

眼の形成外科

ページ範囲:P.421 - P.424

〈教育講演〉
眼瞼欠損の再建
 眼瞼の欠損は,1)前葉のみの欠損,2)前葉の欠損と眼縁の小欠損を合併するもの,3)全層の大欠損,に分けて考えられる。これらに応用される基本的手技として1)縫合法,とくに全層裂創の縫合法,2) Cantho—tomy,3)植皮,4)有茎皮弁移植,5) tarso-conjunc—tival flapがあげられる。
 実際の症例はこれらを適当に組み合わせることによつて処置される。その実例をスライドにて説明した。

連載 眼科図譜・173

脈絡膜悪性黒色腫類似の網膜下血腫

著者: 升田義次 ,   堀ヤヱ子 ,   山田芳明 ,   宝田雅子

ページ範囲:P.249 - P.250

〔解説〕
 網膜下血腫とは網膜色素上皮とBruch膜との間に生じた血腫1)2)(出血性網膜色素上皮剥離3))である。この血腫は,色素上皮とBruch膜との間へ脈絡膜から侵入したfibro-vascular membraneからの出血とされている。その原因は不明である。検眼鏡的には黄斑部に出現し,境界鮮明で丘状に見え,dark colorである。
 この網膜下血腫は,その出現初期の眼底所見が悪性黒色腫に類似しているために,それと誤診されて眼球摘出される場合がある4)5)。今まで両者の鑑別診断には良い方法がなかつたが,最近では螢光眼底検査が手軽な信頼できる方法として利用されている6)7)

臨床実験

伏在眼球の一症例

著者: 相沢芙束 ,   森田克彦 ,   篠田実

ページ範囲:P.377 - P.383

緒言
 伏在眼球または眼球潜伏症Cryptophthalmosと呼ばれる先天奇形は比較的まれなもので,1872年にZehender1)が第1例を報告して以来約50例の報告がなされた。邦文症例では1911年大西氏2)の報告を第1例として,現在まで20例余の報告をみる。
 本症は正常の眼瞼および瞼裂を認め得ず,前頭部より連続した皮膚が眼窩前面を覆つて,眼窩内には発育不全な眼球が存在するものである。両眼の場合があり,また,種々の合併症を伴うもので,指趾癒合,生殖器奇形,顔面亀裂,兎唇,ヘルニア,精神発育遅延,他眼の異常(上眼瞼欠損,小眼球等)がみられる3)

未熟児網膜症の検索(Ⅲ)—未熟児網膜症の冷凍療法について

著者: 山下由紀子

ページ範囲:P.385 - P.393

緒言
 未熟児網膜症に対する認識が高まるとともに,本邦においても,未熟児管理に眼科医が加わる機会が多くなつてきたが,いまだ外来を訪れる重症瘢痕症例は少なくない。
 本症の治療に関する従来の報告には,薬物療法,酸素療法などがあるが,いずれも適確なものとはいいがたかつた。ところが,1968年永田ら1)が,本症の活動期病変に対して,光凝固術を行ない頓挫的に病勢を停止させるという画期的な治療法を報告して以来,本邦においては,本症に対する光凝固術が有効な方法として急速に普及しつつある。

閉瞼による眼圧の変動についておよび眼圧と虹彩毛様体部血流の関係について

著者: 清水暢夫

ページ範囲:P.395 - P.410

緒言
 1662年Sir Richard Banister1)が眼圧上昇が緑内障の本質的な症状として述べた最初の人とされている。以来,今日に至るまで,眼圧は緑内障の診断,および治療に当たつて最も重要な位置を占めており,負荷試験も大部分は眼圧の上昇を判定の目標としている。
 緑内障の成因に関しては2)分泌過多説,強膜弾力性減退説,硝子体膨張説,循環障害説,自律神経障害説,眼圧中枢障害説,皮質中枢障害説,新陳代謝障害説,適応失調説,器械的流通障害説等が挙げられている。しかしながら,これらの説は一部は説明できても,これを以つて,すべてを理解することはできない。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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